公務員連絡会丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は、6月7日午後1時30分から、人事院の谷総裁と交渉をもち、「2006年人事院勧告に関わる要求」(資料参照)を提出した。これにより、本年の人勧期の取り組みが正式にスタートすることとなった。
公務員連絡会は、企業規模など官民比較方法の基本的な枠組みの見直し阻止を本年の人事院勧告に向けた最重要課題として位置づけ、春季生活闘争段階から取り組みを進めてきた。しかし、春季生活闘争段階の交渉は物別れに終わり、決着は人勧期の闘いに持ち越されている。人事院は、本年の勧告に向けてすでに小規模企業調査を開始し、研究会での検討作業などを急ピッチで進めている。こうした情勢をふまえ公務員連絡会は、例年に比べて2週間程度前倒した日程で要求書を提出し、8月上旬に予定される勧告日まで、中央地方で粘り強く取り組みを進めることとしている。その第1弾として、6月15日には3千人規模の中央行動を実施する。
要求提出に当たって、冒頭、丸山議長は、次の通り見解を述べた。
(1) 本年の春季生活闘争は、企業業績の回復基調の中で5年ぶりの賃金改善と一時金の増額という結果となった。しかし、社会全体としてみたとき、依然として雇用形態、企業規模、中央と地方の格差は拡大傾向にある。一方、公務を巡っては、いわゆる行政改革推進法案や市場化テスト法案が成立し、向こう5年間で定員5%以上を純減することを柱とした総人件費削減計画が実施に移されることになり、公務員労働者はいま雇用と生活に対する大きな危機に直面している。
(2) そうした中で前総裁は、3月23日の春季要求に対する回答で、われわれが強く反対したにもかかわらず本年の民間給与実態調査で小規模企業調査を実施し、企業規模等の官民比較の基本的な枠組みのあり方について検討する姿勢を表明し、本年の勧告に向けた作業を進めている。これは、総裁自身の見解を一方的に反故にするものであり、われわれとの信頼関係を大きく損ねるものといわざるを得ない。また、労働基本権制約の代償機能としての人事院の役割からいっても、大きな問題がある。われわれは、こうした人事院の官民比較方法のあり方の検討を到底認めるわけにはいかないし、われわれの反対を押し切って一方的に本年の勧告に向けた作業を進める姿勢についても改めて強く抗議する。
(3) 要求提出に当たり、われわれは、本年の給与勧告において、給与水準の引下げにつながる拙速な企業規模等の見直しを行うことについては、あくまで反対である。それは、人事院が企業規模等の見直しを行ったからといって、決して公務員給与の社会的合意を再構築することには結びつかないからであり、政府や与党にとって公務員給与問題が政治の重要課題に位置づけられている今日、それで公務員給与引下げ圧力が弱まるという保障は全くないからである。現に、本年の骨太方針策定に向け、政府・与党が経済財政諮問会議や財政・経済一体改革会議の議論の中で、本年の勧告で官民比較方法の見直しを行うことを前提に、さらに公務員給与水準を引き下げるための総人件費削減施策の検討を開始している。
(4) 以上のことからわれわれは、本年の人勧期の要求で、@拙速な企業規模等の官民比較方法の基本的な枠組みに関わる見直しを行わないことA本年の民間相場を正確に反映させ、公務員労働者の給与水準を維持・改善する勧告を行うこと、などを最重点課題として求めている。また、育児・介護を行う職員の短時間勤務制度をはじめ勤務時間に関わる諸課題の抜本的な解決も本年の勧告時の大きな課題であり、実現に向けて努力してもらいたい。本日を機に、事務レベルで交渉を開始するが、われわれの理解と納得=合意を得るまで十分交渉・協議を積み上げるよう、最大限の努力を求める。
続いて山本事務局長が重点要求事項についての考え方を説明したあと、各々の副議長が「小規模企業比較は地公により大きく影響する。同じ仕事をしていても自治体間で給与が異なるという事態が生ずることにもなりかねない。地公への影響という点を十分踏まえて検討してもらいたい」「すでに地公は独自の賃下げを多くのところで実施している。これ以上の引下げは仕事への士気や人材確保面で障害となる」と、地公への影響を踏まえて拙速な見直しを行わないよう求めた。
これに対して総裁は、「要求は承った。今後、本年の給与勧告に向けて、各課題について引き続き公務員連絡会の意見も十分聞きながら検討を進めていきたい。民調については、現在、小規模企業を含め調査を実施している。比較対象企業規模を含め、官民比較方法のあり方については、学者、有識者からなる研究会等の場を設けて検討して頂いているところであり、その検討状況を踏まえ、公務員連絡会の意見も十分聞きながら検討を進めていきたい」と、今後、十分交渉・協議を積み上げていくことに同意した。
<別紙>
2006年6月7日
人事院総裁
谷 公士 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏
2006年人事院勧告に関わる要求書
