2005年度公務労協情報 14 2004年12月16日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員連絡会

基本要求の回答引き出しで人事院、総務省と幹事クラスが交渉−12/16

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、16日午後、人事院鈴木職員団体審議官、総務省人事・恩給局森次長と交渉をもち、11月11日に申し入れた2005年度の賃金労働条件の改善に関わる基本要求に対する回答を求め、下記の通りそれぞれ今日段階における人事院、総務省の見解を引き出した。
 公務員連絡会としては、これらの回答内容を踏まえ、2005春季生活闘争に結びつけていくこととしている。
 人事院、総務省交渉の経過と回答内容は次の通り。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院鈴木職員団体審議官との交渉は、16日午後1時30分から行われた。
 冒頭公務員連絡会側が、11月11日の申入れに対する回答を求めたのに対し、審議官は次の通り人事院の現段階の見解を示した。

(1) 給与構造見直しについて
 従来もできるだけ良く話し合う姿勢で対応してきており、今後もその姿勢で臨む。
(2) 給与水準について
@民間準拠の基本原則にのっとり、公務員給与の適正な水準を確保していく基本姿勢は変わらない。
A比較企業規模については、本年の勧告に向けて、春の時点で総裁から回答した経緯はご承知のとおり。
B来年に向けては、まだ検討する段階ではない。
(3) ワークシェアリングについて
@ワークシェアリングに関する基本的な方向は、国の雇用政策全般の中で判断されるべきものと考える。
A公務において仮にこれを推進していくとすれば、職員の勤務条件のあり方、各府省における業務執行体制や行政サービスへの影響を考慮しつつ、慎重な検討が必要と考える。
(4) 多様な勤務形態に関する研究会等について
 研究会では、中間とりまとめで取り上げられなかった課題について、来年の最終報告に向け検討が進められるが、審議の過程で、引き続き、職員団体等の意見を聞く機会も予定されている。
(5) 勤務時間について
@超勤縮減については「超勤縮減対策連絡会議」等を通じて、政府一体となって取り組んでいる。
A研究会の中間とりまとめでも提言されているように、管理者の適正な超勤命令の確保など、各府省において適正な勤務時間管理が行われるよう、総務省等とも協力しつつ取り組む。
(6) 両立支援に関する16年報告事項等の措置について
@法律事項
ア、短時間勤務:制度官庁等との調整も必要であり、引き続き検討する。
イ、部分休業の拡充(子の年齢引き上げ、1週内で1日の休業を可能にする措置)については、現時点で、いつとは言えないが、できるだけ早く意見の申し出をするよう努力する。なお、1日における部分休業時間数の拡大は規則事項であるが、部分休業全体の措置と合わせて検討する。
ウ、勤務時間の弾力的割振りについては、引き続き検討する。
A規則事項
 以下の事項について、12月28日規則改正公布、1月1日施行(早出・遅出は4月1日施行)の方向で検討中である。
ア、男性の育児特別休暇については、妻の産前産後期間内において5日以内、時間単位取得とする方向である。
イ、育児介護を行う職員に対し、早出・遅出勤務を適用する。ただし各省の規程整備が必要であるので、4月までの間に整備してもらい、実施する。
ウ、子の看護休暇の時間単位取得を可能とする。
エ、介護休暇の申請期限を緩和する。
オ、配偶者出産休暇の取得事由の拡大と時間単位取得を行う。
B民間の育児介護休業法の改正に合わせて、非常勤職員への看護休暇の導入については、4月実施の方向で検討中である。
(7) 男女共同参画について
@各府省人事課長で構成する「女性職員採用・登用拡大推進会議」等の場を活用しつつ、人事院の「指針」のフォローアップ等を通じて、各省の取り組みを促している。
A両立支援策については、16年報告事項等、積極的に取り組んでいる。
(8) 再任用について
@再任用制度の円滑な運用を確保することにより、雇用と年金の連携を図るとともに、職員の長年培った能力・経験を有効に発揮できるよう、高齢対策担当者会議等を通じて、各省を指導し、その取組を促進、支援している。
A今後、各省の実態も把握しながら、各省が積極的に再任用できる環境の整備について更に検討していく。

