2004年度公務労協情報 9 2004年1月20日

公務公共サービス労働組合協議会

宿舎使用料見直しで財務省と交渉−20日
−激変緩和措置と公布日程の先延ばしの回答引き出す−

 公務労協労働条件専門委員会は、20日午後2時から、財務省の斉藤国有財産調整課長らと交渉を行い、昨年12月17日に提出した「国家公務員宿舎使用料等の見直しに関する申入れ」に対する中間的な回答を求めた。
 冒頭、河田専門委員長が、「12月17日に申し入れを行い、十分な交渉・協議を行うことを約束していただくとともに、1月中旬には中間的な回答を行うよう求めてきた。申し入れ内容は十分検討いただいたと思うので、きょうは、財務省としての考え方を示していただきたい」として、財務省の見解を求めた。
 これに対し斉藤課長は、「12月17日にいただいた申入書について検討してきたので、今日段階の考え方を申し上げたい」とした上で、以下の通り、申し入れ事項に対する考え方と、前回申し入れ時の質問事項に対する見解を示した。

(1) 1の見直しの理由については、前回申し上げたことと重複するが、宿舎使用料については、従来から宿舎法15条で「建設費用の償却額、修繕費、地代及び火災保険料に相当する金額等」を基礎として算定するものとされているが、平成4年改定以降は据え置かれて10年以上経過しているし、その間に、税制上の建物償却期間の短縮(60年→47年)が行われ、この短縮後の年数が宿舎の建て替え実態に近いことから、それを反映させる形で使用料の改定を行う必要性が生じていた。税制上の見直しは5年ごとであり、平成13年3月31日に行われたことから、14年度以降には見直す必要性が高まっていた。
 宿舎料についても、国民に対して説明責任を果たしていくことが重要であり、今後も適切な宿舎運営を行っていくためにも、今回宿舎料の改定を行うこととしたものである。
(2) 2の激変緩和措置の問題については、今回の改定では従来の改定時と異なって、大幅な住居費や物価の上昇がないことから、実施する方向で検討している。なお、提示した使用料の引き上げ率の見直しは考えていない。
(3) 3の原状回復については、昨年6月に修繕の適正化・明確化の観点から通達を出し、畳・ふすま等は部屋単位ではなく損傷のある部分ということで最小施行単位(1畳、1枚)に改めるという抜本的改正を行った。さらに退去時にアンケート調査を行い、今後の見直しに取り入れていくことにしている。6月の施行後、日も浅いし、実態を把握する必要があることから、それらを踏まえ、必要に応じて今後検討していきたい。
(4) 4の十分な協議については、過去の改定の時に例を見ない早い時期から皆さんに説明していることをご理解願いたいし、現在、関係機関と協議していることや皆さんからの要望も踏まえ、公布は1月末を予定したが、それより若干後ろになるのではないかと考えている。
(5) 前回2つ上の規格まで認めるべきではないかとの話があったが、あくまで特例措置であるし、必要性がどれだけあるかということにもなるが、b規格資格者は行(一)1〜3級であり、子どもは小さいので、d規格まで広げる必要性はないのではないかと考えている。
 田舎・地方にある宿舎についてコスト計算で配慮したかということについては、コスト計算に基づくということが大原則であるが、従来は全国一律で計算してきたが、今回は都市の引き上げ率が高く、町村部は低くなっており、地方に配慮したものである。木造やブロック造や償却期間を過ぎた宿舎は、従来からRC造に準じて改定してきた。古い木造やブロック造でも引き上げになるのは事実であるが、使用者にはできるだけ負担にならない形になっているのでご理解願いたい。

