1月16日、都内において連合は政府と公務員制度改革に関する政労協議を開催した。連合側からは、古賀連合事務局長、岡部公務労協議長(自治労委員長)、丸山公務労協公務員制度改革対策本部長(国公連合委員長)が、政府側からは、中馬行政改革担当大臣、竹中総務大臣、川崎厚生労働大臣が参加した。
冒頭双方の参加者全員から挨拶があった後、中馬大臣から、政府側を代表して次の通り考え方が述べられた。
「行政改革は国民的課題であり、労使が対立せず理解しあいながら進めて行きたい。行革の重要方針で決めたとおり、能力・実績主義の人事管理の徹底、再就職管理の適正化等の観点に立った公務員制度改革について、総人件費改革の推進状況等も踏まえつつ、関係者との率直な対話と調整を進め、できる限り早期に具体化を図りたい。
3月にILOの結社の自由委員会があるが、組合側と対話しながら、労働基本権、人事制度など、今までの枠組みにとらわれることなく、幅広い観点で検討し、行革推進法として法案化したい。
総人件費改革については、プランは政府が決定するものであるが、組合側とよく相談していきたい。5%削減という数字が踊ってはならず、効率化を進めていくことで対応する。純減目標を意識していくためには、職員の雇用の確保などセーフティネットの整備が重要と考えている。特に、配置転換の計画策定は、雇用の確保の観点からも重要なことと認識していることから、私を窓口として、組合側と事務レベルも含めて十分議論していきたい」
これに対して、労働側を代表して古賀事務局長が次の通り考え方を述べた。
「公務員制度改革に関する、連合の基本的な考え方は、政治・経済・社会の改革が進んでいる今日、行政とそれを担う公務員制度についても抜本的な改革が必須であり、21世紀にふさわしい、国民のための、透明な公務員制度の確立が急務だということだ。この際、改革の重要なポイントとして、公務における労使関係の抜本的改革がある。これは、ILOの指摘を待つまでもなく、特権的あるいは閉鎖的とも指摘される官僚システムの抜本改革につながるものである。労働基本権については、国際基準であることはもちろんだが、労使双方が合意した内容について責任と義務を果たすことを求めるものであり、いわば近代的な労使関係の基礎と言うべきもの。このような、公務労使関係の近代化という視点から検討することが必要なのではないか。
また、総人件費改革については、連合は、格差社会の危機が叫ばれ、様々なリスクが増大している今日、社会に安心と安全を取り戻すことが必要であり、こういったことに的確に対応できる新しい公共サービスを再構築することが必要であると考えている。このような観点からすると、政府の行政改革の重要方針あるいは総人件費改革については、行政のリストラという視点あるいは削減数値目標が先行し、国民が求めている安心と信頼の公共サービスという視点が欠けていると言わざるを得ない。
しかし、現在、行財政運営に対する国民・納税者の不信がかつてないほど高まっていること、また、政府が行革推進法として今国会で成立させる方向であることを、組合としても重く受け止めており、政府が使用者として説明責任を果たし、本日以降当事者である連合官公部門と、実務ベースの話し合いも含めて丁寧な協議を行うことを求めたい。この際、出血整理を行わないことを議論の前提としてほしい。
なお、ILO勧告に関連して、5月理事会、6月総会という流れもあるので、3月を目途に、改めて政労協議の場を設置してもらいたい」
続いて意見交換に入り、それぞれ以下の通り発言があった。
丸山本部長からは、「3月にはILOの結社の自由委員会がある。国際社会からの指摘に対してどう答えていくのか。日本国内で労使がどのように解決策を見出すか、という立場で、政−労で双方齟齬のない国際対策・情報提供を行うことが大切だ。また、公務に対する信頼性が落ちている。その中で職場に活力がなくなってきていることは問題であると認識している。公務員制度改革は、わが国の行政と政治の民主化に関わる『人と組織の改革』であり、国民と公務員のために不可避の課題である。公務に民間的な手法の導入が進められようとしているが、ならば労働基本権についても民間並みにすべきではないか」との意見が述べられた。
