公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、2004春季生活闘争の回答指定日に設定した18日、11時から人事院総裁、16時15分過ぎから総務大臣と春の段階の最終交渉を行い、それぞれ回答を引き出した。
公務員連絡会はこれらの交渉を踏まえ、企画調整会議・幹事会合同会議で回答内容(資料1.2)と「声明」を確認した(資料3)。
また、明日(19日)を第3次全国統一行動日として設定、各構成組織ごとに本日の政府・人事院回答内容を報告し、今後の人勧期の闘いに向けた意志を固めるための時間外職場集会を中心とした行動を実施することとした。
本日の人事院総裁、総務大臣交渉の経過と回答内容、公務員連絡会の「声明」は次のとおり。
<人事院総裁交渉の経過>
中島人事院総裁との交渉は、午前11時から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して人事院内で行われた。
冒頭、丸山議長は、「2月12日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、総裁から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する総裁回答を求めた。
これに対して総裁は資料1の通り回答を示した。
総裁回答を踏まえ丸山議長は、次の通り見解を述べた。
(1) 本年の春闘は、17日から本日にかけて民間大手において回答が示され、22〜24日から中小・地場の闘いに移行することとなっている。大手先行組合では厳しい経営側の姿勢や雇用情勢の中で、賃金体系維持と一時金増額の回答を引き出してきている。しかし、産業・企業毎に業績に大きなばらつきが見られることや中小企業の状況からして、今後の春闘全体の情勢が厳しいことには変わりないものと考えている。加えて、公務においては公務員給与バッシングの嵐が吹き荒れており、本年の人事院勧告期を巡る情勢もこれまで以上に厳しいものとなることが十分予想される。
(2) ただいまの総裁回答で、現行の官民比較基準を変えないとの基本姿勢やバッシングに対して毅然として対応していくとの見解が示されたことについては確認したい。しかし、5年連続の年収マイナス、2年連続の月例給マイナスで、公務員労働者の生活にも徐々に大きな影響が出始めており、本年の給与勧告に対する期待には大きなものがある。是非とも、本年の勧告において実際に年収マイナスがストップとなるよう努力いただきたい。寒冷地手当の見直しについては、別途議論させていただいているが、寒冷積雪地の生活実態と手当制度維持に最大限ご努力いただきたい。短時間勤務制度についても前向きの回答をいただいたが、これについては地方公務員とのタイムラグが生じないよう、本年の勧告を念頭に置き、検討作業を進めてもらいたい。
(3) いずれにしても、公務員給与バッシングのなかで、労使関係の枠組みを超えて賃金・労働条件の見直しが方向付けられていくことについて、わたしどもは強い危惧の念を持っている。ここ数年のマイナス勧告も含め、人事院勧告制度に対する信頼性が損なわれつつあることを十分認識し、労働基本権制約の代償機能を十分果たされるよう強く要望しておきたい。
これに対し総裁は「状況は引き続き厳しい。いずれにしろ、公務員連絡会の意見を聞きつつ、世論の動向を踏まえながら勧告に臨んでいきたい」と応じた。
これらを踏まえ公務員連絡会側は、「本日の回答は、総裁の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」とし、人事院総裁交渉を締めくくった。
<総務大臣交渉の経過>
麻生総務大臣との交渉は、午後4時15分から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して総務省内で行われた。
冒頭、丸山議長は、「2月10日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、大臣から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する大臣回答を求めた。
これに対して大臣は「要求書については、非常に厳しい民間の経済状況や国の財政事情など公務員の給与等を取り巻く厳しい環境をも踏まえ、種々検討を行ってきた」とし、資料2の通り回答を示した。
大臣回答を踏まえ丸山議長は、本年の民間春闘や公務員を巡る情勢認識を示しながら、「ただいまの大臣の回答で、人事院勧告制度尊重の基本姿勢にたって適切な公務員給与を確保していくとの明確な考え方が示されたことについては確認したい。しかし、5年連続の年収マイナス、2年連続の月例給マイナスで、公務員労働者の生活にも徐々に大きな影響が出始めており、本年の給与改定に対する期待には大きなものがある。是非とも、本年は年収マイナスがストップとなるよう、使用者の立場から努力いただきたい」と、一層の総務大臣の努力を要請した。
続いて、地公部会に関わる回答について松島地公部会議長は「いま地方議会でも予算の審議中であるが、新年度予算編成で財源がないとして、多くの自治体で行政サービスの縮小や職員の給与カットが行われている状況である。改めて、適切な住民サービスの維持のため、交付税総額確保に尽力頂きたいし、現場の第一線で働く職員の士気を低下させないためにも給与財源の確保についての努力をお願いしたい」と、給与改定財源の確保に努力するよう要請した。
