公務員連絡会丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は10日、12時すぎから麻生総務大臣と交渉を持ち、2004年度春季要求書(資料)を提出した。
要求書提出に当たって丸山議長は、次の通り趣旨を述べた。
(1)日本経済は、景気指標に明るさが見え始めているといわれているものの、勤労者の雇用と生活の危機は一向に解消されていない。こうした中で民間の仲間は、2004春闘において雇用確保や賃金水準の確保に向けた懸命の取り組みを開始している。
公務においては、5年連続となる年収マイナスの給与改定が行われ続けており、その生活への打撃は徐々に深刻なものとなっており、人事院勧告制度に対する公務員労働者の信頼は大きく揺らぎつつある。また、公務員給与に対する「バッシング」と引き下げ圧力がかつてなく強まっており、公務員の賃金・労働条件をめぐる情勢には極めて厳しいものがある。
(2)われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、社会経済情勢の変化に対応した形で公務員の処遇を確保するのが使用者としての政府の最も重要な使命であると考える。そうした観点から、行き過ぎた公務員給与バッシングなどには毅然として対応するとともに、本年の給与改定においては、交渉・協議と合意に基づき、公務員給与水準を維持・改善することを強く求める。
(3)重要段階にさしかかっている公務員制度改革についても、われわれとの誠意ある交渉・協議、合意に基づいて透明で民主的な公務員制度改革の成案を得るよう、政府全体として取り組むよう要請する。
続いて地公部会の要求事項について人見副議長が次の通り趣旨を述べた。
(1)地方公務員の賃金は、連年のマイナス改定に加え、地方財政が苦しいとして、都道府県だけでなく市町村でも基本賃金や手当に切り込んでくる自治体が増えているが、所要の財源を確保し、人事院勧告や人事委員会の勧告に基づく賃金水準が守られることが必要だ。自治体が人事委員会勧告と労使の自主交渉を尊重した対応ができるよう、大臣として必要な努力をお願いしたい。
(2)三位一体改革では、今年度補助金廃止に見合う財源が地方に移譲されず、交付税が大幅に削減されるなど自治体財政は従来にもまして厳しい。一方で、福祉や環境など自治体が行わなければならないサービスは増えている状況だ。自治体がその役割を果たすことができるよう、税財源の地方移転をはかるなど地方財政確立に向けたいっそうの努力をお願いしたいし、当面の地方財政対策についても自治体が不安を抱くことのないよう万全を期されたい。また、規制改革やアウトソーシングがいわれているが、行政サービスの水準を確保する上から、慎重な対応をお願いしたい。
(3)公務員制度改革に関する閣議決定は、地方公務員制度の改革も国と同時に行うこととしているが、労働基本権を保障した民主的制度とすることが大切だ。地方公務員制度について立派な制度ができるよう、しっかりした議論を行うことが必要だ。
(4)自治体における多様な任用・勤務形態の導入や第3者機関の充実等について、今通常国会に法案提出の予定だと承知しているが、私どもと十分協議しながら進めて頂きたい。
最後に丸山議長は、「本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月18日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい」と、今後交渉を積み重ね、3月18日には回答するよう求めた。
これに対して大臣は、「今後よく検討させてもらい、きちんと対応し、回答させてもらいたい」と、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくことに同意した。
公務員連絡会は、本日の総務大臣への要求提出に続いて、12日には人事院総裁に要求書を提出し、3月4日には幹事クラス、12日には書記長クラスの交渉を積み上げるなど、春闘の取り組みを本格化させることとしている。
別紙1.総務大臣への2004春季要求書
2004年2月10日
総務大臣
麻 生 太 郎 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏
要 求 書
日本経済は、景気指標に明るさが見え始めているといわれているものの、勤労者の雇用と生活の危機は一向に解消されていません。
こうした中で、5年連続となる年収マイナスの勧告が行われ続けており、人事院勧告制度に対する公務員労働者の信頼は大きく揺らぎつつあります。また、公務員給与に対する「バッシング」と引き下げ圧力がかつてなく強まっており、公務員の賃金・労働条件をめぐる情勢には極めて厳しいものがあります。
われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、社会経済情勢の変化に対応した形で公務員の処遇を確保するのが使用者としての貴職の最も重要な使命であると考えます。そうした観点から、本年の給与改定においては、交渉・協議と合意に基づき、公務員給与水準を維持・改善することを強く求めます。また、重要段階にさしかかっている公務員制度改革についても、われわれとの誠意ある交渉・協議、合意に基づいて成案を得ることがなにより重要だと考えます。
以上のことから、公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2004年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.2004年度の賃金改善について
(1) 2004年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の賃金水準を維持・改善すること。
(2) 国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善すること。
2.退職手当制度の見直しについて
退職手当制度の見直しに当たっては、公務員制度改革との関連性を明確にし、公務公共サービス労働組合協議会(略称=公務労協)と十分交渉・協議を行い、その合意に基づいて作業を進めること。
3.国際労働基準・労働基本権等の確立について
(1) 結社の自由委員会第329・331次報告を直ちに、全面的に受け入れる態度決定を行い、公務員労働者に労働基本権を完全に保障するとともに、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
(3) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職等をさせない措置を行なうこと。
4.ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇、休業等について
