2004年度公務労協情報 7 2003年12月16日

公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

第40回地方公務員制度調査研究会開催される−12/15
報告書「分権新時代の地方公務員制度―任用・勤務形態の多様化」を取りまとめ、解散

 12月15日、第40回地方公務員制度調査研究会(以下、地公研)が開催され、この間、議論が続けられてきた報告書「分権新時代の地方公務員制度―任用・勤務形態の多様化」の最終案が提案され、確認された。この報告書は、15日の議論を受け、若干の字句修正が行われた上で、12月下旬に公表される予定。
 席上、足立、君島両委員はそれぞれ、研究会の運営について肯定的な評価を行うとともに、非常勤問題をはじめ研究会報告のうち措置されていない課題についての積極的な取り組みを訴えた。
 また、地公研は、1997年5月に発足して以来、40回にわたって開催され、様々な検討が行われてきたが、今回で解散することとなった。

 公務員連絡会地公部会は、研究会終了後、幹事会を開催。報告書に対する地公部会と労働側委員の共同の「見解」を確認した。(別紙・「地方公務員制度調査研究会報告書『分権新時代の地方公務員制度−任用・勤務形態の多様化』に対する見解」)
 

<別紙>地公研報告書に対する見解

地方公務員制度調査研究会報告「分権新時代の地方公務員制度−任用・勤務形態の多様化−」に対する見解



1.地方公務員制度調査研究会(会長 塩野 宏 成蹊大学教授 以下「研究会」という)は、12月15日、「分権新時代の地方公務員制度―任用・勤務形態の多様化―」と題する報告書(以下「任用・勤務形態の多様化に関する報告」という)をとりまとめた。また、1997年5月30日の発足以降、6年半を超える期間において延べ40回に及ぶ議論を経て、研究会としての任務を終えることとされた。この間、1999年4月27日には、21世紀の地方自治を支える地方公務員制度への改革の方向性を示す「地方公務員制度調査研究会報告」をまとめた。その後も同報告の実施状況についての意見反映を行うため研究会を継続してきたが、2000年12月の政府・行政改革大綱の閣議決定に基づく行政改革推進事務局による公務員制度改革の検討により、事実上、研究会における議論に対する制約が課せられることとなった。なお、ほぼ並行して国家公務員制度の改革を審議してきた公務員制度調査会及びその小委員会である労使関係の在り方に関する検討グループが、政府・与党による一方的な制度改革の検討の開始によって、権力的にその任務を終焉させられたことと比較すると、今日まで研究会を継続してきたことは、課題に対する研究会としての主体的な意思を明らかにしてきたものといえる。
2.任用・勤務形態の多様化に関する検討は、第156通常国会における構造改革特別区域法の改正に関する自治体からの任用制度への提案に対して、総務省が「多様な勤務形態の導入をはかることについては、地域における規制の特例という特区ではなく、制度として対応する」という方針を表明し、研究会における審議を求めたことが発端となった。一方、研究会としては、「地方公務員制度調査研究会報告」(以下、「99年報告」という)において指摘した「多様な勤務形態の導入等」が実現されていない状況を踏まえ、短時間勤務職員制度の導入を中心とする全般的な課題についての検討が行われた。具体的には、地方自治体、経営者団体及び民間企業そして公務員連絡会地方公務員部会からの意見聴取、諸外国制度の調査・検証を踏まえ、計8回にわたり研究会における検討・論議が行われた。
3.任用・勤務形態の多様化に関する報告は、「検討の意義」、「検討の視点」、「基本的考え方」、「具体的検討」、「制度化の具体的イメージ」の5つの柱により構成されているが、報告書全体としては研究会を構成する公労使三者の多様な意見を集約することに意が用いられたものとなっている。しかし、労働側委員が、@現在の臨時・非常勤職員の任用の実態と制度の間の乖離の解消、A臨時・非常勤職員の雇用安定と処遇確保、Bワークシェアリングの受け皿となる任用制度の整備、C就業意識の多様化、両立支援、自己啓発など雇用者側の要望と社会的な要請に対応した任用制度の構築をはかるため、定年制を適用した本格的な短時間勤務職員制度の創設を強く求めてきたことに対して、報告書は、地方公務員制度における自主的決定を規制・阻害してきた国家公務員制度に対しての先行≠竍独自の検討≠ノついての消極性を払拭しきれていない側面と、厳しい地方財政状況のもと効率化のみを無原則に追求しようとする自治体の姿勢に対する配慮などの不合理が内在するものとなっている。
4.このような観点から任用・勤務形態の多様化に関する報告は、大要において次のような評価と問題点を指摘することができる。
 (1) 任用・勤務形態の多様化に係る検討について、@「任期の定めのない職員による短時間勤務」については、「休業・休暇制度の拡充」と「新たな任用形態の創設」という二つのアプローチ、A「任期の定めのあるフルタイム職員」の拡大、B臨時・非常勤職員に対する「本格的な業務に従事できる短時間勤務職員」という3つの視点を示している。また、視点を構成する要素として、@任期、A勤務時間、B業務の性質を挙げている。このうち「業務の性質」については、本格的か、補助的かという一方的・抽象的な概念により任用制度を区分することが試みられている。公務において実際に職務を遂行するためには、職とそれに応じた任用制度が設置・構成され、そこに職員が配置されることが必要で、任用・勤務形態は従事する職務の性格(業務の性質)に応じて区分されるべきものである。その意味で「業務の性質」に係る研究会における検討は、現行任用制度の基本的原則と実態の乖離を前提として、本格的あるいは補助的という曖昧な概念ではなく、より明確で詳細な検討が必要であったことが指摘される。
