公務員連絡会は、2005人勧期闘争の大きな山場に設定した22日、5千人が参加して第4次中央行動を実施し、人事院給与・職員福祉局長と交渉、人勧期要求に対する回答を迫った。しかし、@本年の官民較差がマイナスとなる見通しが示され、A地域給与・給与制度見直しに関わっては公務員連絡会の要求に沿った具体的な回答がなく、B組合員が強く期待した育児・介護職員の短時間勤務制度の意見の申出の時期も先延ばしとなるなど、総じて極めて不満な回答に止まった。そのため、公務員連絡会は、行動終了後に開いた企画・幹事合同会議で、なお、ぎりぎりまで要求実現に向けた取り組みを強化する必要があることから、8月2日に第5次中央行動・第4次全国統一行動を配置し、人事院に誠意ある回答を迫ることを決定した。
午後1時30分から開かれた中央決起集会には、会場となった日比谷大音楽堂に全国の仲間5千人が参加。2005人勧期闘争の山場を迎え、人事院に怒りをぶつける熱気ある集会となった。
また、この集会には23名の衆参国会議員が激励にかけつけ、公務員連絡会の闘いを支援して最後まで一緒に奮闘する決意を示した。集会に出席した国会議員は、衆議院議員は、荒井さとし(民主)、石毛えい子(民主)、稲見哲男(民主)、金田誠一(民主)、仙谷由人(民主)、佐々木秀典(民主)、篠原孝(民主)、照屋寛徳(社民)、土井たか子(社民)、小林千代美(民主)、仲野ひろ子(民主)、藤田一枝(民主)、横路孝弘(民主)の各氏。参議院議員は、朝日俊弘(民主)、神本美恵子(民主)、齋藤つよし(民主)、高嶋良充(民主)、那谷屋正義(民主)、水岡俊一(民主)、峰崎直樹(民主)、輿石東(民主)、佐藤泰介(民主)、高橋千秋(民主)の各氏。紙面を借りて感謝申し上げたい。
集会は、古山副議長(税関労連委員長)を議長に選出。冒頭主催者を代表して挨拶にたった丸山議長は「本日は人勧期最大の山場であり最大の行動日だ。これまで闘いを繰り広げてきたが、いまだ人事院は固い姿勢を変えていない。公務員連絡会は、委員長・書記長・幹事で構成する闘争委員会を開いて、この人勧期を要求実現まで闘い抜くことを意思統一した。加えて、臨時国会での総人件費削減に対する闘いも待っており、人勧期から秋の確定期まで、連続した闘いの決意を固めあってもらいたい」と、最後まで全国の職場で闘い抜くことを訴えた。
このあと激励に駆けつけた衆参国会議員が紹介され、続いて連合笹森会長が登壇し、「連合としては、皆さんの人勧期の闘いを全面的に支持する。国民が求めてもいない郵政民営化にかまけるいまの国会はあまりにおかしい。もはや、小泉政権は国民にとって存在してはいけない内閣だ。連合として、増税反対を含め、倒閣宣言をして闘いたい」と、小泉政権打倒の方針のもとに闘うとの方針を表明した。
その後、集会は山本事務局長が基調報告にたち、本日の職員福祉・給与局長交渉に臨む姿勢を報告。構成組織の決意表明には、自治労(金田書記次長)、日教組(小西書記次長)、国公総連(全財務・佐々木書記次長)、国税労組(井津井副委員長)の代表が登壇し、公務員連絡会に結集して最後まで闘い抜く決意を表明した。
集会を終えた参加者は、霞ヶ関一周のデモ行進部隊と人事院前で交渉を支援する部隊に分かれて行動。「俸給表の引下げ反対」「評価制度の整備なき査定昇給反対」「賃金水準を維持する給与勧告を行え」とシュプレヒコールをあげた。また、これとは別に、各構成組織に分かれ、衆参全議員(共産党を除く)に対して、公務員給与を政治的に扱わないよう求める要請行動を実施した。
すべての行動を終えた参加者は、再び日比谷大音楽堂に結集。人事院の局長交渉の報告を受け、さらに人勧期闘争を強化する意志を固めあう団結がんばろうを三唱してこの日の行動を締めくくった。
この日行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。
<職員福祉局長との交渉経過>
公務員連絡会は、7月22日、12時より、勤務時間関係の人勧期要求や多様な勤務形態に関する研究会・最終報告の取り扱いなどについて、人事院職員福祉局長交渉を実施した。交渉には、公務員連絡会書記長クラス交渉委員が臨み、人事院側は、関戸職員福祉局長、鈴木職員団体審議官、森永参事官が対応した。
