公務員連絡会は2003春季生活闘争の回答指定日に設定した18日、11時から人事院総裁、15時30分すぎから総務大臣と委員長クラス交渉委員が春の段階の最終交渉を行い、それぞれ回答を引き出した。
この回答を受けて公務員連絡会は、16時すぎから企画調整・幹事合同会議を開き、政府・人事院回答内容(資料1、2)と「声明」(資料3)を確認した。また、明日(19日)を第3次全国統一行動として設定。各構成組織ごとに、本日の政府・人事院回答内容を報告し、今後の人勧期に向けた闘いの決意を固めるための時間外職場集会を中心とした行動を実施することとした。
本日の人事院総裁・総務大臣交渉の経過とその回答、公務員連絡会の「声明」は次のとおり。
<人事院総裁交渉の経過>
中島人事院総裁との交渉は、午前11時から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して人事院内で行われた。
冒頭、丸山代表委員は、「公務員連絡会としては、2月20日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、総裁から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する総裁回答を求めた。
これに対し、総裁は資料1のとおり回答を示した。
総裁回答を踏まえ北岡代表委員は、「本年の春闘は、12〜14日の民間大手を中心とした最大の山場を越え、中小・地場の闘いに移行してきているが、これら先行組合では厳しい経済、雇用情勢の中で賃金体系維持の回答を引き出してきている。しかし、春闘全体の情勢を見た場合、雇用確保の取り組みを含め、厳しい情勢には変わりないものと考えている。こうした民間春闘の経過を踏まえた場合、われわれ公務員の本年の給与改定を巡る情勢も昨年と同様に厳しいものとなることが十分予想される。われわれは、これまでのやりとりの中で公務員労働者の生活の維持・防衛と給与改定に当たっての交渉・協議、合意を強く求めてきたが、これは昨年のような方法の減額調整措置は、本年は、絶対に認められないという固い決意を表したものである。その点で、ただいまの総裁の『公務員連絡会の意見を十分聞き、納得を得るよう努める』という回答が、本年の勧告の中で具体的な結果となって現れるよう特段のご尽力をお願いしたい。これまでもわれわれは、公務員労働者の決定過程への参加を排除する人事院勧告制度が公務員の賃金・労働条件決定制度として機能する社会経済的条件が失われつつあることを指摘してきたが、昨年の給与改定を巡る経緯は、まさにその疑念が現実のものとなったと受け止めている。公務員制度改革をめぐってILO勧告が行われ、労働基本権の取扱いが重要課題となっている情勢もあり、本年、昨年のようなことが繰り返されるとすれば、決定制度としての人事院勧告制度に対するわれわれの不信は後戻りできないものとなるということを申し上げておきたい。公務のワークシェアリングや短時間勤務・非常勤制度の回答については、われわれの強い要求を踏まえ、検討に着手する意思を示されたものと評価しているので、是非、前向きに進めてもらいたい。また、人勧期に向けて諸手当などいろいろ課題があるので、十分交渉・協議してもらいたい」として、人勧期において交渉・協議、合意しうる勧告となるよう努力することを重ねて求めた。
その上で公務員連絡会側は、「人事院の春の段階の最終回答として組織に持ち帰って協議したい」として、人事院の春の段階の最終回答として受け止めるとの見解を明らかにし、交渉を締めくくった。
<総務大臣交渉の経過>
片山総務大臣との交渉は、15時30分から総務省内で行われ、委員長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、丸山代表委員が「公務員連絡会としては、2月19日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、地公部会への回答を含め大臣から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する回答を求めた。
これに対して大臣は資料2のとおり回答を示した。
この回答を受けて丸山代表委員は、本年の給与改定を巡る情勢も厳しいものとなるとの認識を示しながら、「これまでのやりとりの中で公務員労働者の生活の維持・防衛と給与改定に当たっての交渉・協議、合意を強く求めてきたが、これは昨年のような方法の減額調整措置は、本年は、絶対に認められないという固い決意を表したものである。その点で、ただいまの大臣回答の中で『昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分話し合い、理解と納得を得られるよう努める』と述べられている趣旨は、年間における官民給与を均衡させる方法について理解と納得を得るよう十分交渉・協議するという意味として確認しておきたい。また、公務のワークシェアリングや短時間公務員制度の回答については、われわれの強い要求を踏まえ、人事院とも連携しながら、検討に着手する意思を示されたものと評価しているので、是非、具体的な成果となるような検討をお願いしておきたい」と、重ねて求めつつ、「われわれは、公務員労働者の決定過程への参加を排除する人事院勧告制度が公務員の賃金・労働条件決定制度として機能する社会経済的条件が失われつつあることを指摘してきたが、昨年の給与改定を巡る経緯は、まさにその疑念が現実のものとなったことを証明している。公務員制度改革をめぐってILO勧告が行われ、労働基本権の取扱いが重要課題となっている情勢もあり、本年、昨年のようなことが繰り返されるとすれば、われわれの決定制度としての人事院勧告制度に対する不信は後戻りできないものとなるということを申し上げておきたい。中央人事行政機関としての内閣総理大臣を補佐する立場である総務大臣には、これらの点を十分ご認識いただき、政府としても労使関係の安定の観点から使用者としての責任において、われわれと交渉・協議を十分行い、労使の意思疎通を促進させるべく、特段のご努力を要請したい」として、総務大臣の特段の努力を求めた。
