2006年度公務労協情報 37 2006年4月10日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公部会が2006賃金等について全人連に要請−4/10

 公務員連絡会地公部会は,4月10日午後1時35分から、本年勧告にむけた全国人事委員会連合会(全人連)への申入れを行った。
 公務員連絡会側は,地公部会の佐藤議長(全水道委員長)、中村企画調整委員代表(日教組)、岩本地公部会事務局長と地公部会幹事が出席し、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、「全国の5割を超える自治体では、財政難を背景に給与の独自削減が行われている。このような事態が続けば、労働基本権の代償機関である人事委員会の機能低下のみならず、職員の士気の低下が懸念される。また、2005年人事院勧告おいては、地域給与・給与制度見直しについて示されたが、総務省は、1月に、この内容に沿った措置を講じない人事委員会に対して、その理由等を質していると聞いているが、まさしく人事委員会制度の否定につながる行為であり容認できない。各人事委員会におかれては、地域給与・給与制度見直しについては、労働基本権の代償機関たる権能を十分留意の上対応いただきたい。一方、人事院は、2006春闘期における総裁回答において、「本年の民調において、100人未満の小規模事業所調査を実施する」との考え方を示したところである。しかし、2005年人勧期等における総裁回答を反故にし、かつ、人事院の官民給与の比較方法のあり方に関する研究会や給与懇話会の結論が出る前の段階で、一方的に態度表明を行う姿勢については納得できるものではない。月例給や一時金に大きな影響を及ぼしかねない小規模事業所調査については実施しないようお願いしたい。さらに、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告書では、地方公務員の給与引下げの観点から、国公準拠の刷新や人事委員会の機能強化を提起しているが、各人事委員会におかれては、職員の処遇改善の観点から対応いただきたい」と要請した。
 続いて,岩本地公部会事務局長は,要請書のうち,次の6点を重点課題として全人連の努力を求めた。
@ 民間の春闘におけるベア確保などの実態が反映されるよう、地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保するよう要請する。
A 公民比較方法の見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づいて行うとともに、本年の民調において、小規模事業所調査は行わないよう要請する。
B 公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示するよう対応いただきたい。また、モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うよう要請する。 
C 46都道府県と7割程度の市区町村で給与制度見直しが行われている。給与制度見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉と合意に基づき実施するとともに、国の給与決定における審査申立制度の改善措置(給与法21条)に対応した措置を講ずるよう要請する。
D 休憩・休息時間の見直しに当たっては、労使合意を前提とし、始業・終業時刻を延長しないよう要請する。また、3月の人事院総裁回答を踏まえ、所定労働時間の短縮をはかられるよう、人事委員会としても特段の尽力をお願いする。
E 育児等を行う職員の両立支援に係わる国の措置を踏まえた施策を実施するとともに、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うよう要請する。

 こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は以下の通り回答した。

<全人連会長回答>

2006年4月10日

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 さて、ここで、本年の民間給与実態調査を迎えるにあたりまして、現在の状況認識等についてお話しをさせていただきます。
 まず、最近の経済情勢を見ますと、3月の月例経済報告では「景気は、回復している。」とし、先行きについては「国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。」としつつも原油価格の動向が内外経済に与える影響等について、警戒感を示しております。
 また、雇用情勢は「厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。」としています。
 このような中、今春闘は、景気回復と好調な企業業績を背景に、大手企業を中心として久々に賃上げを求めるものとなりましたが、国際競争の激化や、能力・成果重視型の賃金制度の定着などから、従来の横並びで一律的な配分の賃上げではなく、業績や経営方針など、個々の企業の実情を踏まえた妥結となっている状況が伺えます。
 同業種でも、個々の企業業績には好不調の明暗が見られるなど、例月給の公民較差について、必ずしも楽観できる状況ではないとも考えられるところです。
 一方、公務員の給与を取巻く環境は、引き続き厳しい状況が続いており、多くの国民が公務員給与のあり方に注目していることは、皆様もご承知のとおりです。
 人事院では、官民給与の比較方法のあり方について、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」や「給与懇話会」の議論等を踏まえて、引き続き検討を進めるとしながら、本年の民間給与実態調査について、この官民比較のあり方の検討を行なうため、企業規模100人未満の企業も調査対象に加えることとしております。
 民間給与実態調査を含めた公民給与の比較方法につきましては、共同調査という性格もあり、人事院の動向が、各人事委員会に大きな影響を及ぼすものと考えられます。
 さらに、去る3月27日には、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の報告がまとめられ、給与決定のあり方や人事委員会機能の強化などのほか、企業規模100人未満の企業への調査対象の拡大にも言及したところです。
 各人事委員会におきましては、これら国の動向を引き続き注視しながら、住民の理解と納得性、客観性をより高めていく観点から、公務員給与のあり方について、必要な検討を行なっていくものと考えております。
 本年も、5月初旬から民間給与実態調査を予定しております。
 本日の要請の個々の内容につきましては、その調査結果や各自治体の実情等を踏まえ、各々の人事委員会で、今後具体的に検討していくことになろうかと存じます。
 申し上げるまでもなく、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識しております。
 公務員の給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況ですが、本年も各人事委員会におきましては、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいる所存でございます。

以上でございます。



別紙.全人連への要請書

2006年4月10日


全国人事委員会連合会 
 会 長  内田 公三 様

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合     
中央執行委員長 岡部謙治
日本教職員組合         
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合      
中央執行委員長 山岸 晧
全日本水道労働組合       
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合    
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合     
中央執行委員長 小林政至

要 請 書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 公務員労働者は、連年の賃金引下げにより生活水準を維持することが困難となっています。加えて、自治体財政危機を理由に職員の給与をカットする自治体が過半数に及んでいますが、これは人事委員会勧告制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
 2006春闘における民間の交渉結果は、今日時点で実質的にベアが確保され、賃金水準が引き上げられています。
 他方で、人事院は本年の民調で小規模事業所調査を行うとしていますが、これは公務員給与水準のいっそうの引下げを意図するものであり反対です。
 貴職におかれましては、これから本年の勧告に向けた作業を開始されることと思いますが、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。




1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。

2.公民比較方法の見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づいて行うこと。本年の民調において、小規模事業所調査は行わないこと。

3.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うこと。 

4.給与構造見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉と合意に基づき実施すること。
 また、国の給与決定における審査申立制度の改善措置に対応した措置を講ずること。

5.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。

6.休憩・休息時間の見直しに当たっては、労使合意を前提とし、始業・終業時刻を延長しないこと。また、育児・介護を行う職員に配慮するとともに、交替制勤務職場の取扱いについては従前同様とすること。

7.年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1)「不払い残業」をなくすとともに、所定労働時間の短縮をはかること。とくに変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。(3)年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4)労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。

8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。

9.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。

10.育児等を行う職員の両立支援に係わる国の措置を踏まえた施策を実施するとともに、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。

11.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。

12.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。

13.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

14.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。

15.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。

以上