公務員連絡会は、11日午後、2003年人勧期要求の実現に向けた第1次中央行動を実施した。この中央行動は、6月16日に人事院に要求提出して初めての行動となるもので、社会文化会館ホールに800人が結集し、中央集会を開催したほか、幹事クラス交渉委員による人事院職員団体審議官交渉や、それを支援する行動などを繰り広げた。
人事院は現在、民間実態調査を終え、その集計作業に入っているが、官民較差の動向については「昨年と同様に厳しい」とし、一時金については「昨年以上に厳しい情勢」との認識を示している。また、本年の人勧期の取り組みでは、調整手当の異動保障の見直し、自宅にかかる手当の見直し、通勤手当の支給方法の見直しなどについて先行して交渉・協議が進められている。加えて、地域給与の見直しや寒冷地手当の調査の実施問題なども急浮上しており、本年の人勧期の課題はまさに多岐に渡っている。この日行われた職員団体審議官との交渉では、人事院側から具体的な見解は示されなかったものの、厳しい勧告・報告を予想する考え方が示され、公務員連絡会側はあくまで生活防衛できる給与水準の確保と十分な交渉・協議による勧告の実現に向けて努力することを強く求めるとともに、昨年方式の減額調整措置については絶対に認められないとの強い態度を表明した。
人勧期の取り組みは、本日の第1次中央行動を皮切りに、人事院との交渉・協議が本格的に進められ、22日には勤務条件局長と書記長クラスが交渉を持ち、官民較差の動向や諸手当制度見直し課題についての方向性を提示するよう求めることとしている。こうした情勢を受けて公務員連絡会は、11日昼に幹事会を開いて@生活防衛できる勧告を行うことA昨年方式の減額調整措置を行わないこと、などについて、@国公構成組織においては上申闘争を徹底するA地公構成組織においては地方自治体首長に対して人事院総裁宛の要請行動に取り組むB22日の交渉結果を受けて緊急要請打電行動等を検討する、などの当面の行動を強化する方針を決定した。
午後1時30分から行われた中央集会では、古山副代表委員を議長に選出。冒頭主催者挨拶にたった北岡代表委員は、まず公務員制度改革をめぐって「われわれの取り組みによって今国会では改正法案を提出することは困難な情勢となっている」と報告。「いよいよ人勧期の本格的取り組みに入っていく段階だ。組合員には、民間のように交渉して合意するのではなく、われわれの場合は一方的にマイナス勧告されることに対する不満が高まっている。なんとしても、われわれと十分交渉・協議、合意した、生活が防衛できる内容の勧告にさせなければならない。また、昨年のような減額調整方式は絶対認められない。決定制度としての人勧制度は限界にきていることを踏まえ、公務員制度改革の中で労働基本権を実現し、交渉で決めるシステムを作ることが必要だ」と訴えた。
続いて激励挨拶にかけつけた連合の龍井総合労働局長は「公務員制度改革については、今国会はしのげたが、引き続きILO勧告を踏まえた取り組みが必要だ。民間においても賃金水準維持の闘いが重要となっている。人勧が来年の民間の闘いの始まりとなるので、負の循環を断ち切るため、連合全体として取り組む」と、連帯の意を表明。国営企業部会河田労働条件対策委員長も中労委の取り組み経過を報告しながら「人勧グループと一緒に頑張る」と、連合官公部門連絡会が一体となってともに闘う決意を述べた。
集会はその後、山本事務局長が公務員制度改革をめぐる情勢や人勧期の取り組み方針を提起。公務員制度改革をめぐっては、自民党内で行革推進事務局の公務員制度改革関連法案が了承されなかったことにより、今国会での関連法案の閣議決定は事実上困難となったと報告し、引き続き取り組みを強めるとの考え方を述べた。また、人勧期方針については、厳しい官民較差や減額調整措置をめぐる情勢を踏まえ、当面の取り組みを強化すると提起した。
構成組織決意表明では、国税労組・荻原執行委員(国税東京書記長)、税関労連・谷口名古屋税関労組副委員長、日教組・衛藤青年部長、全水道・和田副委員長が登壇し、最後まで闘う決意を表明した。
集会は、最後に丸山代表委員の団結がんばろうで締めくくった。
集会を終えた参加者は、午後2時45分から行われた職員団体審議官交渉を支援する行動に移り、人事院前で「生活防衛できる給与勧告を実現せよ」「交渉・協議、合意に基づく勧告を行え」と、声をからしてシュプレヒコールを繰り返した。
