2006年度公務労協情報 59 2006年8月1日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

2006人勧期第3次中央集会に4千人参加−8/1
−企業規模見直し、育児の短時間勤務制など回答、勧告は8日の公算−

 公務員連絡会は1日、2006人勧期最大の山場となる第3次中央行動を実施した。午後1時30分から、日比谷大音楽堂で行われた中央集会には4千人の仲間が参加し、勧告に向けて最後まで闘う決意を固めた。第3次中央行動を背景に行われた給与・職員福祉局長との交渉で人事院は、@勧告日は7日の週の前半A比較対象企業規模の50人以上への拡大など官民比較方法の見直しを行うB月例給は大きなマイナスとはならなず俸給表の改定を行わなくても良い見通しであり、一時金については最小限の引下げとなるかどうかの状況C広域異動手当など給与構造の見直し関係の勧告を行うD勧告日にあわせて育児の短時間勤務制度、自己啓発等の休業制度の意見の申出を行うよう努力、などの回答を示した。これに対して公務員連絡会側は、企業規模の見直しについて「納得のいく説明もなく一方的に見直しを強行することは到底認められない」として、この回答に強く抗議し撤回するよう求めたが、人事院側がこれに応ぜず、交渉は物別れに終わった。公務員連絡会は、4日にも委員長クラス交渉委員による人事院総裁との交渉を予定し、勧告内容に関わる最終回答を引き出すことにしており、勧告日のギリギリまで、官民比較方法の拙速な見直しを行わないことや月例給・一時金の「維持・改善」を求め交渉・協議を強めることとしている。

 午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会は、山岸副議長(都市交委員長)を議長に選出して始められた。冒頭挨拶に立った丸山議長は、「2006人勧期は企業規模見直し反対を最大の課題に取組みを進めてきたが、いよいよ本日がその山場だ。仮に、政府の要請を受けて人事院が賃金水準を引き下げるための企業規模見直しを行うとすれば、基本権制約の代償機能は『機能せず』と批判しなければならない。情勢は厳しく勧告日まで残り少ないが、最後まで拙速な見直し反対の姿勢でがんばろう」と、2006人勧期の最終盤の闘いに決起することを訴えた。
 続いて激励挨拶に駆けつけた高木連合会長は、「連合は人勧期の皆さんの闘いを全面的に支持する。骨太方針の総人件費削減策の決定は公務の労使関係を否定するものだ。企業規模は社会的な枠組みであり人事院が一方的に見直せるものではない。仮に政府が公務員給与を引き下げたいというのであれば、小泉総理が私のところに直接話をもってくるべきだ」と、政府、人事院の姿勢を強く批判し、行革推進本部の下に設置された「専門調査会」の審議を通じて労働基本権問題や決定システムの抜本解決に向けて闘いを進める、と力強く決意を述べた。
 基調提起では、山本事務局長が本日の給与局長・職員福祉局長との交渉に臨むスタンスを報告。4日には人事院総裁との最終交渉に臨み、公務員連絡会としての勧告に臨む態度を決定する、との方針を提起した。構成組織決意表明には、自治労・君島副委員長、国公総連・森下全農林中執、日高教・大出書記長、政労連・鈴木書記次長が登壇し、要求実現に向けぎりぎりまで闘う決意を力強く表明した。
 集会を終えた参加者は、人事院前交渉支援行動と霞ヶ関一周のデモ行進に出発。「企業規模の見直し反対」「公務員給与を維持・改善せよ」「育児・介護の短時間勤務制を実現せよ」と力強くシュプレヒコールを繰り返した。
 行動を終えた参加者は再び日比谷大音楽堂に結集し、書記長クラス交渉の報告を受け、企業規模見直しの回答に抗議し、最後まで2006人勧期の闘いを進めるとの決意を込めた団結ガンバロウを三唱し、この日の行動を締めくくった。
 この日行われた人事院給与局長、職員福祉局長との交渉経過は次の通り。

<人事院給与局長交渉の経過>
 人事院関戸給与局長との交渉は、午後2時15分から人事院内で行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、山本事務局長が、「本日は官民比較方法の見直し問題の事実上の最終交渉になるのでわれわれが納得できる回答を示してもらいたい」と、局長の見解を求めたのに対して、関戸給与局長は、以下の通り回答した。