冒頭、山本事務局長は、次の2点について人事院の考え方を質した。
(1) 7月19日の交渉では、本年の人勧期要求で重点課題に設定した育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の意見の申出が夏の勧告時点までには困難との回答が示されたが、これまでの交渉等の経緯からして極めて遺憾であり、ぎりぎりまで実現に向けて努力すべきだ。明確な説明を求めたい。
(2) 研究会・最終報告の提言について、人事院としてどういうスタンスで、どのような施策の検討作業を行うのか、施策の優先順位、スケジュール等について、明確な回答を求めたい。また、本年の報告で記述する内容については、われわれと十分交渉・協議するよう求める。その上で、19日の交渉で要請した次の4点について見解を求める。
@業務効率化、サービス向上に向けた勤務時間の弾力化・多様化には異議はないが、「割振り制度」については、職員の同意という点も含め、一方的な弾力化とならないよう慎重に検討すべき。
A修学・ボランティアのための休業制度については、早期に実現すべき。
B常勤職員の本格的な短時間勤務制度については、骨太方針2005で「国家公務員がモデルとなるよう常勤職員の短時間勤務制度の導入について早期に検討する」と言及されていることも含め、早期実現に向けた検討を促進すべき。
C徹底した勤務時間管理、実効ある超勤縮減策の具体的な提言を行うべき。
これに対して関戸職員福祉局長は、以下の通り見解を示した。
(1) 育児・介護を行う職員の両立支援策については、春闘時の交渉でも申し上げたが、人事院としては残された課題のうち短時間勤務制度の実現を最優先課題とし、定員管理や共済制度の問題についての調整に取り組んできた。公務員連絡会が、本年の人勧期要求で育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の導入を最重点課題として求めていることは真摯に受け止めており、人事院としても早期実現をめざす気持ちは全く同じである。しかし、総務省等と定員管理のあり方について調整してきているが、現段階ではその見通しが立っていないのが現状である。したがって、夏の勧告時までに意見の申出を行うことは困難である。研究会・最終報告でも早期実現を求められていることを重く受け止め、引き続き早期実現に向けて努力していきたい。
(2) 研究会では真摯に議論をしていただいており、その結果である最終報告の内容については、その実現に向けて取り組んでいきたい。今後検討作業を行い施策がまとまったものから実施したい。その過程で、職員の健康や福祉に配慮することは当然必要であり、今後とも公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めたい。
@については、国民のニーズに応えサービスを効率的に提供していくことは職員の思いでもある。一律・画一的な勤務時間制度のため、そう出来ない状況にあり、その改善に向けて積極的な検討を行っていくべきと考える。どういう形でやれば、職員が力を発揮できるのか、管理職は本気で考えないといけない。研究会で学んだのは一方的な弾力化であってはならないということだ。職員の健康、福祉ということは考えていかねばならず、今後ともみなさんの意見もいただきながら検討していきたい。
Aについては、しっかりと検討していきたい。修学・ボランティア等で自発的に職場を離れる、「休業」するということになれば、法律的な措置も必要となる。当面は、早出遅出勤務の適用ということを具体化し、そういうことをやりながら検討も進めていきたい。
Bについては、育児・介護を行う職員の短時間勤務制度を優先的に検討し、引き続き、本格的な短時間勤務制度についても検討していきたい。骨太方針2005で言及されていることからも、育児・介護を行う職員の短時間勤務制度については、早期に実現をはかりたい。
