2003年度公務員連絡会情報 41 2003年7月22日

公務員労働組合連絡会

官民較差・一時金等で人事院が厳しい見解
−書記長クラスが勤務条件局長と交渉、地域給与研究会報告についても申入れ

 公務員連絡会は、22日14時30分から、書記長クラス交渉委員が人事院勤務条件局長との交渉を実施し、18日に報告・公表された「地域給与研究会基本報告」の取扱いについて「交渉・協議の場」を設置するよう申し入れるとともに、間近に迫った本年の人事院勧告に向けた作業の進捗状況を質しながら、「生活防衛ができる勧告」とするよう強く要求した。
 交渉には山本事務局長のほか構成組合の書記長クラス交渉委員が参加し、人事院は山野勤務条件局長のほか鈴木職員団体審議官らが対応した。本日の交渉は、11日の幹事クラスの職員団体審議官交渉に続くもので、本年人勧をめぐる初めての局長交渉となった。

<地域給与研究会報告に対する申入れについて>
 冒頭、山本事務局長から、18日に報告・公表された「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会・基本報告」について、申入書(資料参照)を手交し、「研究会報告は報告として、連絡会との間で交渉・協議の場を設置し、合意に基づいて作業を行うこと」や「十分な時間がないことから、本年の勧告では具体的な課題やスケジュールなどを報告しないこと」を申し入れた。
 申入れに対し局長は、「先般報告をいただいたが、極めて重要な問題であり、公務員一人ひとりに重大な影響を与えるので、十分話し合って進めていきたい。『交渉・協議の場』については、どういう形の議論の仕方がよいかこれから詰めていきたい。職員の理解を十分に得られるよう努めたい。今年の報告で何らかの形で触れざるを得ないが、人事院としての基本的な捉え方を書くことになろう。時間は限られるが、具体的にどう書くかについては、できるだけ話し合っていきたい」との考えを示した。これに対し山本事務局長から「公務員制度改革の中で能力等級制度の導入がめざされており、労働基本権のあり方が問われている。これに対し、研究会報告は基本権を制約することが前提となっており、その関係が問われることになる。それだけに、本年の報告に当たっては、人事院としての態度を示すとか、自らの手足を縛るような形で触れることは止めていただきたい。具体的な課題やスケジュール等は提示すべきではない」と強く求めた。要求に対し、局長は「今回の研究会報告は重要なものであり、皆さんの意見をききながら進めていくことにするが、検討に着手するという基本的姿勢を本年の勧告で報告したいと考えている。具体的な報告内容等については十分話し合っていきたい」として、連絡会との話し合いに基づいて作業を進めることを約束した。

<勧告に向けた重要課題について>
 続いて、連絡会が現段階での先行三課題(調整手当異動保障、住居手当、通勤手当)を含めた人勧に向けた作業の進捗状況を質したのに対し、局長は次の通り見解を示した。

