公務員連絡会は28日、2004人勧期の要求実現にむけた第2次中央行動を実施、日比谷大音楽堂で2500人が参加して中央決起集会を開いたほか、書記長クラスによる人事院職員福祉局長及び給与局長交渉を行い、それぞれ勧告・報告内容の概要を回答として引き出した。
また、これに先立って、早朝から公務労協構成組織と連合・連合東京の応援を得て、「国公ユニオン」への加入を呼びかける街宣・チラシ配布行動が、中央省庁のある霞ヶ関一帯で取り組まれた。この行動には100人が参加した。
午後1時30分から日比谷大音楽堂で行われた第2次中央集会は、古山副議長(税関労連委員長)を議長に選出して始められた。
冒頭挨拶に立った丸山議長は、「政府の骨太方針は公共部門の縮小と地域給与見直しを打ち出した。今年の人勧期の闘いは、寒冷地手当見直しへの対応や年収を確保する闘いとともに、この骨太方針に対する闘いでもあった。地域給与見直しは今年の報告で人事院が考え方を示すこととなっており、緊迫した情勢となっている。ぎりぎりまで取り組みを強めていこう」と、人勧期最終盤の取り組みを強化することを呼びかけた。
続いて先の参議院選挙で当選した高嶋良充、那谷屋正義両参議院議員が急遽激励に駆けつけ、先の参院選に対する協力への御礼を述べるとともに、公共サービスつぶしの小泉構造改革に国会の場で断固闘うとの力強い決意を述べた。
激励挨拶にたった笹森連合会長は、「小泉内閣のもとで平和と生活の安全が大きく脅かされている。連合は本気で社会保障の抜本改革が必要と考え取り組んできたが、先の参議院選挙の結果はこうした小泉政治に対する国民の反撃だ。賃金問題では、民間はわずかではあるが改善の方向を勝ち取った。今度は公共部門の役割が問われている。地場に大きな影響を与える地域給与見直しは許してはならない。いま、労働組合の役割が問われており、連合は本気でその闘いの先頭に立って取り組む」と、賃金闘争における公共部門の役割に期待し、その先頭で闘うとの決意を述べた。
集会はその後、山本事務局長がこれまでの取り組み経過を説明するとともに、本日の人事院交渉で勧告・報告内容について回答を引き出し、地域給与見直し問題等で2日に第3次中央行動を組織し、ギリギリまで取り組みを強化していくとの方針を提起した。
構成組織決意表明では、自治労・君島副委員長、全水道・池田九州地本書記長、国公総連・普天間沖縄国公労副委員長、税関労連・吉谷書記次長が登壇し、それぞれ力強く最後まで闘う決意を表明、最後に丸山議長の音頭で団結がんばろうを三唱した。
その後集会参加者は、霞ヶ関一周のデモ行進と、人事院前交渉支援行動を実施、「俸給表水準引き下げの地域給与見直しは許さない」「一時金を増額せよ」と、シュプレヒコールを繰り返した。行動を終えた参加者は、再び日比谷大音楽堂に結集し、書記長クラス交渉の経過報告を受けた後、山田副議長(国税労組委員長)の音頭で団結がんばろうを三唱し、この日の行動を締めくくった。
この日行った書記長クラスによる人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次のとおり。
<職員福祉局長交渉の経過>
交渉は集会に先立って11時から行われ、山本事務局長のほか構成組織の書記長クラス交渉委員が参加、人事院は関戸職員福祉局長らが対応した。
冒頭、山本事務局長が「職員福祉局の課題についてこれまで論議してきたが、勧告・報告がどうなるか明確に示してもらいたい」と回答を求めたのに対し、関戸局長は「これまで皆さんの意見を伺いながら作業を進めてきたし、昨年秋に設置した『多様な勤務形態に関する研究会』からも中間とりまとめをいただいた。それらを含めた現時点での勧告に向けた検討状況を申し上げたい」として、次の通り回答した。
(1) 研究会の中間とりまとめは、すべてのことをまとめたものではなく、取り急ぎ次世代育成促進対策関係の課題を中心にまとめたものだ。それを受けて人事院としてしっかり対応するということで、これから申し上げることを報告したい。
・育児に従事する職員が職務に従事しながら子育てができるようにするため、部分休業の対象となる子を小学校就学前までとすること等について検討し、別途意見の申し出を行う。