本年の春季生活闘争は、企業業績の回復基調の中で5年ぶりの賃金改善と一時金の増額という結果となりました。しかし、依然として雇用形態、企業規模、中央と地方の格差は拡大傾向にあり、是正されていません。
一方、公務を巡っては、いわゆる行政改革推進法案や市場化テスト法案が成立し、向こう5年間で定員5%以上を純減することを柱とした総人件費削減計画の具体化が進められ、公務員労働者はいま雇用と生活に対する大きな危機に直面しています。加えて政府・与党は、本年の骨太方針策定に向け、経済財政諮問会議や財政・経済一体改革会議の議論の中で、官民比較方法の見直しを前提に、公務員給与水準の引下げを中心としたさらなる総人件費削減施策の検討を開始しています。
そうした中で貴職は、3月23日の春季要求に対する回答で、われわれが強く反対したにもかかわらず本年の民間給与実態調査で小規模企業調査を実施し、企業規模等の官民比較の基本的な枠組みのあり方について検討する姿勢を表明し、本年の勧告に向けた作業を進めています。これは、貴職自身の見解を一方的に反故にするものであり、われわれとの信頼関係や労働基本権制約の代償機能を大きく損ねるものと断ぜざるをえません。
以上のことからわれわれは、改めて貴職の検討姿勢に対して抗議するとともに、本年の給与勧告において、給与水準の引下げにつながる拙速な企業規模等の見直しを行わないことを強く求めます。そして、本年の民間相場を正確に反映させ、公務員労働者の給与水準を維持・改善する勧告を行うことを求めます。また、育児・介護を行う短時間勤務制度の実現をはじめ勤務時間に関わる諸課題の抜本的な解決も、本年の勧告時の大きな課題です。
貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2006年人事院勧告に関わる下記事項を実現することを強く要求します。
記
1.賃金要求について
(1) 官民比較方法について
@ 官民比較方法の基本的な枠組みに関わる比較対象企業規模等については、本年の勧告で拙速な見直しを行わないこと。
A 100人未満50人以上の小規模企業調査結果の取扱いについては、十分交渉・協議し、本年の比較作業の対象としないこと。
B その他の事項については、十分交渉・協議、合意のうえ、勧告作業に反映すること。
(2) 本年の給与勧告について
@ 2006年度の給与改定に当たっては、官民比較方法の見直しを行わないことを前提とし、公務員労働者の月例給与の水準を維持・改善する勧告を行うこと。また、給与構造の見直し期間中であることを踏まえ、較差の配分、手当のあり方、一般職員の勤務実績反映のあり方等について十分な交渉・協議を行い、合意すること。
A 一時金については、民間の実勢を踏まえ、月数増を勧告すること。
2.労働諸条件の改善について
(1) 育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の早期実現について
@ 育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の早期実現に向け、本年の勧告時までに意見の申出を行うこと。
A 意見の申出に当たっては、制度内容や給与・勤務条件、定員の取扱い等について十分交渉・協議し、合意すること。
(2) 自己啓発、社会貢献のための休業制度の早期実現について
@ 自己啓発・自己実現や社会貢献のための総合的な休業制度の早期実現に向け、本年の勧告時までに意見の申出を行うこと。
A 意見の申出に当たっては、制度内容等について十分交渉・協議、合意すること。
(3) 労働時間の短縮等について
@ 人事給与システムの導入に対応した厳格な勤務時間管理のあり方、真に実効ある超過勤務縮減の具体策を早急にとりまとめること。
A 民間の所定内労働時間の実態調査結果を踏まえ、本年の勧告時に所定内勤務時間の短縮に向けた考え方を提言すること。
(4) 民間の退職金・企業年金等の調査について
@ 民間企業の退職金・企業年金等の実態調査の実施、その結果に基づく官民比較等に当たっては、5月9日付けの公務員連絡会の申入れに基づき、十分交渉・協議し、合意の上で作業を進めること。
A 調査結果等を踏まえ、共済年金や退職手当のあり方等について政府に対して意見等を提出する場合には、事前に公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(5) 男女平等の公務職場の実現について
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の確実な実施、昨年末に改定された女性職員の採用・登用拡大指針の実現、メンター制度の実効性確保などに向け、適切な指導を行うこと。
3.その他の事項について
(1) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
(2) 分限処分の運用のあり方の検討に当たっては、十分交渉・協議すること。
以上