また、地公部会を代表して松島世話役委員長は「短時間勤務制度の導入に向けた検討は、大臣の英断として評価したい。また、非常勤職員に関する課題も大きな懸案であり、引き続き努力をお願いしたい。今年度の給与についても、財政状況が厳しいとして、多くの自治体で国に準じたマイナス改定を行った上でさらにカットしている状況がある。これは労使が交渉して苦渋の決断をしたものであり、こうした実態を踏まえて、賃金・労働条件の決定に当たって今後とも労使交渉を尊重する立場で対応していただきたい」と、総務省の努力を求めた。
これに対して総務大臣は、「皆さんの意思は承った。話し合いは十分させていただく」と、交渉・協議には応じていくとの見解を示した。
さらに、丸山代表委員が公務員制度に関わって、「改正法案の作業と労働基本権の問題は同時決着でなければならない」としたのに対しても、「趣旨はよくわかった。ILO勧告もよく話し合えということだと理解している」と応じた。
最後に公務員連絡会側は、「本日の回答は、総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」とし、総務大臣交渉を締めくくった。
<資料1>人事院総裁の2003春闘回答
人事院総裁回答
2003年3月18日
1 官民較差に基づき、適正な公務員の給与水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。また、給与改定に当たって、公務員連絡会が交渉・協議、納得を求めていることについては理解する。
2 公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、公務員連絡会の要求及び公務員の生活を考慮して、人事院の重要な使命として、適切に対処する。
また、年間における官民給与を均衡させる方法については、公務員連絡会の意見を十分聞き、納得を得るよう努める。
3 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて公務員連絡会と十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
地域における公務員給与のあり方については、地域に勤務する公務員の給与に関する研究会の報告を待ち、公務員連絡会の意見を十分聞きつつ、検討を進める。
4 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
5 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び公務員連絡会の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減に向けて努力する。
また、育児休業の男性取得の促進に向け、引き続き努力する。
6 公務のワークシェアリングについて公務員連絡会が強い関心を持っていることを十分認識し、研究会の必要性を含め研究・検討を進める。
短時間勤務制度の導入や非常勤職員制度の整備については、公務のワークシェアリングや勤務形態の多様化の観点、地方公務員の導入に向けた検討が着手されている状況などを踏まえ、関係機関と連携を取りつつ公務員連絡会の意見を十分聞き具体的な検討を進める。
7 自己啓発等のための休業制度については、引き続き検討を進める。
8 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
<資料2>総務大臣の2003春闘回答
総務大臣回答
2003年3月18日
1 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成15年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
なお、昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
2 政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
なお、ILO結社の自由委員会第329次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
3 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
4 公務へのワークシェアリングの導入や短時間公務員制度の発足等については、民間における動向や地方公務員における短時間公務員制度に係る検討状況も踏まえながら、国家公務員の多様な勤務形態の導入を図ること等についてのニーズを見極めた上で、常勤職員の勤務時間の在り方などについて、人事院とも連携・協力しながら検討を進めてまいりたい。
