公務員連絡会丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は、4日午後から、人事院谷総裁と交渉をもち、2006人勧期要求に対する最終回答を求めた。これに対して総裁は、比較企業規模などの官民比較方法の見直しを行った結果、較差は微少なものであり月例給・一時金とも改定は見送るとの回答を示した。これに対して公務員連絡会側は、納得いく説明もなく一方的に企業規模を見直した改定見送り措置は容認できない、としてその回答の受け入れを拒否、人事院の姿勢に強く抗議し、交渉を打ち切った。総裁交渉を受けて15時から開かれた公務員連絡会企画・幹事合同会議では、@企業規模を見直し、月例給・一時金改定を見送るという総裁回答の受け入れを拒否し、勧告が行われた場合は人事院に対する抗議行動を実施するA政府に対しては、人事院の措置内容が容認できないことから、十分交渉・協議を行い公務員給与の改善を求める要求書を提出する、ことなど勧告に対する対応方針を決定した。公務員連絡会としては7日にも代表者会議を開き、勧告に対する態度や当面の方針を正式決定し、8日の勧告日には「声明」を発し、9日から主要な関係閣僚に対する申入れを実施することとしている。
午後1時30分から行われた人事院総裁交渉の冒頭、丸山議長が「6月7日に本年の人勧期要求を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」として回答を求めたのに対して、総裁は次の通り回答を示した。
1、勧告日
勧告日については、8月8日となる予定である。
2、今年の給与改定関係について
(1)月例給
月例給の官民較差については、極めて微少なもので、官民給与はほぼ均衡していると見込まれる。したがって、月例給の改定は見送る予定である。
(2)特別給
特別給についても官民の支給月数は概ね均衡していると見込まれ、支給月数の改定はない見込みである。
(3)官民比較方法の見直し
官民比較方法については、比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上に改め、比較対象従業員にスタッフ職を加えるなどの見直しを行うこととした。その上で比較を行った結果が、先程申し上げた月例給の官民較差であり、特別給の結果である。
(4)給与構造の改革
@広域異動手当の新設
60キロ以上の広域異動を行った職員に3年間支給する広域異動手当を新設する。支給率は、60キロ以上300キロ未満3%、300キロ以上6%とするが、来年度は、 60キロ以上300キロ未満2%、300キロ以上4%とする。
A特別調整額の定額化
行(一)の職務の級ごとの在職中位号俸を基礎として、特別調整額を、職務の級別に定額化する。この際、地方機関に勤務する管理職については支給割合を引き上げた上で定額化する。これに伴い減額となる者については4年間の経過措置を設ける。
B地域給の支給割合等
地域手当の支給割合について暫定支給割合を定めること、新昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定改善措置の活用について、来年度からの一般職員への拡大に向けて準備を進めること、などについて報告を行う。
あわせて、少子化対策が国全体として推進されていることに配慮し、3子目以降の子等に係る扶養手当額を2子目までの手当額に合わせる改善(1,000円引上げ)を行う。
C実施時期
広域異動手当の新設、特別調整額の定額化、扶養手当の改定は平成19年4月から実施する。
3、育児のための短時間勤務制及び自己啓発等休業制度に関する意見の申出関係
(1)育児のための短時間勤務制度に関する意見の申出
育児のための短時間勤務制度の導入について勧告と同日付で意見の申出を行う。
これに併せて育児休業者の給与に関する復職時調整を人事院規則で1/1で行えるよう育児休業法を改正する。
また、介護については介護休暇のあり方を含め検討を進める旨を報告する。
(2)自己啓発等休業制度に関する意見の申出
自己啓発等休業制度の導入についても同日付で意見の申出を行う。
4、公務員人事管理関係
公務及び公務員の役割の重要性についての本院の基本認識を述べた上で、能力・実績に基づく人事管理、多様な有為の人材の確保、勤務環境の整備、退職管理の観点から、@人事評価制度の着実な実現、キャリア・システムの見直し、分限指針の整備A経験者採用システムの導入、官民人事交流の推進B弾力的な勤務形態の導入、心の健康づくりの対策の推進、超過勤務縮減C「天下り」問題への対応、などの課題について報告する予定である。
このうち、超過勤務縮減問題への対応として、政府全体としての業務量の削減の必要性、在庁時間等の適切な把握、明確な超過勤務命令の要件等を超過勤務縮減の指針に盛り込むことなどの取組を進めることを述べるとともに、週所定労働時間について、民間の動向把握及び行政サービスへの影響など必要な検討を進める旨を言及する予定である。