1.勧告日について
 勧告日は、8月7日の週の前半をめざして作業を進めている。
2.官民比較方法見直しに関する措置内容等について
 官民比較方法については、皆さんのご意見も聞きながら検討を進めてきたが、7月21日に研究会報告書をいただき、27日には懇話会の意見をいただいた。これらを踏まえて検討した結果、本年の勧告においては以下のような見直しを行うこととした。
(1) 月例給の比較対象企業規模の見直し
 同種・同等比較の原則を維持しながら、公務員給与に民間の給与をより適正に反映させるためには、同種・同等の業務を行う民間従業員の給与を可能な限り広く把握し、反映させることが適当であることから、企業規模50人以上の従業員についても比較の対象に加えることとした。なお、民間企業給与実態調査においては、企業規模100人未満50人以上の事業所についても84%の調査完了率を確保し、役職段階別の実人員数も十分に確保できたものと考えている。
 また、企業規模50人以上の企業の部長等や課長については、現在、500人以上と500人未満の企業の従業員を分けて対応関係を設定しているのと同様に、役職に一定の段階差を設けて対応関係を設定することとした。
(2) 比較対象従業員の見直し
 公務における平均部下数の現状等を勘案し、ライン職の要件を部長で部下20人以上又は2課以上(現在は30人以上又は3課以上)、課長で部下10人以上又は2係以上(現在は10人以上又は4人以上の係2係以上)に改めるとともに、ライン職の役職者と職能資格等が同等と認められるスタッフ職についても比較の対象に加えることとした。
(3) 級編成の再編等に伴う対応関係の整理
 給与構造見直しの級構成の再編に伴い、統合級について所要の対応関係の整理を行っている。
(4) 特別給の官民比較方法の見直し
 特別給の官民比較についても、月例給と同様、企業規模50人以上の事業所を対象に加えることとした。
3.較差・特別給の見通しについて
 官民較差は官民比較方法の見直しによって相当の影響がでることは否定することはできないが、結果としての較差が大きいマイナスになるようなことはない見通しである。特別給についても比較企業規模を見直すことによる影響はあるものの、いま確たる事を言える段階ではないが最小限の引下げになるかどうかという見通しである。
4.配分について
 較差次第であり明確なことを申し上げる段階にないが、俸給表の改定は行わなくてすむ見通しである。
5.その他の勧告・報告事項について
 2年目の給与構造見直し実施分として、昨年報告の内容にそって来年4月から広域異動手当を新設し、2年をかけて段階的に実施すること、特別調整額を定額化することを勧告し、来年度の地域手当の支給割合の引上げの内容などについて報告することとしている。
 また、昇給制度や勤勉手当制度の改正と合わせた勤務成績反映の改善措置を管理職員については既に実施しているが、一般職員へ拡げることについて、平成19年の実施に向けて準備を進めることを報告することにしている。

 以上のように、局長の回答は、月例給・一時金ともに企業規模50人以上との比較に改めることを前提にした極めて厳しい内容のものであった。
 これに対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 月例給及び一時金の比較についてわれわれが納得できる理由が説明されていない。同種・同等の原則を維持しつつ、より広く民間従業員の給与と比較するとのことであるが、日本経済の二重構造の下で企業規模の引下げは即公務員給与の引下げを結果するものであり、政府からの要請に応えたものと言わざるを得ない。特に一時金は同種・同等の原則に沿っておらず問題外である。
(2) 公務員給与は社会的に合意が得られる枠組の中で決定されなければならない。人事院の権限に基づいて一方的に決定するのではなく、広範な議論を起こし、社会的に決めていくべきだ。
(3) 問題は公務員労働者が今日の説明で納得できるかどうかだ。人事院は十分な説明責任を果たしていない。民間企業従業員の給与をより広く反映することが適切であるという前提に立っているが、今までとは違うのではないか。今までは公務員賃金の社会的位置を定めるものとして比較企業規模があった。それを「より広く」ということに変えたのか。今回の見直しは、結果として公務員給与の社会的位置を変えることになるが、それをどう説明するのか。
(4) 同種・同等の原則を強調するのであれば、一時金についてもラスパイレス比較を行うべきである。仮にすぐにはできないとすれば、現在の企業規模を維持すべきではないか。
(5) 7月19日の交渉で局長は扶養手当のあり方の検討に言及していたがどのような検討を行っているのか。見直すのであれば、交渉事項であり十分議論すべきだ。
(6) 一般職員の給与への勤務成績の反映については昨年も相当な議論をしてきたところであり、今後の検討にあたっても、人事評価制度の試行や職場の実態も踏まえつつ、十分な交渉・協議を行うべきだ。
 これらの追及に対し局長は、次の通り答えた。
(1) 平成17年に調査を行った結果、企業規模50人以上であれば、公務に見合う役職段階も相当見られ、同種・同等の原則の下で、精確な官民比較を行えるだけの調査数を確保できることが明らかになったことから、より広く民間給与を反映させることが適切との判断に基づき見直したものである。政府から要請があったからということではなく、研究会で検討し、その報告も踏まえながら、中立第三者機関として代償機能を果たす観点から判断したものである。
(2) 社会的な合意を得ながら、より適切な民間準拠はどういうものかについて慎重な検討を行ってきた結果として、見直すことにしたものである。
(3) 人事院は、これまで一貫して同種・同等の業務と比較することが適当であり、その際、より広く反映することが適正であると判断しているということである。
(4) 一時金を月例給と別の企業と比較するわけにはいかないので、月例給と同様、企業規模50人以上に合わせるということである。
(5) 扶養手当をどうするかは較差次第であり、また少子化にどう対応していくかという政策的課題もある。そういう点を考えつつ、いろいろなパターンについて検討をしている。

