公務員連絡会地公部会は、8月9日10時10分から、2004年勧告を受けて全国人事委員会連合会(全人連)に対する申入れを行った。
公務員連絡会側は、地公部会の松島議長(都市交委員長)、中村企画調整委員(日教組書記長)、山本公務員連絡会事務局長、岩本地公部会事務局長と地公部会幹事が出席、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市の代表者が対応した。
冒頭、松島地公部会議長は、別紙要請書を手交し、次のように本日の要請の趣旨を述べた。
8月6日人事院は、2004年の給与勧告と、寒冷地手当に関する見直しの勧告を行っている。給与勧告においては、@月例給・一時金を据え置き、国立大学の法人化にともなう教育職俸給表(二)、(三)表の廃止等を勧告する、A寒冷地手当見直しでは、指定地域の大幅な解除と支給額の大幅な削減を勧告する、との内容であった。この間、5年連続の年収マイナス、2年連続の俸給表のマイナス改定で公務員の生活は大変厳しいものとなっているが、今回の勧告で年収マイナスには基本的に歯止めが掛かるものと認識している。しかし、一時金の据え置きについては、民間の好調な実績から、期待感が大きかっただけに、不満な内容である。
一方、地方公務員の給与は国同様のマイナス基調にあったが、財政の危機を反映して、自治体当局は、人事委員会の勧告で示された内容のさらなる削減措置を行った。自治体当局が、労働基本権の代償措置である人事委員会勧告を無視することについては、組合としては勿論のこと、勧告された人事委員会としても受け入れられないのではないかと考える。
今後、人事院において地域給与・給与構造の見直しが検討される予定である。検討にあたっては、人事院に対して、公務員連絡会との十分な協議を行うよう求めていく。また、骨太方針2004でもいわれている地方公務員の給与の在り方(地域給)の見直しについても、労使協議を含め地方公務員関係者での十分な議論が必要であると考えている。各人事委員会における勧告にあたっては、地方公務員の生活改善や士気高揚といった観点に留意のうえ、納得できる内容となるようお願いしたい。特に、公立学校教職員の給与については、公教育の役割を踏まえ、関係組合との十分な協議による対応をお願いしたい。
引き続き、岩本地公部会事務局長が要請書の内容を説明し、全人連の努力を求めた。
また、中村企画調整委員(日教組書記長)から、公立学校教職員の給与等に関する勧告作業の課題について「全人連として、教育職(二)(三)表の廃止による影響を踏まえ、人事院に対して参考資料の提示を求めるなどの要請を行ったと聞いている。この場を借りて感謝申し上げたい。各人事委員会においては、こうした経緯を踏まえ、要請書の趣旨実現のために、組合側と十分な協議を行っていただきたい」と重ねて要請した。
こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は以下の通り回答した。
<地公部会要請に対する全人連会長回答>
平成16年8月9日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
先週6日に人事院勧告が出されましたが、皆様ご案内のとおり、景気は回復基調であったものの、民間企業における人事制度の変更の給与改定への影響、公務側の給与の実態など諸要素を反映した官民較差は100円を切るわずかなものとなり、結果として、俸給表、扶養手当等の手当は改定が実施されませんでした。
特別給も民間の支給割合と概ね均衡しているとされ月数の増減を行わないこととされました。
地域に影響するものとしては、寒冷地手当について、支給地域の整理や支給額の引下げなど全般的な見直しが行われています。
このほか詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところでありますが、地域の給与水準の問題では、全国共通俸給表の水準の引き下げ、地域手当の新設など具体的な検討項目が提示されました。
それぞれの地域で地方公務員給与に直接影響が及ぶものと考えられ、地方自治体にとりましても、人事委員会にとりましても、極めて重要な問題となりますので、全人連内部でも情報交換を行いながら対応を検討して参ります。
現在、各人事委員会では、勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところであります。
今後、皆様の要請の趣旨を十分考慮しながら検討し、それぞれの自治体の実情を踏まえて、自主性をもって対処していきたいと考えております。
以上でございます。
(別紙)全人連への要請書
2004年8月9日
全国人事委員会連合会
会長 内田公三 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 人見一夫
日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 早川良夫
要 請 書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
公務員労働者の賃金は、5年連続の年収減により生活水準の維持が困難となっています。加えて、自治体財政が危機だとして職員の給与をカットする自治体がますます増えていますが、これは人事委員会制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
今年度は地方財政計画の圧縮、交付税の大幅削減により、自治体サービスの縮小や人件費削減を余儀なくされています。
また、政府の骨太方針2004では、地方公務員の給与の在り方を見直すとしていますが、地方公務員は地域の第一線で住民福祉向上のための公共サービスに従事しており、職員の適正な処遇の確保等により、全国のどの自治体にあっても質の高い公共サービスを提供していくことが求められています。
これから人事委員会において本年の勧告に向けた本格的作業を開始されることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。
2.公立学校教職員の給与等に関する勧告作業の質的変化に対応し、当該労働組合との十分な交渉協議を行うこと。とくに、公教育の社会的役割と教育公務員特例法の趣旨を踏まえ全国統一的な水準の確保につとめること。
3.寒冷地手当の見直しに当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。
4.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。
5.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1)所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3)年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4)労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
6.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏期休暇日数の拡大をはかること。
7.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
8.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
9.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
10.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
11.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
12.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
13.地公法改正を踏まえ、公正かつ実効ある苦情処理体制の整備をはかること。
14.新たな任期付任用制度については、法の趣旨を踏まえ業務の範囲を限定するとともに公正な人事を確保すること。
15.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。
以上