政府の要請を受けて現在人事院が実施している民間企業の退職給付の実態調査の締め切り(9/8)予定が間近に迫ってきたことから、公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、1日午後1時30分から人事院吉田職員福祉局長と交渉をもち、「公務員の年金と退職手当に関する要求書」(資料参照)を提出し、調査の進捗状況を質すとともに、官民比較の方法や政府に提出する意見内容について今後十分交渉・協議するよう求めた。この要求書は、31日に行われた公務労協共済年金・退職手当対策委員会の確認に基づくもの。
交渉の冒頭、公務員連絡会側は「国営関係部会は交渉権を持っており、勤務条件は協約事項だ。しかし、今回の見直しは実質的に人事院の意見に大きく左右されることから、別途十分国営関係部会の意見も聞いてもらいたい」と強く要請した。
続いて、要求書に基づいて民間実態調査の作業状況を質した。これに対して局長は「9月8日までを期間として、現在、調査中である。調査は、短期間ではあったが回収などは順調に推移している。調査終了後集計に入り、具体的な数字が出てくればそれを踏まえてどうするかの考え方を示し、皆さんの意見をよく聴いて対応していきたい。これまでの経過を見ると、民間の状況は皆さんの想像を超える厳しい結果もあるのではないか」とし、民間の状況は極めて厳しい結果も想定されるとの見解を示した。
続いて公務員連絡会側が、政府に提出する意見の内容や形式を質したところ、局長は「新しい共済の3階部分の制度や退職手当制度の具体的な中身までは言えないし、そのようなことは考えていない。しかし、ただ単に官民比較の結果がこうでしたという数字だけを言うことには止まらない。内容について、どこまで、どういうかについては今後検討していきたい。意見の形式についても、意見の申出となるのか、その他の形式になるのか、まだ決めていない」と、公務の退職給付制度のあるべき骨格等は示したいが、どこまで言うか、どのような形式かはまだ固まっていないとの見解を示した。また、局長は、調査の取りまとめや政府への意見の提出時期についても「9月8日までが調査期間であるが、最終的に整理できるのは9月一杯までかかるのではないか。その後の日程については、政府内の検討との関わりもあるが、今の段階でいつ意見提出するというような確固たることは言えない」と、答えるに止まった。
これらの局長見解に対し、公務員連絡会側は、「政府の総人件費削減政策の大きな流れの中で、月例給・一時金が比較企業規模の見直しで据え置かれ、共済年金や退職手当も削減ということになれば、到底職場の士気は保てない。人事院が政府の要請を受けて関与するということであれば、労働基本権制約の代償機能をきちっと果たし、正確な民間実態調査や同種・同等の比較方法などにより、なんとしても現行の公務の退職給付の総額を確保するよう努力してもらいたい。また、今後十分これらについて交渉・協議してもらいたい」と強く要請し、この日の交渉を終えた。
公務労協は本日の交渉を受け、人事院の民間実態調査の状況が極めて厳しいものとなることが想定されることから、今後、人事院との交渉・協議を強化するほか、11日から15日にかけて、構成組織の職場単位で人事院に対して@正確な民間調査を実施することA官民比較に当たって、企業規模を50人以上に拡大しないことや精緻な同種・同等比較を行うこと、などを求める要請文書提出行動(電報・レタックス等)を実施し、取り組みを一段と強化することとしている。
資料
2006年9月1日
人事院総裁
谷 公 士 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏
公務員の年金と退職手当に関する要求書
日頃より公務員労働者の賃金・労働条件の改善に向けた貴院のご努力に敬意を表します。
さて、被用者年金の一元化に向けた政府・与党の検討作業が、2007年通常国会への法案提出をめざして進められています。
政府は本年4月28日、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」を閣議決定しました。その中で、「現行の公的年金としての職域部分(3階部分)は、平成22年に廃止する」としたうえで、「新たに公務員制度としての仕組みを設けることとし、この仕組みについては、人事院において諸外国の公務員年金や民間の企業年金及び退職金の実態について調査を実施し、その結果を踏まえ制度設計を行う」こととされました。
近々には、政府からの要請を受けて実施した上記調査結果もまとまり、要請に対する見解表明がなされることと承知しております。
つきましては、下記事項を要求しますので、その実現に向け最大限のご努力を要請いたします。
記
1.共済年金の職域部分にかわる新しい公務員制度としての仕組みを設計できる水準設定を行うとともに、退職手当の水準を変更しないよう退職給付の総額を確保すること。
2.民間実態調査については、その結果を公務員連絡会に開示すること。
3.官民比較方法とその取扱い、政府に提出する具体的な制度設計に関わる見解については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行うこと。
以上