公務労協は、当面の最重要課題となっている「総人件費改革の基本指針」取りまとめに向けて、当事者の意見を聴取することや雇用・労働条件を確保することなどを求め、官房長官(11日)と総務大臣(10日)に対する申入れを行った。
経済財政諮問会議は、9日に民間議員提出の総人件費改革の基本指針(案)を大筋了承し、14日にも諮問会議として取りまとめる予定。政府はそれを受けて年末には、基本指針の実行計画などを含む「行政改革の重要方針」を閣議決定する予定で作業を進めている。
基本指針に盛り込まれる内容は、公務員の雇用や労働条件そのものにもかかわらず、政府はわれわれと一切協議することなく、一方的にこれらを決定しようとしている。公務労協は、総人件費削減に対する取り組みを本年度の最大課題に位置づけ、関係大臣に申入れを行うとともに、各構成組織を通じて地方段階で地元出身国会議員(共産党除く)に対する要請行動なども繰り広げてきた。そして、14日に基本指針のとりまとめが行われた場合、直ちに@公共サービスと雇用・労働条件の確保のための闘争委員会を発足、アピールを発し、闘争態勢を確立するA経済財政諮問会議に対する抗議打電と政府に十分な交渉・協議を求める要請打電行動に取り組むこととしている。また、これらの行動を積み上げ、22日には5千人規模の中央行動を実施する。
官房長官と総務大臣への申入れの経過は下記の通り。
<官房長官への申入れ>
安倍官房長官への申入れ(資料1)は、連合と共同で11日午後5時40分から官邸で行われ、連合からは高木会長・古賀事務局長、公務労協(連合官公部門連絡会)からは岡部議長・丸山副議長らが出席した。
申入れの冒頭、高木連合会長は、申入書を手交しながら「経済財政諮問会議で総人件費の議論が進んでいるが、当事者の意見が全く聞かれていない。当事者の意見を聞く機会を設けるよう申し入れる」と、関係組合と十分話し合うことを求めた。また、公務労協側は「われわれ働く側にとって見れば、仕事や雇用がどうなるか全く見通しがつかない。これでは士気も下がる。政策の決定過程に参画させてもらいたい。諮問会議の基本指針決定後は、政府が実行計画を検討することとなっているが、その際、関係大臣と十分協議できるよう官房長官として努力してもらいたい」と、今後の実行計画策定に当たっては「雇用確保」を最重点に当該組合と政府の代表が十分協議することを強く求めた。
これに対して安倍官房長官は「いま公務員総人件費の削減を検討しているが、その過程で皆さんの意見を聞くことは当然のことだ」と応えたが、その具体策等については触れなかった。
<竹中総務大臣への申入れ>
竹中総務大臣への申入れは、10日午前10時から、総務省大臣室で公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して行われた。
丸山議長は冒頭大臣就任への祝意を述べ、総人件費改革の基本指針に関わって、「経済財政諮問会議で公務員の総人件費改革の基本指針取りまとめに向けた議論が行われ大詰めを迎えていると報道されている。公務員の定員、賃金等は基本的な労働条件であり雇用や生活設計に直結し、働く士気にも大きな影響を与えている。これらは労使間で取り決められる労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定することは国際的にも確立された原則であり、ILOからも累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められていることはご承知の通りである。こうした事態が黙殺され、交渉はおろか当事者の意見を述べる機会も一切保障されていない。こうしたことには強い憤りと遺憾の意を表明せざるを得ない」と抗議し、申入書(資料2)に沿って、5点について要請した。
これに対し竹中大臣は祝意に対するお礼を述べ、「公務員制度等を所管する大臣に就任し重い責任を痛感している。前任の麻生大臣からも皆さんとよく話し合う必要があると言われており、真摯に対応することを明確に表明しておきたい」との見解を表明した。更に、今後「節々で皆さんの意見を聞く機会を設けたい」と重ねて基本姿勢を表明した。
資料1−総理大臣への緊急要請書
2005年11月11日
内閣総理大臣
小 泉 純一郎 殿
日本労働組合総連合会
会 長 高木 剛
連合官公部門連絡会
議 長 岡部謙治
「公務員の総人件費改革の基本指針」取りまとめに係る緊急要請
貴職には、日頃よりわたしどもに対しご理解を賜り敬意を表します。
さて、自民党行革推進本部は10月26日、国と地方の公務員定員を10年間で20%純減目標を掲げ国家公務員について「2006年度から5年間で5%純減」の中間目標を、地方公務員についても10年間で61.7万人の純減目標を決定しました。あわせて行政組織の統廃合、市場化テスト法案の策定などを含む実行計画を取りまとめました。
