公務員連絡会は、11日、人事院に「給与構造の基本的な見直し(素案)に対する申入れ」(別紙)を提出し、今後は申入れ内容に沿った検討作業とするよう要請した。連絡会は「地域給与・給与制度見直し闘争委員会」実務作業委員会メンバーが参加し、人事院は鈴木職員団体審議官らが対応した。
冒頭、実務作業委員会の責任者である岩岬公務員連絡会副事務局長が、「11月2日に給与局長から書記長クラス交渉委員に対し素案の提示があり、組織内で議論して本日素案に対する申入れを行うことになった」として、申入れ事項について以下の通り説明した。
(1) 公務員給与は、政治的な公務員バッシングや骨太方針による人件費縮減という大きな流れの中にあるが、人事院のスタンスとしてはそれに追従するのではなく、労働基本権制約の代償機能ということを踏まえて、勤務条件の変更として十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて作業を進めていただきたい。
(2) 地域給与見直しについては、夏の報告以降、われわれは一貫して地域別官民較差を考慮した俸給表水準の引下げ反対を主張してきたが、素案でも考え方が変わらなかったことは遺憾であり、受け入れられない。撤回し、改めてわれわれが合意できる提案を求める。
(3) 給与構造の見直しについては、素案の内容を個別具体的に検討していくためには、評価制度をどうするかという交渉・協議が前提である。早急に評価制度についての考え方を示してもらいたい。
これに対し鈴木職員団体審議官は、「本日、申入れを承ったが、今後は必要に応じ細かい点の考え方も伺いながら作業を進めていきたい」として、以下の通り答えた。
(1) 申入れの第1点については、お示ししたのは議論をするための素案であり、十分議論していきたいと考えている。
(2) 第2点については、全国共通俸給表を維持しつつ地域差を考える場合、提案している方法がもっとも穏当な方法であると考えているが、よりよい提案があれば出していただいて一緒に考えていきたい。
(3) 評価制度については、人事院として何もやらないということではないが、公務員制度改革の課題であるので、その推移を見守りつつ、平行して議論していきたい。
審議官の見解に対し公務員連絡会は、@俸給表水準を引き下げることが「もっとも穏当」とのことだが、民間賃金が低い地域の較差に基づいて俸給表水準を決めることは、全国ベースで較差を埋めるというこれまでの決定方法を変えるものであり、配分の話にとどまらない。あくまで配分の話というのであれば、現在の85:15という本俸・諸手当比率をどうするかという議論から始めるべきではないか、Aかつて東京の調整手当を上げてきた経緯があるが、今回の話はそういう話なのか。それとも、報告に書かれていたように全体の水準を下げる話なのか、B地方で働く組合員から見れば、下げて浮いた原資が東京の本省に行くということになると納得できないということになる、C評価制度について明確な考え方が示されないのはきわめて遺憾である。それが示されないと給与制度の中身の議論ができない。出せないのなら、具体的議論は出るまで待つしかない、とさらに審議官の見解を質した。
これに対し審議官は、@地域研究会報告や各種のデータから見ても地域差を拡大する必要があるが、全国共通俸給表を維持しながら地域調整を行う場合のもっとも穏当な方法として提案している。基本的には配分の話であり、全体としての較差を出した上でその配分を考えるということに変わりはない、A地域間格差を広げるので上がるところも下がるところもあるという話であって、従来の考え方の延長の話である、B地方の気持ちはわかるが、民間と比べ地域の公務員給与は高いし年功的すぎると言われており、どこまでやるのが適当かということを含めて議論していきたい、C評価制度については、行革推進事務局が進めている話であるが、人事院としてもただ待っているだけでなく、給与制度に関わる話として関心を持っているので、動向を見守りつつ対応していきたい、と答えるにとどまった。
