2006年度公務労協情報 24 2006年2月7日
公務公共サービス労働組合協議会

総人件費削減に関わる雇用・労働条件確保で行革推進事務局と交渉
−行革推進法案の内容でも追及−

 公務労協は、7日11時から、総人件費改革の具体化に伴う配置転換と行政改革推進法案(仮称)について、行革推進事務局と交渉を実施した。これは、1月16日に行われた政労協議で、中馬行革担当大臣から「配置転換の計画策定は、雇用の確保の観点からも重要なことと認識していることから、私を窓口として、組合側と事務レベルも含めて十分議論していく」との見解が示されたことを受けて行われたもので、公務労協からは山本事務局長ほか関係構成組織の書記長クラス交渉委員が、行革推進事務局は上田公務員制度等改革推進室長らが対応した。
 冒頭、山本事務局長が「政労協議では、中馬大臣から『出血整理はしない』『配置転換についてはしっかり話し合う』『雇用確保のためのセーフティネットの整備が重要』との考えを承ったが、きょうはその具体的な作業状況を伺いたい」として室長の見解を求めたところ、次の通り見解が示された。

(1) 定数の純減に伴って、どういう分野からどの程度の定数が削減されることになるのかについて、ある程度目安が固まらないと対応しようがないということがあるが、おおざっぱに言えば、新陳代謝の中でどうはめ込んでいくかということであり、退職者の職務をすべて新規採用者で補うのではなく、新採を抑制しつつ、配置転換者でまかなうことをどう設計していくかということになる。しかし、どの分野からどこへ配置転換していくかという全体の枠が決まらないと具体的な検討はできないので、まず全体的な枠を確定したいと思っている。また、各省の協力を得るために、もう少し大仕掛けの体制を考えないといけないと思っている。
(2) スケジュールとしては、3月中下旬に有識者会議の中間とりまとめを予定しているので、同じ時期にもう少し具体化した考え方を取りまとめたい。

 これに対し、公務労協が上田室長に@純減の内容がもう少し具体的に見えてきた段階で具体化するA採用抑制で退職者を埋めることとし出血整理はしないB配置転換に伴って給与が減額されることはない、と受け止めていいかと確認を求めたところ、室長は「@Aはその通りでよいが、Bについては配置転換先の仕事の内容によって給与は決まることになるので絶対に下がらないとはいえないが、配置転換に応じたことによって割を食うということがないよう、人事院と相談しながら対応して参りたい」との考えを示した。
 さらに公務労協側は、これまでに行われてきた省内・省庁間配置転換の経験を踏まえつつ、@20歳代の者は苦労・不満があっても資質の向上や仕事の充実感などプラスの評価をする者も多いが、30歳代、40歳代と年齢が上がるにつれて苦労や不満を訴える者が増えてくる。各府省の人事ルールや仕事の中身について、事前の十分な情報提供や研修はもちろん、交流後も業務研修をしっかり行っていただきたいA配置転換に当たっては、本人希望を前提にすることや復帰を望む者についてそれを可能にすることが重要なので配慮していただきたいなど、具体的な課題を要望するとともに、B検討に当たっては配置転換を法制度上どう位置づけ・整理するかといった課題と個別の配置転換を進めていくためのルールをどうするかということがあるのでその両面について議論する必要がある、として、今後十分話し合いながら具体化に向けた検討を行うことを要求した。
 要求に対し、上田室長は「事前の情報提供や研修は要望を受け止めて対応する。個別取扱の画一的なルールを作ることは難しいと思うが、誰を優先するかなどは考えないといけないと思っている。いずれにしても配置転換は不可避的に生じると思っており、いやいや押しつけられるということにならないように、新たな発展の場所を与えられるものとして前向きに受け止められるようにしていきたいと思っている。具体化については、わたしと担当参事官のところでみなさんと話し合って参りたい」として、公務労協と協議しながら検討していくことを約束したことから、これを確認し、今後、公務労協としても具体的な考え方を示しながら引き続き協議していくことにした。

 続いて、行政改革推進法案の「概要」が今週中にも政府の行政改革本部で了承されるとの情報について、山本事務局長から「法案は、年末に閣議決定された『行政改革の重要方針』をそのまま法文化するとのことであり、総人件費改革に関わっては、まず総人件費の削減を図るということが書かれ、そのため人事院が具体的な検討を行うという構成になっていると聞いている。そもそも政府、使用者の方針として閣議決定したのだからさらに法制化する必要はないのではないか。なぜ法制化するのか。労働基本権を制約しその代償機関として人事院があるのだから、法律で人事院に人件費を削減することを求めるのは労使関係を無視するものであり、認められない。政労協議で労働基本権を含めて公務員制度改革をどうするか議論することで合意していることとも矛盾する」として、行革推進事務局の行革推進法案の作成作業の姿勢を質し、人勧制度を空洞化することとなる給与制度見直し等に関わる事項を法案に盛り込まないよう強く求めた。
 これに対し室長は、「法制化は小泉構造改革を後戻りさせないための政治的要請に基づいて行うものである。ただ、そのまま法文化するといっても、閣議決定で書けることと法律で書けることは異なるので全く同じということにはならないが、閣議決定のコンセプトは盛り込みたいと思っている。人事院における検討については、検討の観点を書くだけで結論に枠をはめて強制しているわけではないので問題はないと思っている。スケジュールとしては、10日に法案の概要について行政改革推進本部に説明し了解を得て、3月10日ごろには法案を閣議決定し、国会に提出したいと考えている」と答え、あくまで人事院における検討の方向性を示すものであって、強制するものではないとして、法案にそれらを盛り込むとの姿勢を変えなかった。
 このため、公務労協側は「閣議決定で政府・使用者の方針は明確になっているので、それをわれわれに提起し、労使で話し合うべきではないか。それを改めて法律で規定する意味が理解できない。結局のところ、労使関係や代償機能を否定することにしかならないし、国公法上も疑義が生ずる」と、再度の見解を求めたが、室長は「人事院をそんなに縛る内容のものではないので、問題はない」との見解を繰り返すに止まった。そのため公務員連絡会側は、「法案の中身について、われわれは何も聞いていない。今後、十分情報を提供してもらって、議論させていただきたい」と要求し、室長が事前の情報提供と話し合いを約束したことから、本日の交渉を打ち切った。

以上