1.官民較差、一時金等について
(1) 勧告に向けての基本姿勢については、民間準拠の原則に従って、官民較差に基づいて対処するという基本方針に変わりはない。
(2) 較差については、民調はまだ集計作業中であるが、各種調査や民調の途中経過を見ると、民間給与の状況は、昨年同様に厳しい。
 較差は、集計中なのでまだわからないが、民調集計の途中経過を見ると、現段階では本年も手当だけでは消化しきれないような、俸給表の引下げが避けられない程度のマイナス較差が出るのではないかと思っている。今の段階での判断であるが、これまでの経験則から見て俸給表を見直さざるを得ないと思う。
 俸給と手当の割合も念頭に置いて、俸給の配分、どの手当についてどういう改定が考えられるか、ご意見があればお伺いしたい。
(3) 特別給については、昨年の夏、冬とも厳しく、昨年勧告よりかなり厳しいと思っている。支給月数の削減は不可避だと考えている。期末・勤勉手当の割り振りについては、従来通りの考え方に基づいて、民間の査定部分の比率との均衡を考慮して措置することとしたい。
2.先行する三課題について
(1) 調整手当異動保障については、皆さんの要望を伺ってきたところであり、さらに慎重に検討している。結論を得るにはもう少し時間がほしい。
(2) 通勤手当の支給方法については、6ヶ月定期相当額を一括支給することとしたいと思っており、大きな支障はなさそうなので、その方向でさらに具体案について検討している。
(3) 自宅に係る住居手当については、創設以来改定しておらず、原則廃止の方向だが、新築・購入の場合についてどうするのか、現在検討している。
3.その他の課題
(1) 寒冷地手当については、96年に見直しを行っているが、各方面から問題を指摘されており、人事院としても問題意識を持って今年の民調では北海道等一部について調査している。今後は、その他の地域を含めて全国的な調査を行った上で検討したいと考えている。そういったことについて報告で触れたい。全国的な調査やその後どうするかについては、寒対協、公務員連絡会とも相談しながら進めたい。
(2) 大学、病院・療養所の独立行政法人化に伴い、対象者がいなくなったり、極めて少なくなったりする教育職や医療職関係の俸給表・手当のあり方をどうするか、来年4月からの話なので、夏の勧告でいうか、途中がいいのかを含め検討している。
(3) 年間給与の均衡の方法については、皆さんが強い関心を持っていることは理解している。難しい問題だが、附帯決議もあり、重く受け止めて検討している。昨年は精緻にやったので、他にどういう方法が考えられるかは極めて難しい。皆さんからも知恵を出してもらって一緒に考えたい。
(4) 公務におけるワークシェアリングや短時間公務員等については、皆さんから研究会を設置すべきとの強い要望があることは承知している。今後どういう形で進めていくのか、問題意識は持っているので、皆さんの意見は十分踏まえながら検討していきたい。

 これに対し連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 較差は「昨年同様に厳しいので俸給表も切り下げざるを得ない」とのことだが、毎勤統計や仲裁裁定の数字から見て、われわれは下げ止まったと認識している。人事院が「昨年同様に厳しい」と言っているのは、どういう根拠に基づいたものか。また、較差の幅を早急に示して、生活できる勧告を行うよう最後まで努力していただきたい。
(2) 具体的配分については、公務員連絡会としての「考え方」を別途提示するので、労働条件専門委員会と十分な交渉・協議を行っていただきたい。
(3) 一時金が5年連続で削減されるというのは耐えられないものがある。ギリギリまで努力していただきたい。期末・勤勉手当の割合については、昨年決着しており、これ以上勤勉手当の割合を増やすことはルールの変更であり、十分な交渉・協議が必要だ。
(4) 異動保障はもう少し時間がかかるということだが、できる限り早く示してほしい。
(5) 通勤手当は、基本的には実費補償であり、不利益が生じないようにしてほしい。標準報酬との関係も整理していただきたい。また、見直しにより出てくる原資の一部については、@全額支給限度額の引上げ、A新幹線等通勤手当の引上げ、B交通用具使用者の長距離区分の見直しと支給額の引上げ、などを改善することが見直しの条件である。
(6) 自宅に係る住居手当については、地方公務員の問題もあることから、「新築・購入については維持すべき」という歯止め要求を出しており、要求を受け止めた対応を求めておく。
(7) ワークシェアリング等について、今日段階に至っても研究会の設置が明言されないのは残念である。本年の勧告では、制度化へ向けた考え方を提示していただきたい。ぜひ研究会を設置してほしい。
(8) 独法化に伴う教育職等の取扱いについて、「途中で勧告」というのはどういう意味か。また、具体的対応に当たっては関係者と十分話し合っていただきたい。
(9) 寒冷地手当について、今年の調査結果もまとまらないうちに、全国調査を行うことを報告するというのは納得できない。手順を踏んで進めるべきだ。また、寒対協などの関係組織と十分協議してもらいたい。
(10) 勧告のスケジュールはどうか。われわれとしては、十分な交渉・協議を保障するよう求めておきたい。
 これらに対し局長は、@較差については結果が出ないとはっきりしたことは申し上げられないが、俸給表を切り下げざるを得ない状況という意味で「昨年同様に厳しい」と申し上げた、A通勤手当見直しと標準報酬の関係については関係省庁と相談している、B教育職等の話は、来年4月の話なので、3月中に勧告や意見を言うということも考えられるということである、C寒冷地手当については、本年の民調で一部の調査を行ってその途中の状況を見ると、このまままでいいという結果になっていないので、改めて全国的な調査を行った上でどうするか検討する必要があるということだ。調査内容やその後の対応は話し合って進めていきたい、D勧告日はまだ決まっていないが、実務作業としては去年(8月8日)並のスケジュールで進めている、との考え方を示した。
 最後に、公務員連絡会側は、仮にマイナス較差となった場合の減額調整方法について、@昨年は実質的に不利益遡及であり、本年は昨年と違う方法を取ってもらわないといけない。「関係者の納得を得る」という附帯決議や人事院総裁の答弁があるし、今国会では総務省の若松副大臣もそういう趣旨で答弁している。本年の仲裁裁定もある。人事院が代償機能を発揮できるかどうかはこの一点にかかっており、手続きと結果が去年とは違うということでなければならない、A「関係者の納得を得る」という国会決議は、去年の方式は良くないという趣旨であり重いものだ。それを踏まえた措置を行うべきだ、B去年から年間給与で調整するということにしたのだから、較差の程度によっては俸給表はいじらず、一時金で調整することを考えてもよいのではないか、と口々に追及した。
 追及に対し局長は、「附帯決議等もあり、われわれも悩んでいるが、人事院は第三者機関であるので、当事者の納得だけでなく、対外的にきちんと説明できるかどうかだ。それがないと大変厳しい」と、固い姿勢に終始し、具体的な見解は示さなかった。
 このため、連絡会側は「29日に予定している二度目の局長との交渉では、官民較差、一時金、先行3課題、減額調整方法などについて、われわれの要求を踏まえたより具体的な回答をお願いしたい」と強く要望し、一回目の勤務条件局長交渉を終えた。