(1) 公務のワークシェアリングについて
2002年11月8日に提出した申入書に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現すること。そのための制度的な検討・研究に着手すること。
(2) 短時間公務員制度の発足と臨時・非常勤職員制度の抜本的な改善について
@ 「短時間勤務制度」を最優先課題とし、地方公務員の制度化に向けた検討に遅れないよう、その早期実現に向けた検討を行うこと。
A 臨時・非常勤職員制度の抜本的な整備に向け、直ちに検討に着手すること。
(3) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。
5.在職期間の長期化、公務の高齢対策の推進について
(1) 天下りをなくすため、在職期間の長期化に引き続き積極的に取り組むこと。
(2) 定年から年金支給開始までが2年間となったことをふまえ、高齢再任用の定着と円滑な運用を確立し、雇用と年金の接続をはかること。
再任用者の実態調査や再任用希望調査を行うなど実情把握に努めるとともに、職域の拡大や定員の扱いの改善など必要な施策を強化すること。
6.男女共同参画社会の実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図りつつ、政府全体として取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」策定に当たって、労使協議を促進するよう指導すること。
(3) 民間の育児・介護休業法の改正に遅れることなく、公務の育児休業、介護休暇制度を改善すること。
7.その他の事項
公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。
別紙2.地公部会の2004春季要求書
2004年2月10日
総務大臣
麻 生 太 郎 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 人見一夫
日本教職員組合
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 藤掛 登
要 求 書
貴職の地方自治確立、地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
地方公務員の給与について、連年にわたって一時金の削減、給料表のマイナス改定が行われ、地方公務員の生活を直撃しています。また、人事院勧告や人事委員会勧告を無視してさらに給与カットを行う自治体が後を絶たないなど、異常な事態も続いています。
2004年度政府予算案においては、地方財政計画の規模縮小、地方交付税総額の大幅な削減などにより自治体財政はきわめて困難な状況に直面しており、地方財政の確立と地方分権の推進が強く求められます。
貴職におかれましては、地方公務員の生活を維持・改善することをはじめ、下記事項の実現に尽力されますよう要求します。
記
1.地方公務員の生活の維持・改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
2.自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。
3.地方財政危機を公務員賃金や行政サービスにしわ寄せしないこと。また、地方財政確立のために税財源の地方への移転を図るとともに、必要な交付税総額を確保すること。
4.地方公務員制度の改革にあたっては、労働基本権を保障した民主的地方公務員制度を確立すること。また、制度設計にあたっては公務員連絡会地公部会と協議して進めること。
5.多様な任用・勤務形態の導入にかかわる制度設計にあたっては、公務員連絡会地公部会と協議すること。
6.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と賃金・労働条件の改善に向け法整備をはかること。
7.年間総実労働時間1,800時間のために、所定内労働時間の計画的な短縮および時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずること。時間外労働の縮減について、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を講ずるとともに、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進すること。
8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏期休暇日数の拡大をはかること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずること。
9.高齢者再任用制度については、雇用と年金の接続の考え方から希望者全員を雇用するとともに、賃金・労働条件、職種・職務のあり方、定数管理等については労使合意を基本に円滑な運用と定着に必要な情報提供等を行うこと。
10.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進すること。とくに、女性の雇用安定・権利確立のための施策を進めるとともに、各自治体で労働組合との協議に基づき、「女性職員の採用・登用拡大のための基本計画」を策定し、実効が上がるよう必要な情報提供を行うこと。また、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定に向けて、自治体に情報提供を行うなど積極的に対応すること。
11.刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を行うこと。
12.公的年金制度の抜本改革に向けて努力するとともに、共済年金制度については、公務員制度の一環としての基本的役割・機能を維持すること。また、制度改正に当たっては公務員連絡会地公部会との合意を尊重して進めること。
13.ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度を確立すること。
14.自治体での行政改革については自治体の自主性を尊重するとともに、行政サービスの水準や住民生活への社会的規制を確保するため、業務の安易な民間委託を行わないこと。
15.地方独立行政法人の設置および運用にあたっては、自治体の自主性に委ねること。
16.自治体における雇用創出・多様就業型のワークシェアリングの実現に向け、検討を行うこと。
17.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策を充実するよう取り組むこと。
以上