公務労協公務員連絡会女性連絡会は、(以下女性連絡会)は、12月5日14時から、人事院が作業を進めている「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の改定に関わって人事院人材局と交渉をもち、具体的数値目標の明記など真に実効ある指針となるよう求めた申入書を提出した。
人事院からは、人材局井原企画課長、森永職員団体審議官付参事官等が出席した。女性連絡会からは、井上女性連絡会代表や各構成組織代表が臨んだ。
冒頭、女性連絡会側から、「平成13年に現行の指針が策定されてから、採用に関しては多少改善されているものの、登用に関してはみるべき成果が上がっているとは言い難い。改正にあたっては真に実効あるものとなるようお願いしたい」と述べたあと、井上女性連絡会代表が 、別紙申入書に基づき、人事院としての考え方を質した。
これを受けて、人事院は「ただ今、申入れを頂いたので、これを踏まえて検討していきたい。おっしゃるとおり、現状は、採用はある程度進んだが、登用に関してはあまり進まなかった。みなさんから意見をいただいて良い方向になるようすすめて参りたい」とし、次の通り回答を行った。
(1)現在の指針において、「目標をつくる」となっているが、府省によって、数値目標のあるところもあり、また、「採用に努める」という程度のところもある。そこをできるだけ拡大していこうという方向が出るような目標にしてくださいという趣旨で「具体的目標」とした。明確な数値目標を設定するとはなっていないが、各府省の実情や経緯を踏まえて拡大の方向でやってもらうこととしている。
(2)転職者や中途退職者の格付については、問題意識を持っており、現行の制度のなかでもできるよう柔軟な対応となっている。
(3)メンターの導入に関しては、「メンター導入の手引き」を作成するなど、各府省に対して指導をしていきたい。
(4)短時間勤務制については、現在、検討がすすめられている最中であり、書き込むことは難しいが、人事院としてはそれを踏まえ、内容を織り込んでやっている。
(5)各府省とも女性の採用・登用拡大について、努力していると認識している。しかし、現実には採用は進んでいるが、登用はなかなか進んでいない。皆さんからすればものたりない内容かもしれないが、全体の枠組でとらえていただき、一歩でもすすめていきたい。
こうした回答を受けた後、女性連絡会側から、「確かに不満はあるが、まず、枠組みをつくることが大切である。しっかりと対応して頂きたい。また、国家公務員法では男女差別は禁止されているが、現実には間接差別など多くの課題がある。それをどう是正するのか。民間ならトップダウンで即決することもある。次の改正につながるよう努力して頂きたい」と質したのに対して、人事院側は「各府省や皆さんから意見をいただいて、さらにすすめていきたいと思っている」と回答した。また、「登用なら内部からなので何とかなるが、人員が削減されている中で、採用を拡大するのは難しいのではないか」と質したのに対しては、「10人の中に女性を何人入れるのかなら易しいが、1人2人の採用でどうするかが問われている。数だけではなく、比率ということもある。比率を上げるには受験者を増やさなければならない。その点では、人材局では採用試験の合格者に占める女性割合について数値目標を出してやっている。女性の採用・登用を定員や定数の別枠で、という状況にはない。現行のなかで出来るだけ努力していくしかない」と、現行の枠内で努力していく以外ないとの見解に止まった。
この他、女性連絡会側からは、「全府省に対応するためこの改正案だというのはわかるが、これが最低基準なのか、標準なのかを示さないと、取り組まないところも出てくるのではないか」「きちんとした数値目標を達成することが大切だと示していただきたい。5年間という大きなものでなくても段階的なものでもいいから示すことが大切である。また、登用が進まない原因をきちんと究明して、それを活かせるようこの改正案をつくったのか。女性の側の条件整備もあわせてお願いする」「仕事と家庭の両立という時期と登用に係る時期が重なっているのではないか」「メンターという言葉を今回初めて聞いたが、新たな施策を入れるときは、その説明責任が果たされなければならない。『手引き』のみならず、研修も必要ではないか」「女性職員の採用・登用拡大推進会議において、評価を積み上げ、次の改正には良いものを出して欲しい」などの意見・質問が出され、それに対して、「採用と違って、登用は環境が整わないと難しい。これまでの育て方では若干難しい面があった。配置や仕組みを整えて初めて登用に結びつくのだが、いろんな職務経験、研修を経て土台から積み上げていかなければならない。各府省もそれはわかっているのでそれぞれやっている。また、今はそうした経験をもとに少しずつ育ってきている。係長クラスから上になるのにあたり、男女ともに育成している。育休中でも研修などを受けられるようになった。登用の成果となっていくのにはもう少し時間がかかる。メンターになる人の研修については、検討していきたい。ようは、今までは勤務時間外に非公式でやっていたものをある程度システム化するということである。女性は数が少ないので、相談できるルートがあれば役に立つのでないかと思っている。試行錯誤しながらいいものをつくっていきたい。メンターには幹部クラスを想定しているが、上下関係ではなく先輩後輩という関係がベストだと思う」旨の回答があった。
最後に女性連絡会から、「2007年の団塊世代の退職にからんで、公務に資する人材を育てるということをきちんと位置づけ、いい制度を作って頂きたい。システムがうまく機能するまで時間がかかる。しっかり対応して頂きたい」との要望を述べ、今後の人事院の努力を要請し、交渉を終了した。
今後のスケジュールとしては、各府省や組合の意見を踏まえて12月末に指針が改定され、それを受けて1〜3月にかけて各府省段階で「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し、新年度からその計画に基づく取り組みが開始されることとなる。
資料−人事院への申入書
2005年12月5日
人事院総裁
佐 藤 壮 郎 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏
「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の改正にかかる申入れ
今般、貴院は、「女性職員の採用・登用拡大計画」年度の終了に当たり現行の「指針」を見直し、各府省に対しては、2010年度末までのあらたな計画を策定させるとしている。
この間、相次ぐ定員削減や給与引下げ、さらに、日増しに大きくなる公務員バッシングなど、公務員を取り巻く状況はますます厳しくなっている。他方、合計特殊出生率は史上最低を更新し続けるなど、少子高齢化が一層深刻化している。
このような状況のなかで、T種採用者の女性割合は増加しているものの、U種採用者は横ばい、V種採用者は減り続けている。また、登用に関しては見るべき実績が上がっていないなど、必ずしも指針に基づく取り組みの成果があったとは言い難い現状にある。
あらたな指針で貴院は、各府省に「具体的な目標」を求めているが、この間の経過をみれば、それだけで実効あるものとなるかどうかは極めて疑わしい。
以上のことから、貴職におかれては、真に実効ある指針となるよう以下の事項について最大限努力されることを強く申し入れる。
記
1.各府省の新たな「女性職員の採用・登用拡大計画」に対し、「具体的」な数値目標を明記するよう指針に盛り込むこと。
2.民間からの転職者や中途退職者にかかる選考採用については、実効あらしめるため、級別定数の取り扱いについて、柔軟な対応等を検討すること。また、定員の取り扱いについては、関係機関に申し出を行うこと。
3.メンターの導入に関しては、真に実効ある制度となるよう、各府省に対しきめ細やかな指導を行うこと。
4.次世代育成支援の観点から、短時間勤務制の早期導入とその活用等の記述を盛り込むこと。
以上