公務員連絡会は、29日午後、日比谷大音楽堂での中央集会を皮切りに、デモ行進、人事院交渉や支援行動など、2003年人勧期要求の実現に向けた第2次中央行動を実施した。この日の人事院交渉で勤務条件局長は、具体的な数値等は示さなかったが、@官民較差は昨年よりは緩和されるが厳しい情勢、A一時金は過去最大の引下げ月数となることを心配する相当厳しい情勢、B減額調整措置は引き続き検討、などと本年の給与勧告の内容が極めて厳しい局面にあるとの見解を示した。配分や諸手当制度の見直し内容、報告事項等については、前回の交渉よりは具体的な考え方を示し、勧告日は昨年と同じ頃を想定して作業しているとの考え方を示した。
交渉を受けて公務員連絡会は、この日16時30分から企画調整・幹事合同会議を開き、諸手当制度見直しなどについてはほぼ勧告の姿が見えつつあるものの、@官民較差や一時金をめぐる情勢が極めて厳しい局面にあること、A本年の最重要課題である減額調整措置の取扱いが未決着であること、などから、なお、ぎりぎりまで生活防衛できる給与勧告を求めて取り組みを強める必要があることを意志統一、予定通り8月4日に第3次中央行動を実施して人事院交渉を強めることを確認した。
午後1時30分から日比谷大音楽堂で行われた第2次中央集会は、直前まで降っていた雨もあがり、全国から3千人の仲間が結集、松島副代表委員(都市交委員長)を議長に選出して始められた。
冒頭主催者挨拶にたった丸山代表委員は、「公務員制度改革をめぐる通常国会での闘いは、本日、拡大対策本部会議を開いて一区切りを付け、今後の闘いに備える方針を確認した。勧告を巡る情勢は大詰めに入りつつあり、いよいよこの課題に全力を投入して行かねばならないが、官民較差や一時金は極めて厳しい情勢であることが伝えられている。また、われわれが最重視してきた減額調整措置をめぐる取扱いも未決着だ。本日を含め、今後の交渉の中で、われわれが納得いく勧告をめざして取り組みを強めていかなければならない」と訴えた。
続く激励挨拶には連合から久保田副事務局長が駆けつけ、「公務員制度改革では皆さんと連携をとり、終始基本姿勢を堅持して取り組みを進めてきた。闘いはこれからであり、連合は、労働基本権確立と民主的公務員制度の実現に向けて全力を尽くす。人勧については、賃金のマイナスのスパイラルを絶つためにも踏ん張り時だ。連合は雇用と生活を守る闘いの一環として位置づけ、ともにがんばっていきたい」と、公務員制度や人勧問題を連合としても重要課題として位置づけ、先頭で取り組みを進めるとの決意を表明した。
集会はその後、山本事務局長がこれまでの取り組みの経過を報告するとともに、本日の人事院交渉、4日の第3次中央行動・交渉で要求実現を迫り、近々に予定される総裁交渉で最終的に勧告内容を確定していく、との取り組み方針を提起した。
構成組織決意表明では、国公総連・広瀬全開発組織部長、国交職組・古南書記次長、自治労・岡部副委員長、都市交・成毛書記次長が登壇し、最後まで闘う決意を力強く表明した。
その後参加者は、霞ヶ関一周のデモ行進と、人事院前交渉支援行動を実施、「不利益遡及は許さない」「生活防衛できる賃金水準を確保せよ」と、シュプレヒコールを繰り返した。行動を終えた参加者は、日比谷大音楽堂に再結集し、書記長クラスの交渉経過の報告を受けた後、丸山代表委員の音頭で団結がんばろうを三唱し、この日の行動を締めくくった。
午後2時30分から行われた勤務条件局長と書記長クラス交渉委員の交渉経過は次の通り。
<人事院勤務条件局長交渉の経過>
交渉には山本事務局長のほか構成組織の書記長クラス交渉委員が参加、人事院からは山野勤務条件局長らが対応した。
冒頭、山本事務局長が「7月22日に局長交渉を実施したが、その後の作業状況を踏まえ、本日は、勧告の内容を明らかにしていただきたい」と発言、これに対し山野局長は、「今日段階においても、なお調整に係る部分が多いが、今日段階でお答えできるものについて示したい」とし、概要、次の通り回答した。
1.官民較差・一時金について
@較差については、最終的に数字のチェックをしている段階だ。前回(22日)申し上げた通り厳しいが、昨年の△2.03%より、若干緩和されるのではないかと期待している。
A一時金については、昨年よりは相当厳しい。過去最大の月数減である0.3月削減に匹敵する勢いではないかと心配している。なお、期末・勤勉手当の割振りについては、民間の査定部分の動向も見ながら、昨年の皆さんとの議論経緯も踏まえ、検討を進める。
2.諸手当制度見直しなど先行して交渉を進めてきた3課題について
@調整手当の異動保障
