公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、2日午後、総務省人事・恩給局次長、人事院職員団体審議官と交渉をもち、2月16日に提出した2006春季要求に対する中間的な回答を引き出した。しかし、この日の回答は総じて抽象的で、内容的にも不満なものに止まった。とくに、人事院交渉では、官民比較方法や小規模企業調査について、いずれも「検討中」との形式的な回答に止まったため、公務員連絡会側は基本的な枠組みの見直しを行わないよう厳しく追及した。
公務員連絡会では、この日の回答が極めて不満な内容に止まったことを踏まえ、14日の中央行動をさらに強化し、書記長レベルの交渉で誠意ある回答を引き出すべく取り組みを強めることとしている。
総務省、人事院交渉の経過は次の通り。
<総務省人事・恩給局次長交渉の経過>
公務員連絡会幹事クラス交渉委員と総務省人事・恩給局との交渉は、午後1時30分から行われた。公務員連絡会側は、今日段階での総務省の見解を求め、村木人事・恩給局次長は次の通り回答した。
(1) 行革推進法や市場化テスト法、総人件費改革については、内閣官房(行革推進法、総人件費改革)、内閣府(市場化テスト法)が窓口であるが、総務省としても、これらの改革の実施に当たっては、職員の雇用の確保などセーフティネットの整備が重要と考えている。
皆さんが雇用問題に懸念を持っていることは承知しており、改革を進めるに当たっては、職員の士気を維持・確保し、不安を与えないよう努力することが必要と考えている。いずれにせよ、皆さんの御意見については、今後とも伺ってまいりたい。
(2) 総務省としては、来年度の給与改定に当たっても、従来同様、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ、皆さんとも十分に意見交換を行いながら、適切な給与水準となるよう対処してまいりたい。
(3) 国家公務員の退職手当については、5、6年毎に実施する民間企業退職金実態調査の結果を踏まえ官民水準均衡を図っている。次回調査は平成18年度に実施することとしているが、総務省としても、被用者年金一元化についての検討状況等も踏まえ、具体的な調査方法等を検討する必要があると考えている。
(4) 公務員の労働基本権等を含む公務員制度については、昨年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」において、国民意識等を踏まえつつ、内閣官房を中心に幅広い観点から検討を行うこととされたところ。
また、本年1月には政労協議も開催され、幅広く検討していく必要があることを確認したところであり、今後とも関係者間で十分に話合いを行っていくことが必要であると考えている。
(5) 公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを導入することについては、公務員制度の広範にわたり影響が出ること等を考慮したうえで、慎重な検討を進めていくことが必要と考えている。
育児・介護に充てる時間を拡充する方向での制度的検討については、現在、人事院において検討が進められており、総務省としても、人事院における検討を注視して参りたい。
また、国家公務員の労働時間の短縮については、平成15年9月に見直しを行った「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づいた様々な検討・取組みが各府省において進められているものと考えているが、各府省の実務担当者による連絡会議の場等を活用し、各府省の取組み例をフィードバックするなど十分な議論を行い、その推進を図ってまいる所存である。
(6) 総務省としては、「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」に沿って、再任用制度を高齢国家公務員雇用の基本的方策と位置付け、関係機関と緊密な連携を取りつつ、政府全体として高齢国家公務員の雇用を推進してまいりたい。
(7) 毎年、各府省に対し、「人事管理運営方針」において、女性国家公務員の採用・登用等の促進を要請しているところであり、また、昨年10月には、平成16年4月の女性国家公務員の採用・登用等の拡大に係る具体的な取組みについての関係省庁申合せについてのフォローアップ結果を公表したところである。
