昨年10月に設置された人事院の「多様な勤務形態に関する研究会」(佐藤座長)の中間報告がまとまり、13日午後、職員福祉局長に提出された。
公務員連絡会は、ワークシェアリングと短時間勤務制度の実現を最大の課題に位置づけ、連合推薦委員と連携して取り組みを進めてきたが、中間報告では、家庭生活と職業生活の両立支援策として短時間勤務制度の導入に言及したほか、部分休業の拡充や超勤縮減等にふれている。
公務員連絡会としては、別紙の通り、この中間報告に対するコメントを確認し、これを足がかりに、短時間勤務制度の早期実現を人勧期の重要課題として位置づけ、今後、人事院との交渉・協議に臨むこととしている。
−別紙−
人事院「多様な勤務形態に関する研究会・中間報告」について
2004年7月13日
公務員労働組合連絡会
1.人事院に設置された「多様な勤務形態に関する研究会」(座長:佐藤博樹東京大学教授。以下「研究会」という)は、7月13日、中間報告を公表した。研究会は、昨年10月24日に設置され、「業務遂行上の必要性」及び「人材の活用・育成・確保上の必要性」に対応する勤務時間制度のあり方を検討してきたが、中間報告では次世代育成支援に関わって人事院が「速やかに措置」すべき事項をとりまとめたもので、勤務時間制度全体のあり方等については、来年度に予定される最終報告に盛り込まれることになっている。
2.公務員連絡会は、一昨年以来、公務の社会的責任として雇用創出型のワークシェアリングを実現する取り組みを進め、その中で政府・人事院に短時間勤務制の導入を求めてきた。人事院はこうした要求を踏まえ、昨年の人事院勧告の報告で研究会の設置に言及し、今回の中間報告となったものである。
公務員連絡会は、研究会でのヒアリングにおいて、超勤縮減など総労働時間の短縮を図ることや本格的な短時間勤務制の早期実現を研究会の最優先課題として位置づけ、検討を促進するよう要請するなど意見を反映させる取り組みを強めてきた。
3.中間報告では、勤務時間制度の弾力化・多様化の必要性に関する基本的な考え方を示すとともに、次世代育成支援を中心とした中間的な整理を行っている。
(1) 前者については、第1に、業務上の必要性として、@より効率的に業務を遂行すること、A国民のニーズの多様化に対応すること、B恒常的な長時間勤務を解消・軽減すること、第2に、人材活用上の必要性として、@家庭責任を分担しながら仕事で能力を発揮できるようにすること、A職員の能力開発を支援すること、を例示し、「現行の固定的かつ画一的な勤務時間制度では対応できない」として、勤務時間制度の弾力化・多様化が求められると指摘している。具体策は来年の最終報告に盛り込まれることになるが、検討に当たっては、「業務や部署の特性等に応じ、弾力化・多様化の効果と問題点等を総合的に判断して、各府省が、制度を選択できる仕組みとする必要がある」としている。
(2) 後者については、育児を行う職員に関わって、@短時間勤務制を導入することが適当であり、当面、a)部分休業の対象となる子を3歳未満から小学校就学前までとすること、b)1日の休業時間数を拡充すること、c)1日単位の休業ができるようにすること、A早出・遅出勤務の活用を促進すること、B職員の意向に基づいて勤務時間の割り振りを弾力化すること、C子の看護休暇について時間単位で40時間までの取得を認めること、D妻の産前産後の期間に男性の育児のための特別休暇を導入すること、などを提言し、介護職員にも同様の対応を行うよう求めている。
4.中間報告の特徴と問題点は次の通りである。
第1に、民間とは異なり、一方的に業務命令を出せば長時間労働を命じることができる現行勤務時間制度の根本的問題を放置し、あくまで管理者による勤務時間の割り振りに固執しているという問題がある。勤務時間は重要な労働条件であり交渉事項であるため、労働組合との話し合いに基づいて決める制度に改めさせる必要がある。
第2に、勤務時間制度の多様化・弾力化に当たっては、職員個人の職務・職責を明確化し、同一価値労働同一賃金という均等処遇の原則を確立する必要があり、加えて、脱法的な非常勤職員制度を抜本的に改革する必要があるにもかかわらず一切言及していない、という問題である。短時間勤務制の導入を実現するに当たって適正な労働条件を確保するためには、こうした基本的問題を解決させなければならない。なお、現に再任用制度の円滑な活用を阻害し、中間報告も指摘しているように、週40時間勤務の公務員のみを定員1とカウントする現行定員管理法制のあり方を改めさせることも大きな課題である。
5.また、研究会が「速やかに措置」すべきとされた事項の中で、育児に限定したものとはいえ、短時間勤務制の導入について言及したことは評価でき、われわれの取り組みの成果である。しかし、定員カウント問題等を理由に短時間勤務制度の実施時期等について言及しなかったことは残念である。その一方で、現行の部分休業の活用促進などが、短時間勤務制度ができるまでの「当面」の策として位置づけられていることについては、注意しておく必要がある。短時間勤務制と部分休業は、決して段階的に実施すべき事柄ではなく、両方とも直ちに実施すべきことであるからである。ましてや、部分休業等の実施を短時間勤務制実施を先送りする理由としてはならない。
さらに、超過勤務を縮減する努力が重要であることに言及しているが、これまでの施策の再掲にとどまり、新たな施策の提起にまで踏み込んでいないことは問題である。これまでの超勤縮減対策が一向に実を上げず、本府省を中心に恒常的な長時間労働が解消しないばかりか、「不払い超勤」が蔓延している実態があるだけに、最終報告では踏み込んだ指摘が求められるところである。報告は、IT化などを通じた勤務時間管理等の効率化が必要としているが、直ちに厳格な勤務時間管理を行わせ、「不払い超勤」を撲滅させなければならない。
6.研究会の中間報告を受け、人事院は、本年の勧告に向けた作業を進めることとなる。公務員連絡会としては、中間報告を足がかりに、短時間勤務制度の実現を人勧期の重点交渉課題として位置づけ、人事院に対して本年の勧告をも射程に入れた積極的な取り組みを求めていかなければならない。
また、短時間勤務制度以外の「速やかに措置」についても、交渉・協議と合意に基づいて早急に実施させるよう取り組みを進めていかなければならない。そのことが、最終報告の内容を左右することになるからである。
研究会は、今後、来年夏の最終報告にむけ、研究・検討を重ねていくことになっており、引き続き、研究会への意見反映に努める必要がある。職員の勤務意欲に応え、職業生活と家庭生活を両立できる勤務時間制度に変えていくことが、国民が求める良質で効率的な行政サービスを実現する道であり、本格的短時間勤務制の実現、長時間勤務の解消、非常勤職員制度の抜本的改善などが、公務におけるワークシェアリングを実現していく道であることを再確認し、今後とも取り組みを強化していかなければならない。
以上