公務労協は、17日午後、財務省に対し「国家公務員宿舎使用料等の見直しに関する申入れ」(資料参照)を行った。これは12日に財務省から見直しの考え方が提起されたことから、公務労協として基本的な考え方を取りまとめてその実現を求めたもので、労働条件専門委員会が財務省斉藤国有財産調整課長に対し行ったもの。
冒頭、河田専門委員長が申入書を課長に手交した上で、「本日は、公務労協としての宿舎使用料見直しに対する考え方を申し入れたい。人勧による賃下げなどで公務員の生活や労働条件が厳しい中にあって、組合員からは宿舎使用料引上げに対する強い不満が出されている」として、申入れ内容を説明し、財務省の見解を求めた。
これに対し斉藤課長は、「国公・地公を含めて公共部門に携わっている公務員として、内外ともに厳しい情勢であることは真摯に受け止めている」とした上で、以下の通りコメントした。
(1) 見直しの理由については、宿舎使用料については宿舎法15条で「建設費用の償却額、修繕費、地代及び火災保険料に相当する金額等を考慮」して算定するものとされている。現在の使用料は平成4年改定以降は据え置かれており、その間に、税制上の建物償却期間の短縮(60年→47年)が行われ、この短縮後の年数が宿舎の建て替え実態に近いことから、それを反映させる形で使用料の改定を行うこととしたものである。税制上は5年ごとの見直しを行っており、13年に改正が行われていることから、14年度以降には見直す必要が生じていたが今回措置することとしたものである。
今回は、宿舎の設置等に要した費用等をより的確に反映するよう使用料算定方法等の見直しを行うこととし、@建物償却額について現存する宿舎の建設費用により算出すること、Aこれまで全国一律であった地代について、地域毎の地代に改めること、B立地条件の調整については、宿舎敷地を民間に貸し付けた場合の期待収益で行うこと、とした。
民間の社宅と比較した場合、社宅が福利厚生であるのに対し公務員宿舎はそうではないという違いはあるが、ほぼ同水準となることから、今回の見直しは適当なものであると考えている。
(2) 生活への配慮という点では、a〜e規格の内、標準的な規格であるc規格について、現行の「55平方メートル以上65平方メートル未満」を「55平方メートル以上70平方メートル未満」に改善することにしている。また、現在でもb規格対象者の場合でも扶養義務のある同居者3人以上についてはc規格に入居できるようにしているが、新たにc規格対象者についても扶養義務のある同居者3人以上についてはd規格に入居できる特例を設けることにするなど、居住環境の改善に努めているところである。
激変緩和については厳しいと考えているが、適否を含めて検討している。
(3) 入居基準は(2)の通り改善し、現状復帰の問題については、ご承知のように、6月に修繕の適正化・明確化の観点から通達を出し、畳・ふすま・ガラス等はセット(部屋単位など)ではなく損傷のある部分ということで最小施行単位(1畳、1枚)に改めた。入退去に当たって、隅々まで通達が徹底しているかと言えば、まだ不徹底のところが見受けられるので、さらに徹底させるべく取り組むのでそれを見守っていただきたい。原状復帰については、これですべてということではなく、引き続き適正化に努めて参りたい。
(4)実施時期等について十分に協議してほしいとのことだが、当方としては、早い段階から皆さんに対する説明を始めたことをご理解願いたいし、4月施行に向けて源泉徴収手続きの準備や周知の時間を確保する必要があるので、それに支障を生じない範囲で、十分話し合っていきたい。
課長のコメントに対し公務労協側は、@短期間で全国異動するという実態があることや本年人勧で給与が減額となったところであり、使用料引上げに対する組合員の不満は大きい。地方の宿舎の使用料引上げは予想より大きなものであるし、整備も十分でないのにどうして駐車料金を払うのかという不満もある。そのあたりのことも十分配慮してほしい、A職階で宿舎の規格を決めることも問題であり、われわれは家族数に見合った基準とすべきと考えており、c資格者にd規格を貸与する場合には、共働きも増えていることから、扶養ということでなく同居要件だけにすべきではないか、B地域区分を4つにわけたということだが、RCの資料しか示されておらず、木造、ブロック、昭和30年代建築のもの等がどう算定されるのか不明である。資料を示してほしい、C12日には各府省にも説明したということだが、周知徹底されていない。使用者責任ということもあり、職員からの意見を聞くよう指導すべきではないか、などとさらに見解を質した。
これに対し課長は、「職員に直接説明しろとのことであるが、まだはっきりしていないこともあり、固まった段階で説明したいと思っている」との見解を示すにとどまった。
公務労協側は最後に、「早い時期から説明をいただいていることは評価するが、これを労働条件として考え方た場合決して十分な期間ではない。問題は結果であるし、組合員が納得するためには時間も必要であるし、内容も見直されるべきなので、本日要望した事項の実現に努力するとともに、実施時期や公布時期も再検討してほしい。本日はお互いに誠意を持って話し合っていくことを確認していただきたい」と求めたのに対し、課長が「言われたことについては困難なことがあるが、話し合って参りたい」と約束したことから、河田委員長が「本日の申入れ内容について検討いただいて1月中旬には中間的な回答をお願いしたい」と要望し、申入れ交渉を終えた。
公務員連絡会労働条件専門委員会は、17日午後、調整手当異動保障の見直しと通勤手当の支給方法の見直しに関わる人事院規則改正を巡って、人事院勤務条件局と交渉を持ち、人事院規則改正作業の状況を質した。勤務条件局の説明によれば、今月26日に改正規則を公布する予定。
公務員連絡会側は、通勤手当の6ヶ月化により、返納等で本人に不利がないようさらに詳細を詰めることや新規採用者が高額の本人負担による立て替え払いをしないと定期が買えないような点についてさらに検討するよう求めた。
資料−公務員宿舎使用料見直しに関する申入書
2003年12月17日
財務大臣
谷垣禎一 殿
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 人 見 一 夫
国家公務員宿舎使用料等の見直しに関する申入れ
12月12日に貴職から提示された国家公務員宿舎使用料等の見直しの考え方については、@公務員宿舎使用料の引上げだけに焦点を置いたものであり、制度全体の抜本的な見直しとなっていないことA宿舎が現実にはたしてきた福利厚生面への配慮に欠け、公務員の生活への影響も無視し得ないものであること、などから極めて問題のある遺憾な内容といわざるを得ません。
公務員給与・労働条件を巡る状況は、公務員給与に対するバッシングが強まるなど、ますます厳しい情勢にあります。宿舎使用料等の見直しに当たっては、こうした厳しい情勢を踏まえつつも、使用料の引上げが与える仕事や生活面への影響を認識し、われわれと十分な交渉・協議を行い、納得いく結論を得ることを基本とすべきものと考えます。
以上のことから、下記事項を申入れますので、貴職におかれてはその実現に向けて最大限尽力されるよう強く要請します。
記
1.今回の見直しの理由や基準の変更について、明確で納得のいく説明を行うこと。
2.使用料等の改定内容については、激変緩和措置を含め、公務員の福利厚生や生活に十分配慮したものとすること。
3.公務員宿舎制度の抜本的な見直しを行うこととし、当面、入居基準、原状復帰基準等を直ちに見直すこと。
4.見直しの時期・内容等について公務労協と十分交渉・協議し、合意すること。
以上