Cについては、実効をあげていきたいという気持ちに相違はない。ITの活用等による出退勤・勤務時間の厳格な把握、超勤命令を徹底し、日々の超勤時間を確認することなど「実際に行った超勤時間を把握するシステム」を導入し、超勤を最小限に抑制していくことが重要であり、夏の報告では、このことを求めたいと考えている。
これらの回答に対して、公務員連絡会側は、さらに以下の通り人事院の考え方を質した。
(1) なぜ、育児・介護を行う職員の短時間勤務制度については、関係機関との間での調整が前進しないのか。仮に、夏の勧告時点までの意見の申出が間に合わなくとも、百歩譲って、夏の報告では意見の申出の時期的な目途を明記すべき。次世代育成支援、職員のキャリア形成という観点からも重要な課題。これまでの人事院の回答の積み重ねもあり、職員の側の期待感は膨らんでいる。
(2) 勤務時間の「割振り」については、一方的な割振りとならないよう、重ねてお願いする。サービスの向上のための勤務時間のあり方は、労使協議制や本人同意制等の制度的な担保が必要であり、当局の裁量権の拡大だけで実現されるものではない。
これに対し、関戸職員福祉局長は、概要、次の通り回答した。
(1) ご意見は受け止めさせていただきたい。人事院としては育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の導入については早期実現との姿勢を明らかにし、その実現に向け真剣に取り組んでいる。夏の報告の中で、申出の時期を明記すべきとの要請があったが、出来ることなら人事院としてもそうしたいが、現段階ではそのような回答は出来ない。ギリギリまで最大限努力し、時期を明示できる段階に到れば示したいと考えている。
(2) 職員をまったく考慮せず、現場が混乱するような状況は避けなければならない。人事院が全府省共通の基準・モデルを作るにあたっては、みなさんからも意見をいただきたい。
最後に公務員連絡会から、育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の早期実現など課題の実現に向けてギリギリまで努力するよう強く求め、交渉を終えた。
<人事院給与局長交渉の経過>
人事院山野給与局長との交渉は、午後2時30分から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
冒頭、山本事務局長が、「14日の交渉で、給与構造の基本的見直しについて7点にわたる要請をしたほか、行(二)の課題も申し上げたので、今日はそれに対する明確な回答をいただきたい。また、本年の官民較差・一時金の状況や勧告内容、勧告日についても明らかにしていただきたい」とし、局長の見解を求めた。
これに対して、山野給与局長は、以下の通り回答した。
(1) 地域給与・給与制度見直しについて
@「地域や公務員の生活に与える影響を考慮して俸給表の引き下げ率を極力抑制すること」については、最終的には民間給与実態調査や国公給与実態調査の結果によるが、5%程度の引下げは一番手堅い線であると考えている。
A「枠外昇給制度の廃止にともなう影響を最小限に止めるための措置を実施すること」については、今、枠外号俸にいる人には、激変緩和・経過措置を検討したい。また、号俸延長については、現在の水準の高さ、財源の関係からかなり厳しい限界があるが、ご要望を踏まえ、制約の中でどこまでできるか検討する。
B「制度的に矛盾する『55歳定昇ストップ』措置を廃止すること」については、55歳昇給停止は、民間の昇給状況もあり、今年はそれがどうなっているのかを見ないといけないが、廃止するのは難しい。いずれにしても査定昇給とセットの話だ。
C「地域手当の指定地域を可能な限り拡大するための基準設定を検討すること。現行の調整手当の支給地域であって地域手当の指定地域とならない地域については、当分の間、指定地域とすること、ならびに経過措置を検討すること」については、指定基準については、引き続き、ご意見、ご要望を伺いながら検討していきたい。また、透明性の要請があるので、基準に従って措置する必要があり、現行調整手当支給地域というだけで特別扱いは難しい。