これに対して大臣は、「今の見解は要望として承らしてもらう。景気動向も上向いてきたが、まだ地方や雇用に波及するまでに入っていない。雇用のためにも今の景気動向を大切にしていかなければならない」と、要望として受け止めるとの見解を示した。
最後に公務員連絡会側は、「内需中心の持続的な景気回復とするためにも、社会的に影響力の大きい公務員給与の維持・改善が重要だ。本日の回答は、総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」とし、総務大臣交渉を締めくくった。
資料1.人事院総裁の2004春闘回答
人事院総裁回答
2004年3月18日
1 官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
人事院としては、現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない。
また、給与改定に当たって、公務員連絡会が交渉・協議、納得を求めていることについては理解する。
なお、公務員給与について、状況の変化等により是正する必要があるところについては適時に見直していく必要があるが、誤解に基づく議論については、毅然として対応し、国民の理解が正しく得られるよう一層努力する。
2 公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、公務員連絡会の要求及び公務員の生活を考慮して、人事院の重要な使命として、適切に対処する。
3 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて公務員連絡会と十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
寒冷地手当の見直しに当たっては、公務員連絡会の意見を十分聞きつつ、検討を進める。
退職時の特別昇給制度の見直しについては、公務員連絡会の意見を聞きつつ早急に結論を得る。
公務員の給与制度見直し及び地域における給与のあり方については、公務員連絡会の意見を十分聞きつつ、検討を進める。
4 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
5 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び公務員連絡会の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減に向けて努力する。
民間における育児・介護休業制度改正の動向を踏まえ、公務においても、速やかに必要な改正に向けた検討を行う。
また、育児休業の男性取得の促進に向け、引き続き努力する。
6 公務のワークシェアリングについて公務員連絡会が強い関心を持っていることを十分認識し、引き続き研究・検討を進める。
多様な勤務形態の検討に当たっては、研究会の検討状況を踏まえ、地方公務員の制度化の状況、公務員連絡会が短時間勤務制度の早期実現を求めていることなどに十分留意し、具体的な検討を進める。
7 自己啓発等のための休業制度については、引き続き検討を進める。
8 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定に当たっては、国家公務員の勤務条件を所管する立場から、適切に対応する。
資料2.総務大臣の2004春闘回答
総務大臣回答
2004年3月18日
1 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成16年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
なお、一昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
また、国家公務員の給与については、誤解に基づく議論等に対して毅然として対応し、正確な情報提供に努める等により、国民の理解が正しく得られるよう、一層努力する。
2 政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
3 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
4 公務へのワークシェアリングの導入や短時間公務員制度の発足等については、民間における動向や地方公務員の制度化の状況も踏まえながら、国家公務員の多様な勤務形態の導入を図ること等についてのニーズを見極めた上で、常勤職員の勤務時間の在り方などについて、人事院とも連携・協力しながら検討を進めてまいりたい。
5 公務員の高齢者雇用については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、再任用の上限年齢が62歳になることを踏まえ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
今後とも、公務員の高齢者雇用の推進については、民間の動向の把握を図るとともに、職員団体の意見を聞きつつ取り組んでまいりたい。
6 男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定を促進するとともに、仕事と子育ての両立のための積極的な支援策が講じられるよう適切に対応する。
7 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。
地公部会に対する総務大臣回答
2004年3月18日