職員団体審議官と幹事クラスの交渉経過は次の通り。
<人事院鈴木職員団体審議官交渉の経過>
公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、14時45分から、人勧作業の状況や調整手当異動保障見直し、自宅に係る住居手当、通勤手当の支給方法など人勧期の要求に係わる人事院交渉を実施した。人事院は鈴木職員団体審議官らが対応した。
冒頭、岩岬公務員連絡会事務局次長から「6月16日の要求書提出以来1ヶ月が経過しようとしている。すでに、3課題については先行して交渉を実施しているが、本日は作業状況を踏まえ、勧告の全体像について可能な限り回答していただきたい」として、人事院の見解を求めた。
これに対し鈴木職員団体審議官は、以下の通り今日段階の人事院の検討状況を明らかにした。
1.官民較差(水準)、一時金
@人事院としては、民間準拠の原則に従い、官民較差に基づいて対処するという方針に変更はない。勧告作業は例年通りの日程で進んでおり、現在、集計作業に入っているが、回収率については、昨年をわずかに下回ったがほぼ例年並である。
官民較差の状況については、集計結果をみなければ確実なことはいえない。しかし、春闘結果や厚生労働省の調査を見る限り、民間の状況は昨年と同様に厳しいものと認識している。
A特別給の状況については、昨年の勧告は最小のマイナス月数である0.05月であったが、民間の状況は昨年の夏、冬ともに厳しく、昨年勧告よりもさらに厳しいものになると予想される。なお、仮に月数を変更することとなれば、民間の査定部分の比率との均衡を考慮して措置することとなると考えている。
2.本年勧告の検討課題
先行3課題についてはすでに議論を開始しているが、今日段階、人事院は次のように考えている。
@調整手当の異動保障見直しについては、皆さんと意見交換を進めているところだが、それらも踏まえて検討中である。なるべく早くもう少し具体的な提案ができるように検討していきたい。
A自宅に係る住居手当については、人事院の問題意識はすでに表明した。皆さんの意見もさらに聞きながら検討を進めるが、同時に較差の状況も踏まえて判断する必要があると考えている。
B通勤手当の支給方法の問題については、実務的に大きな問題がなければ進めていきたいと考えている。変更内容、変更時期等を含め検討している最中であり、近々に具体的なお話ができるものと考えている。仮に本年勧告で措置する場合でも、皆さんからの意見要望を伺っていく。
Cその他の手当については、較差の状況をみて、その配分の検討の中で、扶養手当が検討の対象となるものと考えている。
Dこの他に、大学、病院、療養所の法人化に伴い、対象者がいなくなったり、極めて少なくなったりする教育職関係の俸給表や関連する手当のあり方について検討する必要があるものと考えている。課題の整理も含めまだ検討を重ねなければならないが、今年ないし来年に勧告を行う予定である。
3.報告で触れる可能性のある課題
@地域給与・給与制度見直しについては、近く報告される地域給与研究会報告を踏まえ、人事院としての検討の方向性等について、報告で触れたいと考えている。
A寒冷地手当については、かねてから問題意識をもっているが、本年の民調では北海道の一部について調査を行った。今後よりきちんとした調査をすることを含め検討していきたい。その場合は報告で触れたいと考えている。
B公務員制度改革に関連して、昨年もかなりの内容の報告をしている。状況を見ながら言うべきことは言うという姿勢である。
4.その他の課題
@皆さんが強い関心を持っている年間給与の均衡の方法やワークシェアリングなどについては、なかなか難しい課題であるが、人事院としても問題意識を持って受け止めている。どういう取り扱いになるかは今後の検討によるが皆さんの意見も十分聞きながら検討を進めていきたい。
これに対し、公務員連絡会側は、見解を質すに先立ち、過日、一部報道機関が官民較差や一時金の状況を踏まえ、人事院が俸給の引き下げを含むマイナス勧告を行うことを決定したと報道したことについて、「これが事実とすれば大変遺憾であり、われわれとの協議を無視したものだ」と人事院側に事実関係を質した。人事院側は、「民調の集計段階であり、決定したということはありえない。人事院として記者発表した事実もない。記者の独自の取材の範疇でなされたものであろう」と回答した。