D「勤務実績の給与への反映については、本年、勧告や規則化等の措置を絶対行わないこと」については、本格的な評価システムの整備を政府全体で検討しているが、当面、それまでの暫定措置として、昇給、勤勉手当における勤務成績の判定をより実効あるものとする運用の改善を目指したいと考えている。
E「制度的に整合性のない本府省手当については撤回すること」については、現に補佐についている手当を係長・係員にのばすだけであるし、各府省から切実な要望があるので、措置したいと考えている。
F「激変緩和措置としての『現給保障』を実施すること」については、何らかの経過措置は当然考える必要がある。具体的な内容は、本年の民調、国公実態調査結果を踏まえた措置内容の固まり具合を見ながら今後検討することにしたい。
(2) 行(二)職俸給表について
「昇格の実態や水準に十分配慮してもらいたい」との要望も踏まえ、3級・4級を統合する方向で検討中である。俸給の改定率についても、ご要望も踏まえよく検討したいと思っている。
(3) 本年の給与勧告について
@本年の官民較差や特別給の状況については、民調はまだ集計中であり、較差は最終集計までわからないが、途中段階の感触では、ある程度のマイナス較差を想定せざるを得ないのではないかと思っている。なお、マイナスになった場合の配分については、意見を十分伺っていきたい。特別給は、昨年から比較方法を変えたので、まだ調査中で、もう少し時間が掛かる。民間や都の調査では、大手や東京の中小は悪くないようだが、全国ベースでどうなるか、必ずしも楽観できないと思う。
A勧告日については、今回は給与制度見直しがあって倍以上の作業量となっており、例年より遅れ気味となっている。お盆をすぎないよう努力するが、相手もあることなので、今、調整中である。
これらの回答に対して、公務員連絡会側は、さらに、次の通り局長の考え方を質した。
(1) 本年はマイナスの感触ということだが、マイナスにならないよう努力してもらいたい。仮にマイナスになるとしても、俸給表を引き下げなくてもいいような配分のあり方について今後議論することを求める。
(2) 民間の一時金は「史上最高」などど報道されており、組合員も期待しているので、月数増の勧告について努力してもらいたい。
(3) 俸給表引下げ率の抑制、枠外号俸の具体的な回答、55歳昇給ストップ措置の廃止などについて、引き続き最大限努力すること。
(4) 地域手当の支給基準については、可能な限り広く指定できる基準にすること、今調整手当が支給されている地域を引き続き指定することなどがわれわれの重点課題だと受け止めてもらいたい。
(5) 勤務実績の給与への反映については、本年勧告し、規則化することは絶対反対である。勤評に代わる新しい評価制度を整備することが条件である。
(6) 本府省手当は地方の給与引下げと同時に霞ヶ関ではその原資を使って給与を上げるということであり、地方から見れば納得できないし、明確な理由もないのでやめていただきたい。本省問題は、超過勤務を是正することが先である。
これらに対し局長は、「人事院としてもマイナスにならないようにという気持ちは同じだが、厳しい」「一時金は、地域や企業によって格差が大きいので、調査途中での感触がつかみにくい状況で現時点では何とも言えない」「地域手当の要望は強い要望として受け止める」などと答えたが、その他の課題についてはこれまでの回答を繰り返すに止まった。
公務員連絡会側は最後に、「本日の局長の回答は、マイナス較差の感触が表明され、かつ地域給与・給与制度見直しについてはまったくわれわれの要求を踏まえた回答が示されておらず、極めて不満である。8月2日にもう一度局長交渉を行いたいと考えているので、それに向けてわれわれの要求を反映した勧告となるよう、ギリギリまで検討していただきたい」と強く要求し、局長が「時間はほとんどないが、引き続き誠意を持って検討したい」としたことから、これを確認し、この日の交渉を終えた。
以上