2005年度公務労協情報 23 2005年3月22日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員連絡会

人事院総裁、総務大臣から春の段階の回答引き出す−3/22

−公務員連絡会は「声明」確認、人勧期闘争に全力−

 公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、2005春季生活闘争の回答指定日に設定した22日、10時30分から総務大臣、13時30分から人事院総裁と春の段階の最終交渉を行い、それぞれ回答を引き出した。
 公務員連絡会はこれらの交渉を踏まえ、企画調整会議・幹事会合同会議で回答内容(資料1.2)と「声明」を確認した(資料3)。また、明日(23日)を第3次全国統一行動日として設定、各構成組織ごとに本日の政府・人事院回答内容を報告し、今後の人勧期の闘いに向けた意志を固めるための時間外職場集会を開き、人事院に対する要請打電行動を実施することを確認した。
 本日の人事院総裁、総務大臣交渉の経過と回答内容、公務員連絡会の「声明」は次のとおり。

<総務大臣交渉の経過>
 麻生総務大臣との交渉は、10時30分から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して総務省内で行われた。
 冒頭丸山議長は、「2月14日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、大臣から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する大臣回答を求めた。
 これに対して大臣は、資料1の通り回答を示した。
 大臣回答を踏まえ丸山議長は、次の通り見解を述べた。
(1)われわれ公務においては、要求提出の際に大臣も強調されていたとおり、目に余る公務員バッシングが行われ続けている。その中で、公務員給与については、賃金労働条件決定の原則から大きくはずれ、まさに「政治の道具」(自民党内の様々な動向や経済財政諮問会議の議論)として取り扱われている感がある。こうした事態については、まず、公務員の使用者たる政府が、「政治」に対し毅然として臨んでもらいたい。
(2)ただいまの大臣の回答で、@人事院勧告制度尊重の基本姿勢にたって適切な公務員給与を確保していくとの考え方や、A「評価の試行」について、相互に納得いくまで十分協議する姿勢が示されたことについては評価したい。
(3)これから人勧期において、われわれと人事院との本格的な話し合いが始まるが、地域給与見直しなどの難問が横たわっている。年々格差が拡大するもとで本年の給与改定を巡る情勢も厳しいものとなることが予想される。是非、使用者の立場からもご努力いただきたい。
 続いて、地公部会佐藤議長は「自治体職員の給与財源の確保に向けて引き続き努力をお願いしたい。また、地方の行革がいわれ、何でも民間に任せればいいという意見があるが、自治体は地域住民の福祉、生活と安全に責任を負っており、行政サービスの安易な民間委託は行政責任を放棄することになると思う。自治体が自主性を持って行政サービスの適切な水準を確保し、提供していくことができるよう、努力願いたい」と、給与改定財源確保等への努力を要請した。

 これに対して大臣は、「バッシングについては、公務員に対する国民の見方が変化してきていることも要因としてあるが、日本の公務員数が諸外国に比べて少ないことなどは知られていない。総務省としても、人材確保の観点から毅然として対処していきたい。地域給与についての公平性・透明性の指摘については大事にしていきたい。地方行革については、官と民ではなく、公のゾーンをどうするかが大事だ」などとコメントし、「要望については検討させてもらう」と述べた。
 これらのやり取りを踏まえ、最後に丸山議長は「本日の回答は、総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」とし、交渉を締めくくった。


<人事院総裁交渉の経過>
 佐藤人事院総裁との交渉は、午後1時30分から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して人事院内で行われた。
 冒頭丸山議長は、「2月14日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、総裁から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する総裁回答を求めた。
 これに対して総裁は資料2の通り回答を示した。
 総裁回答を踏まえ丸山議長は、次の通り見解を述べた。
(1)われわれ公務においては、公務員バッシングの嵐が吹き荒れ、賃金労働条件決定の原則をはずれ、政府・与党(自民党内の様々な動向や経済財政諮問会議の議論)によって「政治の道具」として公務員給与が扱われている感がある。こうした事態については、まず、労働基本権制約の代償機関たる人事院が「政治」に対し毅然として臨んでもらいたい。いずれにしろ、こうした点を考えると、本年の人事院勧告期を巡る情勢もこれまで以上に厳しいものとなることが十分予想される。
(2)ただいまの総裁回答で、現行の官民比較基準を変えないとの見解や給与改定に対する基本姿勢が示されたことについては評価したい。しかし、最重要課題として取り組んできた地域給与・給与制度見直しについて、春の段階で、われわれの要求に対して誠意ある回答が示されなかったことは極めて遺憾である。この際、改めて強調しておくが、@俸給表水準を引き下げる地域給与見直しA評価制度の整備なき査定昇給制度導入、などについてはやめてもらいたい。本日の回答では、われわれの「納得を得るよう努める」との姿勢が示されたので、人勧期においてもその姿勢を堅持し、文字通り、「合意」に向け誠意ある交渉・協議を進めてもらいたい。