岡部議長からは、「戦後60年経つ中で、公務員制度の改革は必要だ。国公法・地公法を改正し、労働基本権を確立する中で、事務事業と組織・定員、給与など労働条件に関する事項を相互に責任を負うことが必要だ。ILOで対立することが目的ではない。しかし、これまでの長い経過や顛末がある。こういったことも勘案して3月までに協議の場を持つべきだ。その際、労働基本権について、是非とも回復する方向で検討の場を設置することを求める」と要請した。
これに対して、中馬大臣からは、「ILOが目的ではないことは一致している。協議を進めるために3月頃に関係者が意見交換できるよう調整したい。民間と同じ基本権ということについては、国民的な合意が必要だ。また行革推進法の国会での審議状況がどうなるかも踏まえていく必要がある」との考えが示された。
川崎大臣からは、「日本政府としては、これまでもILOの考え方を尊重して対応を行ってきたところだ。今後とも、公務員制度改革については政労間で十分に話し合い、ILOに対しては足並みを揃えて対応することとしたいと考えている。今年の3月や5月に開催される結社の自由委員会では、日本の公務員案件について最終的な議論が行われる見通しであり、これらの状況を勘案すると、3月頃に関係者が意見交換することが望ましいと考えている」との考えが示された。
竹中大臣からは、「行政・公務員に対して厳しい視線があるとの認識は同様だ。公務の信頼と活力という指摘があったが、同意見であり、これがキーワードだと思う。新しい視点での改革に向けて我々も建設的に取り組んでいきたい。その際、ぜひ双方の立場を尊重してやっていきたい」との考えが示された。
さらに丸山本部長が、「我々は労働組合であり、組合員の雇用を守ることが基本だ。総人件費改革に伴う、配転問題などが起これば、専門が異なるのだから、研修等の措置も必要だ。ぜひそのようなことも認識してほしい」と対応を求めたことに対して、中馬大臣は、「今後退職者が増加する。また、状況の変化の中でいらなくなった仕事もあるのではないか、と考えている。それによって、その不補充等の措置で相当の数値目標が達成できると考えている。具体的には、来年度以降の新規採用抑制、配置転換や研修など、枠組みの全体像について3月中下旬を目途に各府省に示すこととしたい」との見解が示された。
この日の協議のまとめとして、古賀事務局長が、別記「合意」事項を読み上げる形で提起し、3大臣を含めこれを全員で確認・合意した。
最後に、古賀事務局長は「本日の直接の課題ではないが、せっかくの機会なので」と断った上で、「政府内部で被用者年金問題の一元化の議論が進められているが、直接の利害当事者の意見を十分聞くことが必要だ。一元化の推進にあたっては、適当な検討の場を設置し、整合性のある改革を進めるべきだ」との見解を表明し、この日の協議を終えた。
1.16政労協議における合意
一.前提認識に関わって
1.政府は、基本権制約の枠内での公務員制度改革方針を転換し、基本権付与の可能性を含め、幅広く「公務員制度改革」について検討するとの方針に立っていることを確認。
2.上記の「公務員制度改革」の中で、社会・経済情勢の変化に対応し、現行の公務労使関係を改革する必要があるとの認識で一致。
二.協議を通じて
1.総人件費改革については、双方の基本的な考え方に相違があったが、「雇用」を確保するとの見解が政府側から表明され、併せて、配置転換の計画策定等については中馬行革担当大臣を政府側の責任者とし、連合官公部門と事務レベルも含めて十分協議することが確認された。
2.公務員制度改革については、「ILOへの対応も含め、形式にこだわらず3月を目途にこの種の協議の場を持つこと」との連合の要請に対し、中馬大臣より「3月頃に関係者が意見交換できるよう、調整させることとしたい」との見解が表明され、川崎、竹中両大臣も賛同し同意する旨の見解が表明された。
3.組合側が、労働基本権を付与する方向で公務労使関係制度を改革することを含めた公務員制度の抜本改革が緊切の課題であり、そのための「検討の場」を速やかに設置することを求めたのに対し、政府側は何らかの「検討」の場の必要性については同意したが、具体的にどのようなものとするかは、国会審議の動向等を含め慎重に検討する必要があるとの見解が示され、本日段階では引き続き協議することとする点で一致。
以上