 これらの回答に対して公務員連絡会側は、@給与構造の見直しについては公務員連絡会が提出した申入れ(11月11日付け)の実現に努力することA両立支援策のうち規則改正事項については一部に不満はあるが基本的に受け入れる方向で検討するが、部分休業の改善や短時間勤務制などの法律事項については早急に実現する立場でさらに努力すること、などを求めた。
 さらに、「給与水準」に関わっては、「比較企業規模問題について昨年は『現時点で変更は考えていない』との回答だったのが、本年の回答は何故『まだ検討する段階ではない』という回答となったのか」「これまで歴史的・制度的に確立してきている人事院の基本姿勢を踏まえる姿勢には変わりないのか」「単なる作業スケジュールの問題だとすれば、その方針を決めるのはいつの段階か」と、厳しく人事院を追及した。これに対して審議官は「来年の勧告作業の方針をまだ決めていないということだ。来年の春段階までには方針を固めることになる。その際、これまでの企業規模に関わる経緯や勧告作業に当たっての基本姿勢は十分認識し、検討することになる」とし、あくまで今後の作業を踏まえて来年の勧告方針を決定する、との見解を繰り返し、企業規模の変更は考えていないとの明確な回答は示さなかった。
 そのため公務員連絡会側は、「来年の給与改定に対する人事院の基本姿勢が揺らぐような回答は受け入れられない。極めて遺憾である」と、人事院の曖昧な姿勢を批判し、「この問題については2005春季生活闘争で改めて要求し、明確な回答を求める」とし、この日の交渉を打ち切った。

<総務省人事・恩給局次長交渉の経過>
 総務省人事・恩給局森次長との交渉は、同日午後3時から行われた。冒頭、公務員連絡会側が基本要求に対する回答を求めたのに対して、次長は「今の時期における総務省の考え方」として次の通り見解を示した。

(1) 給与に関わる事項について
@国家公務員の給与については、厳しい財政事情等を背景に総人件費抑制も含め様々な議論がなされることがあるが、総務省としては、今後とも労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮し、公務員連絡会とも十分に意見交換を行いながら、適切に対処していきたい。
A退職手当制度については、平成13年12月の「公務員制度改革大綱」や人事院における「給与構造の基本的見直し」の検討などを踏まえて、制度面の見直しについて検討する必要があり、公務員制度改革全体の動向を十分に踏まえつつ、対応していきたい。なお、退職手当は職員の重要な関心事項であり、公務員連絡会からの意見は十分承っていきたい。
(2) ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇に関わる事項について
@短時間勤務制度の実現については、公務員制度の広範にわたる検討や民間における動向、国家公務員におけるニーズ等の把握が必要であると考えている。また、本年度の人事院報告においては、公務と育児・介護など家庭生活を支援する方策としての短時間勤務の検討について触れられているところであり、今後人事院において検討が進められ、具体的な措置に関する意見の申出があれば、適切に対処していきたい。
A労働時間の短縮については、これまでも「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進等の取組を進めており、昨年9月には同対策の見直しを行ったところである。
 各府省において、同対策に基づいた様々な検討・取組が進められていると考えているが、今後とも同対策の着実な実施に向け、各府省の実務担当者による連絡会議の場等を活用して十分な議論を行い、その促進を図っていきたい。
(3) 福利厚生施策等に関わる事項ついて
 職員厚生経費については、国家公務員の福利厚生の充実を図るため、毎年度各府省等が統一して要求を行っているところであり、財政事情の厳しい状況ではあるが、総務省としては、今後とも福利厚生経費の充実に努めていきたい。
(4) 在職期間の長期化並びに高齢者再任用制度に関して
 高齢国家公務員の雇用については、平成13年6月の「国家公務員高齢者雇用推進に関する指針」において、再任用制度を高齢国家公務員雇用の基本的方策と位置づけており、総務省としては、関係機関と緊密な連携を取りつつ、各行政機関が行う高齢国家公務員の雇用に関する事務について必要な総合調整を行うなど、政府全体として、高齢国家公務員の雇用を推進していきたい。
(5) 男女平等の公務職場の実現に関わる事項について
@女性国家公務員の採用・登用の促進等については、「男女共同参画基本計画」、「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」を踏まえ、各府省において「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し、総合的かつ計画的な取組を行っているところであり、本年4月には各府省人事担当課長会議において女性の採用に係る政府全体としての数値目標を設定するなど、具体的な取組を申し合わせたところである。
 短期間で解決できるものではないと思うが、総務省としては、内閣府や人事院等の関係行政機関と連携を図りつつ、引き続き女性国家公務員の採用・登用の促進等を積極的に推進していきたい。
A次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画については、行動計画策定指針において、職員の意見の反映のための措置を講ずることとされており、各府省において実情に応じた工夫がなされているものと考えている。
(6) 公務員制度改革に関わる事項について
 公務員制度改革については、内閣官房を中心に、与党における議論をも踏まえ、組合を含む関係各方面との調整を行いつつ検討が進められてきたが、関係各方面との調整状況にかんがみ、法案の臨時国会提出を見送ったところであると承知している。
 今後の取組については、法案の扱いについては、制度設計の具体化と関係者間の調整を更に進め、改めて改革関連法案の提出を検討するとともに、一方で、現行制度の枠内で実施可能なものについては実行に移していくような方向で、年末に策定する「今後の行政改革の方針」において、現行制度下での取組も含め新たな方針を打ち出すこととすることで、政府部内で検討を行っているところと承知している。
 いずれにせよ、改革を着実に進めるにあたっては、関係者の理解と協力が必要であり、組合との意見交換は重要であると認識している。総務省としては、改革の進展に向け、組合との意見交換をはじめ、引き続き努力していきたい。
(7) その他の事項
 障害者の雇用については、各府省に対し「人事管理運営方針」において、障害者雇用促進法の改正を踏まえ適切な措置を講ずるよう要請しているほか、本年6月に障害者施策推進課長会議の下に設置された「公務部門における障害者雇用推進チーム」において、公務部門における障害者雇用マニュアル(仮称)の作成について検討しているところである。こうした取組を通じ、今後とも障害者雇用の促進を図っていきたい。

