公務労協は6月2日、全電通会館で「小泉構造改革による格差拡大と公共サービス解体NO!6.2決起集会」を開催、400人の組合員が参加した。政府の経済財政諮問会議が今月下旬の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(骨太方針2005)の取りまとめに向け、検討を行っていることから、集会では、社会保障の給付抑制や総人件費の削減を盛り込まないことなど6項目を掲げた要請書(別紙)を採択、近く竹中経済担当大臣に提出することにした。
集会は午後6時に始まり、宮入副事務局長の開会挨拶のあと、植本企画調整委員(自治労書記長)を議長に選出、森越副議長(日教組委員長)が主催者を代表してつぎのように挨拶した。
@ 政府統計によれば、晩婚化がすすみ、少子化に拍車をかけている。これは、子育てをはじめ、安心して暮らせるという将来への展望がみえない暗い社会になってきているからだ。憲法25条の「生存権」が否定され、生活に希望のもてない社会に国の将来はない。
A 人権尊重は世界の潮流だが、わが国には通じない。公共サービスは人々が生きていくうえで欠かせないものだ。それが、いま、民営化によって潰されようとしている。このことを職場、地域から訴えていかねばならない。
来賓として連合・木村総合政策局長が挨拶、「集会のスローガンは、小泉構造改革に歯止めをかけ、あるべき公共サービスを実現することと理解する。その心は政権交代しかない。市場万能主義の小泉・竹中路線は、二極化と社会不安の深刻化をもたらしている。いまこそ、安心・安全の暮らしの実現にむけ、官民の対話を続け、一体となって世論に訴えていこうではないか。連合は郵政民営化関連法案の国会提出を違憲・違法として、郵便局ファンの会の4名が提訴した問題について、組織をあげて支援する」との考えを示した。
続いて、この間、公共サービス確立に向けたキャンペーンに取り組んでいる地域の報告を受けた。そのなかで、徳島県官公労協の藤本事務局長は、「4月12日に良質な公共サービスの確立を求める徳島県連絡協議会を立ち上げ、協議会の議長に連合徳島の会長が就任、10の民間組合からも役員にでてもらい、官民一体で運動に取り組む体制をつくった。地方紙への全面(全15段)を使った意見広告掲載には、85団体が呼びかけ団体となり、シンポジウムを成功させることができた。運動はスタート時点に立ったばかり。民間組合員や市民の理解を得るため、さらにねばり強く取り組んでいく」との決意を語った。
また、連合鹿児島官公部門会議の下町事務局長は、「自治体決議や2,000に及ぶ職場決議に取り組んだ。シンポジウムでは、身内だけでなく、行政やNPO、さらに会社の社長さんにも参加を頂き、いろんな角度から議論できてよかった。民間の仲間や地域住民に対し運動への理解を得るのは至難の業だが、腰を据えた継続した運動が必要だ」との考えを示した。両県の取り組みに、会場からは連帯の拍手で応えた。
この後、山本事務局長が「情勢と取り組みの考え方」について、次のように提起した。
@ 小泉・竹中路線は、わが国を弱肉強食による深刻な二極化という、とんでもない方向に歯車を回そうとしている。郵政民営化を「改革の本丸」と主張する意味は、公務公共部門のあらゆる分野を破壊し民営化するということだ。予想される「骨太方針2005」では、小泉内閣の最重要課題として「小さくて効率的な政府」を掲げ、人員削減と給与水準の見直しによる総人件費の削減が位置づけられようとしている。
A 少子高齢化への対応として、「わが国経済の身の丈に合った社会保障制度にする」として、社会保障給付の大幅削減を目論んでいる。
B さらに、2007年政治決戦に照準を当てた組織破壊攻撃として、政府・自民党は、地方公務員の政治活動の制限・刑事罰を狙った地公法の改正を意図している。
C 公務労協は、本集会での確認を踏まえ、「骨太方針2005」のとりまとめにあたって竹中経済財政担当大臣に申入れをおこなうことにしている。7月1日には、シンポジウムを開催し骨太方針の問題点が論議されるが、格差社会は容認しないという姿勢のもと、6項目の実現を求め、職場・地域から運動をつくりあげていく決意だ。
集会は最後に、藤本企画調整委員(国公連合書記長)が『「基本方針2005 」取りまとめに係る要請(案)』を提案し、これを参加者全員の拍手で採択したあと、森越副議長の音頭で団結がんばろうを三唱し締めくくった。
(別紙)
2005年6月 日
経済財政諮問会議
議 長 小泉純一郎 殿
担当大臣 竹中 平蔵 殿
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 人見 一夫
「基本方針2005」取りまとめに係る要請
貴職には日頃より公務関連労働組合に対しご理解を賜り敬意を表します。
さて、経済財政諮問会議では、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」の取りまとめに向けて精力的な審議が行われ、「小さくて効率的な政府、グローバル化と少子高齢化への対応、民需主導の経済成長」を主内容とした検討が大詰めを迎えていると報道されています。
私たちは、市場原理主義による弱肉強食の格差社会を容認できません。個人では引き受けきれないリスクを自己責任に転嫁することは、「政=まつりごと」に対する中央・地方の政府・行政の責任を放棄するものであり、公共を解体するものです。
求められていることは社会・経済構造の変化に対応した「公共」を再構築することです。ナショナルミニマムとして保障される公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての国民的論議と合意形成が急がれるべきであって、政治主導の美名に隠れ一部財界人と学者の意見で国民生活の基盤である年金、医療、介護など社会保障を財政再建の犠牲とすることは認められません。
また、賃金等は労使間で取り決められる労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定することは国際的にも確立された原則です。ILOは累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことを指摘しその改善を求めています。国際世論は、常任理事国入りを目指す政府が、批准されている国際条約を遵守するのか否かにも注目しています。
つきましては以下の点を申し入れますので実現されますよう要請いたします。
記
一、国民生活と社会、経済成長の基盤である社会保障制度について、マクロ経済指標による給付抑制など財政再建・歳出削減の手段としないこと。
一、公共サービスを企業利益追求の手段とし、利用者の参画とコントロールが効かない民営化への横断的手法である市場化テストの導入や法制化を行わないこと。
一、行政活動の人的基盤である公務員の定員・人件費削減を自己目的化した「総人件費改革の基本方針」を基本方針2005に盛り込まないこと。
一、公務員の労働基本権が制約されている下では、人事院勧告制度を尊重し、その意義と役割を踏まえ、公正に取り扱うことを明確にすること。
一、基本方針2005に公務員賃金問題を盛り込むのであれば、当該関係者の意見表明の機会を保障し、労使関係制度の改革と合わせ公務員賃金のあり方、決定制度など基本的方向を確定するための「政労協議の場」を設置すること。
一、ILO国際労働基準に基づき労働基本権を付与し、国民・市民への説明責任を果たす公務労使関係制度確立を含む透明で民主的な公務員制度への改革を進めること。
以上