続いて連絡会側は、上記の人事院の回答に対し、概要、次のようにさらに考え方を質した。
(1) 昨年同様に厳しいということだが、春闘結果は、コンマ以下2桁台でマイナスになったに過ぎない。中労委の裁定も、マイナス0.3〜0.4というものだ。さらに厚生労働省の毎月勤労統計の5月速報値は、プラスに反転している。「昨年同様に厳しい」というなら、その根拠を示すべきであり、われわれとしては到底納得できない認識だ。
(2) 一時金について、本年もマイナスなら5年連続であり、あまりにも厳しい。生活防衛の観点で最大限努力すべきだ。期末・勤勉の配分については、昨年の交渉で7:3で決着したと認識している。まずわれわれとの協議と合意に基づき、ルールを明確にすべきであり、民間の実勢にあわせることを理由として、人事院勧告で変更を繰り返すのは一方的なルールの変更だ。今後、配分比率の変更をどのようにしていくのか、考え方を示すべきである。
(3) 先行3課題については、われわれは具体案の枠組みや歯止め要求をすでに提示しているので、それに沿った具体案をできるだけ早く示すべきである。また、教育職俸給表関連については、当該構成組織の意見をよく聞いてもらいたい。
(4) 寒冷地手当については、まだ本年の民調結果も示されていない段階で、来年に向けて調査を行うとするのはあまりにも拙速ではないか。調査を実施するか否かを含め、われわれや寒対協など関連する組織と十分協議して、合意の上で対応を決めるべきだ。
(5) 地域給与研究会の報告については、時期がここまで押し詰まり、われわれとの協議の時間も少なくなってきている。近々に公表するのであれば、すでに申し入れているとおり、説明会や勤務条件局長との交渉を実施してもらいたい。われわれとしては、研究会報告はそれとして、あくまでも人事院との施策の協議の中で詰めていく姿勢である。
(6) 官民較差次第であり、一義的には俸給表を引き下げなくてもすむ較差とすることである。仮に俸給表のマイナスが避けられない場合の調整方法については、昨年方式は認められないということを重ねて強調しておく。少なくとも、中労委方式を参考にして検討すべきである。
(7) ワークシェアリング、短時間公務員制度の創設、非常勤職員制度の抜本改善について、われわれは強い関心を持っている。前向きに検討し、「研究会」の設置を含め本年明確な報告を行うとの回答を示してもらいたい。
これに対し人事院側は、次のように回答した。
(1) 民調結果を見ないとならないが、各種統計からは、厳しい結果もあり得るとの認識で集計結果を待たざるを得ない。
(2) 特別給は、昨年はかなり下がっている。民調結果がどういう結果になるかによるが、支給月数減は避けられないのではないか。期末・勤勉の比率については、民間が1〜2年で大きく変動することはないだろうが、趨勢としては実績重視にシフトしてきている。こうした動きも参考にしていくべきである。仮に比率に変動がないとしても、支給月数が動けば、期末・勤勉の比率をどのようにしていくは議論することとなるだろうし、その場合も民間における比率が参考となるのではないか。いずれにせよ皆さんとよく話し合っていく。
(3) 先行3課題等については十分意見を聞いていきたい。本日段階では具体的な考え方は示せない。教育職俸給表の取扱いや寒冷地手当の関係構成組織や団体と十分意見交換すべきという考え方は受け止める。
(4) 減額調整措置は官民較差次第であり、今日段階では具体的なやりとりはできない。
(5) 短時間勤務等については、皆さんから研究会の設置というご意見もうかがっている。こうした場がふさわしいかも含めて検討を進めている。
これらのやりとりを踏まえ、公務員連絡会側は最後に、「勧告の概要について、7月上旬に明らかにするよう求め、3課題については先行して交渉を進めてもきた。しかし、いまもって抽象的な回答しか示されないのは不満だ。7月22日に勤務条件局長交渉の実施を申し入れるので、そこで官民較差の動向、先行3課題についての考え方等を具体的に提示してもらいたい。その回答を踏まえ、具体的な配分交渉に入っていきたい」とし、人事院側も「できるだけ要望に応えられるよう努力する」と約したため、本日の交渉を終えた。
以上