公務員連絡会は11日、2月19、20日に提出した政府、人事院への2003春季要求の実現を求めて中央行動を実施した。15時から社会文化会館ホールで開かれた中央集会には、各構成組織の仲間800人が参加し、2003春季生活闘争の山場に向けた取り組みの意志統一を行った。これに先立って書記長クラス交渉委員は、人事院勤務条件局長、総務省人事・恩給局長と事務レベルの最後の交渉を行い、@本年の給与改定に当たっての基本スタンスA公務のワークシェアリングなどの重要課題について、現段階での総務省・人事院の見解を引き出した。公務員連絡会としては、18日の回答指定日に向けてさらに政府・人事院と折衝を重ね、総務大臣、人事院総裁から春の段階の誠意ある回答を引き出すこととしている。
15時から社会文化会館ホールで開かれた中央集会では、足立副代表委員を議長に選出。冒頭挨拶にたった丸山代表委員は「公務員制度改革も重要局面を迎えているが、春季生活闘争の回答指定日も近づいてきた。明日、連合春闘の大手の山場を迎えるが、厳しい情勢の中で民間の仲間は一生懸命交渉を進めている。われわれも生活防衛とワークシェアリングの実現に向けてしっかり取り組もう」と、18日の回答指定日に向けて取り組みを強化することを訴えた。
続いて連合を代表して中嶋総合国際局長が激励挨拶に登壇し、「雇用不安の解消と賃金水準の維持がなければ経済状況は上向かない。連合としても公務員制度改革や春闘の先頭に立って奮闘する」と、決意を表明した。
集会はこの後、山本事務局長が前段に行われた書記長クラス交渉の経過の報告と回答指定日に向けた取り組み方針を提起。構成組織決意表明では、自治労・及川青年部長、日教組・阿部山形高教組書記次長、国公総連・浅井書記次長、国税労組・渋井執行委員らが次々に登壇して闘う決意を表明。最後に団結ガンバロウで集会を締めくくった。
集会を終えた参加者は、このあと公務員制度改革の要請書を携えて全国会議員要請行動を実施し、18時から日比谷大音楽堂で開かれた連合・連合官公部門連絡会主催の民主的公務員制度改革実現を求める決起集会に再結集した。
この日行われた人事院、総務省との交渉経過は次の通り。
<人事院勤務条件局長交渉の経過>
公務員連絡会の書記長クラス交渉委員は、11日13時から、人事院大村勤務条件局長との交渉を行った。
冒頭、公務員連絡会山本事務局長が「これまで交渉を積み上げてきた。本日は18日の最終回答に向け、今日段階での身のある回答をいただきたいが、昨年のような遡っての減額調整措置はわれわれとしては絶対に認められないことをまず申し上げておく」との強い姿勢を示した上で、@人事院は労働基本権制約の代償機関として、公務員の生活防衛に向けて責務を果たす姿勢であることを明確にすることA昨年の経過を踏まえれば、国会の附帯決議や総裁の答弁を踏まえて、本年については交渉・協議を徹底し、合意と納得に基づいて進めるという枠組みを作ることB遡っての減額調整措置は認められないというわれわれの意思を踏まえた勧告を行うことC調整手当の異動保障の問題や自宅に係わる住居手当の見直し、地域給与の見直しなどについては、われわれとの十分な交渉・協議と合意に基づいて進めることD公務のワークシェアリングの導入に向けて、研究会などの設置を含めて具体的な検討に着手することE短時間公務員制度の創設、臨時・非常勤職員制度の抜本的改善についても具体的な検討を行うことF男性の育児休業取得促進策について、具体的施策を検討すること、などの重点課題について局長から見解を示すよう求めた。
これに対し大村局長は「要求をいただいてからそれぞれの段階で詰めてきた」とした上で、次のとおり、現時点での見解を示した。
(1) 去年は勧告史上もっとも悪かったということであったが、去年から今年の状況、そして今年の民間春闘の状況を見ると、客観的情勢はもう一段悪くなってきているのではないか。去年まではベアはなくとも定昇はあったが、今年は定昇をどうするかという議論まで踏み込んでおり、非常に厳しい。民間賃上げを見ないとわからないが、人事院としても厳しい状況と考えている。雇用情勢も悪い。今年の勧告で比較対象となる去年の民間のデータを見ると、一時金も下がっている。公務員は民間準拠なので、民間の実態を精確に把握して、それに基づいて勧告していくということになる。
(2) 給与改定については、民調を踏まえ適切に対処することが基本と考えている。