支給期間については現行の3年を短縮し、2年とする。保障率については、1年目は10割、2年目は半分を上回るよう努力している。いわゆる「ワンタッチ」問題については、各府省の異動実態を踏まえ、適用要件となる勤務期間は6月程度で検討している。なお、今後、地域関連手当における抜本的な再構築について検討を行う際に、異動保障という仕組みは廃止を含めて見直していく必要があると考えており、今回はそれまでの暫定的な措置である。
A自宅に係わる住居手当については、基本的には廃止の方向であるが、新築・購入に係わる手当は、財形住宅融資の要件となっている事情もあり、それとの関係を見極める必要があるので、今回直ちに整理しない方向で検討中である。なお、この要件については、関係省庁と引き続き調整していきたい。
B通勤手当については、6月定期相当額一括支給の方向で具体的内容を詰めている。この改定との関連で皆さんから要望のある通勤手当の改善についても、何かできないか検討中である。
3.較差の配分について
@俸給表の配分については、皆さんの要望は受け止めておりできるだけ配慮したいが、民間初任給の動向を踏まえ、初任給周辺は配慮する必要があると考えている。
A諸手当の配分についても、皆さんの要望を踏まえ、扶養手当を念頭に検討をしている。
4.年間給与の均衡の方法(減額調整措置)について
皆さんの強い要望は受け止めて、引き続き検討している。
5.その他の課題について
(1) 大学、病院・療養所の法人化に伴う教育職関係の俸給表、手当等について、今年の勧告で言及するか、その後にするか検討しており、十分に話し合っていきたい。
(2) 地域における公務員給与のあり方と、それと不可分の関係にある給与制度見直しについて、「地域給与研究会」報告も踏まえ、人事院としての今後の検討姿勢と、これまでも人事院が報告で明らかにしてきた実績主義等の課題などを踏まえつつ、主要な検討課題について報告で触れたい。
(3) 寒冷地手当については、平成8年(1996年)に水準の見直しを行ったが、なお支給地域や水準について民間と乖離しているとの批判がある。このため、速やかに全国的な調査を行い、それを踏まえて検討していく旨、報告で触れたい。なお、調査にあたっては、全国寒対協や公務員連絡会とも相談しながら進めたい。
(4) 特殊勤務手当について、特殊性の薄れたものなどを精査して、廃止を含めて検討することを報告で言及したい。
(5) 公務員制度改革については、何らかのことを触れることとなろう。
(6) 一時金の官民の比較方法について、現行は民間の支給状況に1年遅れで準拠しているが、これを半年遅れにできないかを検討している。今年の夏の支給状況がどこまで調査できるか試行的に調査したが、その状況を見て、半年遅れで準拠させるという方向が出せるなら報告で触れることとしたい。
(7) 官民比較職種のうち行政(二)表の適用職員が、大学等の独立行政法人化により、来年度には数千人に減少し、正確なラスパイレス比較が困難になる一方、較差に与える影響がほとんどなくなることから、来年より官民比較から除外するかどうか検討中である。これも方向が出せるようなら報告で触れることとしたい。
(8) ワークシェアリングや短時間公務員制度等については、皆さんの要望は十分理解しており、問題意識をもって引き続き検討している。
6.勧告日について
勧告日に関しては、確定的なことはいえないないが、昨年と同じ頃(8月8日)を想定して作業を進めている。
こうした回答に対し公務員連絡会側は、次のように指摘し、更に人事院側の考え方を質した。
(1) 月例給の官民較差が、昨年の2.03%より若干緩和というが、それでは姿が見えない。具体的な数字を明らかにすべきである。また、厚生労働省の毎勤統計では、5月の賃金が昨年比プラスになっているという結果もあり、われわれとしては民間の賃金動向とかけ離れた較差は受け止められない。マイナスはやむを得ないとしても、ぎりぎりまで較差圧縮と生活防衛に向けて努力すべきだ。
(2) 5年連続の、しかも過去最大の月数削減など、われわれとして到底受け入れられない。マイナス勧告や一時金が削減が民間に波及し、マイナスのスパイラルとなることは避けねばならない。削減月数の圧縮に向けて最大限の努力を強くもとめる。
(3) 調整手当の異動保障の見直しについては、そもそも政治マターから始まった話であり、不本意ではあるが、適用要件の6月、支給期間の2年への短縮は止むを得ないものとしても、逓減率が2年目で半分となることは厳しい内容で認められない。われわれが提示している考え方に基づいた具体案となるよう特段の努力をもとめる。
(4) 自宅に係わる住居手当は、財形の要件がなくなったらイコール廃止ということではわれわれとして受け止められない。
