公務員連絡会丸山議長他委員長クラス交渉委員は、23日、竹中総務大臣、佐藤人事院総裁と2006春季段階の最終交渉を行った。この交渉で総務大臣、人事院総裁は、それぞれ資料1、2の通り、この間の交渉の到達段階を確認する回答を示した。しかし、今春季生活闘争の最重要課題である官民比較方法を巡っては、委員長クラス交渉委員が口々に回答の撤回を求めたにもかかわらず、最後まで人事院側の頑なな姿勢が変わらなかったことから、公務員連絡会側はその回答を「認められない」とし、誠意のない姿勢に強く抗議する異例の最終交渉となった。
公務員連絡会はその後開かれた企画・幹事合同会議で、全体としては春闘の到達段階を確認しつつも、官民比較方法を巡る回答については「到底認められない」とし、抗議の意を表明する声明(資料3)を確認。24日の第3次全国統一行動では、人事院の官民比較方法を巡る回答に抗議し、人勧期の取り組みの決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
この日行われた人事院総裁、総務大臣との交渉経過と回答内容は次の通り。
<総務大臣交渉の経過と回答内容>
竹中総務大臣との交渉は、同日12時5分から国会内で行われた。
冒頭、丸山議長が「公務員連絡会としては、2月16日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、大臣から春季段階の最終回答を頂きたい。また、合わせて地公部会から提出している要求書に対する回答も頂きたい」として、2006春季要求に対する最終回答を求めた。
これに対して総務大臣は、「公務員の給与等を取り巻く厳しい状況をも踏まえ、種々検討を行ってきた」とし、資料1の通り回答を示した。
この回答に対し、丸山議長は次の通り見解を述べた。
(1) 本年の春闘は、企業間にバラツキはあるものの業績の回復基調のもとで、先行組合が5年ぶりにベースアップを含む賃金改善の回答を引き出し、いままさに、中小やパート労働者などの賃金改善と格差の是正に向けた取り組みを懸命に進めている最中にある。
(2) 公務においては、政府の推し進める規制緩和や行政改革、なかでも向こう5年間で定員5%の純減を柱とする総人件費改革により、まさに公務員労働者は雇用と賃金・労働条件の危機に直面している。公共サービスは、国民生活の安心・安全に関わる問題であり、始めに削減の数値目標ありきではなく、その事務・事業の必要性についての国民的な議論を経て結論を得るようにしてもらいたい。その点で、いまの総人件費改革の実行計画の進め方には強く抗議せざるを得ない。
(3) とはいえ、政府が全体として公務員の雇用に責任を持つことは当然であり、3.20政労協議で中馬大臣に要請した、政治が全責任を持つ雇用確保の仕組みの実現に向け、大臣も全力で取り組んでもらいたい。本日の回答で、「雇用の確保などセーフティーネットの整備に最大限努力する」決意が述べられたが、公務員の使用者としての人事行政に責任を有する総務大臣として、具体的な実績をわれわれに示してもらいたい。
(4) また、給与改定に関しては人勧制度の維持・尊重の基本姿勢を表明されたが、この点についても文字通りその姿勢を貫き、官民比較方法のあり方の検討過程において政府が人事院に公務員給与水準引下げの圧力を加えるようなことは絶対に行わないでもらいたい。
(5) 3.20政労協議で政府が約束した「労働基本権を付与する公務員の範囲について」の検討の場の実現に向け、総務大臣としても最大限の努力を要請する。
また、地公部会の佐藤議長は次の通り見解を述べ、大臣の一層の努力を要請した。
(1) 厳しい財政事情により、過半数の自治体で職員の給与が削減されていることはご案内の通りであり、人事委員会の代償機関としての信頼性が損なわれている。こうした状態が続くことは、住民サービスの第一線で働く職員の士気やモラールの低下にもつながりかねず、給与財源の確保や労働基本権の確立に指導性を発揮して頂きたい。
(2) 「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の最終報告が週内にもまとめられる予定であるが、総務省として、分権時代に相応しい、また人材を確保できる給与制度・運用となるような対応をお願いしたい。
(3) 地方分権の一層の進展とそれを支える地方財政確立に向けて、税源移譲や交付税制度の堅持および必要な交付税総額の確保に、引き続き大臣のご努力をお願いしたい。
公務員連絡会側の要請に対し大臣が「要望は承った」としたことから、議長は「本日の回答は総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って検討する」と応え、交渉を終えた。
<人事院総裁との交渉経過と回答内容>
人事院佐藤総裁との交渉は、同日12時35分から人事院内で行われた。