今年は遡っての減額調整は駄目だというが、正確に言えば「遡及する減額」はしていないが、皆さんが「実質的に遡及している」と言っていることは否定しない。厳しい状況の中で、皆さんとどう話し合っていくかだが、去年も理解を求めるよう努力してきたつもりであり、人事院だけで判断していいというものではない。去年も春闘の時から厳しい情勢であることを申し上げて話し合ってきたが、調査結果を取りまとめるには時間がかかるので、最後まで数字を出し切れないということはあった。今年は、去年より厳しいということを前提にして、できるだけ話をして理解を求めていきたい。附帯決議や総裁答弁を踏まえてということだが、決議のあるなしにかかわらずわれわれはそうした姿勢を踏まえて進めてきた。さらにどういうことができるかといえば、なかなかいい手が見つからない。なにかいい案があれば教えていただきたい。勧告に向けてはまだ時間があるので、十分話し合って進めていきたい。
(3) 調整手当の異動保障などそれぞれの課題についても皆さんと話をしていくつもりであるが、異動保障については、国会でいろいろ議論がなされているし、地域の給与のあり方とも密接に関わる話であるので、その中で検討していくことにもなろう。いずれにしても、今年の勧告で何らかの形で、(地域の給与全体の見直しとは別に)先行してやらなければならないのではないかと考えている。自宅に係る住居手当は、制度設立の趣旨がなくなってきたし額も少ないので、そのあたりを整理して、どうするか検討したい。
(4)「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」は、本日も開くことになっているが、「委員の意見の中間整理」を公表(3月3日)した。これから具体的な議論を進めていくことになるが、皆さんから意見を聞いたし、地域の実態も踏まえながら、検討しているところである。単なる地域の給与だけの問題にとどまらない広がりを持っているので、人事院としては、研究会の報告を踏まえて、今年の勧告でどう対応していくか、検討していきたい。
(5) ワークシェアリングは、雇用政策の問題として出てきたのではないかと理解している。国家公務員の場合、どこまで取り入れられるのかという問題があり、地方公務員を含めて全体として議論していくことが重要と思う。国家公務員の話で言えば、ワークシェアリングというよりも、育児などを含めていろいろな働き方が出てくるので、仕事を分け合うという意味だけではなく広い意味でそれをどう取り入れていくかが重要と考えている。短時間勤務、臨時・非常勤の検討もそれとセットの話になってくる。
(6) 男性の育児休業の取得は、各府省に働きかけるなどPRに努めているが、男性職員の意識がなかなか変わらない。職員の意識を変えていくことが大切と考えている。幸い、新年度予算が若干ついたので、それを使って啓蒙活動などを行い、取得促進を進めていきたい。
こうした局長の見解に対し、公務員連絡会側は@去年より厳しいというのが、本日時点での民間の状況を聞くと去年より悪いということにはなっていない。何を根拠に悪いと言っているのか、A遡っての減額調整は組合員の理解を得られないので、そうした着地にしないためにも、これまでとは違う枠組みで交渉・協議を行い、われわれの合意と納得を得られる勧告にすることが不可欠である。俸給の引下げは民間に深刻な影響を及ぼしている。去年のような引下げは問題であり、今年は配分のあり方について十分議論させていただきたい、B異動保障や住居手当等の見直しもわれわれとの合意を前提に進めるべきである、C地域給与研究会の報告は今年の人勧ではどう扱うのか、Dワークシェアリングの問題は、研究会を立ち上げるということを含めて、具体的な検討を始めると受け止めるがそれでよいか、とさらに局長の見解を質した。
これに対し局長は、@状況の厳しさだが、毎勤統計の賃金データを見ると昨年は年明けに急に下がったが、去年からこの時点までを見ると下がり続けていることなどがある、A今までも皆さんの納得を得られるよう話をしてきたが、何年もマイナス勧告が続いているので、今まで以上に努力していきたい。どこまで議論ができるかについては、お互いに率直な意見を出していくのは当然のことであるが、前広に数字を出してほしいと言うことについては、調査結果がまとまるのはどうしても7月中旬になってしまうので、なかなか言いきれないところがある。そういうものを頭に描きながら配分を議論していくということになる。お互いに理解し合えるよう進めていきたい、B手当を見直す場合は皆さんと前広に議論を進めていきたい、C地域給研究会報告もまだまとまっていないので、今の段階では今年の人勧でどうするかまで申し上げられない。報告が出て、人事院としてそれを検討すれば何らかの形で触れざるを得ないが、どういう形になるかはまだわからない、Dワークシェアリングの研究会の設置という方法自体は否定しないが、研究会というものは問題意識が煮詰まってきたときに立ち上げるものであり、そういう意味で、まず、お互いに問題意識を詰め合う必要があると考えている、などと答えた。
こうしたやりとりを踏まえて、連絡会側は「18日の最終回答には、より身のある回答となるよう、引き続き検討していただきたい」と要請し、本日の交渉を終えた。
