公務員連絡会地方公務員部会は7月19日、10時30分から、東京・日比谷野外音楽堂を会場に、強雨の中3,000人余が結集し、2006人勧期要求の実現を求める中央集会を実施した。
この中央集会は、官民比較方法の見直し、地方公務員給与のあり方に関する研究会報告にもとづく総務省通知など地方公務員給与をめぐる厳しい情勢があることから、で、公務員連絡会人勧期第2次中央行動の前段に、地公部会が独自に実施したもの。
集会は、山岸副議長(都市交委員長)を議長に進められた。主催者挨拶に立った佐藤地公部会議長(全水道委員長)は、政府・与党、財界、マスコミが一体となってすすめてきた公務員バッシングは、退職時特昇の廃止、寒冷地手当の廃止を含む見直しなど個別的な手当から、地域手当・給与構造見直し、今年の小規模企業調査問題と地方公務員給与の水準そのものの引下げを求めるという段階に入ったと指摘した。その上で、総務省の「地方公務員給与のあり方に関する研究会」最終報告で地方公務員給与水準について地場民間賃金重視に転換することを受けて、総務省による本年の給与改定にかかわる指針の発出や来年の通常国会で地方公務員法改正を予定されていることに対して取組みを強めていこうと訴えた。
続いて、激励に駆けつけた丸山公務員連絡会議長から、「官民比較方法の見直しをめぐる人事院の対応は、06骨太方針閣議決定という政治的な圧力もあり、大変厳しい現状におかれてはいるが、しっかりたたかおう」という力強い挨拶を受けた。
岩本地公部会事務局長が、基調報告を行った。その中で、地公部会は公務員賃金闘争において、公務員連絡会の一員として国・地方を通じた公務員賃金水準・制度の改善、地方公務員の固有の課題における産別、地域、自治体レベルにおける共同の取組みに重要な役割を果たしてきたこと、総務省に設置された「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」が今年3月末に報告書で公民比較企業規模の引下げを示したが、これは人事院の企業規模引下げと軌を一にするものである。地公部会は、昨年の給与構造見直しにおける取組経過を踏まえ、人勧期から人事委員会、全人連、総務省に対する取組みが求められるという認識から、6月15日を基準日として全人連、各人事委員会に対して公民比較方法見直しにかかわる要求書提出行動をすすめてきたことなど、この間の取組みを報告した。さらに、「国の企業規模見直しは、自治体において深刻な影響をもたらすことから、行うべきではない。地方公務員給与のあり方全体の中で公民比較方法は議論されるべきであり、自治体の労使交渉を踏まえて決定するべきものである」と述べた。
決意表明は、茨城県教職員組合・吉田書記長と、自治労三重県本部・杣谷書記長が、両県における人事委員会に対する取組みの報告を行なった。その中で、人事委員会に主体性がなく、国に追随するばかりの姿勢に対して厳しい追及を続けてきたこと、政治圧力や公務員バッシングに屈することなく地公共闘の団結を強めたたかっていく決意を訴えた。
中村地公部会企画調整委員(日教組書記長)から、集会と同時並行で実施された書記長クラスによる総務省公務員部長交渉の報告を受けたあと、岡部副議長(自治労委員長)の団結ガンバロウで集会を締めくくった。午後は全参加者が公務員連絡会人勧期第2次中央行動に参加した。
また、地公部会で独自に取り組んだ「地方公務員の給与に関する総務大臣要請署名」は7月18日現在で827,402筆を集約し、19日総務省に提出した。
この日行われた公務員部長交渉の経過は以下の通り。
<公務員部長交渉の経過>
公務員連絡会地公部会は、7月19日午前10時30分から、総務省公務員部長交渉を実施した。交渉には、書記長クラス交渉委員が臨み、総務省からは、小笠原公務員部長、松永公務員課長、稲山給与能率推進室長、赤穂定員給与調査官などが対応した。
冒頭、地公部会構成組織を代表して、日教組中村書記長が、要請署名を提出し、「本年の給与勧告と給与改定にかかわる事項、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告(以下研究会報告)を踏まえた措置に関する事項について、6月20日に要求書を提出させて頂いた。具体的には、研究会報告を踏まえた措置内容については当方と十分交渉・協議して進めてもらいたいこと、本年の給与勧告では比較企業規模の引き下げを強要しないことの2点であるが、これについて、総務省としての今日時点の見解を伺いたい」と述べた。
これに対し、小笠原公務員部長は、次の通り、総務省の考え方を説明した。
(1)研究会報告において、@従来、国家公務員の給与に準じることとしていた地方公務員の給与決定の考え方を、給与水準については地域民間給与を重視する方向で刷新すること、A民間給与の調査対象となる企業の拡大や人事委員会機能の強化等を行うことなどの提言をいただいたところである。総務省としては、これらの提言を踏まえ、地方公共団体への助言や所要の制度整備等に取り組む所存である。具体的取り組みにあたっては、公務員連絡会に対しても、必要に応じ、情報提供や意思疎通に努めていきたいと考えている。
(2)地方公務員給与における民間給与を考慮する場合の考え方については、研究会報告の中で、代表性の観点から「区域内の民間事業の従事者の相当数の給与を考慮するということが必要」との認識が示され、現行の規模要件(企業規模100人以上)を引き下げる方向で見直すことが適切であると提言されている。他方、国家公務員給与における官民給与の比較方法の在り方に関しては、本年3月に人事院の研究会において中間とりまとめがなされ、その中で、民間給与実態調査は企業規模50人以上の事業所に拡大することが適当と提言されている。