冒頭、丸山議長が「公務員連絡会としては、2月16日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきた。しかし、本年は、官民比較方法のあり方を巡って交渉が暗礁に乗り上げ、今日現在まで決着がつかないまま総裁との交渉を迎えている。こうした経緯を踏まえ、本日は、是非、総裁から事態を打開する誠意ある回答を頂きたい」として、2006春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は資料2の通り回答した。
丸山議長は、この回答に対して次の通り見解を述べ、改めて総裁の見解を求めた。
(1) 公務においては、政府の推し進める規制緩和や行政改革、なかでも向こう5年間で定員5%の純減を柱とする総人件費改革により、まさに公務員労働者は雇用と賃金・労働条件の危機に直面している。われわれは、公務員の雇用の確保と国民生活の安心・安全を支える公共サービスの確保に全力で取り組む決意である。
(2) ただいまの総裁回答のうち、労働条件の改善に関わって、@育児・介護職員の短時間勤務や自己啓発等の休業制度について夏の勧告時点までに成案を得て必要な対応を行うことA所定内労働時間のあり方についても民間実態を把握し民間準拠の原則に基づいて検討すること、などの回答が示されたことは、懸案事項の解決に一歩前進したものとして評価したい。
(3) しかし、官民比較方法に関わる回答については、20日に公表された「研究会」の中間報告やこの間の交渉経過から見て、企業規模などの現行の官民比較方法の根幹に関わる見直しを行うことによって、公務員給与水準の引下げを意図したものであり、これを到底容認できない。また、われわれが強く反対してきたにもかかわらず、企業規模引下げにつながる小規模企業調査を強行する回答を示したことについても、極めて遺憾であり、強く抗議する。
(4) この際、2点について総裁から直接ご見解を伺いたい。第1点は、われわれはこの回答が、昨年6月23日の総裁の約束を一方的に反故にするものだと考えている。こういうことが行われる限り、人事院とわれわれの信頼関係は成り立たないし、今後の関係に重大な影響を与えると考えている。この点についてのご見解を頂きたい。第2点は、この間の交渉過程で、再三にわたって、官民比較方法のあり方を検討しなければならない必要性について納得のいく説明を要求してきたにもかかわらず、それが行われていないことである。われわれは、官民比較方法の基本的枠組みを変更しなければならないような情勢の質的な転換はなかったと認識しているが、人事院として、昨年の6月時点と比べ、何が、どのように変化したと考えているのか、納得のいく説明を頂きたい。
これに対して総裁は、「官民比較方法のあり方に関する状況についてのお尋ねであるが、昨年6月23日の回答時点においては、小規模企業を対象とすべきという意見も見られたものの、民間の常用労働者の過半数をカバーしており、現行の比較方法については企業規模100人以上、事業所規模50人以上という比較企業規模も含めて、社会的なコンセンサスを得ているという基本認識に立って、回答したものである。昨年秋以降の閣議決定による要請、与野党双方の議論やマスコミの論調などをみると、企業規模を含め現行の比較方法については、必ずしも社会的な合意が得られているとは言い難い状況になっており、中立・第三者機関である人事院としては、これらの状況を踏まえ、民間企業の給与を適正に反映する方法として、現行の官民給与の比較方法が適切かどうか、改めて検証することが、代償機能を十全に果たすための重要な責務であると考えている。なお、皆さんとの信頼関係は最も重要と認識しており、十分それが成り立つよう努力してまいりたい」とし、これまで人事院が繰り返してきた見解を述べるに止まった。
そのため各交渉委員は、「昨年の地域給与見直しは国公にとっては配分だが地公は水準引下げだ。それに加えて官民比較見直しは到底認められない」「昨年来の経過を踏まえれば、小規模調査は認められない。中止してもらいたい」「4月1日から切り替えが始まる。その一方での官民比較見直しは職場では到底納得できない」「こういうことを続ければ結局人材確保に支障を来す」「信頼関係を重視するということだが、十分な説明のないまま見解を変えられたのでは信用できない」「どう考えても政府の圧力に屈したものとしか考えられない」として、口々に官民比較方法に関わる回答を撤回するよう強く求めた。しかし、総裁は「意見は十分聞いたし、真剣に受け止めるが、わたしの回答は申し上げたもの以上でも、以下でもない」とし、回答内容を変更する考え方はないとの見解に終始し、交渉は物別れに終わった。
