2006年度公務労協情報 45 2006年6月15日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

企業規模見直し阻止求め人勧期第1次中央行動実施−6/15
−幹事クラス交渉委員が人事院職員団体審議官と交渉−

 公務員連絡会は、15日午後、2006人勧期の最大課題である企業規模など官民比較方法の拙速な見直し阻止等を目標に、第1次中央行動を実施した。公務員連絡会は、7日には委員長クラス交渉委員が人事院総裁に要求書を提出し、例年より早く2006人勧期の取り組みのスタートを切った。本日の行動は、人事院の勧告作業の進捗状況を点検するとともに、この要求実現を求めて行われたもの。
 午後から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会には、全国から2,700人の仲間が結集し、厳しい情勢の中で人勧期闘争を進める決意を固めあった。集会参加者は、この後行われた職員団体審議官との交渉を支援する人事院前行動と霞ヶ関一周デモなどの行動を繰り広げた。職員団体審議官との交渉では、人事院側の姿勢は固く、官民比較に関わっては「民調結果を踏まえて検討する」との回答に終始した。
 公務員連絡会では、本日の第1次中央行動を皮切りに、7月3〜5日にはブロック別の上京行動を実施し、7.19第2次、8.1第3次中央行動を繰り広げ、要求実現を目指すこととしている。

 午後1時30分から行われた中央集会の冒頭挨拶に立った丸山議長は、「企業業績はいいといわれているが国民は実感できず、格差は拡大し、社会はゆがんでいる。格差是正と公共サービス確立の戦略的運動をさらに強めていかねばならない。人勧期の最重要課題である企業規模問題については、相互信頼関係や人事院の代償機能そのものに関わる問題だ。今日の行動を機に、納得いくまで交渉を継続し、一方的勧告は行わせない取り組みを全力を挙げて進めよう」と、2006人勧期の闘いに全国から決起することを訴えた。続いて山本事務局長が取組方針を提起。@官民比較方法の拙速な見直し阻止A賃金水準の維持・改善B短時間勤務制の実現など、重要課題実現に向け中央行動や職場でのはがき・署名行動などを進めていくとの方針を提起した。構成組織決意表明には、自治労・植本副委員長、国公総連・高倉執行委員(全開発書記長)、全水道・佐々木関東地本委員長、国交職組・三浦書記次長が登壇し、闘う決意を述べた。
 集会を終えた参加者は、霞ヶ関を一周するデモ行進部隊と人事院交渉を支援する部隊に分かれてそれぞれ行動。3時30分から、再度日比谷大音楽堂に結集し、職員団体審議官との交渉経過の報告を受け、次の闘いに決起する決意を固めあった。
 公務員連絡会の行動終了後、参加者は、18時から国際フォーラムで開かれた連合主催の「反転攻勢・連合6.15大結集」集会に参加、地方連合や民間の仲間とともに格差是正や大増税阻止の取り組みを進める意思統一を行った。


<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 交渉は14時30分から行われ、公務員連絡会幹事クラス交渉委員が臨み、人事院側は井原職員団体審議官、森永参事官が対応した。
 冒頭、岩岬副事務局長が「要求提出後、まだそんなに時間は経っていないが、本日は全国から仲間が集まってきているので、誠意ある回答を示していただきたい」として、民調や国公実態調査の作業状況、2006人勧期要求の重点課題である、@官民比較方法の見直しA本年の給与勧告(民間相場、月例給与、一時金)の内容B育児・介護職員の短時間勤務制度、自己啓発・社会貢献等のための休業制度の検討状況C厳格な勤務時間管理、所定内勤務時間の短縮に向けた検討状況D民間の退職金・企業年金等調査のあり方、などについて、現段階での見解を示すよう求めた。
 これについて、井原審議官は次の通り見解を示した。

1.勧告に向けた作業状況について
 民間企業の給与実態調査については、現在まだ調査期間中であるが、今のところ心配された小規模企業調査を含め順調に進んでいる。国公実態調査については、例年ペースで集計作業を行っている。

2.本年の春闘情勢と官民較差の動向について
 今年の春闘情勢については、他の機関の調査結果を見ると一部ベアのある企業が復活したところがあるものの、昨年と大きく変わっていない。昨年の勧告率がマイナス0.36%であったことを考えると、引き続き厳しい状況にあるのではないかと認識している。
 また、一時金についても、昨年冬、今年夏とも大企業は概ね好調と報じられているが、中小企業も含めて全体としてどうなるか、過去の経験からしてもこれもなかなかに厳しい状況と認識している。
 いずれにしても民間給与の実態は正確に把握し、勧告に反映させていく。

3.官民比較方法の見直し等について
 研究会及び懇話会については、これまでに研究会は7回、懇話会は5回行われており、それぞれ様々なご意見を伺い、議論を深めてもらってきている。来月には意見のとりまとめをお願いしたいと考えている。
 比較対象企業規模を含めた、官民給与の比較方法のあり方については、先般、総裁からもお答えしたとおり、研究会等の検討状況を踏まえ、連絡会のご意見も十分うかがったうえで人事院として責任もって判断したいと考えている。
 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、来年4月実施分の給与構造見直しの内容などについて公務員連絡会と十分な意見交換を行っていきたいと考えている。