このため公務員連絡会は、「今後の作業は本日の申入れに基づいて進めることを強く要請する。われわれは、地域給与見直しや給与制度の問題は重要との認識を持っているので、これらの基本的な問題について十分議論していかないと組織的な合意ができない。実務クラスの話し合いも重ねるが、これらの基本的問題については再度、書記長クラス交渉委員と給与局長との間で議論させていただきたい」として、申入れを踏まえた対応と給与局長交渉の実施を要求し、本日の交渉を締めくくった。
公務員連絡会としては、設置された闘争委員会のもと、本日の申入れに基づいて人事院との交渉・協議を一層強める方針。また、現在進めている個人要請はがき行動を強化するとともに、12月からは全組合員(その家族を含む)参加の個人署名行動に取り組むこととしている。
別紙.人事院への申入書
2004年11月11日
人事院総裁
佐 藤 壮 郎 殿
公務員労働組合連絡会
議長 丸 山 建 藏
「給与構造の基本的な見直し(素案)」に対する申入れ
本年の給与勧告については、月例給・一時金とも改定見送りとなり6年ぶりに年収が確保されることとなったものの、一方では「骨太方針2004」に見られるように、政府は公務員の総人件費抑制政策を一段と強めており、公務員給与を巡る情勢は引き続き厳しいものがあります。
こうした中で貴職は、11月2日、いわゆる地域給与と給与制度見直しの2つの課題に関わる「給与構造の基本的な見直し(素案)」を提示しました。そのうち、地域給与見直しに関わる「地域別官民較差を考慮した全国共通俸給表水準の引下げ」については、地域で働く公務員の生活や地域経済に与える大きな影響からして到底受け入れられません。また、われわれは、給与制度の見直しは必要であるとの考え方にたっていますが、職務・職責、実績重視の見直しのいずれについても、評価制度についての検討が同時並行的に行われるべきものと考えます。
いずれにしても、貴職の給与構造の見直しの検討は、公務員給与バッシングや政府の総人件費抑制政策に追随するものであってはならず、重大な勤務条件の変更事項として、われわれとの十分な交渉・協議と合意に基づくものでなければなりません。
以上のことから、下記事項について誠意ある交渉・協議を行い、その実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。
記
1.給与構造見直しは勤務条件の重大な変更であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意のうえで検討作業を進めること。合意のないまま、一方的な勧告は行わないこと。
2.地域別官民較差を考慮した全国共通俸給表水準の切下げ案を撤回し、われわれが合意しうる見直し案を再提示すること。その際、全国共通俸給表水準は維持したうえで、地域調整のあり方を検討すること。また、地域調整の基準・指標についても合意すること。
3.給与構造(制度)の見直しに当たっては、4原則2要件を具備した評価制度の確立が不可欠であることから、これらを同時並行的に交渉・協議できるよう、評価制度についての考え方を早急に提示すること。
4.職務・職責、実績重視の給与制度見直しに当たっては、下記事項の実現を図ること。
(1) 職務・職責重視の給与制度の見直しに当たっては、納得性のある職務の評価や格付け手法と手続きを確立することとし、現行の標準職務表による格付け方式を抜本的に見直すこと。
(2) 級間の水準差の是正や級構成の再編については、職務や昇進・昇格の実態を踏まえた制度設計を行うこと。
(3) 昇給カーブのフラット化に当たっては、中高齢者の働く意欲に十分配慮しつつ、生涯生活設計が大きな変更とならないよう、段階的に進めること。また、30歳代半ばまでは生計費の上昇カーブに対応した上昇カーブを維持すること。
(4) 実績を重視した昇給制度の検討に当たっては、誰もが普通に業務を遂行した場合は昇給する仕組みを維持することを基本とすることとし、その他の課題も含め十分交渉・協議、合意すること。また、実績評価等が信頼性のあるものとなるまで実施しないこと。
(5) 専門スタッフ職俸給表の新設に当たっては、キャリアの処遇のためではなく、文字通り、複線型人事制度、在職期間の長期化に資するものとして制度設計すること。
以上