2005年度公務労協情報 48 2005年8月16日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公部会が全人連に申入れ−8/16

 公務員連絡会地方公務員部会は、8月16日午前10時から、2005年人事院勧告を受けて全国人事委員会連合会(全人連)に対する申入れを行った。公務員連絡会側は、地公部会の佐藤議長(全水道委員長)、中村企画調整委員(日教組書記長)、岩本地公部会事務局長と地公部会幹事が出席、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市人事委員会の代表者が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、「昨日の人事院勧告を受けて、全国の人事委員会が本年の勧告に向けた作業に移ることとなるが、労働基本権制約の代償機関として、地方公務員の生活を守るという基本的役割を果たすようお願いする。公務員をめぐる情勢を反映して、本年の人事院勧告は、本年給与のマイナス改定、地域給の導入、給与制度見直しなど、非常に厳しいものとなった。しかし、地域給の導入については、国家公務員内部の給与配分政策の見直しであり、これを直ちに地方公務員の給与政策とはできない。昨日の総務省への申入れでは、麻生大臣は、『地域給はなかなか難しい問題もあり、いろいろやり方もあるだろうが、皆さんの意見を十分聞きながら検討していきたい』との見解を示している。現在、総務省の『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』では、来年3月の最終報告に向けた検討が進められているところであり、本年人事院が勧告した地域給の導入、給与制度見直しに関して、拙速な勧告を行わないよう強く要請する。また、各人事委員会の勧告に当たっては、労働組合との協議を十分に行うようお願いしたい」と申入れの趣旨を述べた。
 引き続き、岩本地公部会事務局長が、要請書の内容を説明し、とりわけ「1.」「2.」「3.」「4.」「9.」「17.」の事項について全人連の努力を求めた。

 こうした地公部会の要請に対し、内田会長は以下の通り回答した。

2005年8月16日

全人連会長回答


 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。

 さて、皆様既にご承知のとおり、昨日15日に本年の人事院勧告が行われました。
 景気は、引き続き緩やかな回復基調であったものの、短期的な業績の配分を一時金に反映させるなど民間企業の賃金体系の変化、地域別の経済状況の相違、国家公務員の平均年齢の上昇など、給与の実態の諸要素を反映し、官民較差は0.36%のマイナスとなり、俸給表及び配偶者にかかわる扶養手当の引き下げが勧告されました。
 一方、特別給については、民間の支給割合が公務の支給月数を上回り、0.05月分を引き上げることとしております。
 懸案となっております給与構造の基本的見直しについては、俸給水準の引き下げ、級構成、号俸構成の見直し、地域手当の新設など具体的な内容が提示されております。
 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところですが、各地方自治体、とりわけ、各人事委員会にとりまして、人事院の勧告は、必ずしも、直ちに、これに追随すべきというものではありませんが、今後に影響を及ぼす重要な要素を含んでいるものと考えられます。
 また、先日8月11日に総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」がこの問題について基本的方向性を報告しておりますが、全人連といたしましても、これらを参考にしつつ、地方公務員の給与構造の見直しについて、鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに、教員給与につきましては、各自治体の主体的な取組を支援していくために、各自治体が参考とし得るような教育職給料表の作成を目指して、鋭意準備を進めてまいります。
 現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、作業を進めているところであります。
 今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情を踏まえ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。

以上でございます。


(別紙)全人連への要請書

2005年8月16日

全国人事委員会連合会 
 会長 内田公三 様

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
   全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 人見一夫
   日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
   日本都市交通労働組合
中央執行委員長 山岸 晧
   全日本水道労働組合
中央執行委員長 佐藤幸雄
   全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
   日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 早川良夫


要 請 書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 近年、自治体財政が危機だとして職員の給与をカットする自治体がますます増えていますが、これは人事委員会制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
 また、政府の骨太方針2005では、国・地方の総人件費の削減を図るとしており、地方財政計画の圧縮、交付税の大幅削減により、自治体サービスの縮小や給与水準引下げが懸念されます。
 地方公務員は地域の最前線で住民福祉向上のための公共サービスに従事しており、職員の適正な処遇の確保により、全国のどの自治体にあっても質の高い公共サービスを提供していくことが求められています。
 一方、地方公務員の給与のあり方に関しては、総務省の研究会において検討が行われており、その結論が注目されるところです。
 これから人事委員会において本年の勧告に向けた本格的作業を開始されることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。
2.公立学校教職員の給与改定について、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。その際、関係労働組合との緊密な意見交換を行うこと。
3.人事院の地域給与(俸給表水準の引下げと広域異動手当・本府省手当・地域手当の新設)は、国家公務員内部の給与配分政策の変更であり、自治体で導入しないこと。
4.地方公務員における「地域の民間給与の水準をより的確に反映し決定すること」や給与構造の見直しについては、人事院に追随することなく「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の結論を踏まえて対応すること。
5.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。
6.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1)所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3)年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4)労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
7.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇暇日数の拡大をはかること。
8.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
9.育児・介護を行う職員に関わる短時間勤務制度を導入すること。また、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
10.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
11.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
12.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
13.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
14.地公法改正を踏まえ、公正かつ実効ある苦情処理体制の整備をはかること。
15.新たな任期付任用制度については、法の趣旨を踏まえ業務の範囲を限定するとともに公正な人事を確保すること。
16.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。
17.全国人事委員会連合会の地方公務員の給与等に関わる調整、交渉・協議等の機能を強化すること。

以上