・育児を行う常勤職員の短時間勤務制の導入についても検討する。
・職務の特殊性による場合だけでなく、育児を行う職員への早出・遅出の適用、弾力的な勤務時間の割振り等を検討する。
・男性職員の育児参加を促進するため、妻の産前産後期間における育児のための特別休暇の導入を検討する。
・恒常的な長時間勤務の解消・軽減のため、早出・遅出の活用、管理者が本人の意向に基づいて判断する弾力的な勤務時間の割振りについて検討する。
・介護を行う職員についても、育児を行う職員と同様に、必要な措置について検討する。
なお、検討や具体化の見通しについては、濃淡はあるが、関係者との調整などを行い、成案を得られたものから、順次実施するという姿勢で臨んでいきたい。
(2) 民間の育児・介護休業法が改正されれば有期雇用者にも育児休業、介護休業が来年4月から適用されることになるが、国家公務員の非常勤職員への育児休業、介護休暇等の適用については、臨時・緊急の必要で任用されるという非常勤職員としての性格等を考慮すれば、現時点において、育児休業等の適用を認めることは困難である。今後、民間の育児・介護休業法改正が成立して、施行後の民間企業の状況等を注視しながら、引き続き検討することにしたい。
(3) また、民間の育児・介護休業法改正の中には有期雇用者に子の看護休暇を適用することも入っており、国家公務員の非常勤職員に、子の看護のための休暇を認める必要があるかどうかについては、私としては前向きに検討していきたいと思っている。
示された回答に対し、公務員連絡会側は、@男性職員の育児参加促進のための特別休暇はどんなイメージか、A非常勤職員への育児休業・介護休暇は制度上困難ということではなく、実態を踏まえて、どのように適用していくかという検討をすべきだ、B早出・遅出など勤務時間の弾力化で逆に長時間労働が増える心配があり、あくまで労働時間短縮を目指すための措置であることを徹底してほしい、C現在の子の看護休暇は、時間取得ができず使いにくいので、時間単位の取得を認めるべきだ、D在宅勤務は活用しないのか、などと質問・要望した。
これらに対し、関戸局長は、@男性の育児特別休暇は、もっとも男性を必要とする時期に休みを取ることが職場でも自然な雰囲気になるように検討したいと考えている。男性が育児にしっかり参加したといえる現実的な日数ということになるのではないか、A非常勤職員の実態も大事ではあるが、国家公務員の場合、年度をまたがって雇用しないことが閣議決定で明確になっているし、6ヶ月が基本であるし、最近は公募の場合が多く雇用が継続していない場合が増えている。国家公務員の非常勤職員の実態がどうなっているかや、法施行後の民間の動向を見て、引き続き検討していきたい、B子の看護休暇の時間単位の取得については、しかるべく検討したい、C長時間勤務をなくしていくことが基本であり、職務の特殊性だけではなく、育児についても男女が勤務時間をずらすことで休まなくても育児ができるようにしたいということである。育児に関わっては、民間でどのくらい進んでいるのか見ながら対応するという民間準拠方式だけではなく、余り進んだものは無理だが、特定事業主という観点も踏まえ積極的に進めていきたい、D在宅勤務はテレワークの話になるが条件が折り合えば可能と思うので、検討していきたいと思っている、との考えを示した。
以上の議論を踏まえ、最後に山本事務局長が、「今日回答された課題については、可及的速やかに実施してもらいたい。非常勤職員の問題は、法制上、実態上の課題や研究会報告の趣旨を踏まえて、積極的に対応していただきたい」と交渉を締めくくった。
<給与局長交渉の経過>
給与局長交渉は14時30分から行われ、山本事務局長のほか構成組織の書記長クラス交渉委員が参加、人事院は山野給与局長らが対応した。
冒頭、山本事務局長が「これまでに交渉を積み上げてきたが、大詰めの状況であり、勧告に向けた回答をいただきたい」としたのに対し、山野局長は次の通り回答した。
1 較差・特別給
