2003年度公務員連絡会情報 36 2003年6月16日

公務員労働組合連絡会

人事院総裁に「2003年人事院勧告に関わる要求書」提出

 公務員連絡会北岡・丸山代表委員ほか委員長クラス交渉委員は、16日午後1時10分から人事院内で中島人事院総裁と交渉を持ち、「2003年人事院勧告に関わる要求書」を提出した。
 本年の人事院勧告を巡っては、すでに人事院の民調が開始され、官民較差等は昨年同様に厳しい情勢にあると伝えられている。また、調整手当の異動保障や自宅に係る住居手当の見直しなど、個別的な課題をめぐる交渉はすでに進められている状況にある。公務員連絡会は、本日の人勧期要求の提出を機に、官民較差や配分、減額調整問題の扱いなどについて本格的な交渉・協議を進め、われわれとの合意にもとづく報告・勧告の実現をめざして取り組みを強めていくこととしている。

 人事院総裁との交渉では、丸山代表委員が要求書を手交し、次の通り要求提出に当たっての考え方を述べた。
(1) 2003年の人事院勧告を巡る情勢は、日本経済が依然としてデフレから脱却する糸口が見えず、雇用情勢も深刻な状況にあり、引き続き厳しいものがある。一方で、本年の春闘相場は、多くの組合で賃金カーブ維持を獲得した結果も反映し、昨年に比べて微減に止まり、落ち着いた相場となっていると認識している。
(2) 本年の人事院勧告・報告をめぐっては、公務員の生活維持・防衛を基本として、@厳しい情勢の中での官民較差と減額調整措置のあり方、A地域給与や給与制度見直しの方向性、B公務におけるワークシェアリングの実現など、重要課題が山積している。これらの課題解決のためにも、十分な交渉・協議と、われわれが納得し、合意しうる勧告・報告を行うことがなにより求められている。今日の厳しい情勢の下で人事院勧告制度が労働基本権制約の「代償機能」としての役割を果たしていくためには、文字通り団体交渉制度の代替機能の役割、すなわち決定過程への労働組合の参加を保障することが重要だ。しかし、ここ数年、こうした機能と役割が十分に果たされておらず、われわれは人事院勧告制度に対する不信と不満を強めている。
(3) 本年の人事院勧告に関わる要求書については、厳しい情勢であることを認識し、昨年に続いて、総裁に直接提出させていただくこととした。本日の要求提出を機に、実務レベルで水準・配分、制度見直し内容等の万般について、われわれが十分納得いくまで交渉・協議を積み上げ、最終的には後日、総裁から直接回答をいただきたい。われわれ委員長クラスも、組織の責任者としての立場で人事院との話し合いの先頭に立つので、総裁にも要求の実現に向けて特段の努力を要請する。
 続いて山本事務局長が@公務員の生活防衛に向けて最大限努力し、合意できる勧告とすることA昨年の減額調整措置は行わないことB異動保障や自宅手当等の個別課題についても交渉・協議、合意することC地域給与等の見直しに当たっては「交渉・協議の場」を設け、拙速な報告等を行わないことD公務のワークシェアリング・短時間勤務制の実現に向けて公務員連絡会が参加する「研究会」等を設置すること、などの重点要求事項を説明、その実現を求めた。
 これに対して総裁は「これからよく検討させていただく」とし、今後交渉・協議を積み上げていくことに同意したが、重点要求事項等に対する特段の見解は示さなかった。


−資料−

2003年6月16日


人事院総裁
 中 島 忠 能 殿

公務員労働組合連絡会
代表委員 北 岡 勝 征
代表委員 丸 山 建 藏

2003年人事院勧告に関わる要求書


 常日頃から公務員労働者の処遇改善に向けてご努力いただいていることに敬意を表します。
 さて、2003年の人事院勧告をめぐる情勢は、日本経済が依然としてデフレから脱却する糸口が見えず、雇用情勢も深刻な状況にあり、引き続き厳しいものがあります。一方で、本年の春闘相場は、多くの組合で賃金カーブ維持を獲得した結果も反映し、昨年に比べて微減に止まり、落ち着いた相場となっているといわれています。
 本年の人事院勧告・報告をめぐっては、公務員労働者の生活の維持・防衛は当然のこととして、@官民較差と減額調整措置A地域給与や給与制度見直しB公務におけるワークシェアリングなど、重要課題が山積しています。これらの課題解決のためにも、十分な交渉・協議と、われわれが納得し、合意しうる勧告・報告を行うことがなにより求められています。今日の厳しい情勢の下で人事院勧告制度が労働基本権制約の「代償機能」としての役割を果たしていくためには、文字通り団体交渉制度の代替機能の役割、すなわち決定過程への労働組合の参加を保障することが重要だと考えるからです。
 貴職におかれては、公務員制度改革をめぐる動向が大きな山場を迎える中、こうした点を十分認識し、2003年人事院勧告に関わる下記事項の実現に向けて最大限努力されることを強く要求します。



一、賃金要求について
1.本年の給与勧告について
(1) 2003年度の給与改定に当たっては、公務員の生活を維持・防衛するため、月例給与や一時金の水準、配分、年間の官民給与均衡方法などについて十分な交渉・協議を行い、合意に基づく給与勧告を行うこと。
(2) 調整手当の異動保障の見直しに当たっては、現行の支給実態も踏まえ、十分交渉・協議、合意すること。
(3) 自宅に関わる住居手当の見直しに当たっては、十分交渉・協議、合意すること。

2.地域給与のあり方の検討並びに給与制度の見直しについて
(1) 地域給与のあり方の施策の検討に当たっては、公務員連絡会との「交渉・協議の場」を設置するなど、十分交渉・協議を行い、合意を得ることとし、拙速な勧告・報告を行わないこと。
(2) 公務員給与制度の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議、合意しながら作業を進めること。また、行革推進事務局の新人事制度との関わりを明確にし、当面、具体的な検討や報告を行わないこと。


二、労働諸条件の改善について
1.ワークシェアリングの実現、短時間公務員制度の発足等について
 公務におけるワークシェアリングの実現、短時間公務員制度の発足、臨時・非常勤職員制度の抜本改善に向け、直ちに公務員連絡会が参加する「研究会」を設置し、具体的な施策の検討を開始すること。

2.労働時間短縮、休暇・休業制度の改善について
 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。

3.男女平等の公務職場の実現について
(1) 男女平等参画促進の観点から、職業生活と家庭生活の両立に向けた支援策として育児休業の男性取得促進のための具体策を報告すること。
(2) 女性公務員の採用・登用計画の一層の促進を図るとともに、男女共同参画会議がとりまとめた「女性のチャレンジ支援策について」に基づき、数値目標等を設定した新たな計画の策定を検討すること。

4.その他の事項について
(1) 寒冷地手当に関わる調査結果の取り扱いについては、公務員連絡会および寒対協などの関係団体と十分協議し、合意すること。
(2) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上