本年の人事院勧告に反映する比較対象企業の規模については、現在、人事院において具体的な検討が進められているところであるが、総務省としては、研究会報告の提言を踏まえ、国家公務員給与における今後の動向も注視しつつ、地域民間給与のより的確な反映にむけ、各地方公共団体に対し必要な助言等を行って参りたい。
こうした回答に対して、地公部会側は次の通り総務省の考え方を質した。
人事院は、官民比較対象企業の規模の見直そうとしているが、公務員の労働基本権制約の代償機関そして中立第三者機関として、規模引下げの理論的根拠を示していない。この間、人事院は、現行の官民比較基準(官民比較対象企業の規模100人以上)が確立された経緯に留意することなく、政治的な圧力を受けて、官民比較対象企業の規模の見直しありきのスタンスで対応してきているが、われわれとしては到底容認することができない。また、企業規模見直しによる比較は、国家公務員においては平均化され一つの数字となるが、地方公務員においては個々地方の水準が大きく低下し、自治体間格差がいっそう拡大する懸念がある。同じ公務サービスの提供に従事する者として、単純に地場民賃に準拠すること、止めどなく格差を拡大することは問題であると考える。総務省としての見解はどうか。
これらに対して、総務省側は、次の通り回答した。
地方公務員の給与については、研究会報告において、民間給与の地域内のバラツキに比べ、より画一的な傾向があること、現在の地方公務員の給与の状況が、地域ごとの民間給与の状況の反映という観点から見ると、必ずしも十分ではないことが指摘されている。また、調査対象とすべき企業の規模については、地域における比較対象となる民間事業所の少なくとも過半数をカバーすることを目安として、現行の規模要件(企業規模100人以上)を引き下げる方向で見直すことが適切であると提言されている。総務省としても、人事院における検討状況も踏まえつつ、地域民間給与のより的確な反映にむけ、各地方公共団体に対して必要な助言等を行って参りたい。
この回答に対して、さらに、地公部会側は次の通り総務省の考え方を質した。
比較方法について、本年の企業規模引下げについては絶対反対である。研究会報告を踏まえた措置の具体化については、地公部会としても個別・詳細についての考え方を整理し、改めて担当室長に書面で提出したいと考えており、それを踏まえ、今後、実務レベルで十分話し合ってもらいたい。
ところで、7月7日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(基本方針2006)について、7月14日の公務員課長との議論経過を踏まえつつ、本日段階で、今後の対応に係る基本的な総務省としての立場に限定し、つまり「定員あるいは給与などについて、あくまで各自治体の主体的・自主的判断によるものであること」について、総務省としてどのように考えているのか。
これに対して総務省側は、次の通り回答した。
「基本方針2006」は、国における経済財政運営と構造改革に関する基本的な考え方について、内閣として閣議決定を行い、政府としての方針を国民等に示したものであり、これを踏まえ、政府の一員として具体的な施策を行っていくことになると考えている。地方公務員の定員・給与については条例で定められるべきものであり、各地方公共団体の実態に応じて適正な内容となるべきものと考えている。
地方行財政および地方公務員を取り巻く厳しい状況を踏まえると、地方公共団体においても不断の行革努力が必要であり、各地方公共団体が策定した定員管理の数値目標の達成にむけた徹底した取り組みを進める必要があると考えている。定員管理に関しては、総務省において、平成17年3月に新地方行革指針(地方公務員の総数に関して、過去5年間の実績である4.6%を上回る純減等を規定)を策定し、各地方公共団体に対して自主的な取組みを要請したところである。その結果、本年4月27日に公表した速報値によれば、平成17年4月1日から22年4月1日までの5年間の地方公共団体全体の純減率は、6.2%となっており、各団体において真剣な取組みをいただいているものと考えている。
また、「基本方針2006」においては、地方公務員の給与について国家公務員の改革を踏まえた取組みに加え、地方における民間給与水準への準拠の徹底などの更なる改革への取組みが求められている。総務省としては、閣議決定を踏まえ、各地方公共団体において主体的かつ積極的に改革の取り組みが進められるよう必要な助言等を行って参りたい。
この回答に対して、さらに、地公部会側より、次の通り総務省の考え方を質した。
本年4月27日に公表した速報値によれば、平成17年4月1日から22年4月1日までの5年間の地方公共団体全体の純減率は、6.2%とのことであるが、「基本方針2006」では、これを踏まえ、5年間で行政機関の国家公務員の定員純減(▲5.7%)と同程度の定員純減を行うとしている。このように、自治体における自主的な取組みの目標設定は、国の水準を上回るものである。「基本方針2006」の閣議決定をうけて、各自治体に対して、新地方行革指針で求めた取組み以外に改めて何か求めることを考えているのか。
これに対して、総務省側は、さらに、次の通り回答した。
「基本方針2006」の閣議決定を踏まえて、政府の一員として、どのような対応をはかるかについては検討中である。いずれにしても、各地方公共団体における自主的な取り組み目標が達成されるよう、必要な助言等を行って参りたい。また、PDCAサイクルの徹底をはかることも重要であると考える。
最後に、「基本方針2006」についての具体的対応についても、今後、実務レベルで十分協議していただくことを強く要請するとともに、重ねて、給与に関する諸課題についての対応に留意するよう求めて、この日の交渉を終えた。
以上