昨年末に「男女共同参画基本計画」及び「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の見直しが行われたことも踏まえ、関係行政機関と連携を図りつつ、引き続き女性国家公務員の採用・登用の促進等を推進してまいりたい。
(8) 評価の試行については、現在、第1次試行を実施しているところであり、終了後は、その結果を丹念に検証し、それを踏まえた改善を加えることとしている。
新たな人事評価システムが、信頼性を高め、実効あるものとして仕上がるよう、今後とも皆さんとは十分に意見交換等を行いながら取組みを進めてまいりたい。
以上の回答に対し、公務員連絡会側は以下の通り見解を質した。
(1) 総人件費改革に関する課題については、行革推進事務局と協議を行っているが、政府全体として雇用責任を明確にした対応を行う必要がある。総務省としても、中央人事行政機関の補助部局である立場−公務員の雇用に責任を持つ立場を踏まえて、主体的に取組みを進めるよう要請しておきたい。23日の回答指定日には、総務大臣から職員の雇用を確保するとの明確な見解を示していただきたい。
(2) 官民比較方法の見直しについては、昨年12月20日の交渉時において、「政府としての人事院に対する要請も低ければ低いほど良いというスタンスではない。現在公務員給与について強い批判があり、それらに的確に説明できるよう検討して頂きたい、との趣旨」との回答があった。これらの回答のスタンスを2006春季においても堅持してもらいたい。
(3) 退職手当の調査のあり方については、被用者年金一元化への対応や、結果が退職手当の水準に直結する問題であることを踏まえ、われわれと十分交渉・協議を行うよう要請する。
(4) 新たな人事評価制度の第1次試行終了後、検証を行うと回答があったが、途中経過の段階でも必要ではないか。第2次試行については、組合員に関わる試行を行うとなれば、開示や苦情処理システムをどうするかという困難な問題があることを踏まえ、実施予定と内容について早めに提案し、協議を開始すべきだ。
これに対し次長は次の考え方を示した。
(1) 総人件費改革にともなう職員の雇用について、今後純減計画の具体化の段階では、総務省が一定の役割を果たすことを期待されると認識している。上層部にもご指摘の点については報告し、内閣官房と連携をはかりながら対応したいと考えている。
(2) 本年の給与改定に関わる総務省の基本姿勢が示されたことを確認する。官民比較方法の見直し要請については、より広く理解が得られるように検討してもらいたいということが趣旨である。いずれにしろ、人事院の検討を待つということであり、われわれからあれこれいってはいない。
(3) 被用者年金一元化を巡る政治の側からの意見もあり、従前通りの民間企業退職金実態調査を単独で実施することでは済まない問題であると考えている。枠組みが決定され次第、皆さんの意見を聞きながら対応したい。
(4) 第1次試行における途中経過で検証については、何がやれるか検討したい。第2次試行については、まず第1次試行の検証をどうやるか検討しており、その上で実施案を検討していくこととなるが、指摘の点は十分踏まえ余裕のないスケジュールとならないよう留意していきたい。いずれにしろ、十分皆さんの意見聞きながら検討したい。
最後に、公務員連絡会は「要求事項にかかわる本日の回答については抽象的な内容に終始しており不満な内容だ。14日の局長交渉の際には、具体的かつわれわれの納得のいく回答を示していただきたい」と要請し、本日の交渉を終えた。
<人事院職員団体審議官との交渉経過>
公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、2日14時30分から、井原職員団体審議官、森永参事官と交渉を行った。
冒頭、公務員連絡会側は「2月16日に総裁に要求書を提出して時間も経過しているので、中間的な回答を伺いたい」として審議官の見解を求めたのに対し、審議官は「2月16日に総裁あて統一要求書が出された。3月23日の最終回答に向けて、しっかりと意見交換を行っていきたい」として次の通り考え方を示した。
(1) 2006年度賃金要求について
@民間春闘の状況等と人事院の基本姿勢
民間企業でも大手企業を中心に春闘要求書が出揃い、これから議論が本格化しようとしている。日本経済全体が回復傾向にあることを背景に、本年は多くの企業において組合側も久方ぶりに賃金改善を求めているものと認識しており、民間の春闘の動向に注目していきたい。ただ、要求額はそう大きなものではなく、かつ、一律配分要求はなくなっているようであり、かつての一律のベア要求とは様相を異にしているようである。
