公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、13日15時30分から、財務省へ「2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料)を提出し、交渉を行った。人事院と総務省には、すでに8日に要求書を提出済であるが、財務省は日程の関係で本日となったもの。財務省からは主計局給与共済課の北原給与調査官、坂上共済調査官らが対応した。
冒頭、岩本事務局次長が申入書を手交し、@予算編成に当たっての人件費予算、独法の給与体系維持財源の確保、A通勤手当の全額非課税化、B超勤予算の確保と未払い超勤の解消、C福利厚生を改善するための予算確保、D共済制度を公務員制度の一環と位置づけた一元化検討、E基礎年金への国庫負担拡大と3号被保険者扱いの検討、などについて財務省の見解を求めた。
これに対し、財務省側は次の通り見解を示した。
(1) 来年度予算における人件費予算の確保については、今、編成作業を行っているところであるが、給与改定に必要な予算を確保することは当然のことであり、必要な措置が講じられると考えている。独法の予算については給与共済課の所掌ではないが、物件費と人件費が一体となった渡し切り交付金という仕組みになっているので、人件費予算だけ取り出してどうこうということにならないのではないか。いずれにしても、給与改善に必要な措置は当然のこととしてやっていく。
(2) 超勤予算は給与共済課が担当しているのではなく、主計の各係で各府省のヒアリング、事務事業の出入りを踏まえて調整されていくものと認識している。
(3) 福利厚生の問題は、(所掌している)共済組合の福祉事業について、組合員のニーズを勘案して充実を図って参りたい。
(4) 年金一元化については、昨年2月の一元化懇の報告を踏まえ、同年3月に閣議決定が行われ、その中で「国公共済と地公共済は、ともに公務員という職域に適用される年金制度であることから、両制度の財政単位の一元化を図る。このため、速やかに具体的な枠組みについて検討を進め、(平成16年度の)次期財政再計算はこの財政単位の一元化を前提として実施する」とされている。懇談会には組合代表も参加しており、その意見を賜りながら作業を進めてきたところである。公務員という枠組みで一元化を進めるということであり、「公務員制度の一環」として役割を踏まえて行っている。
(5) 今後の公的年金制度のあり方については、厚生労働省が12月ないし1月にもたたき台を示し、関係各方面から幅広く意見を聞くことになると聞いている。共済年金についても、幅広く意見を聞きながら進めたいし、そうした年金制度全体の動向を踏まえながら対応して参りたい。
こうした財務省の見解に対し連絡会側は、@政府・財務省の予算編成方針で「総人件費抑制」などと言われていることが、公務員一人ひとりの給与を減らすことであってはならない。人事院勧告を尊重して給与を決めるという公務員給与の決定制度を維持していくことに変わりはないと理解してよいか、A独法の渡し切り交付金に手を突っ込むということはないものと理解するが、あわせて総額がキチッと確保されるようお願いしたい、B厚生経費は総務省の所管ということになるが、引き続きの改善をお願いしたい、C年金一元化については研究会が動き出しており、連絡会としてもその動向に注目しているが、必要があれば財務省に要請することになるので、われわれの意見を踏まえて対応していただきたい、D国家公務員共済の福祉施設について、厳しい見直しが進められ、大都市の施設の赤字を全国の組合員が負担している実態にある。福祉施設の本来あるべき姿を追求していただきたい、などと重ねて要望した。
要望に対し財務省側は、@給与のそれぞれの項目が決まれば、必要な予算を措置するというのが財務省の立場である。(総人件費抑制だからといって)給与共済課としてそれぞれの単価をどうこうするということはない、A厚生経費については、各府省から統一要求が出され主計で査定しているが、ここ数年は毎年単価があがっている。今後も、適時適切の改善されるものと考えているし、要望があったことを担当者に伝えたい、B国公共済連合会が共同事業として行っている事業については、昨年の「特殊法人等整理合理化計画」の中で整理すべきものは整理すべきとされたことから、現在、連合会の中で病院や福利施設の整理合理化計画等について検討作業を進めている。制度省庁としても話を聞きながらきちんとした対応ができるよう努めたい、という考えを示した。
その他、東北新幹線の八戸開業に伴う旅費の扱いが議論され、旅費の担当者から追って回答を得ることになった。
最後に、連絡会側が「要求内容が実現できるよう特段の努力をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を終えた。
<資料>
2002年11月13日
財務大臣
塩川正十郎 殿
公務員労働組合連絡会
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏
2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
日本経済は、国民にだけ痛みを強要する小泉構造改革路線の失敗が明らかとなり、金融不安の再燃とあいまってデフレがさらに深刻化し、勤労者の間には雇用不安と生活不安が一層高まっています。
また、公務員を取り巻く厳しい情勢が継続する中で、不利益不遡及の原則に抵触する給与法改正法案が国会に提出され、戦後初の月例給与の引き下げが行われようとしており、公務員労働者の実質生活への影響も深刻なものがあります。
こうした情勢のもとで、共済や福利厚生を含め政府全体として総合的な観点で公務員の処遇を確保することがますます重要な課題となっています。
2003年度の予算編成に関わる事項を含め、貴職が所管する賃金・労働条件に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。
記
一、給与に関わる事項
(1)2003年度予算編成に当たっては、歳出削減の観点からではなく公務員の処遇改善の観点にたって人件費予算等を確保すること。また、独立行政法人の給与体系維持財源を確保すること。
(2)通勤手当については全額非課税とすること。
(3)超過勤務等に対する予算を増額するとともに、実態に見合った支給を行うこと。
(4)級区分による旅費支給基準を抜本的に改めるとともに、実態にあった旅費(宿泊費、日当の増額など)が支給できるよう給付額を引き上げること。また、赴任旅費を含む移転料については、直ちに改善すること。
二、福利厚生施策等に関わる事項
(1)公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2)200年に改定された「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図ることとし、@健康・安全管理対策の充実A男女共同参画の促進のための育児・介護支援策の充実B持ち家支援策の拡充C公務員宿舎制度の改善D余暇活動への支援の強化、などを重点に具体化を図ること。
(3)2003年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。
三、年金・医療制度に関わる事項
(1)年金制度の一元化については、公務員制度の一環としての共済年金制度の基本的役割、機能を維持すること。また、国共済と地共済の財政単位一元化の成案を得るに当たっては、関係労働組合と十分協議すること。
(2)公的年金制度への信頼を回復するために、当面、基礎年金の税方式への転換を射程におき国庫負担割合を2分の1に引き上げること。また、第3号被保険者の扱いなど女性と年金の課題については、厚生労働省の「女性と年金検討会」の検討を踏まえ、共済年金制度としても早急に改革を具体化すること。
(3)医療制度等については、今回の制度改正の影響を踏まえつつ、医療提供体制の見直し薬価差益の解消・診療報酬制度の改革、医療情報の公開の制度化等をはじめ高齢社会に対応した制度確立に向け抜本的な改革をすすめること。
以上