5 高齢者再任用制度については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
6 男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
7 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。
地公部会に対する総務大臣回答
2003年3月18日
1 地方公務員の給与については、労使間の交渉もあるが、条例で定められ、その内容は基本的には人事院勧告に基づく国家公務員の給与改定に準じて、国及び他の地方公共団体との均衡が失われないようにすべきものと考えており、今後とも、このような考え方に基づき、必要な助言等を行ってまいりたい。
2 国と地方の税源配分については、経済財政諮問会議において、国税・地方税の比率を1対1とすることを目指した税源移譲案を示しているところであり、今後、三位一体改革の工程表作成に向け、こうした考え方を基本に積極的に取り組んでまいりたい。
なお、この三位一体の改革の中で、地方交付税についても必要な見直しを行っていくが、地方財政計画の規模の抑制につとめつつ、国庫補助負担金の抜本的な見直し、税源移譲等に対応して、必要な水準の地方交付税総額は確保してまいりたい。
3 地方公務員制度改革については、その具体化に向け地方公務員法の改正案の検討を鋭意進めているところであり、国家公務員法の検討の状況もみつつ、関係者の意見も承りながら具体的な検討を進めてまいりたい。
4 地方公務員の短時間勤務の問題については、以前から課題とされてきたところであるが、今般、構造改革特区に関する地方公共団体からの提案の趣旨等も踏まえ、全国対応として、常勤職員の短時間 勤務をはじめ、多様な勤務形態の導入を図るため、有識者等の意見を踏まえた検討を行い、所要の措置を講じたい。
<資料3>公務員連絡会の声明
声 明
(1)本日、公務員連絡会は、総務大臣、人事院総裁と交渉を行い、2003年の春季要求に対する回答を引き出した。
(2)雇用と賃金水準の確保をめざした2003春季生活闘争は、先行大手組合が賃金カーブ維持の回答を引き出すなど、日本経済が危機的な状況にある中で懸命の取り組みを進めている最中にある。
われわれの春季生活闘争も、公務員制度改革をめぐる緊迫した情勢や公務員給与を取り巻く厳しい情勢を認識しつつ、「マイナス勧告を行わせないこと」を基本的な運動目標に据え、生活の維持・防衛と交渉協議・合意にもとづく給与改定、公務におけるワークシェアリングの実現などを重点課題に設定し、その実現に向けた取り組みを進めてきた。
(3)本日の回答では、人事院から、給与改定に当たってわれわれが交渉・協議、合意を求めていることについての一定の見解や国会附帯決議などを踏まえて「納得を得るよう努める」との見解を引き出した。政府からも、十分な交渉・協議と納得を得るよう努力するとの見解を引き出した。これらの回答は、われわれの生活防衛を求める切実な要求や昨年のような「減額調整措置」は行わないことを明確に約束したものではないが、今後の人勧期や確定期の闘いへの足掛かりとなるもので、人事院勧告制度の下での春の段階の回答として受け止めざるを得ないものである。
公務のワークシェアリングについては、政府、人事院からそれぞれ短時間勤務制度の導入などについて具体的な検討に着手する、との回答を引き出した。公務における雇用創出・多就労型ワークシェアリングについては、地方公務員の短時間勤務制度の導入に向けた検討が進められている状況を踏まえつつ、この回答を足掛かりに「研究会」や「協議の場」などを設置させながら政府、人事院と交渉・協議を進めていく必要がある。
その他、人事院から諸手当や地域給与の見直しにあたって十分交渉・協議していくことを約束させたが、これらはいずれも本年の人勧期の取り組みで具体的な課題となる問題であり、われわれとしても早急に見解をとりまとめ対応を進めていく必要がある。
(4)われわれは、これらの春闘結果を踏まえ、直ちに人事院勧告期の闘いを開始していかなければならない。
先行大手組合で賃金カーブ維持の回答を引き出したとはいえ、われわれの生活の維持・防衛を求める闘いは極めて厳しいものとなることが想定される。周知の通り、昨年の闘いを通して、今日の社会経済情勢のもとでは賃金・労働条件決定制度としての人勧制度は歴史的・制度的に限界を迎えつつあることが明らかとなっている。本年の人勧期の闘いにおいては、「マイナス勧告を行わせないこと」と昨年のような「減額調整措置」を行わせない固い決意のもとに、実質的な交渉・協議を十分行い、われわれが決定過程に参加し、合意しうる勧告内容となるよう一段と取り組みを強めていかねばならない。
(5)われわれは、明日、19日の第3次全国統一行動日には各構成組織ごとに本日の回答内容を報告し、引き続く人勧期の取り組みへの決意を確認する職場集会等を実施することとする。また、困難な情勢の下で闘いを進めている中小及び地域の仲間や国営企業部会の仲間と連帯し、雇用確保や社会保障制度の拡充などを求める連合の取り組みに積極的に参加するなど、春季生活闘争中・後半期の闘いを推し進めることとする。
そして、最重要段階にある公務員制度改革をめぐる取り組みにおいては、十分な交渉・協議と合意なき公務員法改正案の閣議決定と国会提出に強く反対し、労働基本権の確立と民主的で透明な公務員制度の実現に向けて、連合に結集するすべての仲間とともに組織の総力を挙げて闘い抜くことを宣言する。
2003年3月18日
公務員労働組合連絡会
以上