1 地方公務員の給与については、労使間の交渉もあるが、条例で定められ、その内容は基本的には人事院勧告に基づく国家公務員の給与改定に準じて、国及び他の地方公共団体との均衡が失われないようにすべきものと考えており、今後とも、このような考え方に基づき、必要な助言等を行ってまいりたい。
2 現在、三位一体の改革については、全力で取り組んでいるところであり、平成16年度において所得譲与税を創設するとともに、平成18年度までに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施することを決定したところである。
今後とも、地方分権の理念を踏まえ、
・地方に信頼され、地方が元気になる改革
・地方の自由度を拡大する改革
・自主財源(地方税等)を拡充する改革
を目指し、地方団体の声を聞きながら、国庫補助負担金の改革、税源移譲、地方交付税の改革を同時並行で一体的に進め、地方税財政基盤の充実を図ってまいりたい。
3 地方公務員制度改革については、国家公務員法の改正等にあたる内閣官房行政改革推進事務局と連携をとりつつ、関係者の意見も承りながら、具体的な検討を進めてまいりたい。
4 地方公務員の多様な勤務形態等の導入については、学識経験者や労働団体代表など有識者等で構成される研究会の報告書を踏まえ、今般、法案を国会に提出しているところである。
資料3.公務員連絡会の声明
声 明
(1) 本日、公務員連絡会は、総務大臣、人事院総裁と交渉を行い、2004年の春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 2004春季生活闘争は、景気指標の一部に明るさが見え始めているといわれているものの、雇用と生活の危機が一向に解消されない経済情勢のなかで、先行組合が賃金カーブ維持を中心とした懸命の取り組みを進めている最中にある。
公務労協結成後初めての取り組みとなったわれわれの2004春季生活闘争は、公務員給与に対するかつてないバッシングや水準引下げキャンペーンが吹き荒れる情勢のもとで、厳しい闘いを余儀なくされてきた。こうした情勢を踏まえわれわれは、賃金・労働条件は労使関係の枠組みの中で決定されることが原則であることを明確にしつつ、現行の官民給与比較基準の堅持と給与水準の維持・改善、十分な交渉・協議、合意に基づく給与勧告、寒冷積雪地の生活防衛と手当制度維持、短時間勤務制度の早期実現などを重点課題に設定し、交渉・協議を積み重ねてきた。
(3) 本日の回答では、人事院から、本年の給与勧告に対する基本姿勢を確認するとともに、「現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保」されており、それを変更することは考えていないとの見解や、公務員給与バッシングに毅然として対応していく、との見解を引き出した。政府からも、現行の公務員給与水準についての同様の見解を引き出し、本年の給与改定に対する基本姿勢を確認した。
これらの回答は、われわれの賃金水準の維持・改善を求める切実な要求に直接応えたものではないが、今後の人勧期や確定期の闘いへの足掛かりとして確認できるもので、人事院勧告制度の下での春の段階の回答として受け止めざるを得ない。
短時間勤務制度については、政府、人事院から地方公務員の制度化の状況を踏まえつつ、具体的な検討を進めるとの回答を引き出した。この回答を足掛かりに人事院の「多様な勤務形態に関する研究会」の審議を促進させるとともに、その早期実現に向けて交渉・協議を進めていく必要がある。
寒冷地手当の見直しについては、公務員連絡会と十分交渉・協議していく姿勢を確認したが、別途3月末に行われる人事院との交渉で、寒冷積雪地の生活防衛と制度維持に向けて明確な回答を引き出すよう全力を挙げ、本年の勧告期の闘いに結びつけていかなければならない。
給与制度の見直し・地域給与のあり方についても、十分交渉・協議していく基本姿勢は確認したものの、具体的には公務員制度改革の進捗状況を踏まえながら人勧期において改めて取り組みを進めていく必要がある。
(4) われわれは、これらの回答を踏まえ、直ちに人事院勧告期の闘いを開始していかなければならない。
本年の人勧期を巡る情勢は、国・地方の構造的な財政危機が深まり、政府の総人件費抑制政策が一段と強められる下で、ここ数年とは質的に異なった厳しさに直面することが想定される。その一方で、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度はますます労働基本権制約の代償措置としての機能と信頼性を失いつつある。こうした状況を踏まえわれわれは、実質的な交渉・協議を通じて決定過程に参加し、合意に基づく勧告となるよう取り組みを強めるとともに、不当な公務員給与バッシングには毅然として対決し、公務員給与に対する社会的合意を得るよう全力を挙げねばならない。
(5) われわれは、明日、19日の第3次全国統一行動日には各構成組織ごとに本日の回答内容を報告し、引き続く人勧期の取り組みへの決意を確認する職場集会等を実施することとする。また、より困難な情勢の下で闘いを進めている中小及び地域の仲間や国営企業部会の仲間と連帯し、年金制度の抜本改革などを求める連合の取り組みに積極的に参加するなど、春季生活闘争中・後半期の闘いを推し進めることとする。
そして、労働基本権問題を棚上げしたまやかし的な公務員制度改革法案の今国会提出の策動や小泉構造改革のもとでの公務・公共部門の切り捨て政策に強く反対し、労働基本権の確立と民主的で透明な公務員制度改革の実現、安心・安定、良質な公共サービスの確立をめざし、連合に結集するすべての仲間とともに組織の総力を挙げて闘い抜いて行かなければならない。
2004年3月18日
公務員労働組合連絡会
以上