2006年度公務労協情報 31 2006年3月14日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

公務員連絡会が2006春闘中央行動実施−3/14
−書記長クラスが総務省・人事院の各局長と交渉し誠意ある回答迫る−

 公務員連絡会は、2006春季生活闘争の回答指定日を23日に控えた14日、春季要求の実現を目指した中央行動を実施した。午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会には、全国の仲間3,500人が結集し、厳しい情勢の中、23日の回答指定日に向け闘う決意を固めあった。この日行われた書記長クラスと総務省・人事院の各局長との交渉では、総務大臣や人事院総裁の最終回答を巡って激しいやり取りを行ったが、公務員をとりまく厳しい情勢を反映して当局側は固い姿勢に終始した。とくに、官民比較方法の見直しに関わった人事院給与局長との交渉は物別れに終わり、最終の総裁回答を巡って20日に再度行われることとなった。公務員連絡会では、13日夜の企画・幹事合同会議で、公務労協規模で進められている総人件費削減に関わる雇用確保などの闘いとあわせ、3月20日に緊急中央行動を配置するなど、ギリギリまで要求実現に向けて粘り強く取り組みを進める方針を確認した。

 午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会では、冒頭主催者を代表して挨拶に立った丸山議長が「国会に行革推進法案、市場化テスト法案が提出され、審議されようとしている。われわれは、2006春闘において@雇用・労働条件を確保することA企業規模などの官民比較方法の見直しを断固として反対することB労働基本権確立を含む公務員制度改革の筋道を付けることC国民生活の安心・安全を支える公共サービスを確立すること、の4つを重要課題に設定し、全力で闘い抜かねばならない」と、回答指定日に向けて全力で闘うことを訴えた。
 続いて激励挨拶に駆けつけた難波JPU書記長は、郵政民営化反対闘争への支援に感謝するとともに、国営企業を代表して「今春闘では、総合生活改善闘争に加え、賃金については民間相場を見つつ、自主交渉・自主決着の方針で実質賃金の維持・改善の取り組みを進めている」と、闘う決意を述べた。
 このあと基調提起に立った山本事務局長は、これまでの厳しい情勢のもとでの交渉・折衝経過に触れ、本日の局長クラス交渉で誠意ある回答引き出しを目指す決意を述べるとともに、3.20緊急中央行動を実施し、23日の最終回答に向けた追い上げを図る方針を提起した。
 構成組織決意表明には、自治労植本副委員長、日教組砂流鳥取県教組執行委員、国公総連佐々木全財務書記次長、国税労組長田書記次長が登壇し、口々に全力で闘い抜く決意を述べた。
 集会を終えた参加者は、霞ヶ関を一周するデモ行進と交渉を支援する人事院前行動に分かれて行動、「比較企業規模を見直すな」「小規模企業調査の実施反対」「雇用を確保せよ」とシュプレヒコールをあげた。これらの行動を終えた参加者は、再び日比谷大音楽堂に結集し、交渉報告を受け、この日の公務員連絡会の行動を終えた。
 そして、休む間もなく、公務労協主催の国会請願デモに出発、衆参議面前で出迎える民主党・社民党の議員とともに再び「行革推進法案、市場化テスト法案反対」「公務員の雇用を確保せよ」とシュプレヒコールを繰り返した。
 この日行われた総務省人事・恩給局長、人事院給与局長、職員福祉局長との交渉経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員と戸谷総務省人事・恩給局長との交渉は、14日午前11時から総務省内で行われた。公務員連絡会側は、本日段階での総務省の見解を求め、局長は次の通り回答した。
(1) 行革推進法や市場化テスト法、総人件費改革については、内閣官房、内閣府が窓ロであるが、我々としても、これらの改革の実施に当たっては、職員の雇用の確保などセーフティネットの整備が重要と考えている。皆様が雇用問題に御懸念を持っていることは承知しており、改革を進めるに当たっては、職員の士気を維持・確保し、不安を与えないよう、内閣官房等と連携・協力して参りたい。いずれにせよ、皆様の御意見については今後とも伺って参りたい。
(2) 総務省としては、来年度の給与改定に当たっても、従来同様、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ、皆様とも十分に意見交換を行いながら、適切な給与水準となるよう対処して参りたい。
(3) 国家公務員の退職手当については、5〜6年毎に実施する民間企業退職金実態調査の結果を踏まえ官民水準均衡を図っている。次回調査は平成18年度に実施することとしているが、被用者年金一元化についての検討状況等も踏まえ、具体的な調査方法等を検討する必要があると考えている。
(4) 職業生活と育児・介護など家庭生活との両立を支援するという観点は重要と認識している。育児・介護に充てる時間を拡充する方向での制度的検討については、現在、人事院において検討が進められているところである。これまでも適宜やりとりしているが、引き続き人事院との連絡を密に保って参りたい。
 国家公務員の労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき様々な検討・取組が進められているものと考えているが、各府省の実務担当者による連絡会議の場等を活用し、その推進を図って参りたい。
(5) 総務省としては、「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」に沿って、再任用制度を高齢国家公務員雇用の基本的方策と位置付け、関係機関と緊密な連携を取りつつ、政府全体として高齢国家公務員の雇用を推進して参りたい。
(6) 女性国家公務員の採用・登用の促進については、毎年、各府省に対して「人事管理運営方針」で要請しており、採用・登用等の拡大に係る具体的な取組みについての関係省庁申合せのフォローアップにも取り組んでいるところである。
 昨年末に「男女共同参画基本計画」及び「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の見直しが行われたことも踏まえ、関係行政機関と連携を図りつつ、引き続き女性国家公務員の採用・登用の促進等を推進して参りたい。
(7) 評価の試行については、現在、第1次試行を実施しているところであり、終了後は、その結果を丹念に検証し、それを踏まえた改善を加えることとしている。
 新たな人事評価システムが、信頼性を高め、実効あるものとして仕上がるよう、今後とも皆様とは十分に意見交換等を行いながら取組みを進めて参りたい。
(8) 労働基本権等を含む公務員制度については、昨年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」において、国民意識等を踏まえつつ、内閣官房を中心に幅広い観点から検討を行うこととされたところである。また、本年1月には政労協議も開催され、幅広く検討していく必要があることを確認したところであり、今後とも関係者間で十分に話合いを行っていくことが必要と考えている。

