被用者年金の一元化については、昨年の9月から政府・与党で議論されてきた。公的年金制度改革の課題は、昨年の総選挙の結果で、与党が圧勝したことを受けて、与党の方針である被用者年金の一元化として議論されてきたものである。
公務労協は、年金署名に取り組むとともに、連合と連携して政府・与党対策を行ってきた。追加費用の減額は遺憾であり、パート労働者等への被用者年金の適用も議論の対象にされないなど問題点が多い。「基本方針」では、具体的施策や「更に検討する」こととされた課題が多く残っている。引き続き、閣議決定を受けた政府の法案化作業において要求実現に向けた意見反映に努めていくとしている。
また、政府は「基本方針」の閣議決定を受け、人事院に対して「諸外国の公務員年金や民間の企業年金及び退職金の実態について調査」を行うよう要請した。この調査は、「職域部分」廃止後の新たな制度設計や退職手当に大きな影響を及ぼすことから、公務労協として人事院調査に対応していくこととしている。当面、人事院職員福祉局長に対し、調査の実施に関する申入れを5月9日に行う予定。
被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について
平成18年4月28日
閣 議 決 定
被用者年金制度の一元化については、平成16年年金制度改正法附則の規定を踏まえ公的年金制度の一元化を展望しつつ、今後の制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、共済年金制度を厚生年金保険制度に合わせる方向を基本として、次に掲げるところにより、これを行うものとする。
1.被用者年金制度の保険料率の統一
(1)現行の国家公務員共済組合、地方公務員共済組合及び私立学校教職員共済(以下「各共済年金」という。)の被用者年金制度に共通する給付(以下「1・2階部分」という。)に係る保険料率を、次の@からBにより厚生年金保険の保険料率に統一する。
@ 国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合(以下「公務員共済」という。)の保険料率が統一される翌年の平成22年から、1・2階部分の保険料率の統一を開始する。
A 現行の職域部分(3階部分)を廃止することを踏まえ(4.(1)参照)、平成22年以降は、それまで職域部分(3階部分)に対応する保険料として予定されていた部分の保険料率も含めて1・2階部分の保険料率とし、その率から厚生年金保険と同様に、毎年0.354%ずつ引き上げ、公務員共済については平成30年、私立学校教職員共済(以下「私学共済」という。)については平成39年に厚生年金保険の保険料率(18.3%)に統一する。
B 加入者及び事業主(国・地方公共団体及び学校法人等)にとって急激な保険料負担増とならないよう、各共済年金の1・2階部分の新たな保険料負担の一部は、積立金を活用して負担する(2.参照)。
(2)私学共済で別途徴収している年金事務費掛金については、統一される1・2階部分の保険料率に含まれるものとする。
2.積立金の仕分け
(1)各共済年金が保有している積立金については、厚生年金保険の積立金の水準に見合った額を仕分け、これを厚生年金保険の積立金とともに被用者年金制度の1・2階部分の共通財源に供する。具体的には、各共済年金の保険料で賄われる1・2階部分の支出に対して何年分に当たるかの水準が、厚生年金保険における当該水準と同一になるよう、各共済年金の積立金から、共通財源に供する積立金を仕分ける。
(2)上記(1)により1・2階部分の共通財源に供する積立金を仕分けた後に各共済年金の財源として残る積立金を、現行の職域部分(3階部分)の廃止前の期間に係る給付費(既裁定年金及び未裁定の過去期間分(4.(2)参照))に充てる。
(3)その上で、更に各共済年金の財源として残る積立金については、1.(1)B及び4.(3)(4)のための原資に活用する。
3.追加費用等
(1)国民負担を抑制する観点から税負担による追加費用を減額するため、公務員共済における恩給期間に係る給付について、恩給期間と共済年金制度発足時との負担の差に着目し、負担に見合った水準に減額する。ただし、受給者に係る生活の安定確保及び財産権の保障等の観点から、減額に当たって一定の配慮を行う。
(2)以上の考え方に基づき、税負担を財源とする恩給期間に係る給付について、次の@及びAにより減額する。
@ 共済年金制度発足時の本人負担(対俸給8.8%の保険料のうち本人負担分 4.4%)よりも低い恩給期間の本人負担(恩給納金として対俸給 2.0%)に見合った給付水準とするため、恩給期間に係る給付について、27%減額する。
A ただし、恩給期間と社会保険方式による公務員共済期間の合計に係る給付について、
ア)給付額に対する引下げ額の割合が10%を上回らないこととする
イ)減額により、給付額が250万円を下回らないこととする
との措置を講じる。
(3)文官恩給についても、上記(1)(2)との均衡を考慮した給付水準の引下げ措置を講じる。
(4)税負担ではない国家公務員共済組合の郵政公社分及び厚生年金保険に統合した旧三公社等における追加費用について、税負担による追加費用と同様の取扱いとするかどうかは、更に検討する。
4.職域部分
(1)現行の公的年金としての職域部分(3階部分)は、平成22年に廃止する。
(2)現行制度に基づく既裁定年金の給付については存続する。ただし、追加費用による職域相当分については、3.(1)による減額の対象に含める。未裁定者については、これまでの加入期間に応じた給付を行うことを基本としつつ、公務員共済については下記(3)の仕組みの制度設計を踏まえて検討する。
(3)新たに公務員制度としての仕組みを設けることとし、この仕組みについては、人事院において諸外国の公務員年金や民間の企業年金及び退職金の実態について調査を実施し、その結果を踏まえ制度設計を行う。
(4)私学共済については、別途、廃止する現行の職域部分(3階部分)に代わる新たな年金を設けることを検討する。
5.積立金の管理・運用
(1)各共済年金の1・2階部分と厚生年金保険の積立金は、被用者年金制度の共通財源として一元的に管理・運用することを基本とし、運用利回り、基本的な資産構成割合、評価方法等の運用ルールは統一する。
運用主体の在り方については、資金規模やその市場影響をどのように考えるか等の観点から、更に検討する。
(2)各共済年金の貸付等の独自運用については、その果たしている役割や運用の観点に立った評価等を踏まえ、必要な範囲で確保する方策を講じる。
6.制度的な差異の取扱い
(1)1・2階部分において各共済年金と厚生年金保険の制度が異なる点については、次のとおり各共済年金と厚生年金保険を揃える。
@ 共済年金における遺族年金の転給制度については、厚生年金保険に合わせて廃止する。
A 厚生年金保険に合わせて、共済年金に被保険者資格の年齢制限及び障害給付に当たっての保険料納付要件を設ける。
B 老齢給付及び障害給付に係る在職中の支給額の減額(支給停止)については、制度を統一する。これにより、60歳台前半の退職した公務員が厚生年金保険被保険者となる場合の減額について、60歳台前半の民間被用者に適用される、より厳しい減額方法とする。
(2)制度的な差異が解消する時期が明らかな次の経過措置については、存置する。
@ 厚生年金保険における女子の支給開始年齢
A 共済年金における60歳前の繰上げ支給
(3)その他の制度が異なる点については、上記(1)(2)の取扱いに準じて個々に検討する。
7.事務組織等
(1)事務組織等の取扱いについては、被用者全体での年金財政の一本化を前提とし、一元化にふさわしく、無駄のない効率的なものとする観点から、更に検討する。
(2)事務組織の在り方にかかわらず、年金相談等の情報共有化を推進する。
以上