2006年度公務労協情報 11 2005年11月30日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

「基本要求」(給与構造、官民比較、勤務時間など)巡って人事院と交渉−11/30
−「給与構造の改革」に伴う規則・通達等で申入れも−

 公務員連絡会は、11月17日に総務省、人事院に「2006年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」を行い、12月中旬には回答するよう求めているが、本年は重要課題が山積しているため、30日午後1時30分から幹事クラスによる人事院鈴木職員団体審議官との中間的な交渉を行い、@「給与構造の改革」に関わる人事院規則・通達等の作業状況A官民比較方法のあり方についての検討状況と考え方B労働時間管理や超勤縮減策などの検討状況、について人事院の見解を質した。

(1)「給与構造の改革」に関わる人事院規則・通達等の作業状況
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が交渉の趣旨を述べ、給与構造の改革に関わる人事院規則・通達等について資料のとおり申入れ、審議官の見解を求めた。
 これに対し鈴木審議官は以下の通り現時点での考え方を示した。
@十分な交渉・協議と合意については、規則・通達等の改正等は勧告・報告で示した内容の具体化になるので、今日の申し入れを含めてよくお話を伺いながら作業を進めていきたい。
A育児休業者等の復職時調整は、現行号俸を4分割した号俸で調整するスタイルになる。要望については、今後の引き続きの課題となると考えている。
B初任給見直しに伴う在職者調整については、逆転を生ずるケースがあるかという実態を各府省から聞いた上で、基本的には必要最小限(逆転防止の範囲)で考える方向で検討している。
C地域手当については、各年度によって、在職状況や較差を確認しながら決めていかなければならないので、現時点で確定的なものを示すことはできない。しかし、現在と比べて変化する率に応じて、その年の財源の範囲内で、整数で各年が等差的になるようにするという考え方で進めていきたいと考えており、それほど議論の余地はないのではないか。
D官署指定の取扱については、現行指定官署は継承する方向で考えたい。それ以外は、移行期間中は、原則として新たに指定しない方向で考えている。
E管理職以外の一般の職員も号俸分割自体は行われるので、4分割した後の昇給制度に切り替える制度整備が必要になる。勤務成績の判定の改善に関わる部分は、管理職と一般の職員をどう区分・整理できるか、法制面も含めて検討しているところである。ご要望の趣旨は承った。
F「判定尺度の例示」の公正運用を指導することは当然のことと考えている。
G「D」については慎重にとの要望であるが、当面は人事院協議を行うことにしているので、これにより、恣意的運用回避の担保としているつもりである。
H勤務成績の判定結果の開示については、給与に反映されることを通じて判定結果がわかるので、別途の開示は考えていない。
I給与法21条の給与決定にかかる審査申立は、個々の給与決定を速やかに救済する趣旨なので、現在の人事院規則13−4の仕組みで特段の不備はないと考えているが、要望内容は担当局に伝えて検討してもらうことにしたい。
J今後のスケジュールについては、かなり大きな制度改正になるので、各府省が実務的に対応できるよう、年内に内容は固めないといけないと思っており、組合ともそういうスケジュールで議論をして参りたい。
 これに対し、公務員連絡会側は、@評価制度が整備されない中で成績の判定と給与への反映が行われる話であり、その理由が自ずから伝わるものでもないので別途の開示は是非行うべきであるA「標準」未満の基準「D」については主観的であり、これを理由に各府省当局の裁量権で異なる懲戒処分が行われる恐れがあり、人事院として公正・公平の確保についてどのような対応をするつもりか。特に地方公務員の場合、人事委員会がないところも多いので、明確な基準を示していただきたいB給与法21条と人規13−4の関係を含めて、「行政措置要求」「不利益処分の不服申立」「給与決定にかかる審査申立」の関係を整理して示していただきたい。行政措置要求を排除しない仕組みにしていただきたいC育児休業等の扱いは退職手当法の方で改善されているし、短時間勤務制度の導入においても昇給や昇格における勤務期間の扱いは課題となってくるので、この際、前向きに検討することを明らかにしていただきたいD本省特昇の「現在員の3%×2号俸」は旧号俸か、などと質したのに対し審議官は次の通りの見解を示した。
@ 事由の説明や結果の開示についてはご意見として承る。
A 懲戒処分については、各府省の裁量権なので違いがあってもやむを得ないと考えている。
B 措置要求や不服申立等の関係は担当のところで整理して示すこととしたい。
C 育児休業は法律で決まっている一方、今回は規則で措置する話なので難しいが要望は承っておきたい。
D 本省で個別に承認する昇給は、新号俸であり、現行からは圧縮することになる。
 以上のように、不十分な見解にとどまったことから、最終回答では申し入れ事項を実現するよう強く求めた。