これらのやり取りを踏まえ、最後に丸山議長は、「いずれにしろ、われわれは、歴史的・制度的に確立されてきた企業規模などの官民比較方法の見直しは、人勧制度の根幹に関わる問題であり、単に人事院が法律上の権能を振りかざし、左右できるものではないと考えている。人事院が、政府や与党の圧力に屈し、仮にわれわれとの合意のないまま、本年の勧告において企業規模等の官民比較方法の見直しを行うようなことがあれば、われわれとしても、中立・公正な専門機関や労働基本権制約の代償機関としての役割を放棄したものとして、重大な決意をせざるを得ない。そのようなことにならないよう、官民比較方法のあり方の検討に当たって十分交渉・協議し、合意に基づくことと、本年の勧告において拙速に企業規模などの見直しを行わないよう、強く、強く求めておく。本日の回答は、本来であれば総裁の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議するのが通例であるが、官民比較方法に関する回答は組織に持ち帰ることはできない。この場で、改めて公務員連絡会の見解として『容認できない』ことを申し上げておく。ついては、公務員連絡会として、明日(24日)、全国の職場で人事院の官民比較の回答に抗議する行動を実施する」として、官民比較方法に関わる回答を受け止めることを拒否し、24日の全国統一行動において人事院に抗議する行動を実施することを通告し、交渉を打ち切った。
資料1−総務大臣の2006春季要求に対する回答
総務大臣回答
2006年3月23日
1 総人件費改革等の具体化に当たっては、総務省としても国家公務員の人事行政を所掌する立場から、内閣官房・内閣府などと連携をとりつつ、職員の雇用の確保などセーフティネットの整備に向け最大限努力する。
2 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成18年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
なお、平成14年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
3 退職手当に関わる民間実態調査のあり方については、被用者年金一元化について の検討状況も踏まえ、職員団体の意見を聞きつつ、慎重に検討を進める。
4 政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
5 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過 勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
6 育児・介護のための短時間勤務を始めとする職業生活と家庭生活の両立支援のための多様な勤務形態のあり方については、人事院とも連携・協力しながら検討を進めてまいりたい。
7 公務員の高齢者雇用については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
今後とも、雇用と年金の連携に留意しつつ、公務員の高齢者雇用の推進については、高齢者雇用継続制度の導入などの民間の動向の把握を図るとともに、職員団体の意見を聞きつつ取り組んでまいりたい。
8 男女共同参画社会の実現に向け、昨年末に見直された「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
9 新たな人事評価システムの構築に向け、現在実施中の第1次試行の結果を検証した上で必要な改善を加え、第2次試行を行うこととしており、透明で納得性があり信頼性の高いシステムを目指して、職員団体とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
10 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。
地公関係総務大臣回答
2006年3月23日
1 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に則り、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるべきものである。
具体的には、当該団体の規模や給与の実態、その他の事情を総合的に勘案した上で適正な内容となるべきものと考えている。
こうした考え方に基づき、必要な助言等を行ってまいりたい。
2 「地方にできることは地方に」との理念に沿って、いわゆる「三位一体の改革」を進めてきたところであり、その結果、3兆円の税源移譲等の成果をあげることができた。
また、平成18年度は、三位一体改革の政府・与党合意及び累次の基本方針等に基づき、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方税、交付税などの一般財源総額を確保したところである。
いずれにしても、引き続き、地方の声に十分に耳を傾けながら、地方分権の推進と地方税財源の確保に取り組んでまいる所存である。
