地公部会要請に対する全人連会長回答
平成15年4月12日
ただいまの皆様からの要請の趣旨につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
回答としてはこれで尽きるわけですが、本年の民間給与調査を迎える状況認識を一言申し上げておきます。
まず、最近の経済情勢を見ますと、3月15日の月例経済報告では「景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実な回復を続けている。」としながら、「為替レートなどの動向には留意する必要がある。」としてもおります。
雇用情勢については、「完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。」としています。
このような状況の中、民間における賃上げ交渉は、企業業績を特別給の配分に反映させる動きを中心にするほか、パート職員の待遇改善に取り組む例がみられるなど、統一ベア交渉が中心であった従来型の春闘とは様相が変わってきています。
各企業での賃金カーブ維持の取組状況や成果反映型の人事制度への変更など、現下の情勢からは、月例給をとりまく状況は今年も厳しいものと考えざるを得ません。
特別給については、本年の調査から、昨年冬、本年夏を調査することに改め、より近い時期の状況を反映させるようにしたところです。
この時期の状況を見ますと、昨年冬については、輸出関連の企業で好調だったものと考えられ、本年夏分は、自動車・電機など大手企業の多くで増加している様子がみられます。
中小の回答状況がどうなってくるのかに注目しているところです。
ベア無し春闘や失業率の高止まりなど、厳しい環境の下ではより一層、職員と住民の双方の理解を得ていくことが必要であり、民間給与との一層的確な比較や給与制度の見直しもこの観点からさらに重要なものとなっております。
また、要請にもございましたが、4月からの国立大学法人化により、教員の給与の「国準拠」原則が廃止され、各自治体が教員給与を自主的に決定していく必要が生じました。
給料表の作成など困難な課題について、どのような対応が可能か意見交換を行い、それぞれ検討を進めているところです。
以上、基本的事項についての状況認識等をお示ししました。
申すまでもありませんが、公共のために職務に尽力している公務員について給与等の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しているところであります。
本年も、各人事委員会におきましては、5月初旬から民間給与実態調査を予定しております。
ただいまの皆様の要請の内容につきましては、その調査結果等を踏まえて具体的に検討していくことになろうかと存じます。
以上でございます。
こうした回答を受け、勧告にむけ、今後とも時宜に応じて話し合いを行うことを約束し、本日の要請を終えた。
資料.全人連への要請書
2004年4月12日
全国人事委員会連合会
会 長 内田公三 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 人見一夫
日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 早川良夫
要 請 書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
公務員労働者の賃金は、5年連続の年収減、2年連続の給料表マイナス改定となるなど、生活水準の維持が困難となっています。加えて、自治体財政が危機だとして職員の給与をカットする自治体がますます増えていますが、これは人事委員会制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
2004春闘における民間の賃金交渉結果は、今日時点で定期昇給相当額が確保され、一時金については過半の企業で増額となっています。
これから人事委員会において本年の勧告に向けた作業を開始されることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。
2.国立大学法人化にともなう教育関連諸法の改正による公立学校教職員の給与等に関する勧告作業の質的変化に対応し、当該労働組合との十分な交渉協議を行うこと。
とくに、公教育の社会的役割を踏まえ全国統一的な水準の確保につとめること。
3.寒冷地手当制度を堅持し、現行支給水準を確保すること。
4.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。
5.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1)所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3)年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4)労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
6.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏期休暇日数の拡大をはかること。
7.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
8.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
9.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
10.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
11.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
12.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
13.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。
以上