(2)官民比較方法のあり方についての検討状況と考え方
 引き続き、官民比較方法のあり方に関わる研究会や懇話会の発足に関わって、6月23日に総裁から示された官民比較方法についての基本姿勢に変わりはないことの確認を求めたところ、審議官は「6月23日に総裁からご指摘のような考えが示されたことは事実であるが、勧告後、『40年間も官民比較方法を変えてないのはおかしいのではないか』との指摘や政府や野党からも見直しを要請されているため、現在の官民比較方法が適当であるかどうかを検証するために、研究会や懇話会を設けることにしたものである。どう対応するかは検討結果を踏まえて人事院として判断することになる」との考えを示した。
 これに対し、公務員連絡会側は「総裁は、『現行の比較企業規模は、民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている』との姿勢であったが、今示された見解は研究会等の結果によっては総裁の示した姿勢を転換し、見直しもあり得るかのような話であり、それでは納得できない。約束違反で信頼を損ねるものである。総裁から示された基本姿勢には変わりはないことを明確にしたうえで、各種の疑問等に対してより説得力を持った対応を行うため、官民比較方法のあり方について科学的検証を行うということでなければならない」と、審議官に迫った。これに対し審議官は、「研究会等における検証は、6月23日の総裁回答の上に立って、その後の情勢を踏まえつつ、さらに公務員給与について広く理解を得ていくための努力の一つとして検証作業を行うことだ」との見解を示したことから、公務員連絡会側は「いまひとつ見解が明確ではない。政治や政府からの圧力があるからといって、われわれに示した人事院の基本姿勢が半年もたたないうちに変わることがあってはならない。最終回答では人事院の労働基本権制約の代償機能に対する基本姿勢に変わりはないことを明確に示してもらいたい」と、強く要望した。

(3)休憩・休息時間の見直し問題と労働時間管理や超勤縮減策の検討状況
 さらに、連絡会側が休憩・休息時間の見直しや厳格な勤務時間管理、実効ある超勤縮減策などの基本要求事項に対する検討状況を明らかにするよう求めたのに対し、審議官は「基本要求の趣旨は、勤務時間問題全体を一体で解決してほしいとのことであるが、人事院としても研究会報告で言及されていることなどを踏まえ、問題意識を持って、厳格な勤務時間管理や超勤縮減策について検討するとの姿勢を夏の報告で示した。その点は、引き続きその方向で検討していく考え方だ。担当局に伝え、最終回答までにどのような見解が示せるかさらに検討するが、勤務時間管理は各府省における業務管理と一体の問題であり、人事院がなにか基準を示せばことが進むという問題ではなく、調整に時間がかかることも理解してもらいたい」との見解を示すに止まった。
 公務員連絡会側は、「この問題についての人事院の検討姿勢に対する職場の不満は極めて強いことを十分認識し、公務員連絡会の申入れを真剣に検討し、誠意ある回答を示してもらいたい」と要請し、この日の交渉を締めくくった。

 公務員連絡会としては、さらに人事院との交渉・協議を進め、12月下旬には基本要求に対する最終回答を引き出す交渉を配置することとしている。


(資料)人事院への申入書

2005年11月30日

人事院総裁
 佐 藤 壮 郎 殿

公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏

「給与構造の改革」に伴う規則・通達等に関わる申入れ


 「給与構造の改革」に関わる人事院規則・通達等について、下記の事項を申し入れますので、その実現に向け最大限努力されるよう要請します。



1.規則・通達等の改正・制定に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
2.育児休業、介護休暇、在籍専従等休職者等の復職時調整を改善し、キャリア形成に影響を与えないよう措置すること。
3.中途採用者の経験年数・号俸換算方式など初任給格付けを改善すること。それに伴う在職者調整を実施すること。
4.段階的に実施することとされている地域手当について、移行期間における実施計画を示すこと。
5.地域手当の官署指定については、現行調整手当の指定官署・支給率を継承すること。地域手当が新たに支給されることとなる地域に隣接する官署等がある場合は、新たな官署指定を行うこと。
6.勤務実績の給与への反映に関わる規則や運用等に関わっては、次の事項を実現すること。
(1) 一般の職員の新たな昇給制度についての勤務成績の判定に係る改善措置等の活用にあたっては、その内容・実施時期等について十分交渉・協議し、合意すること。そのため、当面、勤務成績の判定に係る規則・運用通知等については、その範囲を管理職層を対象としたものとして制定すること。
(2) 給与決定のための成績判定のうち、上位者の「判定尺度の例示」については、恣意的・差別的運用を排除し、公正な運用を確保するよう指導すること。
(3) 「良好(標準)」未満の「判定基準」については、量定可能な客観的な事実に基づく事由に限定すること。Dについての運用は慎重に検討すること。
(4) 職員に対して勤務成績の判定基準等を事前に十分説明し、判定結果(該当事由の説明も含め)を本人に開示すること。
(5) 各府省及び人事院の苦情相談体制を整備すること。人事院に対する審査の申立手続きを改善(@申立人を職員及び職員団体とすることA審査の手続きを不服審査と同等とすること、など)すること。また、申立の対象となることを職員に周知徹底するとともに、申立があった場合には迅速かつ公平に対応すること。

以上