公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、勧告を直前に控えた6日、午後5時15分から人事院中島総裁と交渉を持ち、2003勧告・報告の概要を回答として引き出した。
本日の総裁交渉で人事院側は、@勧告日は8日であることA月例給の1.1%弱マイナスと一時金の0.25月削減で年間給与が過去最大の引き下げとなることB減額調整は官民較差を埋めて年間給与の均衡をとる制度調整方式で行うこと、などを明らかにした。また、報告では、地域給与・給与制度見直し、寒冷地手当の調査の実施について触れるほか、短時間勤務制等についての研究会の設置にも言及する。
公務員連絡会は、この総裁交渉後、企画・幹事合同会議を開いて回答内容を報告。明日(7日)午後、代表者・幹事合同会議を開いて@8日の勧告に臨む態度(声明)A政府への申入れを含む当面の取り組み方針の骨子、などを決定することとしている。
人事院総裁との交渉経過は以下の通り。
<人事院総裁交渉の経過>
人事院中島総裁と委員長クラス交渉委員の最終交渉は、6日午後5時15分から院内で行われた。
交渉の冒頭丸山代表委員は、「6月16日に総裁に対して要求を提出して以降、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」として、総裁の回答を求めた。
これに対して総裁は、以下の通り回答を示した。
<人事院総裁の回答>
1 勧告日
勧告日については、8月8日となる予定である。
2 官民較差
較差については、1.1%弱のマイナスとなる見込みである。
3 特別給
期末・勤勉手当の支給月数は、0.25月分の減少となる見込みである。期末手当の削減で対処する。
4 月例給の改定内容
較差の配分については、公務員連絡会の要求も踏まえ、俸給と手当の配分比率を大きく変えないよう配慮した。
(1)俸給表について
マイナス較差を踏まえ、全俸給表のすべての級について引下げ改定を行うが、改定に当たっては、皆さんの要求にも配慮した。
(2)諸手当について
@扶養手当については、配偶者に係る手当を500円引き下げる。
A住居手当については、自宅に係る手当を新築・購入から5年間に限定する。
B通勤手当について
・交通機関等利用者について、6箇月定期券等の価額による一括支給を基本とすることに変更する。
・交通機関等利用者について、2分の1加算額を廃止し、5万5千円までを全額支給とする。
・自動車等使用者に係る手当の使用距離区分を45キロメートル以上から5キロメートルごとに4段階増設し、各900円ずつ増額させる。
C調整手当の異動保障について
・在勤6月を超えることを適用の要件とし、保障期間を2年、2年目の支給割合を現行の8割とする。
・現に異動保障を受けている者について、改正後の異動者との均衡を図るための経過措置を講ずる。
5 実施時期及び差額の調整
通勤手当及び調整手当の改正については16年4月から、その他の改正については改正法施行日から実施する。
本年4月から改正法施行までの官民較差相当分を解消するため、4月の各人の給与に較差率を乗じて得た額の施行までの月数分及び6月の各人の期末・勤勉手当に較差率を乗じて得た額を、12月の期末手当において調整することとする。
6 給与構造の基本的見直し
職務・職責を基本に、勤務実績等を重視した制度となるよう給与全般の見直しを行いつつ、民間給与の地域差に対応できる仕組みとするなどの見直しが必要。各府省や職員団体の皆さんとよく話し合って早期に具体化できるよう検討を進めていきたい。
7 寒冷地手当の実態把握、特殊勤務手当の見直し
寒冷地手当については、支給地域・支給水準について、民間の支給状況と隔たりがあるとの指摘もあり、勧告後全国的な調査を行い、その結果を踏まえて必要な検討を進める。
特殊勤務手当については、特殊性が薄れているもの等について見直しを行うとともに必要なものについて改善するよう検討を進める。
8 国立大学等の法人化に伴う教育職俸給表等についての検討
国立大学等の法人化に伴う教育職俸給表等のあり方については、関係者と意見交換を行い、早急な改正を行うための検討を進める。
9 官民比較方法、特別給の算定方法
在職者が大きく減少することとなる行政職俸給表(二)については、来年から比較職種の対象外とする方向で検討する。
特別給については、民間の状況をより迅速に反映させるため、来年以降、前年冬と当年夏の民間の支給状況の調査の結果に基づき支給月数の改定を行うこととする。
10 多様な勤務形態の検討
多様な勤務形態の検討のため、有識者による研究会を設置する。
11 公務員制度改革
公務員制度改革については、今後の、関係者、有識者等各界のオープンな議論を要請し、それに資する観点から、現時点での人事院の意見を表明する。
この総裁回答を受けて公務員連絡会側は、次の通り見解を述べた上で「公務員連絡会として本日機関会議を開いて、ただいまの総裁回答を報告し、今後の対応を協議することとしたい」とし、交渉を締めくくった。
(1) 2003年人勧期の要求の中でわれわれは、公務員給与をめぐる厳しい情勢を踏まえつつも、公務員労働者の生活を防衛するため、十分な交渉・協議を行い合意できる給与勧告を求めて、ぎりぎりの段階まで事務レベルの交渉を行ってきた。
ただいまの総裁回答は、月例給の2年連続大幅なマイナスや一時金の大幅な月数削減で過去最大の年間給与の引下げとなり、公務員に準拠する民間賃金にも波及し、われわれの生活にも大きな影響を与える内容であり極めて不満である。しかしながら、われわれの賃金・労働条件が民間準拠の枠組みのもとで決定されるシステムである限り、われわれとしてもこの水準勧告については受け止めざるを得ないものと判断する。
(2) 減額調整措置については、実質的に不利益遡及となる昨年方式ではなく、4月分の官民比較給与をベースに官民較差分を制度調整する方式としたことについては、昨年の国会附帯決議や総裁の国会答弁、われわれとの交渉経過を踏まえたものであり、人事院の努力を多とし、評価したい。配分、諸手当制度見直しについても交渉・協議を積み上げ、一定の結論に至ったことを確認しておきたい。
しかし、調整手当の異動保障の見直し問題の経過に見られるように、本来勤務条件事項であるものが国会での議論の中で見直しが方向付けられることについては、それが労使関係の否定やあやまった勤務条件法定万能主義につながりかねず、われわれとしてもこうした動向については危惧するものである。人事院においても、毅然とした対応を行うよう求めておきたい。
(3) また、地域給与や給与制度見直し、短時間勤務制度などに関わる研究会の設置など、今後具体的な施策の検討が始められる課題については、われわれと十分交渉・協議、合意しながら作業を進めることを強く求めておきたい。さらに、仕切直しとなった公務員制度改革についても、専門的人事行政機関としての立場を引き続き堅持されることを強く要請しておきたい。
以上