2004年度公務労協情報 42 2004年7月2日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員連絡会

骨太方針2004で地公部会が総務省公務員部と交渉−6/30
−「適正化」は特勤手当が焦点、秋に「研究会」設置−

 公務員連絡会地公部会は、6月30日午前11時より総務省公務員部交渉を実施した。これは、6月4日に政府が閣議決定した「骨太方針2004」において、地方公務員給与の適正化の推進や、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能の在り方を見直すとされたことから、総務省公務員部としての考え方を質したもの。交渉には、公務員連絡会幹事クラス交渉委員が臨み、総務省公務員部は上田公務員課長ほかが対応した。

 冒頭、地公部会岩本事務局長から「4日に閣議決定された「骨太方針」には、アウトソーシングの推進など地方公務員に関わる課題が具体的に書かれているが、本日は、地方公務員の給与に絞って見解をいただきたい」とし、次の3つの課題について公務員部の考え方を質した。
(1) 骨太方針2004の基本認識について
 今年の骨太方針2004についての基本的立場を明らかにして欲しい。労働基本権が一方的に制約される中で、政府が賃金・労働条件を一方的に決めることは問題である。制約の代償措置として人事院や人事委員会勧告制度があって、給与水準や給与制度について、適切に運用されてきているのではないか。
 少なくとも、勤務条件については労使交渉などにより労使が議論することが先であるはず。経済財政諮問会議には労働代表も入っておらず、われわれに対する意見聴取も行われていない。5月17日の財政制度等審議会報告でも、地方公務員給与の削減をいっているが、これについても関係者がいない場での議論であって非常に問題である。
 また、国と自治体は法律上対等な関係にあり、国が閣議決定という形で強権的に自治体職員の給与を云々するのはいかがかと思うが、公務員部としての見解は。
(2) 「重点強化期間」の主な改革について
@ 「地方公務員の給与等について、その適正化を強力に推進する」とあるが、具体的にはどういうことか。いわゆる「適正化」については、労使の自主的な交渉によって解決が図られてきていると認識しているが、公務員部としてどのような対応を行うつもりか明らかにされたい。自治体の労使交渉に政府が介入するようなことは、厳に慎むべきである。
A 「地域の民間給与の状況をより的確に反映できるよう」とあり、これは従来以上に地方公務員の給与について「地域差」を出そうとすることだと思うが、これが給料表に地域差を設けるという趣旨だとすれば、職務給の原則や、国家公務員の給与との対応関係をどう考えるのか。
B 「人事委員会機能の強化をはじめとしてその在り方を見直す。国はそのための参考となる指標を整備する」とあるが、具体的にはどのような対応をとるつもりか。このことについて、「研究会を設けて検討する」と承知しているが、研究会の構成、スケジュール、検討テーマなどは、公務員部としてどう考えているのか。
 また、「指標を整備する」とはどういうことを意味しているのか。
C 「骨太方針」はまた、国家公務員の給与について「地域における給与の官民格差を踏まえて地域における公務員給与の在り方を早急に見直す」としているが、このことと地方公務員給与についての「地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう……その在り方を見直す」との関係はどのように理解すべきなのか。国は国、地方は地方でそれぞれ在り方を見直すということなのか。
(3) 経済財政運営と平成17年度予算の在り方について
@ 「総人件費の抑制に努める」とした上で、「地方公共団体においても、地方公務員給与の在り方の見直しを行うよう、要請する」としているが、「重点強化期間」の措置との関係はどのようなものか。単年度の措置として具体的にどのような見直しを「要請」するのか。
 「三位一体改革」においては、補助金の削減に見合う税源移譲を実現するとともに、交付税の財源保障機能を堅持し、必要な交付税総額を確保することが必要だ。地方財政計画の規模を圧縮し、地方の財源不足を招来させ、そのことによって地方公務員の給与を削減するというやり方は容認できない。
A また、現在、公務員制度改革が議論されている最中であり、これに関わる給与制度見直しも当然課題となっている。こうした事情も踏まえて対応すべきではないか。いずれにしても拙速な議論は避けるべきだ。