3 労働基本権問題を含む公務員制度改革については、「行政改革の重要方針」において、「公務員の労働基本権や、人事院制度、給与の在り方、能力主義や実績評価に基づく処遇、キャリアシステム等公務員の人事制度を含めた公務員制度についても、国民意識や給与制度改革の推進状況等も踏まえつつ、内閣官房を中心に幅広い観点から検討を行う」こととされており、去る20日においても、この問題に関して政労協議が行われたところである。
また、自治体における新たな評価制度の導入に当たっては、もとより職員の理解と納得が得られるよう努めることが重要と考えており、今後とも、新たな評価制度が円滑に導入されるよう、必要な助言を行ってまいりたい。
4 地方公務員給与のあり方については、総務省に設置している「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」において、まもなく報告書が取りまとめられる予定である。
研究会においては、議論の概要等をホームページで公表するとともに、各方面のご意見を把握しつつ検討を行ってきたところである。
報告書が取りまとめられれば、速やかにこれを公表するとともに、各地方公共団体に対して、研究会報告を踏まえた適切な対応等をお願いすることになると考えているところである。
いずれにせよ、本研究会の報告を踏まえた具体的取組みに当たっては、公務員連絡会に対しても、必要に応じ、情報提供や意思疎通に努めていきたいと考えているところである。
資料2−人事院総裁の2006春季要求に対する回答
人事院総裁回答
2006年3月23日
1 官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
また、給与改定に当たって、公務員連絡会が交渉、協議、納得を求めていることについては理解する。
2 公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、公務員連絡会の要求及び公務員の生活を考慮して、人事院の重要な使命として、適切に対処する。
3 官民給与の比較方法のあり方については、引き続き公務員連絡会の意見を十分聞きつつ、研究会や懇話会の議論を踏まえて検討を進め、公務員連絡会の納得を得るよう努める。
本年の民間給与実態調査については、この官民比較のあり方の検討を行うため、100人未満50人以上の小規模企業も調査対象に加えることとする。
4 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて公務員連絡会と十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
また、給与構造の見直しについては、一般職員の勤務実績の給与への反映のあり方を含め、昨年の報告を踏まえ、公務員連絡会の意見を十分聞きつつ検討を進める。
5 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
6 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び公務員連絡会の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
育児・介護を行う職員の短時間勤務制度については、本年夏の勧告時点を目途に成案を得るよう、制度導入に向けて必要な検討を急ぐ。
超過勤務の縮減については、関係機関と連携して能率的な業務執行の確保と厳正な勤務時間管理に努めつつ、早期に実効ある具体策を取りまとめるよう検討を進める。
所定内勤務時間のあり方については、民間企業の所定内勤務時間の精確な動向を速やかに把握し、民間準拠の原則に基づいて検討を進める。
また、育児休業の取得を含め男性職員の育児参加の促進に向け、引き続き努力する。
7 公務のワークシェアリングについて公務員連絡会が強い関心を持っていることを十分認識し、引き続き研究・検討を進める。
8 自己啓発等のための休業制度についても、本年夏の勧告時点を目途に検討を急ぐ。
9 昨年末に改定された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の実施に向け、国家公務員の勤務条件を所管する立場から、適切に対応する。
10 被用者年金一元化や国家公務員宿舎のあり方の検討に対しては、公務員連絡会の意見も聞きつつ、適切に対応する。
資料3−2006春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声 明
(1) 本日、公務員連絡会は、総務大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2006年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 2006春季生活闘争は、企業間にバラツキはあるものの大手を中心とした業績回復基調のもとで、先行組合が5年ぶりにベースアップを含む賃金改善の回答を引き出し、いままさに、中小やパート労働者などの賃金改善と格差の是正に向けた取組みを懸命に進めている最中にある。
