2004年度公務労協情報 41 2004年7月1日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員連絡会

人事院が給与制度・地域給与見直しの考え方を提案−7/1
−公務員連絡会は「十分な交渉・協議と合意」を要求−

 人事院は、1日、公務員連絡会に対し、給与制度・地域給与見直しについて、「検討項目」を提示し、「本年の勧告に向けて話し合っていきたい」との提案を行った。
 交渉は、13時30分から行われ、人事院側は山野給与局長、鈴木職員団体審議官らが、公務員連絡会側は山本事務局長ほか書記長クラス交渉委員が参加した。
 冒頭、山野給与局長が、以下のとおり考え方を提案した。

(1) 給与制度・地域給与見直しについては、昨年の研究会の報告を受けて、昨年の報告でも検討の方針を表明した。その後、公務員制度改革の動きなどとの関係もあり、この問題について皆さんと公式に話し合う場面の設定が遅れていたが、今年の勧告期に向けて、今後、精力的に話し合いを進めたい。
(2) 今日は、現時点での問題意識、あるいは主要な検討課題・検討項目をお示しして、これから更に議論を進め、今年の勧告時に、できるだけ具体的な方針を示したいと考えている。

 続いて、鈴木職員団体審議官が、以下のとおり説明した。

給与構造の基本的見直しの視点と検討項目(人事院の提案内容)


1 職務・職責の重視、実績反映
 公務員給与は職務給原則の下に設計されているが、その基本となる俸給をみると、その制度、運用において年功給、年齢給的な要素が強く残っている。
・行政ニーズが増大し複雑化する中で個々の職員が高い士気をもって働くためには、職員の働きを給与により適切に反映する必要があること、
・公務能率の向上という観点からも年功的な処遇を改め職務や職員の実績に給与上的確に報いていく必要があること、
・昇格、昇給基準を明確にするなど、公務員給与に対する透明性を高め国民の信頼を確保する必要があること
などに留意しつつ、近時の民間における能力・実績主義による賃金制度の導入の動きを踏まえ、公務においても職務給を基本としつつ能力・実績主義的人事管理を促進する。また、公務員の行った行動・実績をより反映できるよう評価制度の仕組みを整備する。

(1) 職務・職責の重視
@ 俸給表の見直し
A 手当の見直し

(2) 勤務実績の反映
@ 査定昇給への転換
A 勤勉手当への実績反映の拡大
B 期末特別手当への実績反映の強化

2 在職期間の長期化への対応  
 現在、政府全体として職員の在職期間の長期化への取組が進められている。職場の活力を保ち、効率的な人事管理を行う一方で、職員の高い勤務モラールを維持しつつ、在職期間の長期化を円滑に進めるためには、俸給表構造の見直し等により年功的な給与上昇を抑制するとともに、専門性の高い職務について新たな俸給表を設定するなどにより複線型人事の導入など弾力的な人事管理が進められるよう、給与制度の面からの環境整備を進める必要がある。

@ 専門職俸給表の新設
A 職務の変化に対応した適切な給与

3 地域の実態をより反映した給与
 現在の公務員給与では全国の民間賃金水準に基づいた俸給表を基本に調整手当による地域調整を行うこととしている。国家公務員の給与水準が基本的には全国一律であることに関し、近時の厳しい民間賃金事情の下で各地域において公務員給与が高いのではないかとの指摘がなされている。人事院としても、「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」を設置するなど検討を進め、昨年の勧告次報告においても給与制度改革の主な検討課題として提示したところである。国民の公務員給与への理解と支持を確保し、官民均衡、民間準拠を維持するため、民間賃金の地域差をより反映する方向で給与制度を見直す。

@ 民間賃金の地域差の反映
A 転勤手当の新設
B 寒冷地手当の抜本見直し


 提案に対し、公務員連絡会側は、@人事院としては昨年報告に示された考え方にあるように給与構造の見直しの中で地域給与を位置づけていると理解してよいか、A昨年来、何が何でも民間準拠という対応がはびこっているが、公務員が民間をリードしてきた面があることや公務サービスをどうしていくのかという視点で検討すべきではないか、などと人事院の考えを質した。
 これに対し山野局長は、@地域給与の見直しは給与全体の見直しの中に位置づけないといけないという趣旨であり、地域給与を見直すために給与構造を見直すということではない、A見直しを行う趣旨は、今、公務員バッシングがあるから、それに乗って見直そうというものではない。民間準拠、情勢適応が公務員給与決定の大原則であるが、職員にインセンティブを持ってもらうことや、行政だから効果的に行う必要もある。民間準拠ではあるが、公務の特殊性を踏まえることや、ドナー休暇のように公務が先導することも当然ある。率直に言うと、給与構造を時代にあった、それぞれの職員が満足し、国民の理解が得られるものにしていく必要がある、との考えを示した。

 示された考えを受けて、山本事務局長から、@財政諮問会議の建議書や骨太方針2004で公務員給与に言及され、本来労使で決めるべき賃金を政治的に方向付けるような見直し手法は問題であり、人事院は第三者機関としての立場を堅持して作業を進めるべきである、A春の段階で総裁から適正な水準が確保されているとの回答があったし、6月16日に人勧期要求を提出したときも総裁との間でやりとりがあり、地域給与の問題は公務員の給与水準をどうするかという話ではなく、配分の問題であると理解しているし、給与構造の見直しの中に地域給与の問題が位置づけられていることを確認しておきたい、B給与構造の見直しは、時代の変化の中で必要であると考えており、その観点から協議のテーブルを設けて、十分な交渉・協議と合意に基づいて進めることを約束してもらいたい、として局長の見解を求めた。
 これに対し山野局長は、@使用者、職員双方から意見を聞くことがベースであり、さらに一般の人の意見も聞いて、第三者機関の立場で対応することが基本である、A規模問題は前提であり今年はさわらない、B組合と協議を進めていくことは当然であり、その中で合意をめざしていきたい、として協議テーブルを設けた上で、節々で書記長クラスの交渉を行い、日常的には実務クラス交渉を進めていくことに同意した。
 最後に、山本事務局長が「過去に勤評という苦々しい経験があるが、査定昇給を導入するということになれば、評価制度が機能しなければならない。広い意味で人勧制度下における給与決定をどうするかという観点に立って、給与にとどまらず、評価制度に対する労働組合の関与も含めて議論させていただきたい」と要請し、本日の交渉を終えた。

 公務員連絡会は、30日の企画調整・幹事合同会議で、地域給与・給与制度見直し問題を本年勧告期の取り組みの重要課題として確認し、当面の取り組みを強化する方針を決定した。
 その中で公務員連絡会は、@この問題を勤務条件の重大な変更事項として位置付け「十分な交渉・協議と合意」を得ることを基本に対応するAそのため人事院に対して交渉テーブルを設けることを求めるB本年については拙速な報告・勧告を行わないよう求める、等の対応方針を決定した。
 また、これらの取り組みを進めるため、各構成組織書記長等で構成する「地域給与・給与制度見直し対策委員会」を設置し、勧告期の対応を強めることを確認した。
 本日、人事院から考え方の提示が行われたことによって、地域給与・給与制度見直し問題に関わる交渉がスタートしたことになる。
 公務員連絡会は、交渉後、第1回「対策委員会」を開いて、@人事院の考え方に対する公務員連絡会としての考え方を早急に取りまとめるA7.28給与局長交渉を重要な節目として交渉・協議を追い上げる、ことなどを確認した。

以上