公務員連絡会地公部会は、4月11日10時40分から、本年勧告にむけた全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行った。
公務員連絡会側は、地公部会の松島世話役委員長(都市交)、中村世話役書記長(日教組)、山本公務員連絡会事務局長、岩本次長(地公部会事務局長)と地公部会幹事が出席、全人連側は、眞仁田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市の代表者が対応した。
冒頭、松島地公部会世話役委員長は、別紙要請書を手交し、「5月連休が明けると、民間給与実態調査がはじまる。公務員連絡会は、2月19日に総務大臣、2月20日に人事院総裁あてに要求書を提出し、3月18日の回答をもって春のたたかいに区切りをつけた。民間労組では、中小組合を中心になお交渉を継続しているが、本年も厳しい中で推移していると認識している。昨年の勧告では、初のマイナス勧告が行われ、地方の段階でも厳しい交渉が行われた。また、地方財政危機を受けてさらにマイナスを重ねる自治体もある。本年も厳しい中にあっても、地方公務員の生活の維持・防衛につながるような勧告が必要であり、昨年のような減額調整はあってはならないことであることを強く認識いただきたい。公務員制度改革の議論の進展の方向によっては、地方段階における労使関係や人事委員会のあり方も大きな変更を迫られるだろう。人事委員会は、その本来の使命に立ち返り、現行制度の下において勧告が守られべく、財政事情を理由とした人事委員会勧告の不完全実施などの事態が起こらないよう対処すべきである」と要請した。
続いて、岩本地公部会事務局長が、別紙要請書のうち、以下の6項目を重点課題とし、全人連の考え方を質した。
1.春闘相場が厳しい中にあっても、地方公務員の生活の維持・防衛のための賃金水準を確保するため、特段の努力をお願いしたい。とりわけ、昨年勧告のような実質的に不利益を遡及するようなことは厳に慎むべきである。
また、人事委員会勧告が尊重されず、当局が上乗せしてマイナス削減する事態に対し、人事委員会はその使命に立ち返って対処していただきたい。
2.人事院が昨年の報告の中で触れている自宅に係わる住居手当の見直しについては、国家公務員と地方公務員の勤務実態を最大限考慮すべきである。国には自宅に係わる住居手当の対象者は少ないが、これとは反対に地方公務員は対象者が相対的に多く、こうした事情の違いを認識すべきである。
3.総務省では地方公務員に短時間職員制度を導入するため、1年掛けて有識者等の意見を聞きながら検討を行うとしている。短時間職員制度は、ワークシェアリング問題において重要な課題であり、制度化を行うべきである。その際、自治体に広く雇用されている非常勤職員の処遇の改善を行うべきである。
4.男性の育児休業取得が促進されるよう具体的な施策を策定すべきである。
5.高齢者再任用制度が円滑に運用できるよう、引き続き、必要な施策を講じていただきたい。
6.本年も厳しい状況が続くが、勧告にあたっては職員の納得を得られるのかが最大の問題である。例年にも増して、労働組合との十分交渉・協議を行い、合意に基づき勧告すべきである。
こうした地公部会側の要請に対し、眞仁田会長は以下の通り回答した。
<地公部会要請に対する全人連会長回答>
平成15年4月11日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
回答としてはこれで尽きますが、今年の民間給与調査を迎える状況の認識を一言申し上げておきます。
最近の経済情勢を見ますと、3月の月例経済報告においては「景気は、おおむね横ばいとなっているが、イラク情勢等から不透明感が増している。」とし、先行きについてもアメリカ経済等の回復持続を期待しながらも強い警戒感を示しております。また、失業率は引き続き高い水準で推移しております。
今春闘では、ベア実施を見送る結果となった企業も数多く、「定期昇給見直し」の協議に入る企業もあるなど、デフレ下の春闘は新たな様相を示しています。
現下の情勢からは、月例給をとりまく状況は厳しく、昨年よりさらに厳しい事態となることも十分考えられるところです。
また、2月発表された厚生労働省の調査では、昨冬のボーナス減少幅は過去最大といわれております。本年の民調において、一時金についてどのような数字があらわれるか予断を許さないところです。
春闘をめぐる状況や失業の増大など、この厳しい環境の下ではより一層、職員と住民の双方の理解を得ていくことが必要であり、民間給与の一層的確な把握や給与制度の見直しもこの観点からさらに重要なものとなっております。
一方、政府の公務員制度改革についても、公務員法改正に向けた動きが進んでおります。地方公務員制度への影響について、人事委員会としても注視しているところです。
なお、各地方自治体におきましても、国や民間企業での制度改革の取組みを踏まえて、任用・給与制度全般について一層の検討を進めていく必要があると考えます。
申すまでもありませんが、公共のため尽力している公務員について給与等の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しているところであります。今後、各人事委員会におきましては、例年と同様、5月初旬から民間給与実態調査を予定しております。
ただいまの皆様の要請の内容につきましては、その調査結果等を踏まえて具体的に検討して行くことになろうかと存じます。
こうした回答を受け、勧告にむけ、今後とも時宜に応じて話し合いを行うことを約束し、本日の要請を終えた。
<別紙>
2003年4月11日
全国人事委員会連合会
会 長 眞仁田 勉 様
公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 北岡 勝征
日本教職員組合
中央執行委員長 榊原 長一
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立 則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 武田 幸男
要 請 書
貴職が、日頃から地方公務員の賃金・労働条件の改善に向け、ご尽力いただいていることに敬意を表します。
公務員労働者の賃金は、昨年度においてはマイナスの給料表改定となるなど、生活水準の維持が困難となっています。しかも、法的に疑義がある「減額調整措置」が行われ禍根を残しました。加えて、地方財政危機を理由に職員の給与をカットする自治体がさらに広がっていますが、これは現行法制下において人事委員会勧告制度を空洞化させるもので、許されません。
日本経済はデフレスパイラルの局面から抜け出せず、先行きに対する不安は一向に解消されていません。2003春闘における民間賃金交渉結果をみると、本年の給与改定をめぐる情勢も厳しいものとなることが予想されます。また、人事院の「地域給」の検討や住居手当の見直しなど地方公務員の給与への影響も考えられます。
こうした厳しい状況における給与改定については、職員の納得を得るうえでも、労働組合との交渉・協議と合意に基づいて進めることが不可欠です。
これから人事委員会において本年の勧告に向けた作業に取りかかられることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け、加盟組合との協議を尊重しつつ、最大限の努力を払われますよう強く要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・防衛するための賃金水準を確保すること。
2.「持ち家」に対する住居手当制度および現行支給水準を堅持すること。
3.短時間勤務制度を導入するとともに、非常勤職員の処遇改善や法的位置づけの明確化をはかること。
4.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1) 所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3) 年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4) 労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
5.各種休暇制度を新設・拡充すること。特に、夏季休暇日数の拡大、リフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)等を実現・充実すること。また公務員としての自己啓発、自己実現のための休業制度の新設を含め、総合的な休業制度を確立すること。
6.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
7.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
8.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
9.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシャルハラスメントの防止策を引き続き推すること。
10.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
11.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
12.自治体で取り組まれている緊急雇用対策としての自治体雇用に当たっては、職員に対する未払い超勤の発生や賃金水準の低下を招くことのないようにするとともに、当該労働組合と協議すること。
13.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。