 以上の回答に対し、公務員連絡会側は以下の通り見解を質した。
(1) 本年給与改定に対する政府の基本姿勢は従来と変わらないことについて、3.2交渉でも確認したが、再確認する。
(2) 退職手当の調査に関わっては、年金一元化等の検討のゆくえが固まった段階で、どのような調査を行うのかも含め、十分交渉・協議することを求める。
(3) 総人件費改革に伴う雇用問題については行革推進事務局と話し合っているが、配置転換等の仕組みにおいて国家公務員雇用調整本部を立ち上げることが検討されている。われわれは事態の深刻さに鑑みて、総理大臣を本部長として全閣僚が参加する体制を要求しているが、総務省としてもその実現に向けて格段の努力をお願いしたい。また、配置転換を行うとしても、実効性のある施策を講じる必要があると考えており、総務省としても、公務員の雇用責任を持つ立場で主体的に取り組むよう要請する。
(4) 新たな人事評価についての第1次試行が行われているが、「公平・公正」「透明」「客観」「納得」の4原則が体現されているとはいえない。第2次試行では組合員レベルの拡大も見込まれることから、苦情処理システムなどを含む4原則2要件は不可欠であることを踏まえ、われわれと十分交渉・協議し、合意のうえ実施策を取りまとめるよう要請する。また、新たな人事評価の試行は、2004年12月の閣議決定を踏まえて行われてきているものであり、決定に際して、公務員制度改革関連法案については、さらに関係者と十分調整することが確認されているにもかかわらず、与党内には能力等級制法案を国会提出させようという声がある。総務省としては、これまでの経過を踏まえ、われわれと十分交渉・協議、合意するよう改めて要請しておきたい。
(5) 高齢再任用の課題については、定員純減を求める一方で、雇用と年金の接続の問題は依然として解決されていない。これまで講じてきた対策について検証・整理する必要があるのではないか。
 これに対し人事・恩給局長は、(1)(2)については基本的に同意し、(3)以下について次の考え方を示した。
(4) 配置転換に関する方針については、現時点においては政府内で協議中であり、先程お答えした通り、内閣官房等と連携・協力して対応するとしか言えない。総務省としても、配置転換等において個々の場面でフィットできるよう工夫が必要であることは認識しており、ご指摘の点については当然受け止め、対応していきたい。
(2) 現在、新たな人事評価についての第1次試行が行なわれているが、皆様などとの意見交換を踏まえて、制度内容の改善に取り組んで参りたい。また、各府省における成果については、政府全体で共有し、議論を行っていくのが基本であると考えている。一方、評価者および被評価者ともに納得して運用していくことが不可欠であると考えている。今後とも、新たな人事評価に関わる諸課題について関係する様々な立場の方と話し合っていきたい。また、第1次試行期間中においても議論できる課題については議論を進め、われわれとしても取り組んでいきたい。
(3) 再任用制度については、法制度の整備などもあって、民間で議論が進んでいる。これらの進捗状況も念頭に、引き続き適切な措置を講じられるよう、検討していきたい。
 最後に、公務員連絡会は「3月2日の幹事クラス交渉の見解よりは前進したが、まだまだ不十分だ。さらに誠意ある回答を示すようギリギリの努力」を行うよう強く要請し、本日の交渉を終えた。

