政府は、7日夕刻、「歳出・歳入一体改革方針」を主要な柱の一つとする「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(基本方針2006)を閣議決定した。公務労協は、7月3日に開催した代表者会議での確認に基づき、別紙の通り「見解」を公表した。公務労協はこれを踏まえ、連合に結集し引き続き取組みを強化することとしている。
(別紙)
「歳出・歳入一体改革の基本方針」に対する見解
(1)政府は、7日夕刻、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(以下、「基本方針2006」という)を閣議決定した。「基本方針2006」は「これまで5年間の改革推進により、日本経済の新たな飛躍に向けた基盤は固められつつある」と自画自賛し「新たな挑戦の10年」における3つの優先課題、@成長力・競争力強化、A財政健全化、B安全・安心で柔軟且つ多様な社会の実現、を列挙した上で「平成19年度予算は、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を確実に達成していくための発射台となることから、今後の経済運営の基本になる予算編成の考え方を明らかにする。」と明記し、喫緊の実践的課題が歳出・歳入一体改革を実現する2007年度予算編成であることを明言している。2011年度に基礎的財政収支を黒字化することを眼目とした歳出・歳入一体改革方針は、政府・与党がポスト小泉、参議院選挙などの政局動向を見定めつつ、「一層の歳出カット」を引き続き国の最重要政策課題に設定し、公務員人件費をそのターゲットと位置づけたことを示している。
(2)歳出・歳入一体改革方針は名目成長率3%程度の前提に立ち、7つの原則を掲げ2011年度までを財政健全化第2期と位置づけ「基礎的財政収支黒字化」、2010年代半ばまでを第3期として「持続可能な財政とすべく債務残高GDP比の発散を止め、安定的引下げ」を目標としている。
7つの原則とは、@徹底した政府のスリム化で国民負担増を最小化する、A成長力を強化し、その成果を国民生活の向上と財政健全化に活かす、B優先度を明確化し、聖域なく歳出削減を行う、C国・地方のバランスのとれた財政再建の実現に向けて協力する、D将来世代に負担を先送りしない社会保障制度を確立する、E資産売却を大胆に進め、バランスシートを圧縮する、F新たな国民負担は官の肥大化には振り向けず、国民に還元する、である。
同方針は、2011年に基礎的財政収支を黒字化するために解消すべき要対応額16.5兆円程度のうち少なくとも11.4兆円(上限目標14.3兆円)以上は歳出削減によって対応することとしている。その内訳は社会保障費1.6兆円、公務員人件費2.6兆円、地方財政・公共投資(公共事業、地方単独事業等)4.5兆円〜3.3兆円、その他となっている。
具体的内容は失業保険・生活扶助・医療・介護・年金、教育、住民サービスの削減に直結する地方財政への締めつけなど、公共サービスの縮小と国民への自己負担増を強いるものとなっている。
(3)政治の緊切のテーマであるべき格差社会の解消、安心・安全の医療・介護・年金などの社会保障制度改革、教育、少子化対策などは全て「基礎的財政収支黒字化」の犠牲に供され、行革推進法、市場化テスト法の具体化と相俟って事態の放置は、自己責任の美名の下で公共の解体、弱肉強食の社会に拍車を掛け、取り返しのつかない「社会の劣化」をもたらすことは明白である。
政府は、「小さな政府・歳出削減」による公共サービスの縮小・解体政策が本格的な大衆増税の露払いであることを公言してはばからないでいる。国債管理政策の必要性を政策の優先順位問題にすりかえる政治的詐術は許されない。
政府は、「歳出削減を行ってなお、要対応額を満たさない部分については歳入改革で対応することを基本とする」と述べ、公務員人件費削減=財政再建との図式を描き、国民と公務員労働者、国家公務員と地方公務員、行政職員と現業職員、教育職員とを分断し、社会保障費削減に象徴される行政による公共サービスの縮小=自己負担増と大衆増税を強要する、極めて悪質な政治的意図をむき出しにしている。
(4)公務員人件費については、@国・地方とも2010年度までに5.7%純減し2011年度まで継続する、A給与の比較対象企業規模を見直す(100人→50人)、B地域の民間給与の更なる反映を図る、Cボーナスの支給月数の地域格差の反映、D特殊勤務手当の削減、E互助会への補助金の削減、F級別職員構成の是正、G知事等の高額な退職手当の適正化、H教職員等人件費の削減、等を具体的に列挙している。
ここには政策論以前の看過し得ない重大な問題がある。即ち、国家公務員の官民給与比較については基本権制約の代償性を認めているかの如く「・・・人事院に要請する」と記述しているのに対し、地方公務員については比較企業規模の引下げを断言している。地方公務員の賃金・労働条件を国が財政権限をテコに一方的に方向付けることは地方自治に対する乱暴な侵害であり、労働組合権を蹂躙するものである。
(5)公務員の人件費を政治の道具とし、世論を扇情し政府が公務労使関係を蹂躙することは民主主義の根幹を揺るがすものであり絶対に容認できない。労使関係を確保することは労働組合の存立基盤を確保する生命線であり、労働基本権の確立と公務員制度改革は焦眉の急である。
公務労協は、第1に、政府による労使関係の否定に強く抗議し、賃金・労働条件を労使関係の枠内で処理することを強く求めた取組みを進める。同時にこの取組みは、中期にわたる公務員賃金に対する社会的合意を再構築するものである。
第2に、引き続き行革推進法、市場化テスト法の具体化と闘い雇用と労働条件の確保をめざすとともに、「基本方針2006」に反対し、その撤回と歳出削減至上主義政策の抜本的な転換をめざした取組みを進める。
第3に、格差是正と安心・公正な社会をめざし、暮らしと社会の基盤を支える公共サービス、セーフティーネットの確立に政治と行政が責任を持つ「安心・安全の社会、労働を中心とした福祉型社会」実現に向けた取組みを引き続き推進する。
2006年7月7日
公務公共サービス労働組合協議会
以上