 (2) 検討における基本的考え方においては、@国家公務員制度との均衡に配慮することは重要であるものの、国と地方それぞれの状況に適切に応じた制度設計を行うべきである、A新たな制度の検討に際しては、制度の大枠のみを法律で定め、導入するかどうかを含め、具体的内容は条例において定めることとしている。これは、なお不十分な点は残しつつも、地方公務員制度およびその運用におけるこれまでの一方的・統一的な規制という概念から、分権的視点へと変革すべきことを指摘したものとして評価できる。
 (3) 制度化の具体的イメージについては、2004年通常国会における法律措置を視野に置いた「当面検討すべきもの」(@常勤職員の短時間化、A任期付短時間勤務職員、B新たな任期付職員)と、今後の国家公務員制度における検討を前提としたものと想定される「中長期的課題」(@要件を問わない部分休業、A任期の定めのない短時間勤務制度)の二つに区分されている。このうち特に「任期の定めのない短時間勤務制度」が中長期的課題とされたことについては、国家公務員制度に先行して独自に制度を創設・検討することへの消極性のあらわれとして、さらには現在の臨時・非常勤職員の不安定な雇用と低位に置かれている処遇の深刻な実態を軽視するものとして極めて遺憾である。
 (4) 「常勤職員の短時間化」については、職員の申請に基づく、@自主的な研鑽のための部分休業、A漸次的現役離職の短時間勤務制度について提起している。@については、大学または大学院等に通学する職員の通学時間等への配慮として、Aについては、諸外国の例を参考としたものと考えられ、決して十分とはいえないものの、地方自治体における独自あるいは国に先行した勤務形態の必要性を具体的に示したものと判断できる。しかし、育児・介護に係る休業等の拡充については、民間や国の動向を踏まえることとしているとともに、両立支援等に資する「働き方」という観点からの勤務形態の改革ではなく、これまでの概念を踏襲した「休み方」の範囲の検討にとどまったことは残念である。
 (5) 新たに創設することを提案した「任期付短時間勤務職員」は、研究会において一定程度短時間勤務の必要性は認めつつも、民間の現状や国において検討過程にあること、さらには常勤を中心とするわが国の労働慣行などを理由として、現時点において定年制を適用した本格的短時間勤務職員制度の創設に至らなかったもとでの到達点と判断できる。なお、法制化に向けては、採用・任期、給与、共済など具体的な事項に係る課題への対応をはかる必要がある。
 (6) 「新たな任期付職員」は、2002年に法制化された一般職の任期付職員制度における採用要件を拡大することを提起している。現行の任期付職員制度は、業務の必要性を前提に高度の専門的な知識経験または優れた識見を有する者に限定して適用することとしている。その意味で、任期付を適用できる職の範囲の限定を解除することは、自治体における任用・採用を無原則に流動化するとともに、自治体運営に重大な影響を及ぼすことから断じて容認できないことを主張してきた。その結果として、一定の要件に限定した法的規制のもとでの採用要件の拡大が提起されることとなった。引き続き、法制化に向けた厳格な対応が求められるものといえる。なお、現行の任期付職員制度創設時において国会の附帯決議が求めた、人事委員会が置かれていない自治体における情実採用の排除をはかる方策については、今日なお具体化されていないことを指摘しておく。
5.任用・勤務形態の多様化に関する報告は、研究会の任務を終えるにあたり、公務員制度改革についても言及している。しかし、その内容は、公務員制度改革大綱が指摘した概念を再掲し、第156通常国会における状況を踏まえた現時点においての公務員制度改革全体をめぐる情勢のもと、「現段階で最終的な姿を見ることはできない」という指摘にとどまっている。なお、研究会の解散により、公務員制度改革を検討する審議会等はすべて終了したこととなり、今後は、連合および公務労協による政労協議と、政府・行革推進事務局との交渉・協議、地方公務員制度については総務省公務員部との交渉・協議の場における対応に集約されることとなり、より一層の取り組みの強化が求められる。
6.最後に、6年半という長期間にわたる研究会における真摯な検討と論議は、民主的構成と運営のもと、積極的な評価に値するものと判断できるものであるが、任用・勤務形態の多様化をはじめとする地方公務員制度の改革について、なお多くの課題と問題点を残すこととなった。引き続き、労働基本権の確立を中心とする民主的・分権的な地方公務員制度の創設に向けた取り組みの再構築をはかるとともに、任用・勤務形態の多様化に関する報告の具体化に係る最初の機会となる2004年通常国会に向けて、定年制を適用した本格的短時間勤務職員制度の創設に関する対総務省及び国会対策の取り組みを強化していくこととする。

 2003年12月15日

公務員労働組合連絡会地方公務員部会
地方公務員制度調査研究会     
委 員  足 立 則 安
委 員  君 島 一 宇


以上