<総務省人事・恩給局長との交渉経過>
総務省久山人事・恩給局長との交渉は、14時から、山本公務員連絡会事務局長ほか書記長クラス交渉委員が出席して行われた。公務員連絡会側は、冒頭、次の重点課題について、今日段階での局長の見解を求めた。
[重点課題]
(1) 政府(使用者)として、公務員労働者の生活防衛に努力すること。
(2) 国会附帯決議を踏まえ、十分な交渉・協議と合意に基づき、納得を得て給与改定を行うこと。とりわけ、今年度のような減額調整措置は、実質的な遡及であり、我々としては堪えがたいものであり、あくまでも、われわれが納得できる給与改定を行うこと。
(3) 公務におけるワークシェアリングの導入に向け、「協議の場」の設置を含め研究・検討を行うこと。同時に短時間公務員制度、臨時・非常勤制度の改革に向け、地方公務員における検討状況や民間における動向を踏まえ、具体的な検討を行うこと。
(4) ILO第329次報告を受け入れる態度決定を行い、誠意を持って対応すること。
これらについて、久山局長は「2月19日に公務員連絡会から提出のあった要求書については、鋭意検討を行っているところだが、本日は、ただいま示された重点課題に沿って、中間段階ではあるが、現時点における検討状況をお答えしたい」と、次の通り見解を示した。
(1) 人事院勧告を受けての国家公務員給与の取扱いについては、内閣がその責任において、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度尊重の基本姿勢に立ち、国政全般との関連を考慮して判断することとなるが、総務省としては、本年においても、人事院勧告が出されたら、従来どおり適切に対処してまいりたい。
なお、本年度の給与改定に当たっては、初めての俸給引き下げ勧告を受けた昨年の改定経過も十分に踏まえ、また、昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
(2) 公務へのワークシェアリングの導入や短時間公務員制度の発足等については、民間における動向や地方公務員における短時間公務員制度に係わる検討状況も踏まえながら、国家公務員に多様な勤務形態の導入を図ることなどについてのニーズを見極めた上で、必要に応じて、常勤職員の勤務時間の在り方などについて、人事院とも連携・協力しながら、検討を進めていく必要があるものと考えている。
(3) 昨年11月に出されたILO結社の自由委員会の勧告については、現在、厚生労働省が取りまとめにあたりながら、各府省とともに政府見解を作成中であり、遅くとも3月中にはこれを提出したいと考えているところである。
以上の見解について、連絡会側は、「給与改定については、国会の附帯決議において『納得を得られるよう』となっている。この問題は、職員の士気や賃金決定制度にも影響する。そういったプロセスが給与改定においても結実するよう努力を願いたい。ワークシェアリングについては、前向きな回答をいただいたが、総務省としては他の関係する府省等にも積極的に働きかけをお願いしたい。さらに、超過勤務削減を進めていただきたい」と要請を行った。
その上で、ILO勧告に対する政府見解の取りまとめについて、@3月中に取りまとめるというが、提出前にはわれわれからのヒアリングや意見交換を行うのか、A最近批准したILO144号条約は、三者協議を定めており、一方的に政府側が見解を取りまとめるということにはならないのではないか、とさらに総務省側の考え方を質したのに対し、総務省側は、@厚生労働省において見解を取りまとめている最中であり、その内容や扱いについて総務省として関与しているわけではない、A基本的には今回の事案は紛争事案であり、また、非公開会議である結社の自由委員会へ提出するものだから、144号条約の対象とはならないのではないか、との考え方を示した。
これに対し連絡会側は、「ILO144号条約は事前の意見交換を定めている。紛争案件だからとか、非公開会議だからというのは理由とならない。所管は厚生労働省であり、我々の方から厚生労働省に対し適正に三者協議の窓口を開くよう要請し、厚生労働省もこれを受けた場合は、総務省も応ずる立場にあるはずだ、とさらに追及したのに対し、総務省側は「そのようになれば総務省も政府の一員として応ずる」と答えた。
最後に山本事務局長は、「石原大臣は国会で『外国の国際機関が拘束力のない勧告を行ったが、乱暴な意見だ』という発言をしている。このことについて別途、国会でも問題にするし、ILOにも追加情報として報告させていただくが、そもそも政府全体としてILOをどのように認識をしているのか、疑わざるを得ない。18日の大臣交渉では春の段階の誠意ある回答を示すようお願いしたい」と強く念押しし、本日の交渉を終えた。
以上