連合と公務労協は5月26日午後1時15分から、経済財政諮問会議に対し、連名で「2004骨太方針に係る公務員の賃金労働条件の扱いに関する申入れ」(別記)を行った。組合側から丸山連合副会長(公務労協副議長)、人見公務労協議長、山本公務労協事務局長が参加、経済財政諮問会議の竹中担当大臣が対応した。なお、申入れは、羽田孜民主党公務労働問題議員懇談会会長の立ち会いのもとで行われた。6月4日に閣議決定される「2004骨太方針」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」)のなかで、国家公務員の総人件費の抑制や地方公務員給与の適正化、人事院に対する地域給与の在り方の検討要請などが方針化される動きがあることから、組合側は、@労使関係を超えて一方的に政治的方向付けを行わず、A当該関係者の意見を十分聴取することを強く求めた。
冒頭、羽田公務労働問題議員懇会長が、「公務員賃金について厳しい議論がなされていることは承知しているが、ILOからも指摘されているように、労使間で話し合うことが大事なことである。関係者の意見を聞いて対応して欲しい」と要請した。これを受け、丸山副会長が申入書を竹中大臣に手渡し、その趣旨について次のように述べた。
@「2004骨太方針」の検討のなかで、1)地方公務員の給与の適正化の推進、2)総人件費の抑制、3)人事院に対する地域給与の在り方についての検討要請、などが議論されているが、これは、公務員労働者の勤務条件を低下させるものである。
A政府が労働基本権制約の代償機関である人事院に賃金抑制の圧力を加えるとすれば、問題である。
Bそもそも賃金労働条件については、労使が交渉・協議し決めるというのが国際的な原則である。われわれは、公務員制度改革にあたって、このことを強く求めている。政府が労使関係を超えて一方的に政治的方向付けを行わないように要請する。骨太方針を決定する前に、われわれの意見を十分聴取するよう求める。
また、人見公務労協議長は、「三位一体改革で地方財政は大変厳しい状況におかれており、700余の自治体が賃金カットを強いられている。このうえ、一律カットなどの方針を示すことなどは行わず、労使間の交渉を前提とした地方自治体の自主性に任せるよう求める」と要請した。
こうした組合側の申入れに対し、竹中大臣は、「この問題については、国民各層から様々な意見があり、政府としては、そうした意見を踏まえながら、しっかりした方向を示すようにしたい。骨太方針は基本的方向を示すもので、実際の制度作りではなく、諮問会議の担当大臣としてできる範囲は限定される。要請の趣旨については、公務員制度の担当大臣とも相談して対応したい」との見解を示した。
なお、5月31日に谷垣財務大臣に対して同趣旨の申入れを行うことにしている。
(別記)
2004年5月26日
経済財政諮問会議
議 長 小 泉 純一郎 殿
担当大臣 竹 中 平 蔵 殿
日本労働組合総連合会
事務局長 草 野 忠 義
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 人 見 一 夫
2004骨太方針に係る公務員の賃金労働条件の扱いに関する申入れ
貴職におかれましては、日頃より労働組合に対しご理解を賜り敬意を表します。
さて、経済財政諮問会議では、2004年骨太方針の取りまとめに向けて精力的な審議が行われ、作業も大詰めを迎えていると報道されております。
公表されている議事概要、骨格案、民間委員連名による意見書等には、公務員労働者の賃金抑制等に向け再三言及されるとともに提言もなされております。
現下の厳しい経済、財政状況にあって公務員労働者の賃金等について議論されることを一概に否定するものではありませんが、その帰趨は公務員労働者の生活と勤労意欲に重大な影響を与えるにとどまらず、社会的にも大きな影響をもたらします。
公務員制度改革に関わって出された累次のILO勧告において、日本の公務労働関係は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められていることは、国際的にも注目されております。
つきましては、以下の点を申し入れますのでご理解いただくよう要請いたします。
記
一、賃金問題は最も基本的な労働条件であり、第一義的な労使交渉事項であることは国際的にも確立された原則であることを踏まえ、労使関係を超えて一方的に政治的方向付けを行わないこと。
一、労使交渉事項であることを踏まえ、見解取りまとめに当たっては、当該関係者の意見表明の機会を保障し、十分意見を聴取すること。
以上