 これらの見解に対し公務員連絡会側は、@目にあまる公務員給与バッシングや人勧制度の枠を超えたような政府部内の公務員給与引き下げの議論が伝えられているが、これらに対して使用者として毅然として対応すべきであるA福利厚生経費の増額は是非実現するよう努力してもらいたいB高齢者雇用について民間の新たな動きもあり、施策のあり方の抜本的な検討をすべき段階にきているのではないか、とさらに総務省の見解を求めた。
 これに対して総務省側は、@については、マスコミ等でいろいろな議論を行うことまで止められないが、総務省としてはあくまで現行の人勧制度の枠組みのもとで適切な給与水準が確保されているという認識は変えないし、政府部内でも人勧尊重の基本姿勢で対応していく、Aについては、各省と申し合わせながら必要な増額を要求するなどの充実に向けた努力はしてきているが、今日段階で財務省からの回答はまだない、B民間の動向を十分みながら公務の対応を考えていくが、当面は再任用制度を推進していくのが適当だ、との見解にとどまった。
 また、公務員連絡会側が公務員制度改革に関わって「近々に閣議決定される予定の新行革方針には、当面の措置として、総務省人事・恩給局が中心になって評価の試行を進めることが盛り込まれ、総務省もこれを受け入れる姿勢だと聞いている。現段階で、行革推進事務局からわれわれに今後どうするというような提起は一切ないが、総務省としてもこの問題にただ閣議決定されたから対応するということにはならない。まず、今後、公務員制度改革をどのように進めるのか、その中で何を目的として、どのような評価を行うのかという基本的な問題の整理を行う必要がある。その上で、行革推進事務局と総務省の間の手続きも必要だ。そうした作業を進める枠組みの整理が先行されるべきである」と、評価の試行に関わって総務省の見解を質した。これに対し、次長は「おっしゃるとおりどのようなプロセスを踏んでいくかは必要であるが、いま現在関係者でその方針は明確でない部分もある。これを進めるのであれば、しっかりしたバックボーンが必要だと考えており、政府内部で議論しながら固めていきたい。どのようなものを行うのかを含め、節目節目で組合の意見を聞かせてもらいたい」とし、評価の試行に関わるプロセスやバックボーンの整理を進める必要があるとの考え方を示した。
 公務員連絡会側は、あくまで基本的な問題の整理を行った上で、総務省としての対応を進めるよう強く求め、この日の交渉を終えた。

以上