公務労協は、6日11時から、行政改革推進法案(仮称。以下「法案」という。)の内容と定員純減に伴う雇用確保・配置転換の方針について、行革推進事務局との交渉・協議を実施した。これは、10日にも法案の閣議決定が行われ国会に提出される予定となり、8日から行政減量化有識者会議が定員純減のための事務・事業見直しのヒアリングを開始する情勢となっていることから行われたもの。公務労協からは山本事務局長ほか関係構成組織の書記長が、行革推進事務局は上田公務員制度等改革推進室長らが対応した。
<行政改革推進法案の内容等について>
冒頭、山本事務局長が「10日には行政改革推進法案が閣議決定され国会に提出されると聞いており、その中身を明らかにしていただきたい」と求めたところ、上田室長は「3月10日に閣議決定し国会に提出するというのが政府の段取りである。昨年12月24日の閣議決定で政府としての行政改革推進の重要方針を決めたので、それを国民に法律レベルで約束するための立法作業を進めてきた。内容は広範囲にわたるがプログラム法であり、2月10日に公表した法案概要の内容を法制局審査を経て法案化することになる」との回答が示された。
回答に対し公務労協は、(1)公務員及び関係労働者の賃金・労働条件に関わることは労使交渉事項であり、事前に示してもらって十分に議論すべきだ(2)この間われわれは「5%以上の純減ありき」には反対であり、事務・事業の検討があってその後に定員が出てくるのではないかと指摘してきたが、法案ではその点は担保されているのか(3)法案では、労働基本権がある非特定独立行政法人の人件費について平成17年度と比べて5/100以上減量すべきことを義務づけているときいているが、これは労使自治への介入に他ならず、極めて遺憾であり、認められない(4)地方公務員の課題も法案には書かれることになるが、地方自治体に対しどのような要請等を行うことを考えているのか、として重ねて室長の見解を求めた。
これに対し室長は、次の通り答えた。
(1) 労働条件である給与の問題については、労働基本権の制約がある場合には第三者機関の勧告に基づいて決定されることとなるが、法案では給与決定を縛ることのないように配慮しており、給与制度や水準、比較方法を検討するのは人事院であり、政府はそれを踏まえて対応するということにしている。
(2) 「5%以上の純減ありき」とのことであるが、従来のように○○%という数字を一律に各府省に割り当てるという手法ではなく、今回は仕事の中身から帰納的に簡素化を図る取り組みを行っているところである。ただ実効ある取り組みを行うためには一定の数字が必要であり、仕事の中身を精査して、その成果として目標は達成したいと考えているのでご理解願いたい。
(3) 非特定独立行政法人の人件費の減量化については、経営側の責務として法定するものであり、労使交渉に介入するものではないと考えている。独立行政法人は独立性や自主性を活かすことが制度の趣旨であるが、国費でまかなっているということがあり、その部分は政府全体の方針と同様の総人件費の減量努力が求められるということである。なお、設立間もない法人やこれから設立される法人もあり、一律に「5/100以上の減量」を義務づけることは適切ではないので、法文上は「基本として」という表現が入っている。その場合、説明責任が問われることは言うまでもない。
(4) 地方公務員は1年前にすでに4.6%の純減の要請が行われているので、今回は新たにやるということではなく、各団体の大綱のフォローアップ過程で必要なものを入れていくという形になるのではないか。
<雇用確保・配置転換等の仕組みについて>
続いて公務労協側は、総人件費改革の実行計画の具体化に伴う雇用確保・配置転換の仕組み等について、「今回の定員削減では深刻な雇用問題が惹起される心配があり、中馬大臣から『出血整理はしないが、配置転換には柔軟に対応してもらいたい』との見解が示されたが、今日はその具体策についての検討状況を明らかにしてもらいたい」として、室長の見解を求めた。
これに対して室長は、「国の事務・事業の合理化、効率化に伴う定員の改廃を行うためには、その事務・事業に携わる職員の円滑な再配置を行うことが必要であり、そのための府省横断的な配置の転換、研修、新規採用の抑制などを中心に、今月中下旬に、もう少しかみ砕いた形でどう取り組むかの方針を明かにしたいと考えている。その際、政治レベルを含めた政府全体としての責任ある体制作りや地方レベルでの実務的な仕組みについても考慮する必要があると考えている」と、雇用確保・配置転換の仕組みについての方針を3月中下旬に明らかにしたいとの見解を示した。
説明に対し、公務労協はさらに以下の通り室長の考えを質した。
(1) 配置転換等の方針が明らかにならないと職員の不安をいたずらに高めることになるし、受け入れ省庁の準備も進まない。さらに事務・事業見直しの障害にもなっている。事務・事業の見直しと同時並行的に進めるべきである。
(2) 政府全体としての体制作りについては、総理大臣が本部長になるなどの政治を含めて万全の体制をとることが必要であり、それらの具体策について近々に設定される予定の連合と3大臣との政労協議の場の活用も含め、中馬行革担当大臣から明確な回答を示してもらいたい。
(3) 今回の配置転換等は新しい仕組みであり、「異動」や「府省間配置転換」などの用語が法的にどういう意味を持つのかをはっきりさせておかないと問題になる可能性があり、別途明確にしていただきたい。
これらの質問等に対し室長からは以下の考えが示された。
(1) 配転等の方針は、削減数が見えてこないとどういう対策が必要かということも定まらない面があり、3月段階では固い形での決定は難しいと思う。基本的な方針を表明することにしているが、どういう形になるかは決まっていない。最終的には、6月までに「行政改革推進本部決定」以上の形で決定することになる。
(2) 政治を含めた体制作りなどの公務労協の提案については誠意を持って対応するが、政府部内の調整もできていないので、本日は聞き置くことに止めたい。大臣交渉については、要請があったことを受け止め検討したい。
以上のように、行革推進法案を巡る議論では、非特定独立行政法人の扱いが平行線となったことから、この点について公務労協は「当局側に対する責務規定であり、賃金制度、水準、定員改廃は労使が対等に交渉して決定すべきものであり、条文はそれを拘束するものではないことを確認する」とした上で、雇用確保・配置転換等の仕組みの早期明確化と中馬大臣からの回答を重ねて要請し、本日の交渉を終えた。
以上