(1) 較差は、予断はできないが、俸給表に手をつけない可能性もあるかもしれない。
(2) 特別給は、比較手法を変えたため現在も今年の夏分の調査・集計が続いているが、マイナスにならないことを祈っている。
2 教育職関係
(1) 教育(一)(四)は、級構成を整理の上、存続の方向で検討する。
(2) 教育(二)(三)は廃止するが、要請があるので、報告以外の形で検討したい。
(3) 義務教育教員特別手当等の教育職関係手当は廃止する。
(4) 指定職12号俸(東大・京大学長)は削除の方向で検討する。
3 寒冷地手当
先般(23日の交渉)、提案した内容で最終調整を行っている。
4 給与構造・地域給与見直し
(1) 今年度は基本的な考え方を報告で示し、来年度制度改正の勧告を目指して作業を進めてきたところである。
(2) 本年の報告では、次の検討項目につき、問題意識と検討の方向等に言及し、各府省、職員団体等関係者との意見交換を進め、具体化を図る旨述べたい。
(3) 俸給表と地域の給与との調整に関しては、
・ブロック別官民較差を考慮して、全国共通俸給表の水準を引き下げることを検討する。賃金センサスによる県別比較ではなく、ブロック別のラスパイレス比較が適当であることを示したい。
・併せて、民間賃金の高い地域には、俸給表の引き下げと現行の調整手当の支給率を考慮して、上限20%程度の地域手当あるいは地域調整額を検討する。
・地域格差の別の調整方法として、地域別俸給表等の方式も併せ検討する。
・人事院としては、地域別の俸給表より俸給表の全体を下げて地域手当で調整する方法が現実的と考えており、関係者と話し合っていきたい。
(4) 俸給表関連の課題としては、
・専門スタッフ職俸給表の新設
・俸給表構造の見直し(級の新設・統合による級構成の再編、昇給カーブのフラット化)
・昇格基準、昇格時の給与額決定方式の見直し等
・査定昇給の導入、枠外昇給の廃止等
(5) 手当関連の課題としては、
・勤勉手当への実績反映の拡大、指定職の期末特別手当への実績反映
・本府省手当(現行の課長補佐に対する特別調整額を本府省の補佐以下全員に適用)の新設
・地域手当あるいは地域調整額の新設
・転勤手当(単身赴任手当との関係を整理しつつ、地域手当がゼロのところからゼロのところへの転勤であっても支給するというのが基本的考え方になる)の新設と調整手当の異動保障の廃止
・俸給の特別調整額の定額化
など、多くの課題があるが、関係者と話し合いながら、できるものから実施していきたい。
5 官民比較給与の見直し
通勤手当、特別調整額の官民比較上の取扱いについて検討する旨報告で言及するかどうか、現在、検討中である。
6 勧告日
作業的には来週中を目指しているが、翌週となる可能性もある。
回答に対し、山本事務局長が「一時金については、組合員の期待に大きなものがあり、是非とも月数増の勧告をお願いしたい。給与構造見直しの報告内容について触れられたが、査定昇給や勤勉手当の実績反映の拡大には、労働組合が参加する、透明で公正、客観的な新たな評価制度を整備することが前提であり、今後慎重に検討すべき課題である。また、地域給与の見直しについては、@地域別の官民較差に基づいて俸給表を下げることには重大な異議がある。そもそも公務員給与はどうあるべきかの議論はしたいと思っているが、俸給表水準引下げを事実上決める報告は認められない、A来年勧告するということも認められない。いつ勧告するかは、職員団体と十分な交渉・協議を行って合意に基づいて決めるべきである、と考えている。一時金問題や地域給与問題を中心に8月2日には緊急行動を予定しているので、再度局長交渉を行いたい」と強く要請した。これについて、給与局長が再度の交渉を約束したことから、これを確認し交渉を終えた。
公務員連絡会は、行動終了後、企画・幹事合同会議を開いて「地域給与見直しを巡る情勢は緊迫しており、かつ一時金増額についてもギリギリ努力していく必要がある」との認識に基づき、来週後半にも予定される勧告・報告に向けて、8月2日の第3次中央行動については予定通り実施し、2004人勧期最終盤の取り組みを強化していく方針を確認した。
以上