人事院としては、民間準拠の原則に則って、民間の賃金改定の実態を精確に把握し、適切に給与勧告に反映させるという基本姿勢で、例年どおり作業を進めている。
また、防衛施設庁の問題などもあり公務員をめぐっての批判はおさまっておらず、国会等における議論に注目しているところである。
A官民比較方法のあり方
官民給与比較のあり方については、比較対象企業規模などに関して、国会において与野党問わず非常に厳しい議論が行われ、また、マスコミなどの論調も極めて厳しい。このような状況を踏まえ、人事院は、中立第三者機関として労働基本権制約の代償機能を十全に果たしていくべく、官民比較方法のあり方について検討を行う必要があると考え、研究会や懇話会を設けて官民比較のあり方全般について検証するための検討を進めているところである。先般、公務員連絡会からも懇話会の場でご意見をうかがった。現在のところ、研究会や懇話会において検討を進めているということであり、今の時点で何か固まったということではない。
また、この問題との関連で本年の民間企業の給与実態調査において100人未満の小規模企業の給与について調査することについて検討しており、そのための準備作業を進めている。
この件については引き続き皆さんの意見も十分うかがいながら検討を進めてまいりたい。
B給与構造改革の積み残し課題
昨年勧告した給与構造改革で積み残した課題について、鋭意作業を進めているところである。
(2) 労働時間並びに休暇、休業等について
育児・介護を行う職員の短時間勤務制度、自己啓発等のための休業制度、超過勤務の縮減などの勤務時間制度の課題については昨年の勧告でも各課題について報告したところであり、それぞれの課題について鋭意検討を進めている。短時間勤務制度については、できるだけ早期に意見の申出ができるよう努力していきたい。
また、この問題に関しては昨年末以来の休息・休憩時間の検討に関係しても話し合いを行ったところであり、そういった経緯も踏まえ、ご意見をうかがってまいりたい。
(3) 男女平等の公務職場の実現について
人事院は、男女平等参画社会の実現を図っていく上で、国が率先して女性国家公務員の採用・登用の拡大に取り組む必要があると認識しており、昨年来、皆さんのご意見も聞いて採用・登用の拡大に関する指針を改定した。指針に基づき各府省が22年度までの目標を設定した女性職員の「採用・登用拡大計画」を策定することとされているので、指針の趣旨にそって必要な指導等を行っていきたい。
両立支援制度の活用や男性職員の育児休業の取得促進については、人事担当部局による連絡協議会の場で両立支援に関する情報交換を進めるなどによって必要な取り組みを進めていきたい。
(4) 新たな評価制度について
新たな人事評価制度の導入については、現在実施している試行の状況も踏まえながら職員団体の理解と納得を得られるよう関係者間で十分協議を行っていくことが必要と考えており、人事院としても中立第三者機関、専門機関として引き続き積極的にその役割・使命を果たしていきたいと考えている。
以上の審議官の見解に対し、連絡会は、以下の通り再度明確な見解を示すよう迫った。
(1) 給与構造改革の積み残しとしては、一般職員の成績判定の給与への反映が課題になるので、納得に基づいてスタートできるよう十分な協議をお願いしたい。また、本年の勧告に向けて、較差が出た場合の取扱いや地域手当の段階的実施、広域異動手当の導入などが課題となるが合意の上で勧告がなされるよう要望しておきたい。なお、積み残し課題の議論のスケジュールなどを明らかにしていただきたい。
(2) 労働時間の課題については、一体的な改善を求めてきたところであり、今この段階になっても昨年と同じように「できるだけ早期に意見の申出ができるよう努力する」という回答では納得できない。遅くとも14日の書記長レベル交渉までには、育児・介護職員の短時間勤務制度の意見の申出の時期、勤務時間管理の厳格化、超勤縮減策の具体策の提案の時期を明確にしてもらいたい。そのうえで、中身についても事前に議論させていただきたい。
休憩・休息に関わる議論経過においては、所定内勤務時間について民間に合わせていくことも夏の勧告に向けた大きな課題であり、春の段階で一定の見解を示していただきたい。
(3) 現在評価の試行が行われているが重要な事項が先送りされている。人事院としてリーダーシップを発揮して、われわれが求めている4原則2要件を踏まえた仕組みとなるよう積極的に努力していただきたい。