<人事院職員福祉局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、同日14時15分から、吉田職員福祉局長と交渉を行った。
 冒頭、公務員連絡会山本事務局長が「2月16日に総裁に要求書を提出し、3月2日の幹事クラスの交渉を経ており、本日は局長段階の回答をいただきたい」と見解を求めたのに対し、吉田局長は「要求事項のうち職員福祉局関係の検討結果について回答する」として次の通り考え方を示した。

1.短時間勤務制度について
 短時間勤務制度については、昨年の勧告以降作業してきたが、その具体的内容について、検討を急いでいる段階であり、内容が固まり次第、職員団体にもお示ししてご意見を伺いたいと考えている。
 検討スケジュールとしては、この夏の勧告を一つの目途として、勧告時点で人事院の考える短時間勤務制度の骨格が対外的に明らかにできるよう、急いで検討を進めたいと考えている。
2.自己啓発等のための休業制度について
 大学院進学、海外ボランティア等のための休業制度についても短時間勤務のスケジュールに遅れないようなスケジュール感で取り組んでいきたい。
3.超過勤務の縮減、勤務時間制度の弾力化について
 超過勤務の縮減に当たっては、能率的な業務執行の確保と厳正な勤務時間管理が求められるところであり、人事給与システムの導入の状況等もにらんで、各府省当局、関係制度官庁と連携して計画的、段階的に取り組む必要がある。その中で、人事院として具体的な方策の検討を進めたい。
 また、いわゆるみなし労働時間等の課題については、各省庁の取り組み状況も見ながら、検討を進めることとしたい。
4.所定内労働時間の短縮について
 所定内労働時間の短縮については、休息時間の見直しの際に人事院として「民間の動向等を見ながら引き続き検討する」ことを申し上げた。まず、民間企業の所定内労働時間動向を精確に把握したいと考えている。
5.健康管理等の課題について
 メンタルヘルスなどの健康管理の課題、セクハラ防止などの課題についても引き続き力を入れて取り組んでいきたいと考えている。
6.共済年金・宿舎について
 共済年金、宿舎などの福利厚生面について検討が進められており、代償機関、専門機関の立場から適切に対応していきたい。その際には職員団体のご意見をお伺いしていきたい。

 以上の回答に対し公務員連絡会は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 民間の所定内労働時間を精確に調べるとのことだが、いつ調査を行い、どう対応するつもりか。
(2) 年金、宿舎について「代償機関、専門機関の立場」から対応するというのはどのようなことか。また、仮に年金の調査を行うということになるのであれば、その前に十分交渉・協議をさせていただきたい。
(3) 短時間勤務制度、自己啓発等の休業制度については本年の勧告時に意見の申出を行うよう努力するとの見解が示されたものとして理解していいか。また、短時間勤務制の中身が示されていないが、早く示してもらって議論させて欲しい。
(4) 厳正な勤務時間管理の具体的な方策を示してもらいたい。
(5) 厳正な勤務時間管理、超勤縮減については、休憩・休息時間見直しと一体的に解決することを要求してきたが、この点で今日の回答は明確になっていない。これまでの超過勤務縮減策では成果が上がらなかったという反省を踏まえて、こうやるという中身とスケジュール感を打ち出した上で進めていただきたい。