これに対して公務員連絡会側は、@総裁回答日より以前にマスコミに勧告内容が報道され、交渉経過が軽視されたことに対して強く抗議するとともに、A従前の比較方法で官民比較した場合の較差について人事院の見解を質した。これに対して給与局長は、@について、「われわれとしても極めて残念であるし、皆さんとの関係を変えたということはない」と、引き続き交渉・協議関係を重視する考え方に変わりはないとの見解を示した。また、Aについては、参考として比較方法を見直さなかった場合の試算を行ったところ、民間相場を反映して月例給の較差は1.12%、4,252円となり、特別給については企業規模を見直さなかった場合は0.05月のプラスとなる、とし企業規模を50人以上に拡大する見直しを行うことによって相当の較差が圧縮されたことを認めた。また、総裁は、「報道の件はわれわれにとっても迷惑な話であり、二度とあってはならないと考えている。官民比較については、われわれとしては中立の立場でできるだけ適切な比較を行ったと考えている」との見解を示した。
公務員連絡会側が「企業規模の見直しで地公は各県ごとに相当の差が出てくることになる。これは仕事の士気に関わる問題だ。地公の立場からも、企業規模の見直しは受け入れられない」としたのに対し、総裁は「中立・公正な立場で人事院の職責を全うしたいという基本姿勢に変わりはない」と答えた。
こうしたやり取りを受けて丸山議長は、総裁回答に対する公務員連絡会としての見解を次の通り表明し、「月例給・一時金の改定見送りという総裁回答の受け入れを拒否し、人事院の姿勢に強く抗議する」と結び、交渉を打ち切った。
(1)2006人勧期の取組みでわれわれは、政府の総人件費削減方針に反対し、@企業規模等の官民比較方法の基本的な枠組みに関わる事項についての拙速な見直しを行わないことA公務員の月例給・一時金を維持・改善することB育児の短時間勤務制度等を実現すること、などを重点課題に設定し、交渉・協議を積み重ねてきた。
(2)しかし、ただいまの総裁回答のうち、「月例給や一時金の改定見送り」という措置については、公務員連絡会として到底認められない。その理由は、@あれだけ強く反対してきたにもかかわらず、昨年の総裁回答を反故にし、それに対する納得のいく説明もないまま、比較対象企業規模を50人以上に拡大する官民比較方法の見直しを一方的に強行していることAそれにより官民較差が圧縮され、本来あるべき月例給や一時金の改定勧告が見送られ、公務員給与水準を抑制する結果となっていること。また、これは来年度以降の給与水準にも影響を及ぼすことB現行の企業規模は、1964年の政労トップ会談により歴史的・制度的に確立してきた公務員給与の水準決定の社会的枠組みであり、人事院が法律上の権限だけを根拠に見直せるものではなく、公務員給与の社会的な合意を再確立することには結びつかないこと、などである。また、企業規模の見直しは地方自治体の賃金決定により大きな影響をもたらすものであり、この点についてわれわれは強い危機意識を持っている。
われわれとしては本年企業規模の見直しを強行したことについて、「人事院が政府の要請を受け入れ、総人件費削減政策に荷担した」ものとしてしか受け止められない。このことは、労働基本権制約の代償機能の根幹を揺るがすものであり、第三者専門機関としての人事院の中立・独立性を大きく損なったものとして厳しく批判せざるをえない。
以上のことから、われわれとしてはただいまの総裁回答のうち、給与に関わる回答についての受け入れを拒否し、強く抗議する。正式に勧告が行われた場合には、公務員連絡会として全国で抗議の行動を実施することを通告する。
なお、われわれが交渉・協議の中で主張してきたことが納得いく形で説明されていないことから、次の点について後日、正式に文書で回答されたい。
@なぜ昨年の総裁見解を一方的に反故にして見直しに向けた検討を開始したのか、どのように情勢が変化したのかについて納得いく説明をされたい。また、このようなことが行われる限り相互の信頼関係に基づく交渉・協議は成り立たないと考える。貴院はわれわれとの交渉・協議関係(信義則)をどのように考えているのか、見解を示されたい。
A歴史的・社会的な仕組みとして成立している現行の比較対象企業規模を、人事院が一方的に変更しうるとする根拠は何か、また、なぜ比較企業規模を50人以上とすることが妥当と考えるのかについて、納得いく説明をされたい。
B今回の措置は、明らかに政治の圧力に屈して官民比較の基本的な枠組みに関わる見直しを行ったものであり、それは労働基本権制約の代償機能や中立・第三者機関としての立場と役割を放棄したものと考えられるが、貴院はこの点についてどのように考えているか、見解を示されたい。
C今回の官民比較方法の見直しによって公務員給与に対する国民的コンセンサスは得られると考えているのか、またその根拠は何かについて見解を示されたい。
(3)その他、育児のための短時間勤務制度に関する意見の申出については、内容について不満はあるものの、本格的な短時間勤務制度実現に向けた第一歩として受け止めているので、今後とも努力することを要請する。また、@一般の職員の勤務実績反映A俸給の調整額の見直しB退職時給付のあり方などについては、今後、われわれと十分交渉・協議を行うことを要請する。本年見送られた所定内勤務時間の短縮措置や厳格な勤務時間管理等については、引き続き実現に向けて努力してもらいたい。
以上