公務労協・公務員連絡会は、被用者年金制度見直しに伴う共済年金の職域部分のあり方の検討に向けた「民間企業の退職給付(企業年金・退職一時金等)調査」の実施について、5月9日に人事院に申入れを行っていたが、22日までに、井原人事院職員団体審議官交渉を実施し回答を求めた。交渉は、公務員連絡会幹事クラス交渉委員が臨み、人事院側は井原審議官のほか、森永参事官、嶋田生涯設計課企画官らが対応した。
組合側が検討状況と回答を示すよう求めたのに対し、井原審議官が「申入れを踏まえ調査内容を検討してきたが、内容が固まったのでお示ししたい」と前置きした上で、担当者から別紙について次の通り補足説明があった。
(1) 調査期間は要望を踏まえ、必要な期間を確保した。
(2) 退職時給付は勤務条件という性格も持っているため、給与民調に合わせ、企業規模50人以上を調査することにした。
(3) 前回総務省が行った調査は全数が郵送調査であり、実地調査は、その前の人事院調査では600社であったが、今回は要望を踏まえ1,000社に増やした。
(4) 調査対象職種は従来同様行(一)事務・技術関係とした。
(5) 比較にあたっては、これまでの調査と同様、退職事由別・勤続年数別の公務員ベースのラスパイレス比較を基本とすることを考えている。
(6) 調査結果の報告(官民比較を含む)や人事院としての意見の取りまとめに当たっては、限られた日程の中で対処せざるを得ないが、皆さんのご意見を伺いながら適切に対処して参りたい。
説明に対し組合側は、次の通り人事院の見解を質した。
(1) 退職手当はこれまで企業規模100人以上と比べてきたこととの整合性の問題や、われわれが勤務条件であり交渉で決めるべきだと主張してきたのに所管の総務省が「長期勤続報償」という側面を強調してきた経過がある。今の説明では、 勤務条件なので給与民調の50人以上という企業規模に合わせたということであるが、納得がいかない。なぜ、50人以上なのか明確に説明していただきたい。
(2) 企業年金は、民間では多種多様であり、できるだけ正確に調査していただきたい。また、退職時給付には様々なものがあり把握しにくい面があるので洩れがないようしっかり対応していただきたい。
(3) 企業年金給付のメニュー(障害・遺族などを含め)は調査しないのか。現在の職域年金制度に代わる仕組みを設計するときに必要になるのではないか。
質問等に対し人事院は次の通り見解を示した。
(1) 勤務条件の性格もあるということで給与民調に合わせた調査を行うが、給与と同様に比較方法については改めて検討することにしている。
(2) 年金を含めた退職時給付の調査については、月例給与に比べて難しいことを認識しており、調査の前に企業年金等に関する研修会を行って正確な把握に最大限努力することにしている。
(3) 今回の調査は短期間であるし、人事院には退職時給付の基本的な水準把握が求められていることから、年金給付メニューの調査までは行わないが、調査していないからと言って給付を排除するものではないと考えている。調査による水準を踏まえて所管府省でメニューも含めて判断することになるのではないか。いずれにしても調査結果を踏まえながら人事院としてどこまで言うかを検討したい。
以上の質疑を踏まえ、最後に組合側は「われわれが最も重視していた企業規模の問題について納得できる説明もなく50人以上としたのは極めて不満である。しかしながら、期限も迫っていることから調査を開始することについてはやむを得ないと考えるので、文字通り民間実態を正確に把握してもらいたい。今後、組織内で議論を行って、改めて官民比較や政府に対する意見内容についての要求を提出するので、十分交渉・協議することを約束してもらいたい」と要請し、極めて不満であるが調査の実施自体はやむを得ないとの認識を示し、企業規模問題については官民比較方法を検討する際、改めて交渉・協議することを強く求めた。これに対して人事院側が、「比較の際の企業規模まで決めているわけではない。関係者の意見を十分踏まえ、よく検討していきたい」と、交渉・協議していくことに同意したことから、この日の交渉を終えた。
(別紙)
平成18年度民間企業の退職給付(企業年金・退職一時金等)調査の実施について
平成18年6月
人 事 院
1 調査期間
7月3日(月)〜9月8日(金)
2 調査対象事業所
常勤従業員数が50人以上の企業 約6,200社
(母集団企業数・・・約37,000社)
3 調査の方法
(1)実地調査 約1,000社(職員が企業を訪問)
(2)郵送調査 約5,200社(調査票を郵送)
4 調査の主な内容
(a)企業における制度(18年3月末現在の状況)
(ア)退職給付(企業年金・一時金)制度の有無、創設の理由、構成割合等
(イ)企業年金制度の内容 … 年金の種類、受給資格、支給開始時期、支給期間、掛金負担割合、選択一時金制度の有無、給付利率等
(ウ)退職金制度の内容 … 算定方式、勤続年数別支給率等
(エ)その他 … 早期退職優遇制度、前払い制度、財形年金への補助の有無等
(b)退職給付の個人別支給状況(平成17年度中に退職した勤続20年以上の者)
(ア)退職者の属性 … 退職事由、学歴、性別、退職時年齢、勤続年数、役職段階
(イ)企業年金の支給状況 … 年金の種類、支給期間、年金年額、一時金選択の場合の金額、退職時の現価額等
(ウ)退職一時金の状況 … 一時金額、早期退職優遇制度の適用の有無等
(エ)その他の給付状況 … 退職記念旅行券等の給付額
以上