丸山議長はじめ公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、12日午前11時から人事院中島総裁と交渉を持ち、2004年の春季要求書(別紙)を提出した。
提出に当たって丸山議長は、次の通り見解を述べ、今後交渉・協議を積み上げ3月18日には誠意ある回答を示すよう求めた。
(1)日本経済は、景気指標に明るさが見え始めているといわれているものの、勤労者の雇用と生活の危機は一向に解消されていない。こうした中で民間の仲間は、2004春闘において雇用確保や賃金水準の確保に向けた懸命の取り組みを開始している。
(2)公務においては、5年連続となる年収マイナスの給与勧告が行われ続けており、その生活への打撃は徐々に深刻なものとなっており、人事院勧告制度に対する公務員労働者の信頼は大きく揺らぎつつある。また、公務員給与に対する「バッシング」がかつてなく強まっており、公務員の賃金・労働条件をめぐる情勢には極めて厳しい。
われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、社会経済情勢の変化に対応した形で公務員の処遇を確保するのが人事院としての最も重要な使命であると考える。
そうした観点から、公務員給与バッシングなどには毅然として対応していただくとともに、歴史的・制度的に確立してきた官民給与の比較方法を堅持することを強く求める。そして、本年の勧告においては、交渉・協議と合意に基づき、公務員給与水準を維持・改善することを要求する。
さらに、寒冷地手当をはじめとした諸手当の見直しや給与制度全般の見直し作業が進められているが、これらについても拙速に勧告や報告を行うのではなく、われわれとの交渉・協議を尽くし、合意の上で成案を得ることが重要であると考える。重要段階にさしかかっている公務員制度改革についても、労働基本権の確立を始め、透明で民主的な公務員制度改革を求めるわれわれの基本姿勢を理解の上、人事院として必要な取り組みを進めるよう要請する。
(3)本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月18日には、総裁から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
続いて山本事務局長が、@企業規模など官民比較方法の堅持A給与水準の維持・改善勧告B寒冷地手当での交渉・協議と合意C給与制度見直しでの十分な交渉・協議D短時間勤務制度の早期実現、など要求事項の重点を述べた。
これに対して総裁は、「なかなか厳しい情勢が続いている。いずれにしろみなさんの意見をよく聞いていきたい」とし、今後交渉を積み上げていくことに同意した。
公務員連絡会は、10日に総務大臣、12日に人事院総裁に要求書を提出し、政府、人事院との2004春季生活闘争課題を巡る本格的な交渉体制にはいる。そして、3月12日には中央行動を配置し、18日の回答指定日に向けて追い上げることとしている。
別紙.人事院への2004春季要求書
2004年2月12日
人事院総裁
中 島 忠 能 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸山建藏
要 求 書
日本経済は、景気指標に明るさが見え始めているといわれているものの、勤労者の雇用と生活の危機は一向に解消されていません。
こうした中で、5年連続となる年収マイナスの勧告が行われ続けており、人事院勧告制度に対する公務員労働者の信頼は大きく揺らぎつつあります。また、公務員給与に対する「バッシング」と引き下げ圧力がかつてなく強まっており、公務員の賃金・労働条件をめぐる情勢には極めて厳しいものがあります。
われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、社会経済情勢の変化に対応した形で公務員の処遇を確保・改善するのが貴職の最も重要な使命であると考えます。そうした観点から、本年の勧告においては、歴史的に確立した現行の官民比較方法を堅持しつつ、公務員給与水準を維持・改善することを強く求めます。また、諸手当や給与制度見直しなどの諸課題が山積しており、これらについても十分な交渉・協議、合意にもとづいた検討を進めることを強く求めます。
以上のことから、公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2004年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.2004年度賃金要求について
(1) 公務員給与の比較手法並びに水準決定基準等の堅持
歴史的・制度的に定着している公務員給与の比較手法並びに水準決定基準−「企業規模100人以上・事業所規模50人以上」を堅持すること。
(2) 2004年度の賃金改善について
@ 2004年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の賃金水準を維持・改善すること。また、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
A 寒冷地手当の見直しに当たっては、寒冷地手当制度を維持し、十分な交渉・協議を行い、合意すること。
B 国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善すること。
(3) 地域給与・給与制度の見直し等について
@ 公務員の地域給与や給与制度見直しの検討に当たっては、行革推進事務局の新人事制度の検討との関わりを明確にし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意しながら作業を進めること。
A 本年については、拙速な報告・勧告を行わないこと。
2.ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇、休業等について
(1) 公務のワークシェアリングについて
2002年11月8日に提出した申入書に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現すること。そのための制度的な検討・研究に着手すること。
(2) 短時間勤務制度の早期実現について
@ 「多様な勤務形態に関する研究会」の審議を促進し、公務員連絡会の意見を十分聞く機会を設け、その意見を反映すること。また、報告等のとりまとめにあたっては、公務員連絡会と十分協議すること。
A 「短時間勤務制度」を最優先課題とし、地方公務員の制度化に向けた検討に遅れないよう、その早期実現に向けた検討を行うこと。
(3) 労働時間の短縮並びに休暇、休業制度の拡充について
@ 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、年間総労働時間1800時間体制を確立すること。そのため、次の事項を実施すること。
ア、所定内労働時間の短縮にむけ民間実態調査を実施すること。
イ、徹底した勤務時間管理体制を確立し、実効ある新たな超過勤務規制策をとりまとめること。
ウ、夏季等の長期連続休暇と一体で年休取得を促進すること。
A ゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度を拡充するとともに、少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。
3.男女平等の公務職場の実現について
(1) 公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、@職業生活と家庭生活の両立支援策のさらなる強化A女性公務員の採用、登用の拡大B女性の労働権確立に向けた休暇制度の拡充や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 職業生活と家庭生活の両立に向け、取得率の数値目標等を明確にした育児休業の男性取得の促進策をとりまとめること。
(3) 次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」策定に当たって、労使協議を促進するよう指導すること。
(4) 民間の育児・介護休業法の改正に遅れることなく、公務の育児休業、介護休暇制度を改善すること。
4.その他の労働諸条件の改善に関わる事項について
(1) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
(2) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職等をさせない措置を行なえるよう、人事院規則を制定すること。
以上