 これらの質問に対し、局長は以下の通り答えた。
(1) 所定内労働時間の短縮は休憩・休息時間見直しの際、強い要望を伺ったところであり、まずは民間の所定内労働時間を精確に調査し、その結果を踏まえ、民間準拠を念頭に置いて対応したいと考えている。
(2) 年金、宿舎は、勤務条件的要素があるということから人事院も関与してきたが、これまでは所管省庁で問題なく対応がなされ、人事院として意見の申出を行うようなことはなかったが、昨今は、年金について人事院に調査させてはどうかとか、宿舎についての議論も行われているので、専門機関、代償機関の立場で適切に対応していきたいということである。調査する場合には意見を伺っていく。
(3) 短時間勤務制、休業制度については、その決意で作業を進めているということである。具体的な内容をお示しできるよう取り組んでいるところであるが、どういう欠員補充のあり方がいいかなどを詰めていかなければならない。
(4) 新年度から段階的に人事給与システムの導入が始まり、数年以内に全府省に入ってくるので、それをどう使っていくかということになる。これにより、出勤はパソコンをクリックしたときということになるが、時間管理ということだけでなく、仕事の密度(能率)をどう把握するかということも課題になる。具体化の段階で皆さんと話をしながら進めて参りたい。
(5) 厳正な勤務時間管理の問題については、人事院として局長通知を出したり、使用者側サイドとしても申し合わせをしており、今出ているメニューについて、一つずつ制度官庁と詰めていく必要がある。また、超勤縮減策についても、すでに考えられるメニューは出尽くしているので、それをどう実行するかであり、勤務時間管理の問題が進んでいく中で具体化するものと考えている。

 最後に、山本事務局長から「公務員に向かって吹いている風が厳しくて士気が上がらないが、職員福祉局関係の課題についてはいくつかの点で希望がもてるものがあるので、総裁回答に向けて引き続き特段の努力をお願いしたい」と申入れ、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<人事院給与局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、14時40分から、関戸給与長と交渉を行った。
 冒頭、山本事務局長が「2月16日に総裁に要求書を提出した。今日は総裁回答に向けての局長回答を伺いたい」と見解を求めたのに対し、関戸局長は「要求事項のうち給与局関係の現時点での検討結果について回答する」として次の通り考え方を示した。

1.春闘情勢及び勧告の基本姿勢について
 今年の民間春闘については使用者側の回答も出始めた段階であり、その動向を注視しているところである。昨年に比べれば、少しは明るいものが出てきているのではないかと認識している。
 いずれにせよ、民間給与実態調査を行って、民間給与の実態を精確に把握し、民間給与の実態を適切に公務員給与の水準に反映させるという基本に立って勧告作業を進めていきたい。
2.配分について
 本年勧告における給与構造見直し実施分の具体的内容を含め配分の問題については、これまでと同様、勧告に向けて皆さんの意見を十分聞きながら検討していくこととしたい。また、一般の職員の勤務成績反映のための制度整備の内容についても、管理職員についての実施状況等を踏まえて、皆さんの意見を聞きながら検討していくこととしたい。
3.官民比較のあり方検討の必要性について
 昨年の勧告以降いろいろな動きがあった。昨年秋の閣議決定による要請、国会では与野党問わない議論があったし、マスコミの厳しい論調などを見ると、企業規模を含め現行の比較方法については、必ずしも社会的な合意が得られているとは言い難い状況に変わってきている。中立・第三者機関である人事院としては、これらの状況を踏まえれば、民間企業の給与を適正に反映する方法として、現行の官民給与の比較方法が適切かどうか、改めて検証することが、代償機能を十全に果たすための重要な責務であると考えている。
4.小規模企業を調査対象とすることについて
 今日も懇話会があったし研究会の中間報告も近く出されることになっているので、これらを踏まえて、近々最終的な判断を行う必要があると考えている。本年の民間企業の給与実態調査については、同種、同等の者を比較するという原則を維持しながら、100人未満の小規模企業を調査対象に加えざるを得ないのではないかと考えている。現在、仮に小規模企業を調査対象に加える場合、その調査対象となる企業規模を具体的にどう設定することが適切かということを含めて検討を進めている。