これらに対し審議官は、次の通り考え方を示した。
(1) 給与構造見直しの積み残しについては、今後とも話し合いながら進めていきたい。検討のスケジュールについては、広域異動手当と特別調整額の定額化は夏の勧告までであり、一般職員の成績判定の給与への反映は一般職員の成績判定が開始される時期に間に合うよう議論していくことになる。なお、本年勧告に向けてはスタッフ職俸給表も検討課題に入っている。
(2) 育児・介護職員の短時間勤務制度の意見の申出は、様々な制度的問題もあり、現時点でいつまでということを申し上げることはできないが、ご要望はよく検討させていただきたい。所定内勤務時間の問題も今後どうするか検討していきたい。
(3) 評価の試行についても、積極的に対応して参りたい。
以上の議論の後、本年の春季要求で最大の課題である官民比較方法の見直し問題について集中的な議論を行った。
公務員連絡会側は、「官民比較方法の骨格を見直すことや小規模企業の調査は反対であり、本日の回答がこれまでと同じであることは納得できない」として、さらに以下の通り人事院の姿勢を追及した。
(1) 昨年6月23日に総裁から「現行の比較企業規模は、民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている」との回答があったにもかかわらず、秋以降、人事院はそれを反故にして見直しの検討を始め、小規模企業の調査も提案している。6月と秋とでどんな情勢の質的な変化があったのか組合員が納得いくように説明すべきだ。それを全くやっていない。経済財政諮問会議の意見や閣議決定があったからというのでは第三者性を否定するものである。また、人事院の姿勢が変わったのであれば、その責任も取っていただかなければならない。
(2) 企業規模100人以上、事業所規模50人以上という比較対象企業規模は、1964年の太田・池田会談(政労トップ会談)で三公社・五現業の民間準拠の枠組みが決まり、その枠組みが労働基本権制約の代償機能にも適用され、非現業職員の給与決定方式として定着し、歴史的制度的に確立されてきたものである。その意味で、人事院の権能でで一方的に変えられる性格のものではない。それを変えることは、代償機能として成立している基盤を自ら否定することになるからである。研究会で検討するにしても、こうした仕組みを守るための検証作業として行うべきであって、見直すかどうかを含めて検討することは認められない。
これに対し審議官は、次の通り答えた。
(1) 秋の政府の要請も重いが、それだけではなく、国会で与野党を問わず厳しく指摘され、マスコミの論調も厳しく、いつまで40年以上前の基準でやっているのかということも指摘されており、人事院として検討しないわけにはいかないということで、研究会を設け検討することにしたものである。比較企業規模が問われている中で小規模企業の調査もしないわけにはいかない。いま調査を行わないということは、比較方法の検討をやめるということになり、新たな批判を招く。
(2) 何が妥当なのかを含めて有識者の意見も踏まえて検討するということである。1964年以前は別の方法で比較していたし、64年以降も比較方法の様々な見直しを行っており、企業規模100人以上、事業所規模50人以上という比較対象企業規模をどうするかは人事院の権限であると考えている。見解の相違であり、ご意見として承る。
以上のように、比較方法についての議論は平行線であったことから、連絡会側が最後に「秋以降の情勢の変化についてわれわれは質的な転換はなかったと認識している。人事院が代償機能を堅持し的確な対応を行えばいい話であり、今日の審議官の回答では到底納得できない。また、企業規模などの見直しは人事院の権限であるという見解についても到底納得できない。企業規模やラスパイレス比較などの官民比較の根幹に関わる事項は、代償機能が成立するか否かに直結する問題であり、少なくとも労働組合が反対しているのに強行するという性格の問題ではない。いずれにしろ、今日示された見解は極めて不満であり、強く再考を求める。他の課題も含めて、14日の書記長レベル交渉委員と局長との交渉で、具体的で誠意ある回答をお願いしたい」と要請したのに対し、審議官が「今日いただいたご意見も踏まえて出口の会見までしっかり議論を積み重ねていきたいと考えている」と答えたことから、引き続き交渉していくことを確認し、本日の交渉を終えた。
以上