 これに対し総裁は「現時点で個別具体的なことについては触れないが、人事院の基本認識として、今日の逆風に対応するためには、地域給与見直しと査定昇給の2つのエンジンが必要だと考えている。この点を是非理解してほしい」との見解を示した。
 これに対して議長は「現状では到底、地方の職員の給与ダウンについての理解が得られない。これまでの交渉経過を見ても、人事院も十分説明責任を果たしていない。今後人勧期に向け、十分交渉・協議し、合意しうる提案をしてもらいたい」と要請し、「本日の回答は、総裁の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と、人事院総裁交渉を締めくくった。


資料1.総務大臣の2005春闘回答

総務大臣回答


2005年3月22日


1 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
 平成17年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
 なお、平成14年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
 国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
 また、国家公務員の給与については、誤解に基づく議論等に対して毅然として対応し、正確な情報提供に努める等により、国民の理解が正しく得られるよう、一層努力する。

2 政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
 なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。

3 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。

4 公務へのワークシェアリングの導入や短時間公務員制度の発足等については、民間における動向も踏まえながら、国家公務員の多様な勤務形態の導入を図ること等についてのニーズを見極めた上で、常勤職員の勤務時間の在り方などについて、人事院とも連携・協力しながら検討を進めてまいりたい。

5 公務員の高齢者雇用については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
 今後とも、雇用と年金の連携に留意しつつ、公務員の高齢者雇用の推進については、民間の動向の把握を図るとともに、職員団体の意見を聞きつつ取り組んでまいりたい。

6 男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の円滑な実施が図られるよう、関係機関と協力しつつ、適切に対応する。

7 新たな人事評価システムの構築に向けた「評価の試行」の検討に当たっては、職員団体とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。

8 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めたい。


地公部会に対する総務大臣回答

2005年3月22日


1 地方公務員の給与については、労使間の交渉もあるが、条例で定められ、その内容は、地方公務員法の趣旨に則り、国家公務員の給与を基準としつつ、地域の実情を踏まえて決定されるべきものである。
 具体的には、当該団体の規模や給与の実態、その他の事情を総合的に勘案した上で適正な内容となるべきものと考えている。
 今後とも、このような考え方に基づき、必要な助言等を行ってまいりたい。

2 三位一体の改革については、3兆円の税源移譲を目指すこととし、平成18年度までは地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するなど、平成18年度までの改革の全体像を示したところである。
 これを受けて、平成17年度においては、地方財政計画の歳出を抑制しつつも、前年度以上の交付税総額や一般財源総額を確保したところであり、国庫補助負担金の改革に対しては、1兆1,160億円の税源移譲等を行ったところである。
 今後とも、引き続き、地方の声に十分に耳を傾けながら「三位一体の改革」に取り組み、地方税財政基盤の充実を図ってまいりたい。

3 地方公務員の人事制度については、昨年末に閣議決定された「新たな行政改革の方針」に基づき、より客観的な評価制度の導入を通じた能力・実績重視の人事制度の確立を支援してまいりたい。
 また、新たな評価制度については、もとより職員の理解と納得が得られるよう努めることが重要と考えており、今後とも、新たな評価制度が円滑に導入されるよう、必要な助言を行ってまいりたい。

4 御案内のとおり、昨年10月に研究会を設置し、学識経験者や地方公共団体の関係者、経済界、労働界の代表者にも御参加いただきながら、幅広い観点から検討を進めており、本年度末を目途に中間整理、来年度中に最終報告を取りまとめる予定。
 なお、研究会の検討状況については、ホームページに概要を公開しており、中間整理についても広く公表し、各方面の御意見をいただきながら、今後更に検討を進めてまいりたい。
 公務員連絡会に対しても、必要に応じ情報提供と意見の把握等をさせていただきたいと考えている。


資料2.人事院総裁の2005春闘回答

人事院総裁回答

2005年3月22日


1 官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
 人事院としては、 現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない。
 また、給与改定に当たって、公務員連絡会が交渉、協議、納得を求めていることについては理解する。
 なお、公務員給与についての誤解に基づく議論については、毅然として対応し、国民の理解が正しく得られるよう一層努力する。
 公務員給与について、状況の変化等により是正する必要があるところについては、適時に見直していく必要がある。

2 公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、公務員連絡会の要求及び公務員の生活を考慮して、人事院の重要な使命として、適切に対処する。

3 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて公務員連絡会と十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
 公務員の給与構造・地域給与の見直しについては、公務員連絡会の意見を十分聞きつつ検討を進め、その納得を得るよう努める。
 なお、新たな人事評価システムの確立に向けて、関係者とも連携し、取り組みを進める。