 これに対し、上田公務員課長は、概要、次の通り答えた。
(1) 骨太方針2004の基本認識について
 「骨太方針」については、内閣として閣議決定されたもので、政府としては方針の内容の範囲で施策を行うこととなる。逆に言えば内容に反するようなことはやらないということである。どのような措置を選択していくかについては幅があり、文言に沿いつつ、公務員部として適切と考える形で、施策を行っていくことになる。
 政府が地方公務員の勤務条件について閣議決定したことについて問題視されているが、「骨太方針」は公務員給与だけではなく、国政全般について、政府部内で各府省が共通認識としていけることをまとめたものであり、方向性を宣言すること自体に問題はないと考える。地方公務員に関わる課題についても重要であるため、言及されたものであり、内容については個々の措置に言及しているわけではない。閣議決定は枠組みであるため、個々の勤務条件については総務省、個々の団体、労使関係などの議論検討の中からあるべき方向性を出していくことになる。勤務条件については、職員の給与は税金によって賄われているものであり、地方公務員法第24条などの基準・原則が存在していることから、公務員部として意見を申し上げることはある。
(2) 「重点強化期間」の主な改革について
@ 給与の適正化については、公務員部としてこれまでも取り組んできた課題であるが、「骨太方針」に盛り込まれた背景には、税金の使途として看過し得ないという有権者側の考え方があると考えている。従来から適正化を求めていた、ワタリ、手当、昇給制度、退職手当制度などについて、もう少し念を入れて見直していく必要があるというメッセージと受け止めている。ある一定の主要項目について、力を入れて調整していかなければならない。手当については、国家公務員よりたくさんもらっているという疑念が持たれているため、よく調べた上で、そのことが事実であれば、各団体で是正に取り組んでいただくことになる。とりわけ、特殊勤務手当については本腰を入れて、国民に説明できるものかどうかをチェックしていきたい。
A 職務給の原則については、法律に規定されている職務給の原則と、同じような仕事をしている職員の給与は同じような水準にあるべきという職務給の原則があると考える。いずれにしても、仕事の中身をよそにおいて、給与を決定するということは今後もあり得ないと考える。地域差については、職務と給与に一定の相関関係がある中で、どの辺に定めていくかということと思う。
B 労働基本権制約の下での人勧制度という枠組みについては、少なくとも短中期的には、これを変えていくことはあり得ないと考えている。その点からも、人事委員会機能を強化していくことは重要である。人事委員会の機能強化については、量・質を含めて、取るべき措置を考えていきたい。なお、機能強化に当たっては、民調の調査対象、方法についても議論していくことになる。学識経験者や地方公共団体、人事委員会や労働組合の代表で構成する研究会を設置し、9月あるいは10月から議論を開始し、来年春までには、ある程度の方向性を与えるものを取りまとめていきたい。来年春の中間取りまとめまでには、5回程度開催を予定しており、地域の実情等について現地調査することなども必要と考えている。
 指標については、ラスパイレス指数の他にどのようなものがあるのか、あれば参考資料として示していけるといいと考えている。これについては、来年春までにすべてを示すのは難しいのではないかと考えている。
C 地方公務員の給与が国家公務員に準拠していくという基本的考え方に変わりはなく、パラレルな形で見直す必要がある。都道府県、政令指定都市等人事委員会のあるところでは、国家公務員の地域における給与の在り方を横目に見ながら、勧告していただくことになる。
(3) 経済財政運営と平成17年度予算の在り方について
@ 平成17年度の予算の在り方において、給与関係経費の見直しを図っていきたいということで、公務員部としては従来のように、給与のパーツごとの適正化、チェックを引き続き行い、適正でないものが是正されれば、歳出の削減につながると考える。ただし、自治体の給与適正化によって、財源が新たに生まれたとしても、それは国の財政に直接貢献するものでは全くない。
A 公務員制度改革との関連性についてであるが、改革後の地方公務員給与の方向付けという考え方もあり得るのではないかと考える。

 回答を踏まえ、公務員連絡会側はさらに、@労働基本権については今後の公務員制度改革の議論の中で決められていくものであるはずではないか、A国家公務員給与について地域別の俸給表の導入なども検討されているが、地方公務員給与について「地域差」をだすことについては、現在の調整手当を超える範囲のものとなるのか、B人事委員会機能の強化については法改正を伴うものなのか、とさらに公務員部の考え方を質した。
 これに対し、上田公務員課長は次のように答えた。
@ 公務員制度改革については、ここ半年の動きを見守っていく必要があり、労働基本権を含め政労協議の場で協議されることとなる。
A 今年の人事院勧告に向けての動向を注視している。国家公務員の地域における給与の在り方については、基本的には調整手当で対応する方が望ましいのでは、と思う。その方が、きめ細かな地域差に対応できるものと考える。
B 次期の地方公務員法の改正を予め念頭においたものではない。研究会での議論を踏まえて対応することとなる。人事委員会については、現在も独立性はあるが、地方公務員法第24条を踏まえ、実態としての独立性を高めていくため機能強化が必要と考える。

 最後に公務員連絡会側は、この問題については引き続き十分な協議を行っていくことを要請し、本日の交渉を終えた。
 公務員連絡会地公部会は、この日の交渉で示された総務省公務員部の考え方や地方公務員の給与に関する厳しい状況を踏まえ、取り組み態勢を強化するとともに、人事院における地域給与・給与制度見直しに対する公務員連絡会全体の方針に結集して運動を強めることとしている。

以上