 以上のように関戸局長は、公務員連絡会側が納得できる十分な説明を行わず、人事院として企業規模を見直すとの態度決定を行った、との見解を繰り返すのみであった。このため、公務員連絡会側は、「全体として民間の景気がいい中で公務員だけは別扱いということでは組合員は納得できない。比較企業規模を見直すことになれば、国家公務員に深刻な影響を与えることになるが、地方公務員には二重三重の影響を及ぼす。十分な説明もなく一方的に見直す、という局長回答は極めて遺憾であり、強く抗議する。本日の回答は撤回し、4日に予定する総裁交渉では改めてわれわれの要求に沿った回答を示すよう努力してもらいたい」と強く求め、交渉を打ち切った。

<人事院職員福祉局長交渉の経過>
 人事院吉田職員福祉局長との交渉は、午後3時から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、公務員連絡会側が回答を求めたのに対し、吉田局長は以下の通り回答した。

1.短時間勤務制度、自己啓発等休業制度の検討状況等について
 育児のための短時間勤務制度及び自己啓発等休業制度については、27日に関連制度の取扱いを含めて第2次案をお示しした。2次案に関しご要望いただいている短時間勤務者の昇給の取扱いについては、短時間勤務ゆえに不利益になることのないよう措置するつもりである。これらの制度については、現在、最終的な調整を行っているところであるが、給与勧告と同時に意見の申出を行えるよう、引き続き努力している。
 なお、介護については介護休暇制度のあり方も含めてさらに検討することを勧告の際に報告したいと考えている。
2.所定労働時間の短縮について
 本年の民間企業給与実態調査では企業規模50人以上で1日当たりの平均所定労働時間では7時間45分程度であるが、週の平均所定労働時間では39時間弱となっている。企業規模50人以上を対象とした調査結果は今回が初めてであり、引き続き民間の動向の把握を行うとともに、勤務時間の短縮が各府省の行政サービスに与える影響等についても調査を行うなど、引き続き必要な検討を進めたいと考えている。今年は、このような所定勤務時間についての基本的な検討の方向を報告したいと考えている。
3.超過勤務の縮減・厳正な勤務時間管理について
 勤務時間の関係では、厳正な勤務時間管理を推進するとともに、超過勤務の縮減に取り組む必要があると考えている。特に、超過勤務の縮減については、業務量を減らすとともに、勤務時間内の能率を向上することも求められている。人事院としては、こうした取組みを推進するため、まずは各府省において在庁時間を適切に把握することが肝要であると考えていることなど超過勤務の縮減に向けての基本的方向を報告したいと考えている。
4.その他の職員福祉局関係の報告事項について
 このほか、こころの健康づくり対策の推進、退職給付の調査検討について報告したいと考えている。

 これに対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 短時間勤務制度について、介護が見送られ、後補充の任期付非常勤職員の処遇が常勤職員と差があり、退職手当・共済制度が適用とならないなど、不満な内容である。しかし、われわれが求めてきた本格的な短時間勤務制度に向けて、一歩踏み出したものと受け止め、勧告時に確実に意見の申出を行うよう努力してもらいたい。介護への適用は来年実現していただきたいし、退職手当や共済組合の扱いについて、われわれの申入れに沿った内容となるよう関係府省との調整を行っていただきたい。
(2) 所定内勤務時間の短縮について本年の措置は困難との回答があったが、今後どのような姿勢で検討していくのか明確な見解を示してもらいたい。休憩・休息時間の見直しに関わって拘束時間が延びているだけに、早急に勤務時間の短縮を実現していただきたい。
(3) 厳格な勤務時間管理の問題については、労働者の側から見ても必要であると考えており、パソコン等を活用した仕組みなど具体策を提言していただきたい。
 これらの指摘に対し吉田局長は次の通り答えた。
(1) 意見の申出は勧告に合わせて行えるよう努力している。
(2) 勤務時間をどうするかについては、1週間の労働時間がどうであるかが基本になる。今回の調査結果では、38時間50分台であり、今の状況では15分の短縮はできない。これまでの勤務時間短縮の歴史は週休二日制導入の歴史であり、仕事をしない日を作ることで対応してきた。今回、短縮するとすれば、仕事、すなわち国民に対するサービスは維持したままで職員の勤務時間を短縮することになるので、各府省の仕事がどうなるかについて今後調査し、検討する必要があると考えている。
(3) 在庁時間の管理については、特に夜間について、命令のある超過勤務なのか、本人の都合で残っているのか、その中間なのか、などについて正確な実態把握を行うための調査を行いたいと考えている。

 最後に公務員連絡会側は、「勤務時間短縮について、できるだけスピーディに結論が得られるよう努力願いたい。退職手当・年金見直しに関わる調査、意見の申出については8月末に別途申入れを行うので、それを踏まえながら十分な交渉・協議を行っていただきたい。本年の勧告や意見の申出がわれわれの要求に沿ったものとなるよう、一層の努力をお願いしたい」と重ねて要望し、最後の事務レベル交渉を締めくくった。

以上