4 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。

5 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び公務員連絡会の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
 超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減に向けて努力する。
 育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の導入等については、関係機関との調整を図りながら、できるだけ早期に実現するよう検討を進める。
 また、育児休業の取得を含め男性職員の育児参加の促進に向け、引き続き努力する。

6 公務のワークシェアリングについて公務員連絡会が強い関心を持っていることを十分認識し、引き続き研究・検討を進める。
 多様な勤務形態の検討に当たっては、研究会の検討状況を踏まえ、公務員連絡会が抜本的な超過勤務の縮減や常勤職員の短時間勤務制度の早期実現を求めていることなどに十分留意し、具体的な検討を進める。

7 自己啓発等のための休業制度については、引き続き検討を進める。

8 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の実施に向け、国家公務員の勤務条件を所管する立場から、適切に対応する。


資料3.公務員連絡会の声明
声 明


(1)本日、公務員連絡会は、総務大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2005年春季要求に対する回答を引き出した。
(2)2005春季生活闘争は、景気の先行きへの不安が拡大する中で、先行組合が前年実績を上回る回答を引き出し、中小組合などが格差是正に向け懸命の取り組みを進めている最中にある。
 われわれの春季生活闘争は、公務員に対するかつてないバッシングが吹き荒れる情勢のもとで、地域給与・給与制度見直しに対する闘いを最重要課題として位置づけ、中央・地方で様々な取り組みを進めてきた。また、連合が提起した「格差拡大と負担増の小泉構造改革NO」の運動に結集し、地域経済の活性化や格差是正を目指して団体署名や議会決議採択に全力で取り組んできた。
(3)本日の回答では、人事院から、現行の官民比較基準を変えないことや給与勧告に対する基本姿勢を確認し、政府からも、現行の公務員給与水準が適正であることや本年の給与改定に対する基本姿勢を確認することができた。
 しかし、地域給与・給与制度見直しについて人事院は、俸給表水準の引下げや評価制度の整備なき査定昇給制度の導入案などに固執し、われわれの要求に対して誠意ある回答を示さなかったことは極めて遺憾である。われわれは、格差の拡大や二極化が社会的に大きな問題となっているとき、さらにそれを助長することとなる公務員の地域給与見直しや公正・公平、透明、納得性からはほど遠い査定昇給制度の導入を一方的に勧告することは認められない。人事院には、文字通り「納得を得るよう努める」との姿勢のもと、「合意」に向け誠意ある交渉・協議を行うことを強く求める。
 本年の人勧期を巡る情勢は、極めて厳しいものとなることが予想されるが、公務員連絡会は、地域給与・給与制度見直しに対する基本要求を堅持し、その要求実現に向けて職場・地域からねばり強く闘いを組織することとする。
(4)公務員給与は、今や賃金労働条件決定の原則から大きくはずれ、政府・与党によって「政治の道具」として取り扱われ、徹底した歳出削減や増税路線へのスケープゴートとして利用されている。そして、6月に予定される「骨太方針2005」では、より強力な公務員人件費の「削減」方針が打ち出されようとしている。また、最近では、さらにバッシングがエスカレートし、自民党の党利・党略で、時代に逆行した公務員の政治活動や組合活動の規制強化まで画策されつつある。このことは、単に公務員組合に対する攻撃にとどまらず、時の政権与党からする民主主義と連合労働運動全体に対する公然たる挑戦である。
 われわれは、現下の厳しい情勢を直視し、文字通り原点に立ち返り、交渉による賃金労働条件決定システムの確立を目指しつつ、公務員給与の社会的合意の再確立に向け全力で闘いを進めて行かねばならない。また、いわれなき公務員バッシングには毅然として対決し、組合活動に対する規制強化などの組織破壊攻撃には、連合とともに、いつでも、どこでも、直ちに反撃できる体制を整える必要がある。
 そして、国民生活の安心・安定を根こそぎ奪う公共サービス解体政策に強く反対し、良い社会をつくる公共サービスキャンペーンの成功を目指し、「格差拡大と負担増の小泉構造改革にNO!」運動に結集するすべての仲間とともに組織の総力を挙げて闘い抜いていかなければならない。
(5)われわれは、明日、23日の第3次全国統一行動日には、各構成組織ごとに本日の回答内容を報告し、人事院が地域給与見直し等で誠意ある回答を示さなかったことに抗議し、引き続く人勧期の取り組みへの決意を確認する職場集会を実施することとする。また、より困難な情勢のもとで闘いを進めている中小及び地域の仲間や国営関係部会の仲間と連帯し、春季生活闘争中・後半期の闘いを推し進めることとする。

2005年3月22日

公務員労働組合連絡会


以上