 示された回答に対し公務労協側は、次の通り重ねて明確な見解を示すよう強く迫った。

(1) 今回の中身を見ると、今までより対応が早いということはあるものの、唐突に出てきたことや、公務員賃金が2年連続マイナスの時に大幅に上がることに対して、組合員の強い不満がある。引き上げ幅や実施時期を含めて再検討してもらいたいし、十分な激変緩和措置も取ってもらわないと組合員は納得しない。
(2) 組合員の不満は、なぜ今なのかということだ。だから明確で納得のいく説明を求めてきた。公務員給与バッシングがなされる状況の中で、宿舎料を大幅に引き上げることが納得できない。財務省もマスコミなどにおもねているのではないかとの不信感が強い。従来と違って十分話し合っていきたいという姿勢であるのなら、踏み込んだ説明をお願いしたい。
 宿舎制度そのものの抜本見直しは行わないで、値上げだけやることに対する不満も大きい。たとえば、級だけでランクづけるのはおかしいということだ。これだけ上げるんだから、制度見直しに向けた姿勢もきちんと示すべきだ。基本姿勢を根本から再考してほしい。
(3) 入居基準については、対象者が少ないとしても、対象者が出てきたときに対応できるようにしておいてほしいということである。原状回復も昨年6月に通達改正はされたが管理人によって対応が異なるという指摘がなされている。中身の問題だけでなく、こうした問題にも対応できるよう検討していただきたい。
(4) 国民の目線ということもわかるが、民間企業では福利厚生について社長が責任を持って行っている。それに対して、公務員に対する使用者責任はどうなっているのか。社会保険関係では職員の三分の一が宿舎に入っているが、大幅に値上げされると勤労意欲にも悪影響を与えることになる。財務省として使用者責任を果たすという意気込みを示していただきたい。
(5) 単身赴任者は家族が別れて生活するだけで大変なのに、引上げによってさらに過重な負担を強いられる。単身赴任の場合の負担を改善してほしい。
(6) 公務の都合で異動しているが、地方ではRCではなく木造やブロック造になっている。冬はすきま風が入ったり、よく人が住んでいるなというところもある。寒冷地手当も下げるという話が出てきている。そういうところがどうして上がるのか。納得できる説明をしてもらいたい。どういう基準で上げるのか。

 これに対し財務省は次の通り見解を示した。
(1) 給与と宿舎料は直接関係ない問題である。唐突ということだが、減価償却が平成13年3月31日に改正されて、平成14年の今頃その取扱いが確定し、宿舎料を改定する必要性が生じた。それを踏まえて対応することにしてきたものであり、唐突に出てきたわけではない。
 重ね重ねの公務員バッシングの中であるが、民間のリストラや合理化の結果が公務員給与の引き下げにつながってきている。そうした状況の中で、国民の目線で行政をやらなければならない。大幅な値上げということになるが、公務員に対する厳しい環境の中で激変緩和を行おうとしていることをご理解願いたい。
(2) 原状回復について、どうしても主観が入ってしまうことから、管理人間で異なることが見受けられたことから、今回はガイドラインを作り、管理人や入居者にわかるようにしてきた。言われるようなことがあれば、アンケートなどを通じて、改善をしていきたいと考えている。
(3) 木造やブロック造は、コスト計算で行うという考え方もあるが、従来からRCに準じた率で改定しており、今回もそうしている。入居者の負担にならない方法を選んだつもりである。
(4) すきま風の宿舎もあるかもしれないが、そうしたところは建て替えることが先決で、そのためにも先立つものが必要である。雇用者(使用者)責任という点については、建て替えを促進するということも含め対処していきたい。

 最後に、河田委員長が「生活のためには宿舎が必要であることは間違いなく、建て替えや入居基準、原状回復問題などいろいろな問題がある。この際、こうした個別の問題を含めて、宿舎についてトータルに検討してもらって、考え方を整理して示していただきたい。また、激変緩和や公布の時期の問題も含めて最終的にどうするのかを決める前に、公務労協と十分交渉・協議を行って、われわれが納得できるものにしていただきたい」と強く要請したことに対し、斉藤課長は「公布する前に皆さんにお示ししたい」と約束、引き続き交渉・協議を継続することを確認し、交渉を終えた。

 公務労協では、公布時期のタイムリミットを見据えつつ、今後とも激変緩和の具体策の提示や宿舎制度の抜本改善の全体像の提示を求め、交渉・協議を強めることとしている。

以上