5月29日、都内において連合は、政府と公務員制度改革に関する第3回政労協議を開催した。政府側からは、中馬行政改革担当大臣、竹中総務大臣、川崎厚生労働大臣、連合側からは、古賀連合事務局長、岡部公務労協議長(自治労委員長)、丸山公務労協公務員制度改革対策本部長(国公連合委員長)が参加した。
最初に、行政改革推進法成立による総人件費改革の実行に伴う国家公務員雇用調整本部の設置について、中馬大臣が、<別紙1>を示し、その内容を説明した。これに対して、古賀事務局長が第3回協議開催に関する謝意を述べた後、丸山本部長が次の通り述べた。
「雇用調整本部について、我々は、首相を本部長に全閣僚が参加した体制を敷いていただきたい、という要望を3月の協議で申し上げた。その意味では、若干残念な面があるが、事務局を含めたこの間の政府の努力を多としたいと考える。
いずれにしても、実効性ある雇用確保策のために、国公・地公の組合と十分な協議・連携が必要だ。また、府省間配転が最も重い課題であると認識するが、本人の意思が最大限尊重されるような、円滑な異動や配置転換の仕組み、研修体制の充実など、具体的な雇用確保策を講ずるよう求めたい。」
また、古賀事務局長も、次の通り指摘した。
「連合としても、政府がこの間の国会審議等において再三『職員の雇用を確保する』との考え方を明言していることは評価する。しかし、問題は、結果責任である。当該職員の納得・理解が得られるよう、万全の体制を図っていただくよう要請する。」
これに対して、中馬大臣が、「ご指摘を踏まえ、組合とも連携しながら、引き続き検討を進めていきたい」と述べた後、竹中大臣が次の通り述べた。
「今回は、簡素で効率的な政府に向けた行政改革に伴うものであり、円滑な実施のためにも、職員の雇用の確保を図ることが必要である。自分自身、総務大臣として、雇用調整本部の副本部長に就くこととなっており、精一杯取り組みたい。」
また中馬大臣は、「新規採用者の抑制などを行って、府省間配転などが余裕を持ってやれるようにしていきたい」と補足した。
次に、第2回政労協議(3月20日)において、設置を合意した「労働基本権を付与する公務員の範囲に関する検討の場」について、中馬大臣が政府としての考えを<別紙2>の通り示し、説明した。
これに対して、連合から古賀事務局長が、次の通り述べた。
「難しい情勢でありながら、3月の協議を踏まえ、政府側が誠実に努力していることに敬意を表したい。その上で、まず、明後日(5月31日)から開会されるILO総会に関わって、連合としての考えをお伝えする。
ご案内の通り、ILOは、日本の公務労使関係問題についてこれまで三度勧告を行っており、政府が想像している以上に、国際労働運動もその帰趨に大変強い関心を抱いている。今回の総会でも、ICFTUや他国を含めた労働側代表総体として、日本案件を条約勧告適用委員会の個別審査案件としてリストアップするよう強く求めているし、国内にもそうした声が小さくない。
しかし、連合としては、今国会での政府答弁、付帯決議などを踏まえ、今般設置される『検討の場』が、ILO勧告の趣旨に添った、労使関係改革の一歩となりうると判断し、国際社会に対してリストアップをしないよう求める判断をした。この点について、まず政府側の見解をお聞かせ願いたい。」
これに対して、中馬大臣は、「ILO総会での日本案件に関する連合の対応に感謝する。労使は対立関係にあるわけではなく、今後も、国民の意見やILO勧告等を踏まえた対応をしていきたい」と述べた。また、川崎大臣は、「ILOについては、今後も政労が足並みを揃えて対応できることを期待する。引き続き、ILOに対する適切な情報提供を行う。いずれにしても相互の理解が大事であり、組合側との十分な意見交換と連携を図っていきたい」と述べた。
その上で、さらに古賀事務局長が、以下の通り述べた。
「今政府から提案された『検討の場』の具体的内容については、大枠として評価できるものであるが、一方で時間的制約もあり、現段階で整理がついていない点、あるいは折り合っていない点もあると感じている。そのため、特に2点指摘させていただく。
一つは委員の選定についてであり、学識経験者も含め、委員の選定にあたっては、我々の意見も十分に踏まえ、バランスの取れた、様々な考え・立場を代表できる人物を選定いただきたい。
もう一つは事務局体制についてであり、公務員のあり方が検討課題になるということからすれば、例えば行政改革会議や地方分権推進委員会などの前例を踏まえ、事務局に各層・各団体から職員の派遣を求めるべきと考える。連合としても、この問題について、真剣に改革に取り組むという立場から積極的に事務局員を送りたいと考えている。」