また、経済財政諮問会議においても「公務員の総人件費改革の基本指針」の取りまとめに向けて精力的な審議が行われ、「定員純減、事務・事業の廃止・民営化、公務員賃金を財政事情にリンクさせること等」についても検討され大詰めを迎えていると報道されています。
当事者の意見が全く聞かれることなく急ピッチで進行する一連の動きは、公務関係労働者に雇用や生活設計に対する深刻な不安を広げ、働く士気に大きな影響を与えています。賃金等は労使間で取り決められる労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定することは国際的にも確立された原則です。ILOからも累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められていることはご承知の通りです。かかる事態が黙殺され、労働基本権が蹂躙されることには強い憤りと遺憾の意を表明せざるを得ません。
定員削減問題等は、ナショナルミニマムとして保障される公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての検討の結果明示されるべきものであり、国民的論議と合意形成抜きに一部財界人と学者の意見で拙速に決定するべきではありません。
つきましては基本指針取りまとめにあたって、以下の点を実現されますよう緊急に申し入れ致します。
記
一、定員純減、公務員賃金問題は直接の労働条件であることから、当該関係者の意見表明の機会を保障すること。
一、基本指針策定にあたっては、行政活動の人的基盤である公務員の定員・総人件費削減を自己目的化せず、雇用労働条件の確保を明記すること。
一、労使関係制度の改革と合わせ公務員賃金のあり方、決定制度などの基本的方向を確定するための「政労協議の場」を設置すること。
一、ILO国際労働基準に基づき労働基本権を付与し、国民・市民への説明責任を果たす公務労使関係制度確立を含む透明で民主的な公務員制度への改革を進めること。
一、公共サービスを企業利益追求の手段とし、利用者の参画とコントロールが効かない民営化への横断的手法となる市場化テストの導入や法制化を行わないこと。
資料2−総務大臣への緊急要請書
2005年11月10日
総務大臣
竹 中 平 蔵 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏
「公務員の総人件費改革の基本指針」取りまとめに係る緊急要請
貴職には、日頃よりわたしどもに対しご理解を賜り敬意を表します。
さて、自民党行革推進本部は10月26日、国と地方の公務員定員を10年間で20%純減目標を掲げ国家公務員について「2006年度から5年間で5%純減」の中間目標を、地方公務員についても10年間で61.7万人の純減目標を決定しました。あわせて行政組織の統廃合、市場化テスト法案の策定などを含む実行計画を取りまとめました。
また、経済財政諮問会議においても「公務員の総人件費改革の基本指針」の取りまとめに向けて精力的な審議が行われ、「定員純減、事務・事業の廃止・民営化、公務員賃金を財政事情にリンクさせること等」についても検討され大詰めを迎えていると報道されています。
当事者の意見が全く聞かれることなく急ピッチで進行する一連の動きは、わたしども公務関係労働者に雇用や生活設計に対する深刻な不安を広げ、働く士気に大きな影響を与えています。賃金等は労使間で取り決められる労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定することは国際的にも確立された原則です。ILOからも累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められていることはご承知の通りです。かかる事態が黙殺され、労働基本権が蹂躙されることには強い憤りと遺憾の意を表明せざるを得ません。
定員削減問題等は、ナショナルミニマムとして保障される公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての検討の結果明示されるべきものであり、国民的論議と合意形成抜きに一部財界人と学者の意見で拙速に決定するべきではありません。
つきましては基本指針取りまとめにあたって、以下の点を実現されますよう緊急に申し入れ致します。
記
一、定員純減、公務員賃金問題は直接の労働条件であることから、当該関係者の意見表明の機会を保障すること。
一、基本指針策定にあたっては、行政活動の人的基盤である公務員の定員・総人件費削減を自己目的化せず、雇用労働条件の確保を明記すること。
一、労使関係制度の改革と合わせ公務員賃金のあり方、決定制度などの基本的方向を確定するための「政労協議の場」を設置すること。
一、ILO国際労働基準に基づき労働基本権を付与し、国民・市民への説明責任を果たす公務労使関係制度確立を含む透明で民主的な公務員制度への改革を進めること。
一、公共サービスを企業利益追求の手段とし、利用者の参画とコントロールが効かない民営化への横断的手法となる市場化テストの導入や法制化を行わないこと。
以上