公務員連絡会地方公務員部会は、8月9日午前10時10分から、2006年人事院勧告を受けて全国人事委員会連合会(全人連)に対する申入れを行った。公務員連絡会側は、地公部会の佐藤議長(全水道委員長)、中村企画調整委員(日教組書記長)、岩本地公部会事務局長と地公部会幹事が出席、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市人事委員会の代表者が対応した。
冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、「本年の人事院勧告は、月例給・一時金ともに改定を見送る内容となったが、2006春闘結果および経済状況から言っても納得できるものではない。とりわけ、2006人勧期の最重要課題である官民比較対象企業規模(100人以上→50人以上)の見直しについては、昨年の人事院総裁交渉における回答では、総裁自らが、その見直しを行わないとしたのにも関わらず、政府・与党等の要請を受けて、本年の勧告で、官民比較対象企業規模をはじめとする官民比較方法の見直しが行われた。この結果については到底容認できるものではなく、今後、各人事委員会における公民較差の問題として影響が及ぶことが懸念される。この問題に加えて、地財危機の影響をうけての全自治体の半数以上で独自の給与カット、地域給与・給与構造改革の見直しなどにより、自治体間の賃金について格差拡大につながりかねない。6月15日の要請の際にも、「公民比較方法の基本的な枠組みに関わる比較対象企業規模等については、本年の勧告で拙速な見直しを行わないこと」を申し入れている。さらには、2006骨太の方針における比較対象企業規模等の見直し等10項目にわたって指摘、総務省の『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』報告書においても国公準拠の刷新など、公務員に対する賃金削減圧力が増している。このような状況を踏まえ、今後地方公務員の賃金・労働条件に関する具体的課題について、率直に意見交換の機会を設けていただきたい。また、労働基本権制約の代償機関として、引き続き、地方公務員の賃金・労働条件の向上にむけて尽力いただきたい」と申入れの趣旨を述べた。
引き続き、岩本地公部会事務局長が、「今年は都道府県人事委員会の勧告が従来に増して注目されている。国においては、一時金の官民比較についても、月例給と同一の企業を対象に調査を行い、較差を算出したと聞いている。各人事委員会においても、以上の点を踏まえた対応をお願いしたい。また、総務省の『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』報告書でも、人事委員会の機能強化に対応して、人事委員会の連携体制の整備やモデル給料表の作成等に取り組んでいく必要があるとしている。全人連としても、これらの点を踏まえ積極的に対応いただきたい」など、要請書の内容を説明し、とりわけ「1」「2」「3」「4」「10」「16」の事項について全人連の努力を求めた。
こうした地公部会の要請に対し、内田会長は以下の通り回答した。
2006年8月9日
<全人連会長回答>
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
昨日の人事院勧告で、本年の官民格差は、18円(0.00%)と極めて小さく、ほぼ民
間給与と均衡していることから、俸給表、諸手当の改定を行わないとしております。また、特別給につきましても、民間の支給割合と概ね均衡していることから、支給月数の増減を行わないとしております。
人事院は、本年の勧告において、比較対象の企業規模を100人以上から50人以上に引下げるなど、官民給与の比較方法を改めました。
これは、学識経験者による「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」による報告や、各界有識者による「給与懇話会」からの意見を踏まえ、民間企業の給与水準をより適正に公務員給与に反映させるために行ったとしております。
詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところですが、各地方自治体、とりわけ、各人事委員会にとりまして、人事院の勧告は、必ずしも、直ちに、これに従うべきものではありませんが、今後の各人事委員会の勧告作業にとって重要な参考になるものと考えられます。本日の申入れについては重要であり、重く受け止めています。
現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところであります。今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情を踏まえ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
教員給与につきましては、本年も、各人事委員会の主体的な取組を支援していくため、準備を進めてまいります。
公務員の給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況ですが、本年も各人事委員会におきましては、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいる所存でございます。
以上でございます。
(別紙)
2006年8月9日
全国人事委員会連合会
会 長 内田 公三 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 岡部謙治
日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 山岸 晧
全日本水道労働組合
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 小林政至
2006年度地方公務員の給与勧告等に関する要請書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
人事院は公務員連絡会の強い反対を押し切り、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」の報告を踏まえるとして、2006年度の国家公務員賃金改定について、月例給のみならず一時金についても比較企業規模を50人に引き下げた勧告を行いました。
比較企業規模見直しは、公務員賃金引下げという政治的圧力を受けたものであり、労働基本権制約の代償機関としての役割を自ら否定するものです。はじめに賃金引下げありきの対応は到底納得できません。
これから本年地方公務員の給与勧告に向けた本格的作業を開始されることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。
(1) 較差の配分、手当のあり方等については、十分な交渉・協議、合意に基づくこと。
(2) 一時金については、支給月数の改善を勧告すること。
(3) すべての在職者が定年まで昇給が可能になるように、号給を延長すること。
(4) 一般職員の勤務実績の給与への反映については、十分な交渉・協議、合意を前提にすること。
2.公民比較方法の見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づいて行うこと。本年の公民比較において、小規模事業所は対象としないこと。
3.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うこと。
4.給与構造見直しに当たっては、労働組合との十分な交渉と合意に基づき実施すること。
また、国の給与決定における審査申立制度の改善措置に対応した措置を講ずること。
5.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。
6.休憩・休息時間の見直しに当たっては、労使合意を前提とし、始業・終業時刻を延長しないこと。また、育児・介護を行う職員に配慮するとともに、交替制勤務職場の取扱いについては従前同様とすること。
7.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1) 「不払い残業」をなくすとともに、所定労働時間の短縮をはかること。とくに変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3) 年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4) 労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。
9.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
10.育児等を行う職員の両立支援に係わる短時間勤務制度、部分休業の延長等国の措置を踏まえた施策を実施するとともに、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
11.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
12.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
13.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
14.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
15.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。
16.地方公務員給与のあり方に関する研究会報告にもとづく具体的対応については、公務員連絡会地方公務員部会と十分協議し進めること。
以上