 回答に対し、連絡会側は官民比較方法の見直しに絞って、次の通り局長を厳しく追及した。
(1) 官民比較方法については、総裁から、昨年の春季要求への回答では「現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない」と、2005人勧期要求提出時には「現行の比較企業規模は、民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている」との見解が示されていた。本日は局長から、情勢の変化があったので「100人未満の小規模企業を調査対象に加えざるを得ない」との回答があった。しかしながら、「過半数をカバーしている」という状況に変化はない。いったい、何がどのように変わったのか。また、われわれはこのような総裁の回答を信用して、それを前提として、給与構造改革に応じてきた経緯があり、人事院が一方的にその見解を換えることは信義則違反だ。きちっとした説明をしてもらわなければ、到底認められない。
(2) 現行の比較企業規模は1964年の太田・池田会談において三公社五現業の給与決定について企業規模100人以上、事業所規模50人以上とすることが合意されて、人事院もそれを踏まえて対応した結果、それ以降、適正な公務員給与水準の決定方式として社会的にも合意が図られ、人事院の代償機能として確立されてきたものである。現行制度が政労合意に基づいて、官公労働者全体の給与決定の基準として社会的歴史的に確立してきたことからすれば、変えるというのであれば、人事院がその権限に基づいて変えれば済むというものではなく、1964年と同様に政労トップ会談も含め政治的、社会的な合意を図っていく必要があるのではないか。

 追及に対し局長は次の通り答えた。
(1) 昨年春や勧告前の段階でも、小規模企業の調査をしてはどうかとの意見もあったが、その時点では「過半数をカバーしており、国民のコンセンサスが得られている」という認識で総裁が回答した。公務員バッシングは秋以降始まったものではないが、お答えしたように、給与水準や比較のあり方に及んできて、コンセンサスが得られているとは言い難い状況になってきた。政府が閣議決定したからということではなく、そういう状況を踏まえ、今のやり方が適当かどうか検証せざるを得ないという判断のもとに、研究会や懇話会を設けて検討作業を行い、社会的な合意形成を図って、適正な公務員給与を確保していきたいということである。なお、仮に調査する場合であっても勧告の際の比較方法をどうするのかについては皆さんの意見を聞きながら検討を進めたい。
(2) 企業規模は1964年の太田・池田会談で判断され、5月の公労委の仲裁裁定ではじめて具体化し、その夏の勧告で人事院として判断し、企業規模100人以上を取り入れた。その後それが人勧制度の確立に寄与してきたものである。カバー率だけではないが、それが過半数であることでコンセンサスが得られてきた。ところが、今の状況を見るとそのコンセンサスが得られているとは言い切れなくなってきたということである。今、64年と同様に、検証した上で、どうするかの判断が求められているということであり、労働基本権制約の下で、代償機関としての人事院が責任を持って判断する責務があると考えている。
 これらの回答に対して公務員連絡会側は、強く反発。「確かに、政治圧力の高まりはあったが、それならばどのように公務員給与への理解を深めていくかの努力を行うべきであり、いきなり官民比較方法のあり方を検討しなければならないとの説明にはなっていない。われわれは、検討しなければならないような情勢の質的変化があったとは受け止められない」「小規模企業調査についても、見直しを前提に検討を進めているものであり、到底認められない」「人事院が認識を変えたことについてわれわれに何の問題提起もないまま、事態が既成事実化してきている。信頼関係を損なうものであり、まずどのような事態であるかから話し合うべきだ」「企業規模は代償機能の根幹に関わるものであり、人事院が勝手に見直すことができるものではない」と、厳しく局長を追及したが、局長はこれまで同様の見解を繰り返すに止まり、交渉はすれ違いのまま推移した。
 そのため公務員連絡会は、「本日の局長回答では到底納得できないし、認められない。このままでは、23日の総裁回答で誠意ある回答が示されるとは考えられないので、20日に改めて局長と交渉し、中身を詰めたい」と再交渉を求めたのに対し、関戸局長が「人事院としては代償機関として作業を進めて行きたいと考えているので、引き続き、皆さんの意見を聞きながら最終的な判断に結びつけていきたい」と答えたことから、この日の交渉を打ち切った。

以上