−資料−

2003年7月22日


人事院総裁 中 島 忠 能 殿

公務員労働組合連絡会
代表委 北岡勝征
代表委員 丸山建蔵


地域給与及び給与制度見直しに関わる申入れ


 常日頃から、公務員労働者の処遇改善に向けてご努力いただいていることに敬意を表します。
 さて、本日、「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」の「基本報告」がとりまとめられ、事務総長に提出されたと拝聞しています。報告書では、全国一本の俸給表は維持されているものの、俸給表水準の引き下げとその原資の再配分を含む地域関連手当の全面的な見直しや昇給制度を含む給与構造全般の見直しなど、現行給与制度・構造・体系・水準の全面的な見直しにつながる重大な提言が行われています。
 今回の提言の内容が、われわれ公務員労働者の生活や勤務条件のあり方に直接関わる重要な問題であることはいうまでもありません。にもかかわらず、今回の研究会にはわれわれの代表が参加しておらず、審議の過程でも十分な意見聴取や意見反映も行われておりません。
 したがって、貴職が今後、地域給与や給与制度のあり方の施策の検討を行うに当たっては、この「基本報告」を参考資料の一つとして以上に取り扱うべきではなく、公務員労働者にとって重要な勤務条件事項であることを認識し、一義的にわれわれとの十分な交渉・協議と合意を重視した作業を進めることを強く要請します。また、内閣官房・行革推進事務局が能力等級制度の検討を進めている情勢のもとで、こうした重要な問題について、本年、拙速な報告・勧告を行うことについては極めて問題であると考えます。
 以上のことから、下記事項を申し入れますので、その実現に向けて最大限努力されるよう強く要請します。



1.地域給与や給与制度のあり方が重要な勤務条件事項であることを認識し、その見直しに向けた検討に当たっては、われわれとの「交渉・協議の場」を設置し、十分な交渉・協議と合意に基づいて作業を進めること。

2.本年、拙速な報告・勧告を行わないこと。

以上