4.短時間勤務制など勤務時間関係について
(1) 育児等を行う職員の短時間勤務制度及び自己啓発、社会貢献のための休業制度については、本年夏の勧告時点で少なくともその骨格が示せるよう、検討を進めている。近々、人事院としての案をお示しして連絡会のご意見をうかがいたいと考えているが、短時間勤務制度の対象については、育児についてまず先行させて検討している。介護については、現在の介護休暇制度において、全日休暇型のほか、既に1日4時間までの休暇(時間休暇型)が最大6月まで取得可能であるが、介護休暇の取得状況をみると、時間休暇型の介護休暇の利用者は少なく、全日型の要望が多いこと、また、介護の態様も様々であることなどから、介護休暇の取得状況や民間の状況等を踏まえて更に検討していきたいと考えている。
(2) 所定内勤務時間のあり方については、今回の民調で民間企業の所定内勤務時間を調査しているところであり、その結果を踏まえて検討を進める。また、超過勤務の縮減についても、早期に実効ある具体策を取りまとめるよう鋭意検討を進めたいと考えている。

5.退職金・企業年金調査について
 民間の退職金・企業年金等の調査については、連絡会のご意見も聞いて退職給付調査についての具体的な調査内容について検討を進めてきたところであるが、調査内容についてほぼ固まりつつあるので、近々にも検討結果をお示しできるのではないかと考えている。

 これに対して、連絡会側は「要求事項の検討期間が短かったとは言え、誠意が見られない回答であることに不満の意を表し、改めて真剣に検討するよう強く要望する」とした上で、以下の通りさらに人事院の見解を質した。
(1) 官民比較の問題については、今年の春闘回答では物別れとなって、人事院が小規模企業の調査を強行した。7日の2006人勧期要求提出の際も委員長クラス交渉委員から官民比較方法の拙速な見直しを行わないよう強く求めてきたところであるが、今の回答は春の回答と何ら変わらず極めて遺憾である。
 昨年秋以降、人事院は、昨年春や人勧期要求提出時の総裁回答を反故にして、政府・与党の要請に沿った形で小規模企業を比較対象とする作業を進めているが、一方の当事者である連絡会が納得できる説明を行っておらず、とうてい認められない。相互信頼関係を損ねるものであるし、社会的に形成された官民比較の基本は人事院の権限だけで変えられるものではない。社会的な合意が必要である。
 総人件費削減・公務員給与水準引下げは政治的課題として位置づけられたものであり、本年の企業規模見直しを前提にさらなる引下げが経済財政諮問会議や財政・経済一体改革会議で検討されようとしており、人事院は代償機関ではなく賃金抑制機関になろうとしている。一方の主張だけに与することは代償機能を自ら否定するものである。われわれが納得するまで議論を行い、拙速な見直しは避けるべきである。
(2) 80年代前半の財政危機の際には、人事院は政治や政府の圧力に屈せず、毅然と勧告を行い、政府が勧告を無視したり値切ってきたが、今回そういった毅然とした対応をしないのはどうしてか。
(3) 現時点でも公務員志望者が大幅に減っており、公務員の給与水準をさらに引き下げるということになれば、将来の人材確保に支障を来すことになるのではないか。
(4) 月例給与については、昨年のマイナス0.36%同様に厳しいとのことであるが、本年もマイナス較差の可能性が強いという考え方が示されたということか。また、一時金については、われわれは好調であると認識しているが人事院としては必ずしもそうではないということか。
(5) 短時間勤務制度については、近々に案が示されることは前進として評価したい。制度内容はその時点で議論させていただくことにするが、われわれの5年前からの要求であり、公務員の労働条件の改善ということはもとより、社会全体のワーク・シェアリングの観点が重要であり、処遇に差がないこと、公務員制度としてしっかり位置づけることが大事だ。ぜひ、本年の勧告時に意見の申出を行うよう作業を進めてもらいたい。また、介護職員について「引き続き検討」というのは遺憾である。この間、われわれは育児とセットで要求してきており、まだ時間もあるので今年の勧告時期に実現するよう引き続き検討してもらいたい。
(6) 退職金・企業年金についても、調査内容等を近々に示すとのことであるが、調査内容や方法はもちろんであるが、官民比較の方法や政府への意見内容については、われわれと十分交渉・協議することを約束していただきたい。

 これらの質問・要望等に対し、人事院は次の通り見解を示した。
(1) 比較方法の問題については、昨年秋以降、国民のコンセンサスが得られているとは言い難い状況になってきたため、それを検証することが代償機能を果たすためにも必要であるとの認識の下に、研究会を設置して幅広く検討することにしたものであり、拙速に進めようということではない。また、比較方法を見直すことを決めたわけではないし、研究会報告についても皆さんと議論し、納得を得られるようできるだけ努力をして参りたい。
(2) 80年代と異なって圧力に屈しているということはない。コンセンサスを得るために検証しようということであり、比較企業規模の問題も十分に議論してから判断したいということである。
(3) 人材確保も公務員の給与水準を検討するにあたっての論点であり、幅広く検討しているが、国民のコンセンサスを得ていかなければならない。
(4) 月例給与については厳しい認識をしている。この夏の一時金は、6月8日の連合集計では3.4%増ということになっているが他の調査ではそれほど伸びていないし、妥結水準は高くても実際の支給水準はそれほどでもないというのが経験則であり、結果が出るまでは何とも言えない。
(5) 退職金・企業年金に関わって政府に意見を言うときは皆さんの意見を伺いながら検討して参りたい。

 以上のように、人事院の回答内容が極めて不十分であったことから、連絡会側は「本日の回答は、われわれの納得がいくよう、誠意を持って人事院が努力している姿勢が見られない。本当に官民比較方法のあり方を『検証』するということであれば、代償機関である以上、一方の当事者の理解を得ずに強行することはあってはならない。どうしても今年の勧告でやらなければならないというものではない。われわれが納得するまで十分議論するという姿勢を示してもらいたい」と迫ったが、井原審議官が「誠意を持って努力する」との見解を繰り返したことから、連絡会側は「春から全く同じ回答であり、中身が変わっていない。次回の交渉も同じ回答であれば、人事院に対する姿勢を変えなければならない」と、人事院の態度を強く批判し、本日の交渉を打ち切った。

以上