人事院は、4月21日、本年の民調作業に関する方針が固まったとして、公務員連絡会・労働条件専門委員会にその骨格を提示した。人事院は例年5月連休明けから、夏の人勧にむけた基礎作業として民間給与実態調査を実施しているが、公務員連絡会はそれに先だって調査内容等に関わって交渉を進めてきたもので、本年調査のうち、春闘交渉の中で新たに行うこととが提案されていた「非正規労働者調査」については12日に交渉を行った(公務労協情報No.25参照)が、この日の交渉ではその他の調査項目やスケジュールを含めた全体的内容が示された。
冒頭、人事院の森永参事官は「民調作業についてはいろいろとご要望をいただいているが、基本的骨格は例年どおりである」として、次のとおり内容を明らかにした。
(1) 調査期間については、5月6日(金)〜6月14日(火)の40日間。
(2) 調査対象事業所は、企業規模100人以上、事業所規模50人以上とする母集団40,000事業所(昨年は37,000事業所)から抽出した8,300事業所(同8,100事業所)。調査実人員は、昨年の実績等を踏まえると約36万人と見込んでいる。なお、本年、事業所数が増えたのは母集団自身が増えたことや静岡市が政令指定都市となり抽出率が上がったからである。
(3) 調査職種は76職種(うち初任給関係18職種)であり、昨年に比べ1職種減っているが、公務に対応職種がない新卒事務員(中卒)を外したことによる。
(4) 調査項目については、初任給調査、個人別給与調査、事業所単位の賞与等の支給状況や給与の支給総額、事業所における給与改定の状況、厳しい経営環境の下での民間の雇用調整の状況などについては概ね従前どおりのものとなっている。このほか、例年同様、最近における民間賃金制度の動向を把握するための制度調査を行うこととしている。調査項目の概要は次のとおり。
@ 本年も引き続き厳しい春闘情勢であることを踏まえ、本年の給与改定を行ったかどうかの状況、昇給制度、賃金カットの状況などを詳細に調査する。
A 雇用調整の状況については、例年どおり調査する。
B 給与構造の見直しと関わって、昇給制度の状況(減額査定の有無や査定昇給の分布割合等)、役付手当の支給状況(手当の有無、定率・定額の別、個人別支給額)等について、調査する。
C 家族手当については、昨年同様に支給状況に加え制度の見直し状況を調査するとともに住宅手当および通勤手当についても支給状況等を調査する。
D 一時金については、昨年同様民間企業における昨年8月から本年7月までの1年間の支給水準を精確に把握するとともに、平成16年冬季賞与の配分の状況(一定率分、考課査定分)および考課査定分の反映状況について調査する。
これらの内容に対し、公務員連絡会側は@春闘情勢は厳しいとのことであるが、本年の民賃の動向をどのように認識しているかA一時金についてこれまで同様考課査定分を調べるということだが、そもそも二つに分けられないのではないかB調査対象事業所の規模別割合に変わりはないかC公務員でなくなった国立大学法人はどうするのか、について人事院側の考え方を質した。
これに対し参事官は、次のとおり答えた。
@ 日本経団連や連合の調査結果を見ると0.03%しか上がっておらず、調べてみないとわからないが、厳しいのではないかと思っている。
A 一時金について、明確には分けられないということもあるかもしれないが、本年は一定率分、考課査定分の比率だけでなく、分布状況も調べることにしている。
B 規模別割合は昨年と変わらない。
C 国立大学法人は調査対象にしていない。
これらの回答を踏まえ公務員連絡会側は、「本年の民調内容は従来通りであることを確認し、連休明けから調査を実施することは了解する。本年の勧告作業に当たっては、地域給与・給与構造の見直しという大きな課題もあることから、官民比較方法の問題を含めて公務員連絡会とこれまで以上に十分な協議を行いながら作業を進めていただきたい。なお、本年人勧に向けた具体的要求については、6月以降提出する」と十分な協議を求めたのに対し、参事官から「本年の勧告に向けては、給与制度見直しを含めて皆さんと話し合いながら進めて参りたい」との考えが示されたことからこれを確認し、民調作業に関わる交渉を終えた。
以上