これに対して、中馬大臣は、「委員の選定についてのご要望は、真摯に受け止めさせていただきたい。事務局体制についても、十分に検討したい」と述べた。
さらに、丸山本部長が次の通り質した。「政府の説明によると、政令を根拠に設置するということだが、その決定時期はいつ頃を考えているか示してほしい。委員の人事については、一方的に決定するのではなく、組合側とよく協議して決めていくようにしてほしい。
2001年以来、公務員制度改革が俎上に乗せられてくる中で、この間、与党の議員を含め良い意見交換をしてきたと考えるが、残念ながら実を結ばなかった。今回は、『労働基本権を付与する公務員の範囲』というように目標は明確であり、是非とも国際労働基準に合致した改革ができるよう政治が主導性を発揮すべきだ。」
また岡部議長は次の通り述べた。
「今回の『検討の場』の設置は大変意義深いものであると考える。我々が主張しているのは、戦後60年経ち、新たな社会のニーズに適切に応える良質かつ効率的な公務・公共サービスと、それを担い得る公務員の範囲およびあり方について総合的に検討すべき、ということだ。また、国民的視点を踏まえつつ、現行の公務員制度および公務における労使関係等の問題点を抜本的に改革することが必要であり、そのなかで、ILO基準に沿って労働基本権を確立するべきだ。
ヨーロッパを始め、他の先進国を見れば、政労使のパートナーシップが社会を支える基本ともなっている。このような考え方を組合側としても持っていることを理解し、政府も前向きに対応してほしい。」
これらに対して中馬大臣は、次の通り述べた。
「いずれにしても、抜本改革し、次の段階に進む必要があると考えている。我々としても、国際的に評価を得られる労使関係を打ち立てる改革を行いたいし、問題意識は共有化していると思う。この間も述べている通り、ニュートラルな立場で改革に臨みたいが、方向性はある程度見えていると思う。ただし、この間の経過や国民の視点を踏まえれば、総理が言っている通り、拙速ではなく慎重に検討を進めたい、というのが政府の考えだ。職員組合とも十分意見交換していく。委員の選定についても、十分意見を伺って参りたい。」
設置根拠となる政令の決定時期については、行革推進事務局から「行革推進法の可決時期が当初の考えよりやや遅れたこともあり、6月中旬くらいが目途ではないか」との補足説明があった。
最後に、中馬大臣が、「『検討の場』については、本日示した内容でお互いの認識が一致したものと考える」と締めくくり、この日の協議を終えた。その上で、第1回会議開催に向け、細部の調整を含め引き続き取り組むことになった。
<別紙1>
国家公務員雇用調整本部について
○ 総人件費改革の一環としての国の行政機関の定員の純減に伴う配置転換、採用抑制の取組を政府全体として着実に実施するとともに、それらの取組が円滑に進むよう各府省に対して必要な助言、調整、支援等を行うため、内閣に国家公務員雇用調整本部(以下「本部」という。)を設置する。
○ 本部の構成員は、次のとおりとする。
本部長 内閣官房長官
副本部長 行政改革担当大臣 総務大臣
本部員 内閣官房副長官(政務及び事務)、内開府副大臣、防衛庁副長官及び各省副大臣
(注)副大臣が複数いる省についてはそのうち1人が参加する。この他必要な関係者に出席を求めるものとする。
○ 地方における取組を推進するため、本部の下に地方推進協議会を各地方ブロックにおく。
○ 本部の設置は、国家公務員の配置転換、採用抑制に関する全体計画とともに決定する。本部において、各年度の実施計画を策定することとし、平成19年度に係る実施計画は本部の設置後速やかに決定する。
<別紙2>
「検討の場」の設置について
3月の政労協議において合意した「労働基本権を付与する公務員の範囲について」検討する場の設置方針は、以下のとおりとする。
○ 設置根拠
行政改革推進法に基づく政令に根拠を置くこととしたい。
○ 検討事項等
簡素で効率的な政府における公務の範囲、それを担う従事者の類型化とそれぞれのあり方、以上を踏まえた公務員の労働基本権を含む労使関係のあり方について検討し、結論を得る。
○ 委員の構成
学識経験を有する者10〜15人程度。
○ 設置時期等
所要の手続を進め、進やかに設置。設置後、概ね1ケ月を目途に第1回会合を開催。
なお、公務員制度改革等に関する政府と連合との協議については今後も存置することとする。
以上