(5) 通勤手当の支給方式の見直しによって生ずる原資の扱いについて、公務員連絡会の要求にそって検討してもらいたい。6ヶ月定期代の一括支給とその通勤手当制度改善は同時決着だ。
(6) 配分については、なお、われわれとの協議を続けつつ検討していただきたい。
(7) 年間給与の均衡の方法について、現段階に至ってもなお検討というのでは、納得できない。われわれは重大な決意で昨年と異なった方法を採るようもとめ続けている。この点を重く受け止めて、4日の交渉では考え方を示すべきである。
(8) 教育職等関係の俸給表等の扱いについて検討中ということだが、本年廃止勧告するということであれば、人事院として今後の教育職の水準確保等についてなんらかの言及をしてもらいたい。本年夏勧告しないのであれば、来年3月までには勧告し、その際何らかの言及をしてもらいたい。
(9) 地域給・給与制度の見直しに関しては、この課題は何よりも交渉事項である。われわれとの協議の場を設置して、協議を進めるべきである。
(10) 特殊勤務手当の課題が突然出てきたが、廃止だけでなく、改善すべきものは改善するという、ニュートラルな姿勢をとるべきだ。
(11) 一時金の官民準拠の対象は、1年遅れから変更するのか。
(12) 行政(二)表を官民比較職種からはずすことはわれわれの要求でもあり、当然であるが、これが行(二)職の処遇の切下げにつながらないようすべきである。
(13) ワークシェアリング、とりわけ短時間職員制度や非常勤職員の課題については、人事院自身が昨年報告で触れた課題である。にもかかわらず、なお検討中というのは遺憾だ。「研究会」の設置などについて、強く要望する。
これに対し人事院側は、概要以下の通り回答した。
(1) 最終的な較差がまだ出ておらず、具体的な数字は、きちんとデータを精査してからでないと申し上げられない。今日までの作業状況の中で、私の責任でいえることは、昨年よりは若干緩和するということだ。人事院としては、出た数値に基づいて勧告する以外にない。
(2) 一時金についても、人事院としては、集めたデータに基づき、淡々と作業を進め、勧告する以外ない。較差や特別給などについては、科学的なデータに基づくものであることは人事院の存立にかかわる問題であり、厳正にやらざるを得ない。
(3) 要望は承知しており、ぎりぎりまで調整していく所存である。
(4) これまでの経過を踏まえると、この厳しい中において、引下げ財源の優先順位をつけるとすれば、自宅に係る住居手当から手をつけざるを得ないというのが、人事院の立場だ。その際、当面新築・購入時の手当は残すが、財形の要件が整った場合においても、改めて皆さんと話し合っていくということである。
(5) 通勤手当は現在でも実費支給に近いが、さらに、全額実費支給となると、そもそも比較給与に入れるかどうかという議論になる。また、ご要望の点の改善は受益者が少なく、むしろこういった時期には、全体のマイナス幅を減少させる方向に使うべきではないかという考え方もある。それらも含め、なお検討したい。
(6) 配分については、なお、調整していく。
(7) 官民給与の均衡の方法については、これまでの経過からすると2つの方法があるといえる。一昨年は、特例一時金という方式をとった。これは制度値をそのまま精算したものである。昨年は、職員一人一人について、個別の精算方式をとった。本年について、この2つの方法のいずれをとるのか、または、折衷させた方法を採用するのか、関係者の意見や国会の附帯決議を踏まえて議論しているところであり、結論が出ていない段階だ。
(8) 教育職俸給表等の扱いについては、なお関係者と協議を進め、結論を出すこととしたい。いずれにせよ対象者がいなくなったとき、ほったらかしにはできない。
(9) 地域給与・給与制度見直しについては、どういう場がふさわしいか、さらに検討したい。
(10) 特殊勤務手当を見ると、予算がついているのに支出していないものもある。新しい手当を新設したくても、そういった手当が整理されなくてはできない。限られた財源の中で、整理すべきものは整理し、新設すべきものを新設するという立場だ。
(11) 今回の夏のボーナスの調査で一定の感触を得ている。したがって、準拠する民間のボーナスについては、1年遅れの夏冬型から、半年遅れの冬夏型としたいと考えている。
(12) 比較対象からはずすことが直ちに水準の低下とはならない。部内均衡に配慮していく。
(13) 昨年の報告に記述した課題でもあり、何らかの方向が示せるか、さらに検討したい。
最後に公務員連絡会側が、「勧告が目前に迫っている段階で官民較差や一時金について数値的なものが示されなかったことは遺憾である。8月4日の交渉では、数値的なものが見えるよう、より明確に回答すべきだ」と強く求め、本日の交渉を終えた。
以上