われわれの春季生活闘争は、政府が進める総人件費削減政策に対して、雇用と公共サービスを確立する闘いと官民比較方法の見直しに対する闘いを最重要課題として位置づけ、中央・地方で様々な取組みを進めてきた。また、連合が提起する「大増税阻止」をはじめとした国民運動や格差是正の取組みに結集し、それを全力で推し進めてきた。
(3) 本日の回答で総務省からは、@雇用確保とセーフティネットの整備に向け最大限努力することA人事院勧告制度の維持・尊重など給与改定に対する基本姿勢に変わりがないことB評価の第2次試行に向けて透明で納得性などのあるシステムの構築に向けて協議していくこと、などを確認した。
人事院からは、労働条件の改善に関わって、@育児介護職員の短時間勤務や自己啓発等の休業制度について夏の勧告時点までに成案を得て必要な対応を行うことA所定内労働時間のあり方についても早急に民間実態を把握し民間準拠の原則に基づいて検討することB被用者年金一元化や宿舎のあり方についても適切に対応すること、などの前向きの回答を確認した。
しかし、最重要課題である官民比較方法については、引き続き比較方法のあり方の検討を進め、その検討のため100人未満50人以上の小規模企業調査を行う、との回答が一方的に提示された。
この人事院の回答は、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」の中間報告やこの間の交渉経過から見て、企業規模の引下げなど現行の官民比較方法の基本的枠組みに関わる見直しを意図したものであることは明らかである。われわれはこの回答が、@昨年6月23日の総裁見解(カバー率等が大きく変化しない限り企業規模は変更しないとの趣旨)を一方的に反故にするものであり、相互信頼関係を大きく損ねるものであることA歴史的・制度的に確立されてきた現行の企業規模の見直しは労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告制度の根幹を揺るがす問題であること、などから、これを到底認めることができない。また、われわれが強く反対し、地方人事委員会などからも大きな疑問が寄せられているにもかかわらず、企業規模引下げにつながる小規模企業調査を強行する回答を示したことについても、極めて遺憾であり、強く抗議する。
そもそも、今回の官民比較方法の見直しは、政府が総人件費削減政策の一環として公務員給与水準の引下げを狙い、その実行を人事院に迫ったことに端を発している。人事院が、政治の圧力に屈し、仮に本年の勧告において企業規模等の官民比較方法の見直しを行い、公務員給与水準の引下げ勧告を行うようなことがあれば、中立・公正な専門機関や労働基本権制約の代償機関としての役割を放棄し、政府の総人件費削減政策を推進する一機関に成り下がったものと断ぜざるを得ない。
官民比較方法の見直しを巡る闘いは、人事院の一方的かつ遺憾な回答により、2006春季生活闘争での決着を持ち越し、人勧期の闘いに引き継がれることになる。公務員給与水準の引下げは、公務員の生活への影響だけでなく、中小や地場賃金にも波及し、疲弊している地域経済に大きな打撃を与えることは明らかである。人勧期を巡る情勢は極めて厳しいが、本年の勧告での官民比較方法の基本的な枠組みの見直し阻止に向け、不退転の決意で闘いを進めねばならない。
(4) 政府はいま、「小さな政府論」に基づく小泉構造改革路線の「総仕上げ」を標榜し、いわゆる行政改革推進法案や市場化テスト法案を国会に提出し、その成立を目論んでいる。そして、向こう5年間で5%以上の定員純減を柱とする総人件費改革の実行計画の具体化を進めている。これは、公務員の雇用に重大な影響を与え、国民生活の安心・安全を支える公共サービスを根底から破壊し、日本をさらなる格差社会に陥れようとするものである。
われわれは、こうした政府の諸政策に断固反対の姿勢を貫きながら、公務員の雇用確保に明確な道筋を付けることに全力をあげ、良質な公共サービスの確立、公務員給与の社会的合意の再構築に向け、粘り強く取組みを進めなければならない。そして、3.20政労協議で政府が約束した「労働基本権を付与する公務員の範囲について」検討する場の実現を通して、労働基本権の確立を含む公務員制度の抜本改革に向けて、連合の仲間とともに取組みを進めていかなければならない。
(5) われわれは、明日、24日の第3次全国統一行動日には、各構成組織ごとに人事院の官民比較に関わる回答に抗議し、人勧期の取組みへの決意を固める職場集会を実施することとする。また、中小及び地域の仲間、国営関係部会の仲間と連帯し、最低賃金の引上げや均等待遇原則の確立などの課題を自らの賃金・労働条件改善の課題と一体化して取り組み、春季生活闘争中・後半期の闘いを推し進めることとする。
2006年3月23日
公務員労働組合連絡会
以上